おさるの日記

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中国における電力市場





 最も控えめな見積もりでも、中国のエネルギー需要総量は2020年、標準炭に換算して25億トンレベルに達する。この数字は2000年比の90%増だ。そして最も悲観的な見積もりではなんと同152%増となる。

 1980年から2000年にかけて中国はエネルギー消費倍増という状況下でGDPを4倍にするという目標を達成した。この業績は国際エネルギー界で、広く奇跡として知られている。だが、今から2020年までに中国は再び奇跡を起こせるのだろうか。

●電力不足がよんだエネルギー市場の「ドミノ倒し」現象

 今冬は湖南省長沙市の150万人市民にとって、ことのほか長いものになるだろう。

 同市では地域別に3日間給電したあと24時間停電するという生活を市民に強いている。これは2003年11月30日に始まり、おそらく2004年の3月まで続きそうだ。早くも11月27日付の『長沙晩報』は、ロウソクの明かりで営業する店の様子を伝えている。

 これは長沙だけに限らない。今春から次第に表面化してきた電力危機は、真夏の短いピークは越えたが、なお深刻な影を落としており、その影響は全国で3分の2の省に広がっている。「中国の電力市場は20世紀の80年代に逆戻りした」という声も聞かれるほどだ。

 不足しているのは電力だけではないようだ。秋以降ディーゼル油の需給がひっ迫した。珠江デルタから長江デルタまで、福建省から浙江省に至るまで、ディーゼル油不足が連鎖反応的に広がった。北京でさえ供給制限の事態に見舞われ、あわや配給制になるところだった。

 天候不順などの要因も絡んでいる可能性はあるが、中国最大の石炭の産地である山西省が石炭の供給不足に陥ったのは、ブラックユーモアというべきか。

 エネルギー市場で一連の「ドミノ倒し」現象が起きている中、11月15日~17日、国務院発展研究センター(国研センター)は「中国発展トップフォーラム――エネルギー戦略と改革国際会議」を主催した。

 その中で国務院の最も重要なブレーン機構である国研センターが中心となり、国土資源部、水利部、国務院国有資産監督管理委員会(国資委)なども参画した「エネルギー・バランスシート」の驚くべき内容が明らかになった。

 「最も控えめな見積もりでも、中国のエネルギー需要総量は2020年には標準炭に換算して25億トンレベルに達する。この数字は2000年比の90%増だ。そして最も悲観的な見積もりではなんと同152%増となる」というものである。

 さらに「もし、エネルギーの使用過程で大気汚染などの環境問題になんら有効な手立てが打てないとしたら、2020年、汚染被害を受ける都市人口は、この時点の総人口の3分の1にあたる4億9000万人に達する。55万人が汚染によって死亡し、経済損失は410億元にものぼる」という。

 エネルギーの需要増が不可避という状況下で、「エネルギー・バランスシート」は次の注目すべき問題を提起することになった。「1980年から2000年にかけて中国はエネルギー消費倍増という状況下でGDPを4倍にする目標を達成した。この業績は国際エネルギー界で、広く奇跡として知られている。だが、今から2020年までに中国は再び奇跡を起こせるのだろうか」。

 国研センター副主任の陳清泰氏によると、中国は現在、すでに工業化の中期段階である重化学工業期に突入し、エネルギー原単位は軽工業・紡績工業期よりも明らかに高くなっている。また現在、中国都市部の一人当たりエネルギー消費は農村部の3.5倍となっている。現在の中国の都市化レベルは中進国より15ポイント低い。都市化が1ポイント上がることは都市部の人口が1300万人増えることを意味する。この種の圧力は世界の歴史でも恐らく前例がないだろう。

 米国エネルギー基金副会長の楊富強氏は、「中国が再び奇跡を起こそうと思えば、前回よりずっとつらい苦難の道を歩むことになる。エネルギーの核ともいうべき良質化石燃料である石油をとりまく苦しい状況をみれば、その一端をうかがうことができる」と指摘する。

●石油危機到来か

 日本人ほど石油の重要性を理解している国民はいないだろう。石油消費の99%を輸入に頼らなければならないのに、今や工業製品だけでなく日用品さえもがほとんど石油と密接な関係をもっている。一本のバラの背後にも12gの石油が動いているという。バラを育てるための温室設備や肥料にも石油が関係しているのだ。

 陳清泰氏は国研センターを代表して行った報告の中で、通説を引用して、「グローバルな長期視点から見るならば、『エネルギー問題』はとりもなおさず『石油問題』である」と述べた。

 会議に出席した米ケンブリッジ・エネルギー研究所のダニエル・ヤーギン会長は16日のランチスピーチで、「1993年は世界にとって歴史的な年だった」と指摘した。この年は中国が石油輸出国から石油輸入国に変わった年だ。ヤーギン氏は十数年前、著書『石油の世紀』でピュリッツァー賞を受賞している。

