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須金岳から眺めた禿岳(左)と1259.5m峰(右)。 (2010/5/31 10:28)
須金岳
から眺めた禿岳はよく目立つ姿を見せていたが、禿岳に登ったときの記憶に須金岳がどんなふうに見えていたか、さだかでない。それで登ってみようと思った、というのは確かだったが、小さい理由である。
じつは、先日に柴倉山までの歩きの最初の2時間にけっこう苦しんだのである。それで、楽な山はないか、歩きやすく景色のいい山はないか、それで禿岳である。
前夜にザックを用意する様子を見ていた連れ(イオ)は、私のベッドから一度も離れず夜を過ごした。登山行の気配を察したときはいつもこうである。
連れと一緒に車に乗り込む。雲一つない晴天、仙台から東北道、古川IC、国道47号、鳴子大橋へ右折、国道108号、鬼首から左折、県道最上鬼首線で花立峠へ。峠道は斜面いっぱいのタニウツギのピンクの花で、つい車を止めて写真を撮った。
鬼首、県道最上鬼首線から見上げる禿岳。 (2012/6/11 5:57)
花立峠登山口出発は、6:16、まだ雲一つない快晴である。登り口の両脇にはヤマツツジが満開である。100パーセント、水原秋桜子の句そのものである。
山躑躅燃ゆれど山はひそかなる [1]
登山道に入ってすぐのヤマツツジ。 (2012/6/11 6:19)
もう一句、歩き始めなので余裕があるのだが、いつまで「すがしい」気分でいられるか。
額の汗いまだすがしや躑躅咲く [2]
登山口は典型的な風の通り道であるため木々の丈は低く、眺望の良い峠である。登山口から4,5分で礫地の丘に出て、山形県側のすばらしい眺望が広がる。雲海と月山と葉山(村上)の取り合わせである。朝日連峰や鳥海山は判然としない。日本海側の遠くには雲が浮かんでいるし、この季節では霞んでしまうのだろう。
雲海の向こう、月山(右)と葉山(左)。 (2012/6/11 6:22)
歩き始める。「一合目」標まではあっという間だが、そこから急坂にかかって、行けども行けども「二合目」標が出てこない。前にもここでまったく同じ経験をしたのだが、まだ体が慣れていない時の急坂で、なかなか二合目に辿りつかないので、体力の衰えで前にほとんど進んでいないのではないかといやな気分になるのである。「三合目」標があってやっと納得したのである。事情が分かっていても、励みの「合目」標がないのは、やはりいくぶん気が落ちる上りなのであった。
三合目を過ぎると右手に鬼首のカルデラ盆地の眺望が開ける。禿岳は、カルデラの外輪山の最高峰なのでカルデラ盆地側が切れ落ちているのだと思っていたが、地質学的には火山活動と前後して隆起してできた山の可能性が高いらしい [3]。
朝日が差し込んで明るく、しかも歩きやすい登山道は気持ちよく歩ける。五合目を過ぎるとまた右手が開ける。ここからはとくに、花立峠から南へ連なっていく小柴山(1056m)、大柴山(1083m)、花渕山(985m)の外輪山の峰々の眺めがよい。
六合目を過ぎると尾根道となって前面の眺めが広がり、正面にこれから登る道が見えて気分が上がる。八合目を越えると樹高はかなり低くなり、登山道脇には、ミヤマキンバイ、ヒメウメバチソウ(コウメバチソウかもしれない)、ゴゼンタチバナ、ヒメイワカガミ、オオバキスミレなどが次々と姿を見せて、飽きない。さらに進むとノウゴウイチゴの白い花が目立ち、まだ蕾のアカモノの群生がある。
左から、1259.5m峰の後が虎毛山、須金岳、栗駒山、荒雄岳。 (2012/6/11 8:31)
九合目の不動明王に挨拶をして頂上へ急ぐ。道の向こう、頂上の手前には残雪が見え、右手に眼を転じると栗駒山に雲がかかり始めている。気がつかないうちにだいぶ雲が多くなっていたのだ。少し慌てて写真を撮る。栗駒山や虎毛山、荒雄岳は目立つのに須金岳はまわりの山に溶け合って目立たないのである。特徴的な長い頂上尾根も手前から向こうに伸びていてよく分からないのだった。それでも須金岳を確認し、ささやかな目的の一端は達成された、ということである。
残雪に喜び、齧りつく連れ(イオ)。 (2012/6/11 8:32)
頂上直下(といっても高度差はほとんどないが)に残雪が登山道を覆っていて、連れは一瞬に沸騰して、ぐるぐると駆け回る。残雪を見たときから私は準備をしていたけれでも、不意打ちだったらリードを引っ張られて転びそうになるほどの勢いで興奮するのである。人間とは体の冷却システムが異なる連れにとって、登山時の体温を容易にコントロールできる雪は、本能的に好きなのであろう(もしかして、雪山で狩りをしていた父祖たちから受け継いだ本能かも知れないが)。
イオの先代犬(ホシという)が1才の頃(つまり、26,7年前)、真夏の登山の下山時に、喉の渇きと体温の上昇に耐えかねて、沢の水音に惹かれて谷に墜落し、後遺症の「 高所恐怖症
」にしばらく悩まされたことがあった。私がまだ犬の体温制御システムをよく理解していなかったころの話である。
「着いたよ。」 禿岳頂上で。 (2012/6/11 8:37)
雪で気分が良くなった連れは、勇んで頂上に向かう。頂上にはいつも連れが先着なのである。頂上に近づくと、私を引っ張りながら先を行かないと気が済まないらしい。
左から、火打岳、小又山、天狗森、神室山(鳥海山は雲の中)。 (2012/6/11 8:41)
頂上から鳥海山を探したが、雲の蔭であった。残念ながら、私はまだこの山から鳥海山を見ていないのだ。
朝食を済ませた後、さらに新(中道)コースを尾根の端まで辿ることにした。頂上から5分ほどで「九合目」標、花立コースの残雪や東急斜面の眺望を振り返りつつ進むと尾根の突端である。そこから急激に道は下り、1259.5m峰の鞍部の中間に続く登山道がはっきりと見えていて、鞍部の中頃で新(中道)コースは東斜面に消えていく。
新(中峰)コースからの見る頂上。 (2012/6/11 9:27)
尾根を引き返し、ふたたび頂上まで所要時間は30分である。頂上では、忘れていた記念写真、連れはお決まりのポーズ、私の代わりにいつものキャップ、ワンパターンの写真である。
忘れていた記念写真を。 (2012/6/11 9:30)
帰り道で、すべての「合目標」を確認しようと決心していたが、「五合目」まで確認した後、季節はずれのヒラタケを発見した。家族三人、三回のすまし汁に十分な量である。その近くに三,四本のナラタケもあって、気分はすっかり「茸狩り」である。
眼はキノコを追ってばかり、「四合目」標は見落とした。三合目を過ぎてから、気を取りなおして探したが、とうとう「二合目」標は見つけられなかった。
下山路では、7組13人の登山者とすれ違った。たいていの登山者は、私ではなく連れの方に丁寧な挨拶をするのであった。
花立峠登山口には、10:45着である。家に帰って昼食か、途中で食べるか、微妙な時間ではあった。
[1] 『季題別 水原秋桜子全句集』(明治書院、昭和55年) p. 53。
[2] 同上 p. 54。
[3] 早川輝男『宮城県の山』(山と渓谷社、2004年) p.26。
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