【ジプシーの館】

【読み物の館】'04-1



●うっすら妖精●

この小さなオッパイが張ってくると、
だいたい2~3日のうちに“ミニ紙おむつ週間”が始まる熟女。
なので前回のミニ紙おむつ週間がいつからいつまでだったか、なんてことは特に気にせず、
ましてや基礎体温をつけるなんてそんなめんどくさいことはやったことがない。
が、いつも合図にしていたこの“張り張り感”が来たのに
なかなかミニ紙おむつ週間はやって来ない。
張り張り感がなかなか来なくて
「来るものが来ん!」と騒ぐことはこれまで何度もあるのだが・・・

おかしい。

張り張り感からそろそろ一週間経過するぞ、という頃、“もしや?”と思いながらも、
相変わらず仕事のストレスによる金曜日恒例、ヤケ酒に走る熟女。

6月26日、
やっぱり気になるので妊娠検査薬の値段なんか調べに近隣ドラッグストアをハシゴする。
チャリで走行するも、ボーっとして以前のような軽快な走りが見られない・・・
疲れてるんだ、タラタラ行こう。
値段を調べるも、購入までには至らない。
やっぱり気にしすぎているだけさ、と実は1回分数百円をケチろうとする熟女。
しかし、その夜、そんなに気になるんならやってみれば?と亭主。そうだ、そうしよう。

6月27日、
1回分より2回分入っている方が割安にできているので、2回分入りを購入。
熟女のケチはセコさが売りなのだ。

そして検査開始。
スティック状の物へジョ~っと・・・結果はうっすらと陽性反応が出た。
ほんとに薄すぎてこれが妊娠かどうかの判定はびみょ~な気がしたが、
濃かろうが薄かろうが判定窓に線が出たら陽性だと説明書きにはある。

どんどんそんな気がしてきた。
折しもこの日、亡き母方の祖母の命日であった。きっと何かのめぐり合わせに違いない。
“うっすら妖精”は
これまで別に子供を望んでいなかったはずの熟女の心を揺さぶり始める・・・

「仕事を辞める口実ができた。」
「生まれてからは大変だけど、それまではな~んにもしなくて良いんだ。」
「仕事辞めさせてくれてありがとう、って感謝しなくちゃ。ほんと良い子だ。」

ただの怠け心がどんどん大きくなる。
が、一方で、ほんとにいざ授かってしまったとなると、
もったいなくてとても粗末にはできないぞ。
そこまで“いらない”とは思っちゃいない自分がいたのも確かである。
強く望んでいたって授からないご夫婦がゴマンといることを思えば
ありがたいことなのだろう。

妖精はきっと何かの縁を感じ、
このタイミングで、この夫婦の子供として生まれたいと願って舞い降りてきたに違いない。


●気のせいとは思いたくない●

今の職場、かなり精神的に参っている。
この熟女、このところどの職場(派遣先)へ行ってもグダグダ不満タレるようだ。
が、ご都合主義熟女、
実は内心「ただ運が悪くてそーゆーところに当たってしまうだけ」と思っている。

人よりカラダは丈夫にできているが、精神面ではかなり弱いことを自覚している熟女。
自分が悪いのか、それとも職場自体がほんとに悪いのかはおいといて、
いずれにせよ、派遣契約を更新したばかりの期間満了まで残り3ヶ月弱、
胎児にどれほどの悪影響を及ぼすことか。
何も考えずゆったりするのがいちばん望ましい。
そのためにはこの熟女の場合、仕事上のストレスは大敵である。

うっすら妖精との出会いは熟女をますます妊婦夫人へと導いていた。

ほんとは、
仕事のストレスでミニ紙おむつ週間が狂っているだけかもしれないし、
ただ暑くて微熱が続いているだけかもしれないし、
気が滅入っているからカラダがだるかったり食欲が落ちたのかもしれないし、
(ちょっと前まではガツガツ食ってたぞ。←コレもミニ紙おむつ週間の前兆)
妊娠ではなく違う病気(糖尿病など)の合図かもしれない。
そんなことをチラチラ考えながらも、妖精、私はキミの存在を信じるよ。

もともと鬱っ気のある熟女、
クヨクヨ考えすぎる傾向にある熟女、
気にしだしたら止まらない熟女・・・。
妖精、早くキミのハッキリした姿を拝みたいぞ。病院行けば会えるかい?

