読む見る食す美味しい時間

読む見る食す美味しい時間

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

奏宇

奏宇

カレンダー

コメント新着

奏宇 @ Re[1]:元旦からさんタクを・・・(01/01) t_akutinさん >あ、ダビして送りますね!…
2005年06月05日
XML
カテゴリ: カナウ館図書室
私が初めて読んだ作家清水義範氏の作品は「秘湯中の秘湯」。彼の名前にちょっと惹かれ、タイトルを見て「温泉紹介の本かなあ」と思い手に取ったのです。
本をめくるとやはり、「○温泉 ×市」と言うような感じではじまり、それが何項目もつづくようだったので、「まさに温泉ガイドだわ」と思って読み始めました。温泉巡りに興味もあって。

秘湯というだけあって、交通案内を見てもすっごい不便。「へーえ、そんな駅から遠くていくらバスがあるからって人はいくのかなぁ。バスだって少なそうだし… でも秘湯だからねえ」 読んでるうちになーんかちょっとおかしい気がしてきました。でも温泉ガイドと固く信じている私は読み進めました。

そのうち、硫酸の成分がごく微量含まれている温泉というのがでてきて、「ええっ、あの昔のドラマで恨みのある女の子の顔にかけちゃったりしてたあの劇薬?! そんなの大丈夫なの!? ・・・ああ、でも硫黄とかもちょっとみ体に良くなさそうだけどよく温泉であるし… そうだ、毒は薬にもなるって言うしねえ、すごーく薄ければいいのかも…」と思ったものです。そのとき会った人にも、「硫酸の成分が入った温泉があるんだってーっ。知ってたぁ?」などと言っておりました。

そしてその温泉は、さすがに長く入ってはいけないらしく、「上からつる下がったロープにつかまり、対岸までターザンのように渡る途中でさっとつかる」とありました。それを読んで、「ちょっと面白そうだなあ、行ってみたいけど、気をつけないとね。実際落ちて、かえって危険になる人もいるって書いてあるし」と思ったのです。そしてさらに読み進めると… いくらなんでもどうやっても自らを納得させられないくらいおかしな記述がでてきて、そこでようやく気付いたのです。「…この人って、ウソつき?」

そう、清水義範は「そういう」作家だったのですね。その本はどれもこのようにどこまでが本当かわからないような話ばかりの短編集だったのです。はじめ、紀行文を書くエッセイストかなんかだと固く信じ込んでいた私は、最初の温泉話が真っ赤なうそだと気づいた後、「うそだよね、うそだよね」という気持ちで一気読みしました。そして最後にやはり「ウソつき・・・」とつぶやいたのでした。

そうやって思い返せば、硫酸がいくら微量でも、ターザンみたいに入る温泉なんてあるわけないだろ、と思うのですが、そこまで信じた私もすごいよなーと思うのです。私は世の中何があってもおかしくないと思ってるタイプなので。(その分柔軟性があると信じることにしよう) 

その後、彼の似たような短編集ばかりを(つまりタイトルが怪しげなのばっかり選んだわけだが)読み、読み終わった後はどこまでほんとかわからない、いや彼はウソツキなんだから全部ウソに違いない。でも、最初の方は本当っぽかった、あとがきはいくらなんでも普通だろう… と思ったはずなのになんかあとがきも途中からウソな気がする… とすごーく動揺しながら読まずにいられない変な状態が続いたなぁ。

そして、短編集以外も読んでみたら、普通の青春小説もSFも歴史小説も書いている(そして文章の感じが人が良い)人なのだということを知りました… そして今はすっかり好きになり、彼の作品は全部読破しようとしています。が、めちゃくちゃ多作なので、いつまでかかるかなぁ。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年06月05日 15時19分47秒
コメント(0) | コメントを書く
[カナウ館図書室] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: