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(2)
青葉の季節も何事もなく順調にすぎ、
ギラギラと輝く季節がやってきた。
そのころには、メファのお腹はもうかなりの大きさになっていた。
8月の中旬に、また主治医はやってきた。
今度は助手席に婦人が乗っている。
迎えにでたピョルはその婦人の顔に見覚えがあった。
軽く会釈をしながら、考えていた。
『どこかでお見かけしたことがあるんだけど・・・』
「あら、あなた。いつか傘をお貸しした方よね・・・。」
そう。以前町に買い物に出かけた時に雨に降られ、
傘を貸してくれた親切なご婦人だったのだ。
彼女は助産婦の仕事をかつてしていたのだそうだ。
世間は広いようで狭く、主治医とも旧知の仲だっだ。
都会から、看護師を連れてくるわけにもいかず、
出産の手伝いを頼んでくれたのだった。
ピョルの家からも1時間ぐらいの距離にすんでいるので、
急な容態の変化でも駆けつけてくれる。
ありがたいことだった。
「よろしくお願いします」
深々と頭を下げて挨拶をした。
「傘を返してくれた時に頂いたすてきな一輪挿し、
大切に使わせて貰ってるわよ。」
そしてその婦人はにっこりと笑って、
「心配しなくてもいいわよ。私がついているからもう大丈夫よ。」
と胸を叩くのだった。
メファも思わず微笑んだ。
診察の結果、順調におなかの赤ちゃんは成長していた。
あと1週間もすれば産声が聞けるはずだ。
主治医はもう性別は分かっていたが、二人にも助産婦さんにも教えなかった。
そして、予定日の3日前には、車に山ほどの産着や
育児に必要なありとあらゆるものを積んでやってきた。
助産婦さんは、自転車で毎日やってきてくれていた。
主治医の用意した産着をみてにやりと笑った。
「まるで、先生のお孫さんのようだわねぇ~。」
「はっはは。そうだよ。私の初孫だ。」
主治医は、自分の子供を若い頃に病気でなくしていた。
なおさらピョルが自分の子供と重なって見えたのかもしれない。
そして、予定日の8月29日の明け方に
かわいい女の子、ミレが生まれたのだった。
ピョルと同じ誕生日に生まれためぐり合わせにも不思議なものを感じていた。
主治医と助産婦さんの付きっ切りのお産で、
母体のメファも何事もなく生むことが出来た。
生まれたての我が子を抱いて、メファはとにかく泣いていた。
ピョルもしゃくりあげながら泣いていた。
メファの手を握り、主治医の手をとり、
助産婦さんにすがりながら泣いていた。
そして、メファから受け取った我が子に頬ずりをして
またむせび泣いた。
満面の笑みを我が子に贈った。
「ミレ・・・・」
我が子は何も分からずただただ、「おぎゃぁおぎゃぁ」と手足をバタバタさせている。
「お父さんとお母さんに似て、顔立ちのきれいな子だこと・・・」
助産婦さんは、ミルクの用意をしながら呟いた。
その場で一番冷静に対処していたのだ。
「先生、体重と身長とちゃんと計ってくださいよ・・・。」
実りの秋を迎えた頃、メファの体調ももとに戻り、
主治医のやってくる回数も減ってきた。
そのかわり、時々自転車で助産婦さんが顔を出してくれる。
日に日に表情が豊かになってくるミレを
二人は目を細めていつまでも見ている。
ミレの血液検査の結果もなんの異常もなかった。
ピョルは毎朝、毎晩幸せを噛み締め、感謝していた。
そして、いつまでもこの幸せが続くことを願っていた。
創作話 第5章 選択 March 2, 2010 コメント(10)
創作話・・・続き・・・^^; March 2, 2010
創作話 第4章 (3) February 23, 2010 コメント(6)