~1980年XMAS前だった~ スターティング・オーバー John Lennon 1980年12月。 それは大学1年になって初めての冬を山口で過ごしている時だった。 街では僕が初めてリアルタイムでアルバムを買ったジョンレノンの 「スターティング・オーバー」が流れている、クリスマス前だった。 下宿に、広島にいる彼女から電話がかかった。 「知っとる?」 「いや、知らん。何?」 彼女はその言葉をためらっている風だっ たが、僕に話し始めた。 僕は中学生になって、人に漏れず深夜ラジオを聴くようになった。 最初はカーペンターズの「プリーズ・ミスター・ポストマン」だった がいつしかビートルズにはまり、そして「卒論はジョンレノンで書こ う」、と思うほどになり、彼女も僕のジョンレノンへの傾倒ぶりは理解 していた。 彼女から借りたアルバムに入っていた「ユー・リアリー・ガット・ ミー」のジョンのボーカルが大好きで、よく「I don’t like you, but I love you~ my love is strong now」などと歌っていたものだから。 「ジョンレノが死んだってニュースで言ってたよ。」 すぐさま下宿先のテレビを点けてもらい確認した。そのあと公衆電話か ら彼女にかけなおし、泣いた。 彼女は僕のことを心配する余り、泊りがけで慰めに来てくれたのだが、 これが仇となる。彼女の両親に外泊がバレ、今後一切の付き合いを禁止 された。もちろんそれに従うことは無かったが、20歳の頃いつしか別 れた。 1980年のクリスマスの日、彼女の実家で話をした。僕は「でも僕 は彼女を愛しとるけえ」と言った。火の出るような父親の顔があったが、 僕は全くひるまなかった。 それからほぼ20年。やっと僕は結婚し子供ができた。ジョンレノン が「スターティング・オーバー」を歌った同じ40歳に辿り着いた。