オトキチ日記

靖国を論ず

北朝鮮旅行記4日目

靖国を論ず


「靖国参拝については私は賛成です」と私。「まづ、理由の第一として、靖国神社は日本にある日本の神社
です。日本の神社に日本の総理がなぜ行けないのですか? 靖国は中国にあるわけでもなく朝鮮にあるわけ
でもありません。日本にあるのに日本人である日本の総理が行けない、そんな話は世界中のどこにもありま
せん。

さて、そこでA級戦犯の問題です。
(ここからは私としては1000歩も譲つた話ですが)

例へば、ある男が盗みを働きました。捕まつて懲役5年の刑になりました。刑務所に5年ゐて、晴れて釈放
されました。
そしたら、その男の罪は消えてゐますよね?
刑務所を出てきてから、おまえは5年前に盗みを働いたといつて、また捕まるといふことはありませんよね?

罪を犯した、でもそのぶん罰を受けた、そのことにより真つ白な白紙の状態になつてゐるのです。

ではA級戦犯の人たちはどうか?
かれらは死刑になつてゐます。
かれらは罪を犯して、罰も受けずに、ただ年を取つて死んだのではありません。
死刑といふ罰を受けて死んだのです。

たしかにかれらは罪を犯しました、しかし、それに対する罰も受けた。
死刑になつた時点で、罰を受けた時点で、かれらはもう罪びとではないのです。

靖国神社は戦争によつて亡くなつた人たちを祀つてゐます。
日本は原爆を2発も落とされました。東京大空襲では十万人が焼け死にました。
さういふ戦争で亡くなつた人たちを祀つてゐるのが靖国神社です。
A級戦犯のかれらも罰を受けた以上は真つ白な魂です。戦争によつて亡くなつた魂のひとりです。
かれらが祀られてゐるから参拝してはいけないといふ理屈は通りません」

ここまで言つて複雑な表情のキムさん李さんを見て、
「これは日本人の死者に対する考へ方ですから、そのまま理解されるのは難しいでせうけどね」
と、付け加えた。

「では、何のために靖国神社に参拝するのですか?」とキムさん。

「二度と戦争はしませんといふ祈りのためです」と私。「戦争で亡くなつた人たちに対して、もうあなた
がたのやうな犠牲者は作りませんとお祈りをするのです」

これらの説明でキムさん李さんが納得したかといふとそれは100%ないでせう。

なにせ2人は「ガイド」である。
外国人と接することが本業である。
さういふ仕事をさせるからには、なによりも思想堅固であることが第一条件のはず。

一見の観光客に何か言はれたくらゐで考へを変へるやうな柔な人間では勤まらない。
と、いふか、その仕事に任じられまい。

ガイド職の人間はおそらく朝鮮労働党のなかでも中枢かつ上位の人間と見るべきであつて、言はば、
ガチガチの労働党員なのである。
可愛いキムさんもさういふ意味では革命烈士の先陣を切る女性なのだ。
情報もよく仕入れてゐるし、理論武装も怠りない。

ただ、その情報/理論には偏りがある。
違ふ角度からの情報/理論を提供することは無意味でもあるまい。

そんなふうにも考へての長いお喋りとなりました。

話に熱が入り過ぎて予定時間を超過したやう。

ホテルに戻つた。

部屋に戻り、はてと思ひ出した。

初日に言はれた「マッサージ」の件である。
あのときはそれどころではなかつたが、冒険してもいいかなあとも考へてきてゐた。
冒険するならば今夜しかない。
しかし、李さんとも別れてしまつて、いまさら「マッサージ」をこちらから頼むのもバツが悪い。
といふことで、この冒険は果たせずとなつてしまひました。

明日は帰国だ。

「疲れたスンニダ~、疲れたスンニダ~」

うはごとのやうに呟いた。


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