“初検査薬”から2日後(6月29日)、
朝、ダルダルだった熟女に亭主も病院へ行くことを勧めた。
自分なりにネットで調べたところ、あんまり早すぎる受診はムダになるとのことだったが、
何か病気だったりしたら早いにこしたことはないし・・・
と、急遽仕事を休んで病院へ行くことにした。
自分ではもう間違いないと信じているのでチャリで行くことを避けてみた。
その代わり日差しの強い暑い中、片道徒歩40分かかった。
日傘をさして、トボトボトボトボ・・・
ゆっくり自分のペースでシッカリ歩ける子になるんだろうか? (笑)

受付で、
「たぶん超音波を当てると思いますので、お小水をためておいてくださいね。」とのこと。

はいな、たぶん尿検査をするだろうと思いタップリ蓄えて行きましたわよ。
どうやら超音波を当てる際、それがたまっているとよく見えるものらしい。
結果は超音波を当てても姿(袋という?)は見えず、
市販のものと似たような検査薬でもやはりうっすら妖精しか現れず・・・
(医者の検査薬でも市販のものと精度は変わらないのか?)
特に他の病気の可能性まで告げられることもなく、
「う~ん・・・」と中途半端な判定しか下さない医師。

「一応(採取した尿を検査機関へ)出しとくか。一週間後にまた来てください。」

あぁ、やっぱり早まったか熟女、でもきっと時間の問題さ。
それより一週間後といえば、また平日に休みを取らなきゃならんのはなんだか面倒だな、
と、土曜日を希望したので確定するまでさらに日数が・・・

また来た道をトボトボトボトボ・・・歩いて帰る熟女。
途中、□ッテリアに立ち寄りいつまで“今だけ”なのか極めて曖昧な今だけ半額の
「ガーナミルクチョコレートシェーキ」(ココは“シェイク”とは言わない)を購入。
ズルズルっと飲みながら帰宅。この日の昼食はコレだけ。


●守りに入れ!●

病院へ行った翌6月30日、
この日は前の晩からかなり激しい雷雨に見舞われていた。
勤務先へはチャリで約15分、歩けば30分である。
どしゃ降りで路面も水溜りだらけのこんな日にチャリは無謀だ、歩くか、とも思ったが、
相変わらず朝はダルダルだったので、半分ズル休み(?)の半分は自分のカラダのために、
もう一日休ませてください、の電話。

何度も落雷→停電→復旧という荒れ模様。
ネットで妊娠についていろいろ調べようと思ったのに、
プロバイダーのサーバーダウンでネット接続できない状態が夕方まで続く。
ヒマだ。
ヒマだとついつい厄介なことを考えてしまう。
次に出社したら伝票がたんまりあるんだろうな、とか、
あれはどうなったっけ?とか、
それもやんなきゃいけないな、とか・・・

母方の叔母に電話する。
妊婦になったかもしれなくて、
でもまだ確定してなくて、でも自分では間違いないと思ってて・・・という話をした。

まだ実家の母親へは伏せておくことにした。
でもきっと喜ぶことだろう。
最初の結婚があまりにもお粗末だったので、
この二度目の結婚で幸せに暮らしていることを少なからず安心しているに違いない。
それよりなにより初孫だ。

ちなみに亭主のお母さん(通称:おばば)にとっては既に3人目となる。
おばば、常々「孫」という演歌のヒット曲を引き合いに出しては
無条件に可愛いものなんだと口にしていた。
(私に対するプレッシャーとはまたちょっと違うように思ったが。)

喜べ、初の女の子の孫ですぞ。(勝手に女の子と決め付けている亭主と熟女。)

ところで、叔母からは、
妊娠は病気じゃないので別にフツーに生活していればいいのだが、
気をつけるポイントはしっかり押さえておかないと、とのアドバイス。
チャリの振動は妊娠初期には非常に危険、とか、
重いものを持つな、とか、
高いところにあるものに手を伸ばすのも良くない、とか、
だからといって踏み台に乗ってもし踏み外したりしても大変、とか、
食品添加物の影響で子供がアトピーになったりすることもあるので
なるべく自然のものを食べろ、とか・・・

もちろん、
心穏やかに過ごさないと即、胎児に影響するからあんまり不安なことを考えないように、
とも。

叔母との電話のやりとりが終わった途端、急速に空が晴れてきた。


●どんどん守りに入れ!●

この日(6月30日)、
夜、派遣会社(通称:ショボイ)の担当者(通称:オッサン)へ電話した。

「妊娠したようで体調が悪く、
 ご迷惑を承知でご相談なんですが、早急に辞めさせていただけませんか?」

オッサン、最近短期間で辞めていった若い子のことでこっぴどく派遣先から文句タレられ、
さらにこの熟女が引き継ぎもなくいきなり辞めるというのは・・・
と自分の立場を主張し始めた。
しかしな、オッサン、その若い子だけが全面的に悪いのか?
辞めたくなるような環境(仕事内容含め)だったんじゃないのか?
そもそも面接して採用したのはオッサン、あんたじゃないのかい?