 その彼が「中国のエネルギー安全保障なくして世界のエネルギー安全保障はありえない」と付け加えた。

 11月13日に国際エネルギー局が発表した最新月次報告がこの観点を実証している。同機関の予測では、2003年、中国の一日あたり原油消費量は44万バレル増え、全世界の原油需要増加分の35%を占める。2004年にはこの比率に下降傾向が出るが、それでも30%は占めるという。

 国研センターの研究報告によれば、2020年、中国の石油需要量の下限値は4億5000万トン、上限値は6億1000万トンである。その時点の中国国内の石油産出量はわずか1億8000万~2億トン。これは中国の海外への石油依存度が、少なくとも55%に達し、米国の58%にほぼ並ぶことを意味する。

 会議参加者の一人は「そんなのは釣魚台賓館の入口で車の流れを見れば分かることだ」と言って笑った。事実、中国自動車工業協会の統計によると、中国における今年の乗用車販売台数は、10月までにすでに2002年通年の113万台を上回り、151万台に達している。

 中国石油化工(中石化)副総裁の牟書令氏は、国内外のボーリング調査からみても石油・天然ガス資源は依然として安定増産期にあり、決して衰退期に入ってはいないと言う。しかしながら、中国国内の石油生産量の伸び悩みは歴然たる事実である。

 中国三大石油会社が開示した財務諸表によれば、中国石油天然ガス(中石油)の今年上半期の原油生産量はわずか0.58%増。また、中石化の原油生産量も0.97%増にとどまっている。唯一、中国海洋石油(中海油)だけが15%増を記録した。しかし、中海油の絶対生産量は中石油の7分の1にすぎず、全体の生産量を押し上げるまでには至らない。

 20世紀80年代のエネルギー戦略の重点が電力・石炭の供給問題の解決だったとするならば、中国政府は過去10年間で戦略の重点を徐々に石油・天然ガスにシフトしてきたことになる。この戦略転換は、三大石油会社の再編と海外市場進出、そして最近の国家石油備蓄弁公室設立に至る動きをたどれば明らかである。国内市場から次第に国内・国際両市場をフル活用する立場へと変わってきた。

 業界筋によると、中国の石油安全保障戦略は日本・米国などの経験を十分踏まえて、最初から多元化をめざしているという。今年の第1~3四半期を例にとれば、原油の輸入は中東からが51%、その他アフリカ、ラテンアメリカおよびアジア周辺国からの輸入も相当量を占めている。ちなみに日本の中東に対する石油依存度は85%以上で推移している。

 この多元化戦略は、単に海外から石油を買い付けるだけに終わらず、全方位にわたっている。中石油や中海油は、海外における石油資源の買い付けと資本参加で著しい飛躍を遂げている。中石油グループの計画では、2005年、海外油田の生産量は3500万トンに達し、2010年には5000万トンに達するという。一方、中海油は2005年、海外石油総生産量2200万~2400万バレル(1トン=約7バレル)を予定している。ちなみに2001年以前、中海油の海外業務はほとんど白紙だった。

 三大石油会社の海外拡張戦略は今後も続くと予想される。しかし、こうした努力によっても、中国の日増しに強まる石油危機の流れを根本から変えることはできない。

●弱い支援体制

 中国に長期的なエネルギー戦略が存在するかについては、各所で見解の相違があるとしても、長期戦略の計画力、そして実行力不足は疑いない事実である。

 関係筋は、今年の悪化する一方の電力事情は、気候要因による水力発電能力への影響のほかに、最も直接的な原因として国家計画委員会の1998年の失策があるとみている。

 当時、国家計画委員会は、3年間は新たな火力発電プロジェクトに着手しないという規定を国務院上層部の指示で作成した。これが「第7次5カ年計画」以降、勢いづいていた電力施設建設に冷や水を浴びせてしまったというのだ。

 「この規定が出されていなければ、毎年継続して最大出力1500万キロワット、さらには2000万キロワットの新たな発電容量が生まれ、現在のような事態にはならなかった」とエネルギー業界に詳しい、ある匿名希望の関係者は悔やんだ。

 電力需給がひっ迫したのは、珠江デルタ、浙江などの東部地区だ。地方政府は、経済成長を維持するために補助金制度をはじめ様々な方策で、地方企業がディーゼルユニットで発電するよう奨励している。そのため電力事情悪化は、ディーゼル油供給まで飛び火し、中国国内で広域にわたってディーゼル油がひっ迫する事態となった。

 中国は、1997年施行の「省エネ法」をはじめ、エネルギー効率を向上させるための法律を制定している。だが、国家レベルの総合エネルギー管理部門による実効性のある調整と、徹底的な実行ができていないため、法律は事実上、形がい化している。

 中国建築省エネ専門委員会の兪珠峰氏によれば、2002年には、中国全土で新たに総面積にして20億平方メートルの建築物が竣工したが、真に省エネ建築といえるのはわずか3%にとどまっている。

 まして、既存の建築物は言うに及ばない。北京を例にとると、一般住宅の暖房エネルギー消費の基準値は標準炭にして25kgだが、北京と緯度と気候がよく似ているドイツでは、住宅のエネルギー消費はわずか標準炭4~8kgである。

