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2010年05月05日
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※リボーン二次ss。ヒバツナ。
※テーマが「バイオレンスなヒバツナ」…だったけど…

※とあるヒバツナ絵師さまのイラストイメージ。
※雲雀さん、誕生日おめでとうございます。


『優しい人。』


 青空が痛い。

 太陽はどこだろう。仰向けのまま目で探すけれど、空の青さだけで十分眩しかった。
 慌てて、刺されるように痛んだ眼球を目蓋で隠した。
 目を閉じた沢田綱吉は、ため息混じりに呟いた。

 目の痛みが和らいだから、ゆっくりと開いた。その視界の端で、ふいに、黒い何かを捕らえた。
 身動ぎしたが、傷だらけの体は満足に動かなくて、避けられなかった。
 そうして革靴の底が、脱力して横たわる綱吉の胸に乗った。
 その足運び、一連の動きは、優雅でさえあった。
「…誰が優しいって?」
 綱吉は呻く。彼は片足で綱吉を踏んで跨いで、覗きこむように見下ろして立つ。
 綱吉の視界は眩しさに霞む。彼の顏はその、ずいぶん上にあるのだが、黒い瞳が濡れたように輝くのだけは見えた。
 彼は、雲雀恭弥は嘲笑う。
「こんなことされてるのに、まだそんなこと、言えるの?」
 あ。間違えた。
 今何時ですか?と尋ねたかったのに。綱吉は少しだけ、後悔をする。

 実は太陽が傾くぐらいの時間が経ったんじゃないか。綱吉の体感ではもう、それぐらい何時間も痛めつけられていた。
 実際はそうではない、と知っているけれど。耳は、学校のチャイムや机と椅子の奏でる音、生徒たちの声を拾った覚えがない。
 だから、午後の最初の授業はまだ終わっていない。
「…随分、まだ余裕があるみたいだね、君。考える時間があるなら、もう少し、遊んでもらおうかな?」
 ……ま。今は時間なんて気にしている場合じゃないんですがね。