ま、それはさておき、
通常、確かに派遣契約期間の途中で辞められるのは派遣会社にとっては痛手だろう。
特に最近は契約期間を守れと大手の派遣会社でもウルサクなっている印象がある。
が、しかしだな、体調が悪いという人に無理をさせて
“もしも”のことがあっても派遣元も派遣先も責任持てないはず。
通勤手段のチャリが妊婦のカラダによくなくて、
歩くと30分じゃ通勤だけでヘトヘトで、
亭主の通勤時間帯(朝は熟女より1時間早く、帰りは定時で上がれるわけがなく・・・)
の関係で車での送迎はほぼ無理だ。
亭主の会社にはフレックスという便利な制度があるが、
毎日というわけにはいかないだろう。どのみち自力での通勤は不可能に近い。

妊婦に不安をあたえるなよ、オッサン。
もうショボイなんか派遣先からアテにされてないんだからいいんだよ。

オッサン、アンタには女房子供はおらんのか?
この対応からしても熟女の目にはいないように映っていたが、
実のところどうなのかは不明。
もしいたとしても
家族を大切にしない(この場合、女房の出産に興味を示さない)タイプだろうね。

同じショボイのスタッフで、
近隣の産婦人科の評判について教えてくれた同僚Tさんに電話してみた。
(必ず親身になってくれる人と一人二人は出会っているなぁ・・・)

「20代と30代の出産って絶対に違うし、
 ましてや初産なんだから守りすぎるくらいでちょうど良いよ。
 自分を優先していいんじゃないかな?」

亭主は熟女の勇み足(?)に少し呆れたようだが、
あくまで確定していないだけであって、妖精は存在するのだ。
確定してないからといって無謀なことは避けたいじゃないか。

ご都合主義熟女、ここで心穏やかな妊婦生活を勝ち取るために闘う決心を固める。


●闘わなくても良き方向へ?●

7月1日、
少し早めに家を出て徒歩通勤に挑む熟女。
30分で到着するはずなのに(前に一度、試したことがある)、
30分経ってもまだたどり着かん・・・(焦る熟女)。
それもそのはず、以前試したときはフツーのカラダだったんだから。
フツーのカラダのときはかなりスタスタと早足で歩いていたのだろう、
今はゆ~っくりトボトボ歩行でないとダメらしい・・・。
結局40分かかった。
遅刻は免れるだろうが、日傘をさしていたとはいえ暑さのせいかヘトヘトだった。
別に無理したつもりはないのだが、ここまでヘタばるとは思っていなかった熟女、
息を切らしながら出社すると、

「無理しなくていいよ~、もう帰りなよ~。」

と熟女がアシスタントをしている女性社員サン。
医務室(正式名称:健康管理室)で休まされ、
2時間くらいしてそのまま帰宅させられた(タクシー代自腹:1,130円也)。
ま、ショボイとしてもこりゃマズイと思ったんだろう、ショボイのオバサンの方が、

「辞める方向で動きますから」と言ってくれた。

が、ほんとに心配してそう言ってくれたのか、
はたまたどうせ使いもんにならんからなのかはわからん(はい、信用してません。)。

その後、
オッサンからちゃんと派遣先担当者(管理職男性社員)へ話を通してくれたようで、
夕方オッサンから電話が来た。
そして、直接その派遣先担当者へ電話し、話をすることになり、
(本来、派遣元担当者=オッサンと派遣先担当者で決着をつけるべきことなのだが、
要するにオッサンにはそういう話を進める能力もノウハウもないのだ。)
やはり引き継ぎのため、1週間程度は協力してもらえると有難い、とな。
が、あくまで熟女の体調が最優先で、無理のない方法でかまわないとのこと。
たとえば半日で帰宅するとか、もちろん体調の悪いときは休むなど。

この派遣先担当者は奥さんと小学生のお子さんを大切にしていらっしゃるからなのか、
ほんとに熟女のカラダを心配している様子も伺えなくはない。
(が、完全には信用できなかったりする熟女。)

ま、短時間の短期間ならいいだろう、とは思う。が、やはり問題は通勤手段。
同僚Sさんは電話してくれれば朝まわってあげるよ
とこの日、帰りがけにチラッと申し出てくれたが、
そうそういつも世話になっていいのだろうか・・・?

とりあえず家族とも相談してまた電話くださいということになった。
(&翌日も大事をとって休めとな)


●腹いせ?仕返し?しっぺ返し?●

7月2日、
こちらの希望として、翌週の1週間、午前中だけ、という条件を決めた。
その件で派遣先担当者と電話で2~3度やりとりした。
先方のおっしゃる“人の手配”とは、
ショボイではなく、某大手派遣会社へ発注することをさす。
おそらくもうショボイからは受け入れず、
以後その某大手派遣会社に切り替えていくつもりであろうことは
こちらも察しがついている。
大手サンは人材のストックが豊富でいつもすぐに候補者を連れて来ているようだし、
その候補者がボツってもすぐまた次の候補者を連れて来ているようなので、
後任が決まるかどうかなんてほとんど心配無用だと熟女は思う。
が、さすがに週の後半に発注して翌週始めからというのは、
受け入れる側の準備も間に合わないらしい。

最初の電話では翌週か翌々週のどちらかあと1週間、
ちょっと協力すればどうにかなりそうなニュアンスだったが、
結局のところ、あと2週間来てもらいたいようだ。

ふと・・・
中途半端な辞め方をすることが、
今まで数々の不愉快な思いをさせられたことに対してのいちばんの反撃となるか・・・?

