龍刀【朧火】製作所

四章中編【王座と英雄】



4人はキリンに見つからないように岩影から見つめた。
[なにやってるのかしら?]
[わからん・・・、しかし見つかってはいないようだな。]
[動くぞ!!]

レスが言い放つと同時にキリンは崖下へと飛び降りた。
「えっ・・・どうする?」
誰も話さぬまま先程キリンが居た場所まで駆けて行き、レスは下を見た。
「行けそうだな、降りよう。」
「お待ちください。地図にも載っていない場所ですわ・・・」
「ふぅむ・・・だが行くしかあるまい。
ちょうど近くにクモの巣とツタの葉がある、
あれで作ったネットを繋ぎ合わせてロープにしよう。」

四人はキリンが逃げない内にロープを作り、急いで追う。
「こんなところがこの塔にありましたのねぇ。」
ヴェールが周りを見渡す。

古塔の地下など知るハンターは少ないであろう。
なにせギルドの探索隊でさえ見つけていないのだから。

奥に進むと、そこは広い空間だった。
一番奥には玉座があり、その前でキリンが寝ていた。

「爆弾を置こう。」
レスは近付く。
「油断するな。今寝始めたのなら、足音で気付かれかねない」
ガウルがレスの後ろで言う。

そっと息を殺して近付く。
そして爆弾に手をかけた。
その時、
キリンが急に起き上がって突進した!

「うおぉ!!?」
吹っ飛ぶレスを後ろにいたガウルが受け止める。

「くっ、誘いこまれたのか!?」
ガウルはレスを立たせ、ハンマーを構える。

「ヴェールは後ろで睡眠弾をお願い!」
エレンは太刀を抜いて走り出す。
「わかりましたわ。」
ヴェールはボウガンのサイレンサーをはずし、
ロングバレルに付け替える。

「みなさん、攻撃は控えて下さいまし!
眠った瞬間に起こしては意味がありませんわ。」

三人は頷く。

キリンは前足をあげると、角が蒼白く光る。
そして、タンッと地面につくと、雷が落ちてくる。

レスとガウルは散開し、なんとか避けるが、
雷は次々と降ってくる。

「くそっ、近付けないじゃないか!」
レスは双剣を握りしめる。

その時、キリンの首を精確に弾が当たる。
一瞬ひるんだが、まだ眠りそうにない。
「さて、どうしましょうか。」
エレンが言う。

「時間を稼ぐのが役目だ。ヴェールを死守すればいい。」
ガウルは言うが、雷でうまく攻撃を当てることもできない。

中央突破されてもおかしくない。
「こうなったらアレだな。」
レスは言うと、双剣をシャランと擦り合わせる。

「まぁ、アレしかないわよね」
エレンが太刀を強く握る。
「アレか、ヴェールとの位置関係に注意しよう。」
ガウルが力を溜める。

キリンは三人を順番に睨む。

「睡眠弾の進路は確保して下さいな!」
ヴェールにも【アレ】の意味がわかった。

ボウガン使いには、まず有り得ない行為。
それは・・・・・

「それじゃ、いくわよ!!」
みんな武器を強くと握る。


突撃!!!

声は部屋中に響き渡り、三人のハンターは幻獣に襲いかかった。


【攻撃は最大の防御】
東方の国から伝わる諺。文字どうり怒涛の攻撃によって、
相手に攻撃させる時間すら与えぬ所から、できた言葉。
東方伝書【言語と文化について】より


「ふん!!」
先手をきったガウルが走る速度を落とさぬまま、
ハンマーを右から振り放った。
先端がキリンの横腹に当たり、キリンの体が軽く浮いた。
そこにレスとエレンが前足を払うように攻撃をしかけた。
前のめりになったキリンは頭から地面に叩きつけられ、
高らかな悲鳴が響きわたった。
そして起き上がる勢いを使い角でガウルを貫こうと、
後ろ足に力を入れたその時、
空気を裂いて先程撃ち抜かれた首に睡眠弾が突き刺さり、
強烈な眠気にキリンは昏倒した。

