５．想像の世界。
開き直ったというのかもしれない。
辛かったバイトが楽しくなり、片思いも楽しくなってきた。
ケンチチにわけもなく微笑みかける。
ケンチチもつられて微笑む･･･
勝手にアイコンタクトと思い込んでいた。
少しずつ、仲良くなったと思っていた。
しかし、会話は依然、進展しないままである。
平均会話時間２分、といったところだ。
ケンチチのことも何も知らない。
知っているのは、
ここのバイトを３年続けている。
４月から大学４年になった。
ということだけである。
ここからは推理を楽しもう。
家はどこだ？冬もトレーナー１枚で来てた。いつも手ぶら。→近い。
ということは？→中学・高校も近い。（同じかも！）
部活してたんかな？→見た目サッカーっぽいからたぶんサッカー部。
身長は？→１７０ｃｍぐらいかな。いや、もう少しあるかも。
楽しい楽しい♪
･･････あ。
そういえば、彼女おるんかな･･･。
聞いてないや。
どんな女の子が好きなんだろう。
大学といえばサークルよな。
大学って、普通、共学よな。
女の子おるよなぁ。
あたしにとってそうであるように、
ケンチチにとっても、バイトは日常の一部分でしかない。
今はきっと大学がメインで、
そこで楽しい毎日が繰り広げられてるんだろう。
あたしの入れない、知ることのできない世界･･･。
ズーン･･････
また暗くなってしまった。
イイことを想像してはウキウキし
ワルいことを想像してはドンヨリする。
見知らぬコに嫉妬する。
完全に恋の病にかかってしまったようだ。
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