そんなわけで、
翌週7月7~9日と、翌々週7月12~14日の計6日間午前中のみということで決着。
この際、相手の都合なんぞ二の次だ、考えてなるものか。
そして問題の交通手段だ。
朝のみ同僚TさんかSさんの車に乗せてもらえることに。
(が、帰りはトボトボ歩行となる。)
ありがたいと思うと同時に、初めて自動車免許の必要性を痛感する。
免許さえあれば、たとえ自分専用の車がなくても亭主に公共交通機関で通勤してもらう、
という手も使えるのだ。


●くっきり妖精、かも~ん!●

7月3日、
そろそろ“初検査薬”から1週間(7日)経つ。再度検査薬を試してみることに・・・。
ここで陰性だったりしたら、
妊婦ではなかったというかわりに本当に他の病気を心配する必要が出てくる。
(となれば、どのみち早々に仕事を辞めて治療に専念させてもらうがの)
が、妖精の存在を信じている熟女、
少々不安ではあったが、みるみるうちにはっきりくっきり・・・

妖精、やっとキミの存在を確認したぞ。

おばばに報告する亭主、実家の母親に連絡する熟女。

実家の母親は「初孫だよねぇ。」という熟女に、
「ほぅ、(そういえば)そうだねぇ。」
と年のせいか(?)少しとぼけている気がした。
ちなみに、熟女の家系では、ひどい難産や死産、また婦人科系の病気は特にないらしい。
それだけでも若干不安は解消された気がした。

午後、義妹が甥っ子を連れてきているというおばば宅へ。
あと1年もしないうちに、
自分もこんな頭でっかち(笑)な物体と毎日格闘することになるのか・・・?

そんな生活も悪くないな、と今までの身軽な人生から自分なりの路線変更。


●あれが予知夢だったとしたら・・・●

まだ妊婦になったかどうかなど気にしていなかった頃、
(とはいえアヤシイと思い始める直前)こんな夢を見た。

亭主と亭主の友人夫妻が待つ焼肉屋、そこへ女の子2人の手を引いて向かう熟女。
女の子2人は亭主と熟女との子供、という設定だ。
3~4歳と2歳くらいの子供だったように思う。

目が覚めてから、子供連れ、しかも2人・・・いったい何の暗示なんだろ?
と不思議であった。
自分の人生に子供なんてほとんど考えられなかったし、ましてや2人ときた。
が、しかし、リアルな夢だったな。

なんとなく、もしこの先授かるとしたらきっと女の子なんだろうな、と想像していた。
だとしても、ほんとにまだまだ先のことだろう、今は考えるな、早く忘れよう。
そう思いながらもなんかヤケにひっかかる夢だった。

熟女が溺愛している熟猫と生まれてくる子供の象徴だったりして?


●確定したはいいけど・・・●

7月10日、
亭主の運転する車で予約時間通りに病院へ行く。

「検査のときいつもこれくらい(お小水が)たまっているといいねぇ。」

と前回言われたとおり、予約時間に合わせてちゃ~んとためて行きましたわよ。
が、予約時間を過ぎても呼ばれることはなく、20分くらい待たされた。
いったい、何のための予約なんでしょ?
検診のために膀胱炎にでもなったらどうしてくれるんじゃぃ?

看護師:「お小水はたまってますか?」
熟女 :「はい、充分すぎるほど。」(←少しイヤミのつもり)

無事、超音波で小さいながらも妖精の存在が証明された。
が、亭主は診察室へは一緒に入れてもらえなかったし、
「おめでとうございます!」という言葉も申し訳程度といったカンジ。
思ったほどの感動は得られなかった。
医師は机上で何やらこちょこちょ書いている。どうやら計算をしているようだ。
“2005年3月18日”という日付が出てきた。予定日だ。

「また一週間後来て下さい。」
(え?そんな頻繁にまた来るの?)

これにて診察終了。
その後、採尿した。やっとスッキリだ(笑)。
そして受付に声をかけ、2階の病室その他入院施設を案内してもらえとな。

案内(といえるのか?)の看護師サン、なんだか忙しそうで説明も事務的。
それに、この日空いている病室がないので今日は案内できないとな。
いいよ、まだまだ先のことでしょ?
それより立会い出産は“していません”とな。
ま、それならそれで別にかまわないのだが、それは“方針”ではなく、
“病院側が勝手に決めたルールの押し付け”にしか思えてこないのだ。

立ち会いたいという人には立ち会ってもらえばいいし、
立ち会いたくないという人には無理に立ち会ってもらわなくてもいい、
客(敢えて患者とは書かないでみる)にはそういう選択の自由があっても良いと思うがの。
また、ココは出産前に胎児の性別は教えないというウワサを耳にした熟女。
立会い出産についてそうなんだから、おそらく事実だろうと思った。(確認はしていない)

