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2005.01.13
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カテゴリ: ブックリスト
「智恵子抄」といえば、高村光太郎が妻・智恵子への愛情を詠った詩集としてあまりに有名だ。
光太郎を主人公にした『小説智恵子抄(佐藤春夫)』に続くこの『智恵子飛ぶ(津村節子)』は、智恵子の愛と悲しみの生涯を余すことなく描いたもの。二人の運命の出逢い、結婚、そして智恵子の発病・・・。まさしく純愛小説。

物語中に挿入される光太郎の詩が胸を打つ。

・・・さあ、皆さん! 右手に本を、左手にハンカチを。


               PN「レモン哀歌」より。






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最終更新日  2005.01.14 19:01:59
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レモン哀歌  
私もだいすきです。
十五年前にはじめて知り今でも覚えています。
レモンを見るたびに今でも心の中でつぶやいたりします。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白いあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関ははそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光つレモンを今日も置かう (2005.01.14 23:15:28)

荒涼たる帰宅  
レモン哀歌はぜひ暗誦したい詩ですよね。レモン哀歌でこそ光太郎の心境の落ち着いたようすが窺えますが、最愛の妻を亡くした当初の彼の喪失感には計り知れないものがあります。

あんなに帰りたがってゐた自分の内へ
智恵子は死んでかへつて来た。
十月の深夜のがらんどうなアトリエの
小さな隅の埃を払ってきれいに浄め、
私は智恵子をそっと置く。
この一個の動かない人体の前に
私はいつまでも立ちつくす。
人は屏風をさかさにする。
人は燭をともし香をたく。
人は智恵子に化粧する。
さうして事がひとりでに運ぶ。
夜が明けたり日がくれたりして
そこら中がにぎやかになり、
家の中は花にうづまり、
何処かの葬式のやうになり、
いつのまにか智恵子が居なくなる。
私は誰も居ない暗いアトリエにただ立つてゐる。
外は名月といふ月夜らしい。 (2005.01.16 15:39:28)

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