よんよんとともに

第二章 奇跡



(1)



もう少しであの老木が見えてくるところまで戻ってきたピョルは、



その根元のところで、待っているメファを見つけた。





メファも大きな荷物と2本の傘を持って



一生懸命に歩いて来るピョルを見つけた。





ピョルは大きな声で、手を振りながら叫ぶ。



「ただいま~。メファ・・・」





メファは、手を振りながらにっこりと微笑む。



ピョルは大きな荷物をゆっさゆっさとさせながら駆け出してきた。



ほんの半日離れていただけだったのだが、



長いこと逢えなかった恋人同士の再会のようだ。





大きな荷物をその場にどさっとおいて、



メファを抱きしめるピョル・・・。



メファもピョルのぬくもりを感じながら安堵するのだった。





歩きなれた川べりをたどり、古木の橋を渡り・・・

家に着くまでの間、ピョルは話し続けた。



傘を借りたこと、虹を見たこと、



おみやげがあること・・・。





うれしそうに、また得意げにメファに話す・・・。



メファはいちいち立ち止まってはにっこり頷いて、ピョルを見つめる。



そのしぐさがたまらなく愛しく、ピョルはまたメファを抱きしめる。





蜩がかなしげな泣き声で夕暮れ時を告げていても、



   ピョルにはストリートオルガンの奏でるふんわりとした音に聴こえたに違いない。







いつものように、夕食を取る。



メファが手にしている器は、

紅梅のような淡い赤の地に

天の川をちりばめたような白い点が無数に描かれている。





いっぽうピョルが手にしている器は、

黒地に鮮やかな紅色の花吹雪が舞っている・・・。



ピョルが心を込めて焼き上げた夫婦茶碗だ。



この頃にはメファは、重湯を食べられるようになっていた。





そして二人が肌を重ねた時、



メファの体がほんのりと温かくなっていることにピョルは気づいていた。





『もしかして・・・・奇跡が起きたのではないだろうか・・・』



『メファが同じ世界に・・・・・?』


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