●前途は楽観視できないが・・・

 「悪事変じて好事となる」。これは典型的な中国式戯曲の結末だが、今年次々と上演されてきたエネルギーの波乱劇は、電力、ディーゼル油、石炭の需給ひっ迫劇であれ、西から東への天然ガス輸送プロジェクトの遅延劇であれ、果たして「エネルギー新政策」のハッピーエンドを導く真の導火線となりうるのか。

 多くの専門家は、前途は楽観視できないと言い、「エネルギー局自体の位置づけが低すぎる。しかし、現政権下での改編は困難」とみる。だが、楽観的なムードも存在はする。特に中央の新指導体制がエネルギー問題に並々ならぬ関心を示していることで、難問解決の糸口が見つかるのでないかと望みを託している。

 今年5月26日には、温家宝新総理自らが、中国工程院の「中国石油の持続可能発展戦略研究グループ」の事業報告を聴取した。

 同日、昨年末に就任したばかりの胡錦涛主席が、国家主席として初めてロシア・中東歴訪に出発した。随行した中石油の馬富才総経理は、28日モスクワでロシアの石油大手ユコスのホドルコフスキー前社長と「『中ロ原油パイプライン原油長期買付・販売契約』の基本原則および共通認識に関する協定」に調印した。これは中国・ロシア間における史上最大規模の石油供給協定でもある。

 6日後の6月3日、胡錦涛主席のカザフスタン公式訪問期間中、中石油は同国の首都アスタナで、カザフスタン国家石油ガス会社と「カザフスタン・中国原油パイプライン共同建設投資の論証研究に関する協定」に調印、またカザフスタン共和国財務省国有資産私有化委員会と「中石油のカザフスタン共和国における石油・天然ガス分野のさらなる投資拡大に関する協定」に調印。1996年以来膠着状態が続いていた中国・カザフスタン間のパイプラインに再び希望の灯がともった。

 その2カ月後には、全人代の呉邦国委員長が、フィリピンの首都マニラで開かれたアジア国会平和連合総会に出席し、紛糾中の南シナ海の石油・天然ガス資源の共同開発を提案した。特に、ホスト国フィリピンに和解の手を差し出し、東南アジア地域におけるエネルギー協力で長く続いた膠着状態を打開した。

 フィリピン側も迅速に行動を起こし、11月11日には中海油とフィリピンの国営石油会社エネルギー開発公社が、南シナ海の石油・天然ガス資源を共同開発する覚書を取り交わした。

 10月8日、温家宝総理はASEAN10カ国の首脳とともにバリ島で行われた「東南アジア友好協力条約」の調印式に出席し、中国は東南アジア諸国を除く初のTAC加盟国となった。

 海外世論はいずれも、これによって中国は東南アジア諸国との経済協力関係を一層強めることになるとした。特にエネルギー分野での協力は、中国の原油輸入の海上ルートの安全を確保することも含め、重要な役割を果たすことになるだろうとみている。

 10月下旬、胡錦涛主席はオーストラリアおよびニュージーランドを公式訪問し、これに中海油の総経理に就任したばかりの傅成玉氏が同行した。10月24日、同氏は豪州Gorgonプロジェクトのパートナーとキャンベラで、25年間にわたり計8000万トンから1億トンの液化天然ガスを買い付ける契約書に調印した。契約額は210億米ドルにのぼる。また、中海油はGorgonプロジェクトの8分の1の権益を獲得することになる。

 こうしたトップレベルの積極的な外交姿勢によって、中国は国際市場を有効に活用し、エネルギーの安全保障をはかる良好な外部条件を整えてきている。

 さらに、細かな注目すべき点として、中石化の前総経理の李毅中氏が、新設された国有資産監督管理委員会の副主任に昨年末就任した。また、10月初めには、中海油の元総経理の衛留成氏が海南省の省長代理に就任することが発表された。

 また、未確認の内部情報として、3大石油会社の中で残る中石油の馬富才現総経理が山東省へ赴任するというものもある。もしこれが事実なら、3大石油会社で一斉に行われたトップ交替劇には、別の意図が見えてくる。

 業界筋の推測はこうだ。もし、李毅中氏が国有資産監督管理委員会の副主任に就任して、エネルギー業界の膨大な国有資産を、財産権の面からより着実にコントロールし、利用できるようになるならば、衛留成氏の海南省赴任には、南シナ海と東南アジア地域全体のエネルギー協力の意味がある。また、もし馬富才氏が山東省へ赴任する話が本当になれば、それは山東省が臨む渤海、黄海と北東アジア地域全体のエネルギー協力のためということになる。

 内部の市場化改革に始まり、最近の積極的な外交攻勢、さらには意図を感じさせる人事異動、まだら模様のこれら断片からは「エネルギー新政策」の全体像を浮かび上がらせることはできない。しかし、「エネルギー新政策」がすでに目に見える形で動き出している可能性は十分ある。

(王以超=財経)


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