ふっ、ココじゃ産まない、決めた。

なんだかほんとはもっと嬉しい日のはずだったのになぁ・・・


●引継ぎ●

仕事の引継ぎは計6日間で午前中のみ、ということにしていたが、
結局帰りの交通手段が炎天下の徒歩、というのはちょっと無謀だということで、
派遣先の社員サンや同僚たちの心配もあり、
同僚Tさんが夕方4時半までの勤務なので
こちらもそれに合わせての勤務(引継ぎ)にすれば乗せてくれると申し出てくれた。
Tさんは他のスタッフより契約時間が短いので、
朝は主にSさんの車、帰りはTさんの車、
ありがたいことに行きも帰りも歩かずに済むことに・・・

それに、午前中のみでは引継ぎはしづらかったのでちょうど良かったかもしれん。
とはいえ、教わる方としてはやはりちょっと中途半端で大変だろうな、とは思う。
が、それを承知でこの仕事を受けたんだろうからあとは知らん、というのが本音だ。
引継ぎ期間中、1日だけ休んだが時間数にしたら予定時間を越えている。充分じゃん。

が、最終日の前日(7月13日)、
派遣先担当者から、

「引継ぎの具合はどうですか?予定では明日で終了ですが、
 キリの良い今週末まで延長するか予定通り明日までにしますか?」

と確認された。
もちろん、予定通りに決まってんじゃん(笑)。
こっちはたとえ車での送迎目当てとはいえ、
当初の予定を変更して夕方まで付き合ってるんだから今さら何を言うか?
と思うとやはりこのところよくかけられる言葉、
「無理しないで」との矛盾を感じずにはいられなかった。
そりゃ、ちゃんと引継ぎできているか心配なのはわかるけど、今は自分最優先だ。

最終日(7月14日)、
帰りに女性社員サンたちから花束をいただいた。
実は小さな鉢植えが5つ寄せ集まったもので、
思いのほか立派なものをいただいてしまい困惑した、というのが正直なところである。
(あんまり良い扱いをされていたわけではなかったと思っているので・・・)
こちらは特に菓子折り等を用意することもなく去って行ったが、
それが4ヵ月半勤務したこの派遣先に対する私からの答えだったりするのだ。

そして、快く送迎してくれた同僚TさんとSさんへの感謝の気持ちだけは決して忘れるな。

余談:そのいただいた花は亭主が毎日水をやっている。


●宙ぶらりん●

退職してからなるべく早く国保&国年の手続きを完了させたいところだが、
ショボイのことなので
迅速に対応(退職にかかる書類の送付)してくれるかが非常に心配だった熟女。
結局、
中小企業労務協会なる団体(ショボイは労務手続きをココへ委託しているらしい)より
必要最低限の書類だけが届いた。

町役場にて手続きが完了したのは退職日の16日後である。
通常モードのカラダならどってことない日数も、
妊婦夫人にとっては少々不安な日々に感じたことは言うまでもない。
なんせこの間、「いよいよつわりか?」という状態になったので、
(ま、ちょっと頭痛がしたり、より一層疲れやすくなっていたりしただけだが・・・)
早く病院にかかりたかったのだ(タイミング的には同時に転院もさす)。

国保の手続きが完了した翌日、早速最寄りの産婦人科を受診した(転院した)。
やれやれやっと一安心だ、となるはずだったのだが・・・


●不安定期●

7月31日、
転院先の産婦人科医院、まず、受付の対応が良かった。
先にこっちに来ててもよかったんじゃないか・・・?が、待ち時間が長い。
ま、しゃぁないな。

1時間くらい待たされやっと通されたのが「中待合室」。この上まだ待つんかい?
ま、しゃぁないな。
予約制なのに時間より20分も待たされた産婦人科医院があったことを思うと、
(↑かなりイヤミ?)
予約なしで1時間待ちの方がまだ納得がいく。
中待合室でボケッとしていると、診察室から看護師サンが出てきて、

「トイレを済ませておいてください。」と言う。

あれ?超音波で見るためにタップリためておくんじゃないのか・・・?
それもそのはず(というべきか?)、
ココでは器具を腹に当てるのではなく、あの言わずと知れた“辱めの台”に乗せられ、
器具を“中”に挿入する方法で超音波確認をするのだ。
(きくところによると、一般的に初期の場合はそうするらしい。知らなかった・・・)
予想外の事態にかなり動揺した熟女。が、一方、医師の説明は丁寧で良い。

それより・・・
まだ胎児の心臓の動きが確認できないのでまた一週間後に受診するということになり、
心配になる。
そして診察室に亭主も呼んでもらい、一緒に説明を受ける。

果たして妖精はちゃんと育っているのか・・・?