「うまく行きましたわ。」
「急いで大タル爆弾を作ろう。」
背中にあった大タル爆弾をそれぞれ置くと、
もう一つ置くために4人は調合を始めた。
ギルドの規定上、一人2つまでならば置いてもいいと決まっていた。
それ以上置くと火力が強すぎて、
モンスターが原型をとどめない可能性があるからだ。
バックから取り出された大型の木片を組み合わせ、
中に爆薬と油を流し込んだ。

「ん?ガウル、なにを取り付けているの?」
エレンが不思議そうに見入る中、
ガウルがトラップツールの中に赤い袋を入れて、
2つのタルの上に取り付けた。
「昔、仲のいい調合屋に教えて貰ってな。
奴の作る爆弾はなぜか威力が高くてな、その秘訣があれだ。」
頭の周りに置かれたタルから充分に離れると、
ヴェールはタルに向かって通常弾を打ち込んだ。


タル爆弾のひとつを抜いた弾は、爆風に巻き込まれる。
激しい爆発だが、
ひときわ大きい爆発をしたのはガウルが手を加えたものだった。

キリンは軽く10メートルくらい吹っ飛ぶ。
キリンの象徴である雷角も折れていた。
だが、死にかけのようだがまだ生きていた。

「!!!」
あれだけやっても死なないとは、さすがは幻獣だと、
思わず感心してしまう。
そこにヴェールの声が響く。

「みなさまどいて下さいまし!」

普通の弾より大きい弾を急いで装填し、キリンめがけて引き金を引く。
首に当たると、少ししてから爆発する。
内部からの爆発で、キリンの首が裂けて鮮血が吹き出す。
そのまま蒼白い幻獣は動かなくなった・・・

「徹甲榴弾…?」
レスが訊くと、少女は頷く。

「思ったよりあっさりいけましたわね」
キリンの死体を見て、ヴェールはなんだか嫌な予感がしていた。

「ところで、雷角は!?」
エレンは獣の如く周りを見回した。
「あれじゃないか?」
レスは玉座の方を指差す。

玉座に刺さった蒼い角が、
地上からさす光に照らされて、宝石のように輝いていた。
「む、あれは蒼角か?」
ガウルは角を見て言う。
「蒼角???」

エレンがガウルに尋ね返す。
「うむ、戦闘などで雷を残したまま折られた角は時々、
あのように蒼くなるのだ。かなりの珍品だ。」

ガウルの『珍品』という言葉が聞こえた瞬間、エレンが角に飛び付く。

「ゲットー!!ッゲホ!うわ、すごい埃!」
一人でバタバタと忙しい奴だなぁとレスはいつも思う。

するとエレンが不思議そうな声で言う。
「なんか玉座の後ろにちっさい石碑が…」
キリンの体をあらかた仕分けた三人が駆け寄り、石碑を眺めた。


邪龍ヲ封ジシ『雷神』と『竜騎士』、ココニ永遠ニ称エル


「ここが栄えていた時のものだろう。」
ガウルが興味なさげに立ち上がる。

「文から察するに、すごいハンターがいたんでしょう。
邪龍はなんなのかわかりませんが・・・・」
ヴェールも踵を返す。
レスとエレンはちょっと気になったが、すぐそこを離れた。


ロープを上り、古塔を出て、あとはキャンプに帰るだけだった。


古塔をでた広場で、
草食竜の【アプトノス】の群れが古塔のなかに急いで駆けていった。
「なんだ!?」
レスは群れを避ける。

その時、何かの咆哮が聞こえた。
ヴェールは背筋が寒くなる。
(まさか・・・嫌な予感的中ですの?)

四人は急いで広場に架けられた坂状の石橋のとこまで行き、下を見る。
そこには、赤い飛竜がアプトノスを喰っていた。

「火竜・・・【リオレウス】!?」
レスが思わず飛竜の名を口にする。

火竜はこちらに気付くと、
新しい餌が来たかのような嬉しそうな鳴き声をあげた・・・




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