 あぁ、本当におっかない。ヒバリさんは本当に怖い人だ。
 綱吉はそのことを再確認して、もう全てが終わるまで、抵抗せず、貝のように口を閉じていようと思った。
「……ヒバリさんは、優しいです、よ」
 そうして決意したことを、綱吉の唇が即座に裏切った。
「だって…女の子に、本気…出せなかったじゃ、ないですか」
 痛みに耐えて笑っていた。
 唇が、勝手に相手を嘲笑うみたいな、皮肉な笑みを形づくる。
「女の子に興味ない、て…そんなこと言ってた、のに…なめてかかって…けっきょく、ちょっと本気、引き出されて…ふふ」
 自分が信じられない。頭を裏切って、唇は言葉を生み出す。
 雲雀が笑みを引っこめたのが分かった。
 ふわり。と、胸の上に乗った足が軽くなる。けれど、靴のカカトは地面を踏まないで、また下りる。
 今度は腹の真ん中へ。そしてさっきよりも、だいぶ力が込もっていた。
「っがは…!」
「つまんないこと言わないで」
 少し軽くなると、首を横に倒して何度も咳こむ。
 綱吉は苦しむが、同時に安堵もしていた。あぁ。雲雀さんに連れ去られたのが昼休憩開始直後で良かった、と。
 昼ごはん、食べた後じゃなくて良かった、と。胃液の酸っぱさをちょっと喉に感じつつ、笑う。
「…なんで、笑ってるの?」
 雲雀が、ちょっと気味悪そうに言う。
 問われた綱吉自身、そうして笑える自分が、また信じられない。
「っ…あ、れ…?女子に本気出したの、あの人、が、初めてでしたか?」
 しゃべるけど。少し、しゃべるのが辛い。さっき、顏を殴られて、唇の端と口の中を切った。
 痛いな、と綱吉は痛いくせに、のんきに考えてしまう。
 殴られた肌、蹴られた肉や骨。当然痛い。けれど、それらの痛みは、包帯や絆創膏をかぶせたら、少しは忘れられる。
 しかし、口の中の傷はそうできない。
 傷が癒えるまで、物を咀嚼し、飲み下す度、そこにある傷を意識させられるからだ。
 嫌だなぁ、とうんざりする。そんなことが分かる経験を、積んできた自分に。
「女子に興味ないとか言って…ヒバリさんでも、女の子は守るべきもの、て常識…持ってたん、ですね」
 それなのに、綱吉の唇は、言葉を紡ぐことを止めない。
 また腹を蹴られた。口の中が酸っぱい。でも笑う。
「あぁ…でもあの人、ちょっと、ヒバリさんに似て、ますよ、ね」
 突然の集団転校生。その中で、リーダー格らしい、背の高い女子。
 他者を威圧する言動とか、醸し出される雰囲気とか。何より、「粛清」と「風紀」と、冠する名が違うだけで、やっていることはそっくり同じ。
 要するに、彼女は性別こそ違うが、まるで逆さまの鏡に映った像のように、雲雀に似ているのだ。綱吉は思う。
 ちりちりと、胸の奥に何か、苦い何かが、走る。
 綱吉は、その正体を知らない。ただ、枯れた野原を走る小さな炎みたいな何かが、走る度に胸が痛い。
 痛いから、体のあらゆる痛みを放って、綱吉はしゃべり続けていた。
「もしかしたら…あの人みたいな人なら、ヒバリさんの隣に立つのがふさわし、」
「ねぇ、君」
 そこで初めて、雲雀は綱吉の前にしゃがみこんだ。
 雲雀はネクタイまで掴み、綱吉の頭を引いて、上げた。視線が合う位置まで。
 綱吉は、本日初めて、雲雀と視線を合わせたと気づく。
 雲雀は綱吉を間近で見つめ、目を細める。綱吉は、あぁ、やっぱりヒバリさんはきれいな顏してる、と、やはりのんきに考える。
「そのつまんないセリフを、遺言にしてあげてもいいんだよ?君」
 そうして、きれいな顏の歯を剥き出して笑う。
 綱吉は思わず笑ってしまう。
「…ほら。優しい」
 反論がくるなんて予測をしていなかったのか、雲雀は意外そうに目の縁を丸くしていた。
 綱吉は、丸い目に確信する。
 この人は…まだ子どもだ。子どものように残酷。でも実は、とても優しい。
 笑顔は威嚇。ヒト、よりも動物に近い。
 威嚇することで、力の及ばない弱き者が、自分に近づかないように遠ざける。
 ふいに、思い出す人が、いた。
「…十年後の、あなたも…優しかったですね…」
 つい最近、十年後の雲雀に出会った。十歳分、年を得た彼は、とても厳しい人だった。
 修行の度に打ちのめされたし、殺されかけた。
 そんな痛みの意味が、彼の与えた傷が癒えた最近になって、ほんの少しだけ分かった。…気がする。
 あまり頭の回らない自分だから、ずいぶんと時間がかかったし、それが正解かどうかなんて分からない、けれど。
 自分なりの正解をつけてみると、彼の与えた痛みは、家庭教師の赤ん坊が与えてくる痛みと、同じ意味を持つのではないかと思う。
 簡単に答えを与える、代わりに。痛みと共に、自分で考える力と、闘う力を。
 十年後の彼と、今、目の前にいる彼は、確かに繋がっている。それが、ふいに感じられて、懐かしくなった。
「ヒバリさん、は、やっぱり」
 優しい、と繰り返しかけた唇は。
 言葉の出口は、塞がれた。
「……ッ」
 シャツの襟首を絞められる。呼吸が、息が苦しくなる。苦しくて目を閉じた。
 苦しくて目を閉じた綱吉は、痛みを与える彼が、同じように苦しそうで、そして悔しそうに顏を歪めたのを見なかった。
 そう。綱吉は知らなかった。自分がなぜ、彼に痛めつけられているのか。何が、彼を苛立たせたのか。
 それは雲雀自身も、知らないことだ。まだ。
 次に綱吉が目を開いた時は、ぎらぎらと光る黒い瞳が、まつ毛が触れそうな近くにあった。
「…殺したい」
 彼の唾液と一緒に塗りこめられた殺意は、口の中の傷にしみた。
 綱吉は、やっぱり抵抗なんか、しなきゃ良かった、と思う。
 でも、同時に思うことは。

 興味ない、と。弱い生き物として最初から切り捨てられるよりも、今は、
 与えられるのが痛みでもかまわないから、雲雀の視界にいたかった。



※バイオレンスなヒバツナに憧れて…ツナ→雲雀と見せかけて、ツナ→←雲雀のヒバツナ…のつもりが…ん?
※腕っぷしの強い女子が雲雀さんの前に登場して、無自覚に危機感を覚えるツナ…だったはずが…なんか若干ツナがマゾっぽく…ごめん、ツナ……

※ちなみに↑の後づけで、十年後の自分にこじ開けられたらしい(笑)ツナに、実は無意識にイラっとしてるヒバリ…ってカンジになりました。…あれれ~?





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最終更新日  2010年05月05日 19時30分48秒
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あ、雲雀さんおめでとう…と心の中で祝っただけだった空月です  
空月 さん

いやはや…バイオレンスですねぇ…私は血だらけでボコボコにされる雲雀さんも好きです(ぇ
雲雀さんは悲しそうな顔をしてツナを殴ればいいと思います!殴っても殴っても気持ちの整理がつかず、むしろ切なくなるだけという!そして最後は乱暴にちゅう…
(あ、コミックに骸本体が出ましたね)
Mっ気のあるツナが素敵です、キュンってなります。ぼぉっとしながら雲雀さんのことを考えるんですよね、わかります。んもうっ、ツナくん可愛いー!!
(骸登場の回で何故雲雀さんと絡まなかったのか…ツンデレめ…)
しかし…粛清の彼女は萌えないです…あのボンキュッポンは…あぅー…
(新章に骸出ないかなぁ…)
そんなこんなで失礼しますね!
(2010年05月06日 12時01分11秒)

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