おさるの日記

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太陽光発電002


2003年 6月 5日



 ホンダが太陽電池の製造・販売に乗り出した。子会社で生産設備の製造などを手がけるホンダエンジニアリングが開発に成功し、自動車メーカーながら、公共・産業用と住宅用の太陽光発電システムを3月から外販している。太陽電池の構造に新方式を採用。従来の製品に比べ製造時の使用エネルギーは約6分の1、発電コストは半分以下という性能を武器に、三洋電機やシャープなど先行メーカーに挑戦状をたたきつける。

 昨年春からホンダの細江工場(静岡県)やタイ工場などで試験的に設置し、外販の可能性を探ってきた。まだ自社以外での導入実績はないが、企業や個人など数件の引き合いが来ているという。今後はホンダが米カリフォルニア州で研究を進めている燃料電池車用の水素製造・供給ステーションにもこの太陽電池を搭載する予定だ。

●2010年の業界目標クリア

 現在の太陽電池はシリコンの結晶を加工して製造する「結晶シリコン系」が主流だ。半導体の加工技術が使えるため主に電機メーカーが中心となって開発を進めてきた。

 一方のホンダの太陽電池は銅、インジウム、ガリウム、セレンの化合物の薄膜を積層して製造する。化合物の頭文字を取って「CIGS」と呼ばれる。

 CIGSは結晶シリコン系よりも少ない材料で太陽電池を作ることができる。そのため結晶シリコン系では200マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度の厚さが限界だが、ホンダは3マイクロまで薄くすることに成功した。これで製造時の使用エネルギーは従来
の約6分の1に下がった。

 一方、従来の太陽光発電システムでは平均で1キロワット当たり70万~80万円程度の設置価格に対し、「量産効果が出ない現時点でもその価格を下回ることができる」と開発を担当するホンダエンジニアリングの鈴木康浩・生産技術主幹は自信を見せる。

 ホンダの試算などによると、従来の結晶シリコン系の太陽電池の発電コストが1キロワット時当たり52円であるのに対し、ホンダ製は22円。これは業界が定めた2010年の目標値を早々とクリアした格好になる。

 課題は光のエネルギーを電気に変える変換効率の低さだ。同じ電力を得るには、大きな面積を必要とする。加えて大量生産の製造技術が難しいため、現在の太陽電池メーカー各社は、CIGSの発電コストや製造エネルギーの低さは認めつつも、しばらくは従来通り結晶シリコン系が市場を牽引していくと見ている。ホンダの開発陣はこれらの課題の解決に向けて現在、必死な取り組みを続けている。

●困難な方式をあえて選択

 ホンダが太陽電池の研究を始めたのはおよそ6年前のことだ。自動車という二酸化炭素(CO2)の排出要因を製造する会社として、CO2削減に役立つものを作ることが当初の目的だった。

 ホンダエンジニアリングの中で半導体の研究開発をしていたチームが太陽電池の開発を始めることになったが、電機メーカーが先行する結晶シリコン系では勝ち目がない。そこで目をつけたのが、大学の研究室などで研究されていたものの、商品化は困難とされていたCIGSのような化合物を使った薄膜系の太陽電池だった。

 CIGSのような太陽電池は、化合物を均一にすることが難しく、大きな面積のものは作れないと言われてきた。しかしホンダは「詳しくは話せないが独自の製法を確立した」(鈴木生産技術主幹)ことによりこれを克服。商品化に成功した。

 現時点では太陽電池の販売部隊を置いておらず、製造設備も限られているため、急激に販売量を伸ばすことはなさそうだ。しかし、ホンダの投じた一石で太陽電池の技術が大きく前進するのなら、その存在意義は大きい。(小平 和良)


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