もしかして・・・

『妊婦なんてめんどくさいなぁ。酒ダメ、チャリもダメ、あれダメ、これダメ・・・って
 ちっともフツーに生活できないじゃん。
 安定期まではある程度何食べても良いっていうからジャンクフードも食ってるけどサ、
 “ほんとはいけないんだよなぁ”って思いながらじゃ美味さ半減だ。
 心置きなく食いたいよな。こんなのが生まれるまで続くんだぞ。』

なんてほんのちょっとでもそんなことを考えたから
妖精は“やっぱりや~めた”って逃げちゃったのかも・・・

そいでもって・・・

『もし、万が一、死産・流産なんてことになってもまたチャリを乗り回せるからいいもん、
 今までどおり身軽になるからいいもん。』

なんてほんのちょっとでもそんなことを考えてしまった熟女。
そんなんじゃ次の検診でも胎児の鼓動は確認できないかもよ。


●現実はシビアだった・・・●

ほんとは「なんとか無事に安定期を迎えることができそうだ。」
という一文でこの「妊婦夫人の日記」を締めくくるはずだったのだが、
そういうわけにはいかなくなった。

8月7日、
またあの辱めの台に乗せられ、器具を挿入される熟女。
超音波の画像を確認しながら医師は開口一番、

「あ~、赤ちゃんダメだなぁ・・・」

熟女:「ダメって・・・全然育ってないってことですか?」
医師:「う~ん、ちょっと旦那さん呼んであげて。」

亭主も交えて説明を聞く。
熟女は覚悟していたようで実はちっとも覚悟できていなかった。
ただただ自然と涙がボロボロこぼれてきた。
涙をこらえようとすると今度はそれが鼻から出てくるので自然に目から出すことにした。

内診室の台から下ろされ、診察室で再び説明を受ける。
この現象は稽留流産という。1割程度の確率で起こりうる事例なのだ。
体内に残したままではそのうち出血が止まらない事態が起こったり、
次の妊娠への悪影響があるので、
1泊2日で入院の上、手術で取り除く必要があるという。
前日に子宮口を広げる処置をし、当日は静脈麻酔で眠っているうちに終わるという。
カラダのためには早めの処置が望ましいとな。

熟女、これまで入院も手術なんてものもまったくの未経験。
こんなことで初体験を迎えるとは・・・(トホホだよ、まったく)。
亭主は冷静だった。
元虚弱体質児で入院も手術も経験豊富なのだ。・・・という問題ではなく、
この時期(妊娠8週目だった)の流産は母親の不注意などによるものではなく、
もともと胎児の側に問題があったということなので、
ある程度の割り切りができていたんだろうか・・・。
近くで様子を見ていた看護師さんたちは、
涙ボロボロの熟女をどう慰めたらいいのか声をかけることもできないような表情だった
と後に亭主は教えてくれた。
熟女にはそんなことを観察する余裕などありゃしなかった。

医師は、
「このままもっと大きくなってからだと母体への負担はもっと大きくなる。
 この初期の段階でこうなってまだよかったと思って気持ちを切り替えた方がいい。」

とちょっと熟女にはキビシくも聞こえたが、
ちゃんと言葉を選んで気遣ってくれる様子が伺える。
転院してから判明したことがせめてもの救いだったかもしれない。
転院前だったらもっと後味悪かっただろう。

手術当日に付き添い&車で連れ帰る必要があるため、
亭主が半休を取れる日程を上司と電話で相談。
やはり早い方が良いとの計らいで、翌日入院そのまた翌日手術という運びとなった。

帰りの車の中でも泣けた。
帰宅して亭主が疲れて昼寝してるときもこっそり泣いた。
涙をこらえようとすると今度はそれが鼻から出てくるので自然に目から出すことにした。


●いよいよ入院●

8月8日、
夕方4時に行くことになっていたので、それまでに入院に必要なものを準備する。
妊婦になったばかりのとき
数人の友人知人にメールで知らせているのでその人たちにこの事態をメールで知らせた。
(こんなことになるんならあんまり連絡しておかなきゃよかったよ・・・)

早速経験者(しかも2回も)である高校時代の友人から返事が来た。
前日の処置が痛いかも、という。
そう、手術自体は麻酔で自分の意識のないうちに終わるが、
前日の処置についてはどういうものかの説明はされていても、
それが痛いかどうかまでは聞いちゃいなかった。
友人からのメールでは“生理痛のような”とたとえられている。
参考になったけど、痛いのは怖い・・・

夕方、亭主に連れられ病院に到着。血圧と体温を測る。
そしていよいよ辱めの台にて処置が始まる。

通常の検診のときよりグイグイ入ってくるような・・・。
機械音がする、ピュルルルだったかキュルルルだったか・・・?
どんな音だったかもう思い出せない。
歯医者と同じくらいの恐怖感が襲う。
熟女は痛みの耐久レベルが人よりうんと低いのだ。
自然と「あ~」だの「う~」だの思いのまま声を張り上げる熟女。
その声はそこら中に響き渡るほどだった。
(ココの外来は午前中のみなので他の患者がいなくてよかったよ・・・)

中待合室にいた亭主、可哀想だと思いながらも笑いをこらえていたらしい(笑)。
ま、ハタ目にも笑える光景だっただろうな、と自分でも思う。
医師も珍しいリアクションの患者だなと思っていたことだろう。
(これでよく妊娠なんかできたなぁ、くらい思っているかもしれんな)

子宮口を手術の際にいきなり器具(機械?)で広げると傷がついたりするので、
自然に広げるため前日に処置(海藻を挿入)をするわけだが、
できればこれも全身麻酔で知らないうちに終わらせて欲しいくらいだ。
だって、痛かったんだもん・・・。
確かに生理痛のような、というのは当たってるな。
でも普段からそんなに生理痛はひどくない熟女、
処置が終わってもすぐには台から下りられなかった。

「すみません、ちょっと休ませてください・・・」

と下半身スッポンポンのまま(イヤだったけど動けないんだもん仕方ないじゃん)、
台の上で2~3分(だったと思う)放心状態だった熟女。

「もうそろそろ下りられるんじゃな~い?」

と診察室から医師が呼びかける。先生、男のアンタにこの痛みがわかるのかい?

