龍刀【朧火】製作所

三章前編【白き影の郡勢】


工房の爺は出来たばかりのザザミグリーブをエレンに渡した。
「やっぱり爺ちゃんは早いわね。」
「こんなものに三日もかけていられるものか。」
すぐさまエレンは脚をいれ地面を軽く蹴ってみた。
「バッチリ!!アリガトね。」
エレンは嬉しそうに回転すると、酒場まで走り出した。
「レス~」
その時、街に傷だらけの馬車が一台、入り口で倒れた。
「誰か・・・水を・・・・」


「ギルドの者は直ぐに馬車の中の人間を助け出すのじゃ!!
ハンターの諸君は馬車の残骸をどけたら直ぐに酒場まで来てくれ。」


「さて、皆集まったかの?でわ本題じゃ・・・。
雪山に大量のモンスターが現れたと報告があった。
確認がとれているだけでもドドブランゴ5頭、フルフル5体・・・」
あたりに緊張が走った・・・・

街に来た馬車の運転主は、
雪山特産の食料を運ぶ仕事をしていたところ、
突然モンスターの群に襲われたらしい。
たまたまその街にいたレスとエレンは、
手伝ってやりたいと思うのだが、雪獅子といわれる
【ドドブランゴ】と異色の飛竜の【フルフル】が
同じ狩場に5体、合計10ともなれば、
腕利きのハンターでも簡単に手出しできない。
しかもドドブランゴには子分の【ブランゴ】が付き物だ。
4人で行ったとしても、間違いなく無理だ。

だがそこに、ハンマーを片手で持つ40代と思われる大男が前にでる。
歓声が上がるが、なんとも愚かだ。
だが彼は声高らかに言う。
「いずれにせよ、誰かがいかなくてはならん。
ドンドルマのギルドの連中も、こんな辺境には来ない。
ハンターとして、ここで役に立てるなら本望だ。」

その台詞に、エレンは感動してしまった。
「レス、あの人なら信用できそうよね?」
エレンは訊く「そうだな。装備もそうとうだ」レスは大男を見る、
全身を角竜【ディアブロス】の装備で覆い、
しかもハンマーまでディアブロスの尾の槌【ブロステイル】だ。

エレンが前にでようとすると、同時に小さな女の子も前に出た。
「え……!?」
エレンは目を張った。
この少女もハンターだったのだ。
少しぶかぶかの装備だが、立派な感じだ。
だが、エレンが驚いたのはそこじゃない。
年齢も驚いたが最も目についたのは、
背にあるピンクのフリフリの付いた傘。
「ピンクフリルパラソル!!?」
エレンが驚嘆の声をあげると、まわりに広がっていく。
この傘は、雑誌である女怪盗が使う仕込み傘を、
モデルにした高性能のライトボウガンなのだ。

「わたくしもいかせていただいて、よろしいかしら?」
少女は大男に訊く。
強気なお嬢様口調だ。
大男は頷く。

「俺らもいいか?」
レスがすかさず訊く、二人が頷く。

ちょうどそこに、街人の一人がギルドマスターに
耳打ちをしにきた。
ギルドマスターはうれしそうに頷くと、ハンター達に発表した。
「重大な知らせが入った。今回は緊急クエストゆえ、
8人二組で行くことが許された!
一つは今決まったパーティじゃ。
誰かあと四人いないかの?」


それからすぐに4人が名乗り出て、急いで出発することになった。
二つの馬車の片方で、レス達が打ち合わせする。

「まずは自己紹介。俺はレス、こっちがエレンだ。」
「よろしくね。」
エレンはニッコリ笑顔で言う。

つぎに、大男が口を開く、
「おれはガウル。ガウル・ズール。」
続けて少女が言う。
「わたくし、ヴェール・ヒウレンスと申しますわ。
基本的には補助役ですので、ご了承を・・・」


それからある程度自分達の狩りのことなどを話合い、
うまく狩猟できるように相談した。

そのときにはすでに、風景が変わり、少し寒くなっていた。
雪山がすぐそこにあった。


《タケキフブキノヤマデ黒トタタカッテワナラナイ・・・
雷ト嵐ニフレルモノヒトシクセツゲンノチリト・・・》

ハンター大全第七章【伝承】より雪山


「雪山はひどく寒い。
ホットドリンクの消費が激しいから、これを喰ってくれ。」
エレンとレスが焼き上げた、肉はスパイシーな匂いを放ち、
たたでさえ空いているお腹にグッときた。
二人で四つずつ焼いた肉はどれも絶妙な焼き加減だ。
「これはなかなか・・・」
「絶妙な焼き加減・・・、普通のホットミートではありませんわ・・・」
「滅多に喰える旨さじゃないな・・・」
「すまねぇなぁ・・・おっ、めちゃくちゃ旨いぜこれ。」
「・・・うまい。」
「やるな・・・さしずめホットミートG!!」
全員から称えられるレスとエレンは恥ずかしそうに肉にかぶりついた。
「肉焼き大会に出たかいがあったわね・・・」
エレンはレスにだけ聞こえるようにつぶやいた。

肉をみんなが喰いきったのを見計らって、
ガウルがハンマーを地面にずしんと置いた。
そして、
「皆の者聞いて欲しい、
この依頼は危険だかただモンスターを討伐すれば終わりでわない。
全員が無事に村に帰るまでがこの依頼だ!!」

全員が静かに頷き雪山へ駆けていった。




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