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信仰者は夢を見る:川上直哉のブログ
「トルコ虐殺事件」解説その1
「トルコ虐殺事件」
の解説(
「その0」
)の、続きです。
内容は、フォーサイスの説教
「トルコ虐殺事件」
の要約となっています。
訳文
を参照しながら、ご覧ください。
***************************
1.1877年の説教「トルコ虐殺事件」
以下、最初期フォーサイス神学を検討する為に、活字となった最初の説教「トルコ虐殺事件」の内容を要約する。
(1)ディズレイリ批判=「エゴイズム」批判
「ペテロの手紙第一」2章17節の欽定訳の一節(“Love the brotherhood.”)を掲げた説教において、フォーサイスはまず、当時の首相ディズレイリの帝国主義的外交方針
(訳文 下線
a
)
への非難を激烈な調子
(訳文 下線
d
)
で繰り返す。フォーサイスの論点は以下の点に良く現れている。
キリスト教にとって、第一の、そして根本的な特徴は、
自己放棄なのだ―― つまり、自己は、第一の事柄とはならない。
自己は、第二義的な位置に留め置かれる。
・・・この「自己放棄」ということを認めない信仰を、
キリストの名において告白することは、誰にもできないことなのです。
(訳文 下線
b
)
即ち、フォーサイスによると、利己的に振舞う英国はもはやキリスト教国の名に価しないのだという。
フォーサイスによると、これまでのエゴイスティックな外交政策故に、とりわけトルコに対して、英国は信頼関係を損なってしまっており、もっとも外交努力を払わなければならない時に、全く外交力を発揮できない惨めな状に陥っているという
(訳文 下線
o
)
。更に、英国民も新聞報道によって知らされる「危機的事態」を前に、利己主義的不安に駆られている
(訳文 下線
m
)
。そうした人々に対し、フォーサイスは「人間」らしく振舞うこと、家族に恥ずかしくない行為選択をすることを、強く求める
(訳文 下線
j
)
。その際、フォーサイスが用いるのは、「英国人」であることの誇りである。クロムウェルとミルトンとウィルバーフォースと奴隷解放運動を生み出した「英国人」としてのアイデンティティーに、フォーサイスは訴えている
(訳文 下線
k
)
。
説教全体を通じて、フォーサイスは、政府の利己主義的政策、更に個々人の利己主義的不安を批判している。
(2)ブルガリア人虐殺事件=神義論の問題
フォーサイスは「危機的事態」を強調する。この「危機的事態」とは何か。表題には「トルコ虐殺事件」とあること、「デイリー・ニューズ」を参照するように求めていること
(訳文 下線
e
)
、そして「ブルガリア」の名を挙げていること
(訳文 下線
aa
)
から、「四月蜂起」に始まるトルコ国内のブルガリア人虐殺事件、そしてそれを含む「東方問題」であると判る(その内容については、次節に詳述)。フォーサイスはその惨状を生々しく表現している
(訳文 下線
f
)
。
フォーサイスはこの惨劇について、激しい怒りを隠さない
(訳文 下線
f
)
。
そして、フォーサイスはこの悲劇を神義論的問題として捉えるのみならず、この神義論的問題に、神の御下へと繋がる第一歩を読み取る
(訳文 下線
h
)
。フォーサイスは、具体的に生起する世界の悲劇をキリストの苦しみの下位に位置づけ
(訳文 下線
i
)
、キリストが思いを寄せたように我々も世界の悲劇に思いを寄せることを以って
(訳文 下線
z
)
、「より一層キリストの傍へと昇り行く」のだとする
(訳文 下線
y
)
。
フォーサイスは、西欧が培ってきた「文明」に向かって進む「進歩」を妨げようとする「人種」を厳しく糾弾し、徹底的にこれと戦うことを主張する(訳文 下線
l
)。そしてこの「人種」への憎しみと怒りを、詩篇の復讐の歌になぞらえて正当化する
(訳文 下線
g
)
。
それと同時に、フォーサスは現下に生起した惨状を、英国に与えられた「懲らしめ」と捉える。英国が行ってきた利己主義的外交政策が何を齎したのかを如実に示すものこそ、この「東方問題」なのである、とする
(訳文 下線
v
)
。
このようにして、フォーサイスは現実に起こった惨劇から神義論を展開し、キリストの十字架を議論の中心に据える。しかし、その神義論は終始英国人の道徳的向上やキリストへの接近という視座から展開していること、そして「人種」という枠組みにおいて事態を捉えてしまっていることは、留意すべき点と思われる。
(3)「兄弟を愛せ」=自由と正義の希求故に苦しむ者への連帯の呼びかけ
外交問題を論ずるフォーサイスの立場は、どこにあるのだろうか。明確なこととして指摘できることは、フォーサイスは「国家」の枠組みを超えた立場からこの問題と向き合っている、ということである
(訳文 下線
s
)
。フォーサイスが「国家」の枠組みを超えて提示する立場とは何か。フォーサイスによると、それは「キリストの教会」であるという
(訳文 下線
p
)
。
更に、フォーサイスによると、この「キリストの教会」とは「贖われた人類」であり、「キリストの霊の影響下」にあるもので、時間の枠を超えて「未来の兄弟達との完成された絆」であるという
(訳文 下線
q
)
。「キリストの霊の影響下」とは何を意味するか。「中世」に衝撃を与えてそこに生命を回復させたものを「キリスト教」と呼ぶフォーサイスは
(訳文 下線
t
)
、「近代欧州の国々を誕生させたキリストの霊」という表現を採る
(訳文 下線
bb
)
。即ち、「自由という神の正義
(訳文 下線
n
)
」を希求する者こそ、フォーサイスにとっては「キリストの霊の影響下」にあるものである。
フォーサイスは「国家」の枠組みを超え、「自由という神の正義」の希求故に苦しむ者を「兄弟」と見做す「キリストの教会」の枠組みにおいて、外交問題を論ずる。
それでは、フォーサイスにおいて、「キリストの教会」と「国家」の関係はどのようなものとされているか。
フォーサイスにおいては、「キリストの教会」は「未来において完成される絆」に向かう「一ステップ」として理解されている
(訳文 下線
r
)
。「連邦化された諸国家[federalized nations]の生命、あるいは、集合的人間性[collective humanity]の生命、あるいは、普遍的兄弟愛[universal brotherhood]の生命を国家の中に保持するという責任」が「キリスト教」に課せられている、という表現
(訳文 下線
u
)
に、フォーサイスの「教会と国家」の関係が端的に読み取れるものと思われる。
このような理解に基づき、フォーサイスは「国家」の役割を限定的なものと見做している。即ち、オスマン・トルコ領内で起こった虐殺事件(その概要は次節を参照)に対し、国家が外交交渉によってこれに対処することを、問題解決の第一歩とは見做さないのが、フォーサイスの立場となる。むしろ「キリスト者」個人の自発的な活動が、問題解決を齎すものとされる。国家の役割は無視されないが、あくまでもそれは、「キリスト者」の自発的な活動に続くものとして位置付けられている
(訳文 下線
w
)
。
続きはこちら
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