その後、ケツに注射を打たれた。
打たれる前に、

「それは痛くないですか?」と尋ねる熟女。
「ちょっと痛いかも。」と看護師さんは言う。

が、実際にはたいしたことはなかった。あの“処置”の痛みに比べたら屁でもねぇや。
熟女が人より痛がりなので実際より3レベルくらい大きく伝えたのかもしれんな(笑)。

そして、病室へと案内される。
3人部屋かと思いきや、個室でしかもHPで調べた限りでは“特室”ではないか。
下手なビジネスホテルよりうんとキレイで可愛らしい部屋である。
30分ほどして食事が来た。
この日の夜9時以降(当然翌朝も)は飲食禁止なので、これが人生最後の食事かもしれん。

「明日麻酔から醒めたらもうこの世じゃないかもしれん。」
「アンタ(亭主)の顔も見納めかもしれん。」

そんな熟女を亭主は笑う。

嫌いな食材以外は全部たいらげてやった。
下腹部に鈍痛(ほんとにド~ンとした痛みだ)を感じながらも
食べることへの執着心だけは何故にこんなに強いのか・・・(笑)
ちなみにメニューは
ご飯、あさりの味噌汁、さんまの塩焼き、肉じゃが、もずくの酢の物、あんみつ、以上。
自宅で熟女が用意するより品数豊富で豪華な食事であった(笑)。


●妊婦夫人、最後の夜●

面会時間は夜7時までというので、ギリギリまで亭主が付き合ってくれた。
(世のご主人方はもっとそっけないものかもしれんな)
消灯は夜9時なので、あとの2時間はTVを見て過ごした。
とにかく下っ腹が痛い。熟女にとってはたまの生理痛でさえこんなにひどくはないからな。
部屋にはこの部屋を利用した患者が何か自由に書きとめるためのノートがある。
中を見てみると、やはり無事出産できた妊婦サンの声しか残されていない。

よっぽど、
「こんなに痛い思いをしても何も残らないのだから、もう妊婦はこりごりだ。」(本音さ)

と書き残してやろうかとも思ったが、それもなんだか虚しくてやめた。
同じ気持ちでこの部屋で過ごした悲しい妊婦サン、他にもたくさんいるんだろうな。

もうすぐ妊婦夫人ではなくなるんだ・・・

いくら他の妊婦サンとは別室にしてくれていても、
(世間では同室に押し込むまったく配慮のない病院もあるようだが・・・)
部屋の外からは新生児と思しき泣き声がしきりに聞こえてくる。
一方、自分のカラダの中には生命体になり損ね、単なる体内の異物と化した物体があり、
翌朝それをスムーズに取り除くための異物が挿入されている。
泣かないでいられるわけないじゃんよ。
涙をこらえようとすると今度はそれが鼻から出てくるので自然に目から出すことにした。

幻に終わった妖精、
キミはこの熟女にはお産の苦しみになんぞとても耐え得るほどの根性がないなと悟り、

「これくらいで勘弁したるか・・・」

と少々の(熟女にとっては随分な)痛みで許してくれたのか?
人間になりたかったらもう私なんかのところへ来ちゃダメさ。


●脱・妊婦夫人●

手術当日(8月9日)、
朝になったら下っ腹の痛みがも少しマシになるのかと思いきや、まったく変化なし。
朝8時頃に看護師さんがやってきて、
検温→ケツに唾液を抑える注射→痛み止めの座薬、そして静脈に点滴を開始。
この点滴すら熟女史上初だ(痛くなんかないさ)。
医師もやってきて8時半頃から始めますとな。
9時頃に来ることになっていた亭主が到着する頃には手術は終わっているはずだ。
看護師さんの誘導で点滴をしながら手術室(ほんとは分娩室だな)へ移動させられる。
内診のときよりもっと高く脚を上げる台に上る。医師が点滴に麻酔を注入し始めた。

麻酔はちゃんと効いてくれるのだろうか・・・
麻酔はちゃんと醒めるのだろうか・・・

別の看護師さんが血圧を測り、

「動かないように手足を台に縛りますね。」

と白い鉢巻きのような紐で熟女を台に固定し始めた。
パンツを脱がされ足を乗っけられ・・・

次の瞬間、天井が回っていた。(もう終わったらしい。病室に戻っていた・・・)

