山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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2012.05.18
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テーマ: ヤマメ釣り(7)
カテゴリ: 川釣り

  「大倉ダム・大倉川支川に於いて198ベクレルと言う高い数値が出ました。」というメールが届いたのは、4月19日の深夜である。翌日、検査結果が正式に宮城県から公表された。「100 Bq/kg」という4月1日からの新しい規制値を越えるので、当然ながら法的措置が講じられ、広瀬川の釣りには厳しい制限が加えられることになる。

  正式な発表は、広瀬川の支流・大倉川の大倉ダム上流の支流・横川で4月14日採取のイワナから197 Bq/kgのセシウム137 [註1] が検出された、ということである。おなじく、横川で4月22日採取のイワナで210 Bq/kg、広瀬川支流・新川川で4月21日採取のイワナからは62 Bq/kgのセシウム137が検出された。それを受けて、広瀬名取川漁業協同組合は、4月29日付けで次のような文書を遊漁証委託取扱店宛てに送付した。

       イワナ、ヤマメの遊漁自粛のお願い。
大倉ダム上流部(ダムを含む)で採取したイワナに放射性セシウムにおいて、基準値越えが発生しましたので検査の値が基準値を下回るまでの間、大倉川への入渓を自粛して頂くようお願い致します。
                                 広瀬名取漁業協同組合

 新川川については、規制値以下と言うことで何の規制もなされていない。規制値を超えても、「入渓自粛」というきわめて緩やかな要請というのは腑に落ちないが、たぶん対応に混乱が生じていたのであろうと同情する。
  すでに2月23日採取の阿武隈川支流・内川(丸森町)のヤマメ110 Bq/kgという結果を受けて、すぐに阿武隈川漁協は解禁日である3月1日に漁業権漁場内を全面禁漁にすることを決定している。阿武隈川漁協は、4月以降の新規制値を先取りしたうえで、素早くかつ厳しい判断を下している。

 広瀬名取川漁協の対応はだいぶユルいな、と思っていたところ、その後、次のような措置を取ることが決定されている。

        緊急告知
   左記の通りイワナを全面禁漁とする。
1名取川秋保大滝より上流の全域、及び本砂金川。
2名取川支流,釜房ダムに流入する太郎川、北川、前川は5月14日現在,除外する。
3大倉ダムを含む大倉川の全域。
広瀬川本流及び新川川は今の所、除外する。
禁漁区域以外でもヤマメ、イワナは検体採捕特別許可を除き「持ち帰り禁止 全て再放流」の事。
               平成二四年五月一四日
                    宮城県知事
                    広瀬名取川漁業協同組合

  最近の私のヤマメ釣りは、本流に限られているのでとくに困るわけではないが、こんな状況下で釣っていて以前のように楽しめるかどうかは疑わしい。いまのところ、5月3日の大雨の後遺症で、広瀬川の濁りが取れていないので、ヤマメ釣りには出かけていないが、そろそろ我慢の限界が来そうな予感がする。

  さて、この禁漁はいつ解除されるのだろうか。少なくとも解除されるにはなかなかに難しい条件をクリアしなければならないようだ(国民の健康と安全という観点からは当然だが)。
  広瀬名取漁協が遊漁証取扱店に配布した(組合長の公印のある)文書によれば、上記の措置は「原子力災害対策本部 内閣総理大臣の指示により宮城県知事から要請があった事による」ということである。とすれば、国の指示による出荷制限等がなされたので、「基準値を超えた品目が、生産地域に広く分布」していると認定されたわけで、その解除には国の定めた以下のような解除条件を満たさなくてはならない。

(1) 解除しょうとする漁場内で毎週検査すること。
(2) 解除しょうとする漁場内での1ヶ月間の検査結果が全て基準値以下であること。(「1ヶ月間の検査結果」とは三週連続して検査することを前提としている)
(3) 1ヶ月間に3ケ所以上の検査を実施すること。

  「基準値を超えた品目が、生産地域に広く分布」していないで局所的に限られていれば、県独自の指示となるが、その場合、国によって解除条件は定められてはいないが、県は上記の解除条件をふまえると言明している。(以上の知見は、3月23日開催の宮城県内水面漁場管理委員会で配布された報告事項の説明資料によっている。)

  安全のためには、この程度の困難は何としても乗り越えなければならないということだろう。
  Cs-137の物理的半減期は30年であるが、生物学的半減期(生体からCsが排出されて放射線量が半分に減る時間)は、ずっと短いであろうから、それに期待するしかないのかも知れない。

[註1]ここで言う放射セシウムとは、Cs-137という原子核のことである。Cs-137は、中性子とウラニウムの反応で生じるウラニウムの原子核分裂で生じる核分裂生成物で、ベータ(β)崩壊(原子核中の中性子が陽子に変化しながら電子を放出して別の原子核に変化すること)によって安定な原子核Ba-137に変化する。そのベータ崩壊の時に、高エネルギー(0.51MeV(92%)、1.17MeV(8%))β線(電子と同じ)と、同じく高エネルギー(0.662MeV))のガンマ(γ)線を放出する。γ線は、光と同じ電磁波で非常に高エネルギーの光だと思えばよい。ちなみに原子核から出るとγ線、原子から出るとX線という。一般にX線の方がγ線よりエネルギーは低い。このβ線とγ線がいわゆる放射線である。MeVはエネルギーの単位で、例えば人間の体を構成するさまざまな分子は原子の結合によってできているが、その原子どうしの結合エネルギーは10~20 eV程度である。MeVは百万eVなので、MeV単位の放射線が人体に当たれば、当たった場所の原子結合は簡単に敗れてしまう。例えば、DNA分子が放射線で壊されれば、癌細胞に変化したり、遺伝異常が生じる可能性があるということである。ただし、そのような細胞は死滅しやすくて増殖しない確率が高いので、必ずそうなるというわけではない。






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Last updated  2012.07.01 05:26:46
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