怒りのドラゴン!?


 弁護士照会での住民票が届いていた。数名のターゲットの新たな住居(ヤサ)がわかる。昔は住民票も簡単にとれたが、今は個人情報保護のため入手が難しくなってきている。

 思ったより近くに、住居を構える人が多い、やはり住み慣れて土地感のある場所がいいのだろうと思う。

 社用の携帯が胸を揺らす、「ハイ、ご苦労様です。」私のパートナーのHTさんからであった。
「Tさん、今、例の●●●一●の●●さんからスゴイ勢いで電話があって折り返し電話をして欲しいそうです。」

あの不法転貸のマンションで老人が病院で亡くなった件の契約者である。
「関係無い俺にどうしてこんな書類くるのかってスゴイ怒っていました。」 
「そう、文句言われたのか!」 
「アッ、はい。」じゃ、今度はこっちがキッチリ追い込んでやらないと。
一旦事務所に戻るか。

 彼の自宅に電話をする。今出ていると言う返事である。すぐに彼の携帯にかけ直す。数回のコールのあと彼が出た。

「T不動産です!」 
「あっどうも。何で、俺のとこに書類を送ってくるんや!わしもう関係ないやろ!」「私、貴方に言ったでしょ。あの老人が生きているならまだしも、亡くなった以上は真の契約者である貴方に責任をもってもらうと!」

「それでも、5月に解約書を書いたじゃないか!」 
「だから助かったでしょ!あのままだったらもっと滞納金額増えるでしょう!前にも言ったけど部屋の清掃、修理、車の撤去もろもろ含めたら100万は下らないですよ!」 

「チョット待ってくれや!その金額全部俺に持てと言うのか!」
 私「裁判するなら全部ですよ!」 
「関係ないやろ!2年前に解約出したはずや!」 

「だったらどうして貴方の知り合いのあの老人が入居しているのです。こちらにはあの老人の契約書は存在していないのですよ。それに電気料金もそちらに請求行ったでしょ。」 

「おう、北陸電力もいきなりきて18,000円やったわ。」
「じゃうちもお支払い下さい。」 
「払いませんでした。」 
「●●さん、今何処ですか?」
「あんたの店の前に来ている。」 
私の事務所は店舗の向にある5階だ。下をのぞいて見ると白い車が1台止まっている。

「それじゃ車をパーキングに入れて、向かいのビルの5階まで来て下さい。」 「なんで俺がそっちに行くんや!そっちが降りて来てや!」ピキピキピキピキ。
切れてきた。

「そうですか、お越し頂けないなら結構ですわ!こっちはもう裁判準備をして法廷でお待ちするだけです。それにどうも、思い違いをしていませんか?こっちは裁判になったら困るだろうと思って相談を受けてあげようと言う立場ですよ!●●さん!」いかん893口調になって来ている。

 さらに、「いいですよ!●●さんも弁護士たてて!こっちもしっかりお受けしますから。」  
彼「・・・・すぐ行く!」当然でしょ!早く来い。キッチリ落としてやる。

今の私の目的は彼から部屋の処分に関する一筆をもらう事である。できれば裁判はこちらもしたくない。彼はもっとしたくないのだ!

チン!と古めかしいエレベーターの到着の音、来たぞ!
「スイマセン!Tさんは・・・。」来たらやけにおとなしいじゃん! 
「●●さんこちらです。どうぞ。」 
「この前でもう終わりじゃないの?」と彼。
「解約書は書いてもらいましたが、退去していないでしょ!ですから当然家賃はかかりますよね。」

「それはあの人に言ってよ。」 
「残念ながらもう会えませんので、貴方とお話するしかないですね。」 
「そんな・・・。もう、勘弁してよ!」 
「勘弁して頂きたいのはこちらです。あの部屋を一度ご覧になって下さい。」
 彼「身内がいるだろうが!」

「いるにはいますがもうご縁はきっているみたいで、市役所の方からいろいろ連絡して頂きましたが、こちらには連絡は一切ありません。ご遺体も無縁仏で行政のほうで処理したようです。それに関係無いと言ったって貴方のお名前の入った名刺やお礼の袋や書類がイッパイ出て来ているのですよ!」

 彼「あれはお母さんがした事や!」お母さんかい!んーどないしたろ。
彼「私、今都合できるお金が無いのです。」今度は泣き落とし?
彼「5万か10万ぐらいなら、なんとか・・・。」

私「それじゃ交渉にもなりません!」確か敷金も24万ぐらいあったな。「トントン」とノックの音、管理部のSMさんが入ってきた。タッチ交代するかな。

本来の筋書きはSMさんが問い詰めて、私がなだめる役、だったけど立場が逆になりそうだ。
SMZさん「●●さん、当社は敷金もお預かりしていますが、部屋の清掃、修理等や車の撤去などで敷金だけでは全く足りません。それに家賃を加えると大変な額です。せめて半分でももって頂かないと。」

 彼「本当に今厳しいので、お金の都合がつかないのです。私の出せる金額は25万ぐらいです。それも月5万の分割で。」

どこから25万の金額が出てきたのか?家賃50万としての半分か?コイツ調子こきやがって!
私「ダメだ!それじゃ。」と横槍をいれる。私をなだめるようにSMさんが制止する。なかなかいい連携である。

 SMさん「それじゃ、あと部屋の修理代と清掃費が出てから相談しましょう。ただし下に置いてある車は●●さんの責任で処分して下さい。車は所有権とかありますので、我々では処分できないのです。する時はそれこそ裁判をしないと無理ですから。」 

私「そうだね、裁判となると長引くから貴方も大変でしょう。貴方のお母さんで知り合いの方がこの前来ていて、車は処分できると言っていましたよ!」

彼「解りました。お母さんに電話して確認してみます。」とおもむろに携帯で母親に連絡を始めた。どうやら落ちてきた。あとは部屋内部の処分に対して彼の一筆をもらうようにしなければならない。

そう、彼の責任において仕事(処分)をしなければいけない。彼が渋々一筆を入れた。
「悪用しないでしょうね?」なんで悪用しないといけないの!
「大丈夫です。本件以外には一切使用しませんし、それ以外に使い道がないですから。」と私。 
彼の名刺の裏をみると東京の●●にクラブと和風レストランをもっている。肩書きも専務取締役、本当に金の流れが厳しいのかもしれない。

これで、やっとあの部屋が処理できる。思ったより早く出来た。
SMさん「Tさん、美味しいとこ、とっちゃったみたい?」
私「全然!こっちはもっと絞ってやろうかと思ってけど。でも上手く処理できそうでOKですよ。」
後は、彼を支払い交渉の席に再度つかせることである。




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