酒に酔ったときの回り具合とは比較にならないくらい壁と天井の境もわからず、
ただ白い景色が目の前でぼや~んとして異次元空間のようだった。

熟女:「ここはどこですか?」
看護師:「病院です。」
熟女:「手術は終わったんですか?」
看護師:「終わりましたよ。」
熟女:「ありがとう・・・」(涙ポロポロさせながら看護師さんの腕をつかむ)

こんなやりとりを2回くらいしたかもしれん(熟女の記憶が確かなら)。
ちなみに異次元空間の中じゃ看護師さんの顔なんてまったく判別できなかった。
そのうち看護師さんが亭主と摩り替わり、また同じようなことを口にし、
さらには、

「わしは生きているのか?」
「誰がここまで(手術室から病室まで)連れてきてくれたんだ?」
「腹減ったぁ。」
「喉渇いた。わしに水を飲ませろ~~!」

と質問&主張(笑)したことを記憶している。
このときはもう目の前の景色ははっきりしていた。

麻酔の効き具合が良かったのか、醒めるのに時間がかかっていたようで、
本人はもう帰宅できるレベルだぞ、と思っても
看護師さんには“まだまだやなレベル”にしか見えていなかったらしい。
が、フラフラとしか歩けないのは
“あの台”に脚を広げられていたせいで内股がひどい筋肉痛になったからなのだ。
(↑言い訳?)
本当は、昼頃には帰宅できるはずだったが、どうやらもう少しかかるらしい。
亭主は午前半休のはずが、丸一日休みを取ってくれていた(ほんとは忙しいのにさ)。

それにしても、麻酔がちゃんと効いて、ちゃんと覚醒して、あぁよかった。

そして、そろそろ大丈夫だろうという頃、ガーゼ(止血用?)を抜くと言う。
うんにゃ、
この期に及んでまだ異物が入っていたのか・・・?(ショック!)
再び手術のときと同じ台に上る。
ガーゼの抜ける感覚というのがまたなんとも気持ち悪いものだった・・・。

薬を出され帰宅することに。
ちなみに、抗生物質3日分、子宮収縮剤&胃薬5日分である。
腹が減っている熟女に医師は、
この日はお粥のような消化の良いものしか食うなと鬼のようなことを言うではないか。
(まだ内臓には麻酔が効いているからという)
ただ、翌日からは何を食べても酒を飲んでもいいが、
3日間は外出しないように(人込みを避けろ)とのこと。

妊婦ではなくなりました、はい、元通り!・・・そんな簡単なわけにはいかないのだ。


●妖精への要請●

そう、カラダの痛みは順調に回復していても、
心の痛みの回復はなかなか進まないものである。
子供を望んでいなかったはずの熟女が一旦は喜んでしまい、
母親になる自覚を持つべく気持ちの方向転換を図ってきたのに、
ある日突然、

「あ~、そっちは間違いです、戻ってきてください。」

なんてそんなのアリ?随分ひどいハナシだよ・・・。
しかも引き返す際、カラダの痛みを伴い連れ戻されるのだ。

一体、何のためにこんな痛い思いをしなきゃならないんだ?

子宮収縮剤の服用で、
手術のため大きくなった子宮を元の大きさに戻すらしいが、
同時に残留物を日数をかけてキレイに出し切らないといけない。
無理矢理“ミニ紙おむつ週間”にしているようなカンジで、
特に術後2~3日目は重い生理痛のような状態になる。
また、術後2日目にはかなりの高熱が出て、亭主に医者へ連行(笑)されたりもした。
しばらく子宮収縮剤を服用している間(=出血がある間)は、
あぁ、まだ元通りじゃないんだわ、と感じざるを得ない。

術後、定期的に2~3回外来で診察を受けるが、
長い待ち時間、検診の妊婦サンや新生児と同じ待合室で過ごさねばならない。
ただじっと“待つ”というだけでも苦痛なのに、
そしてもう妊婦ではなくなったのに、
不本意に妊婦でなくなる手術をしたその後の経過を見せるためとは随分残酷だよな。
ま、良い亭主と良い医者に当たったのでよしとしてもいいけどサ。
ただ、あんな痛い思いをするのはもう二度とゴメンだ。
無事に出産することになったらもっと痛い思いをするかと思うと勘弁してくれ。
(時間が経てばまた気持ちが変わる、と周りの人は無責任に言うけどサ・・・)
亭主も今そう思うのは無理ないな、と一応の理解は示してくれてはいるが、
やっぱりいずれ一人は欲しいと思っているようだ。
他の誰でも良いわけじゃなく、この熟女との間に欲しいんだと言われれば、
単に“子供を産む道具”として見ているわけではないんだなとは思うのだが・・・(複雑)。

幻に終わった妖精、
もし、万が一、仮に、奇跡的に、まかり間違ってまた私のところへやって来ちゃっても、
もう陽性反応にかけて妖精だなんて呼んであげられないぞ。
私のカラダに負担をかける魔物と呼ばれたくなければ、
もうこんな根性ナシ熟女なんかのところへ来ちゃダメさ。


                                  おわり


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