堅子の部屋。

堅子の部屋。

あの言葉から・・・ *12/18更新*



 - 1 - 


わたし達は、この言葉から始まった


「会おっか?」


どちらからともなく出た言葉
長い長い時間会話して、わたしもそう思ってた
顔も知らない、声もわからない
不安の波が押し寄せる


「会う前に声だけで良いから聞かせてくれない?」


そう言ってしまったのは、わたしの方だった


「別に、俺は構わないよ」と、軽い返事
耳に入ってきたその声は、落ち着いていて、同じ年とは思えないくらい心地良い声だった 
切りたくないくらい、心地よい声
早く会いたい・・・




 - 2 - 


「会おう」と何気なく出た言葉から、もう何日経つんだろう
長く、凄く、長く感じられる


お互いの会話の節々に「会う」という事の話題は出さない


『もうすぐだねぇ、早く会いたいよ』


と、言いたい言葉お心に押し込めて、その日を待つ


会いたい気持ちが、どんどんつのってくる




 - 3 - 


その日が来た
長かった一週間
顔を知らない事が、また不安になる


「ねぇ、写メルでいいから、写真欲しいだけどな」


と、突然彼から言われる。
送るだけじゃ嫌だ!とだだをこねて、わたしも貰う
わたしには、もったいないくらい、かっこいい・・・
また、不安が募る


「ねぇ、わたしでいいの?」


「は?何言ってんの?」


「だって・・・顔・・・・」


「あんなぁ、顔見たからって、会う気、なくさないんだけどよ?何こだわってるの?」


「う、うん・・・」


「俺は~、おまえに会いたいんだよぅっ! ったくぅ(笑)、言わせるなよなぁ(笑)」


「うんっ♪」


「ったくぅ、可愛い声出すなぁ(笑) 笑ってろ、そぉやって。待ってっからさ」


「うん、行くねっ。飛行機降りたらメールするね」


「おぅ!待ってるわ 折り返し電話すっから」


「うん♪ 後で♪」




 - 4 - 


着いた着いたぁ あ、メールしないと。


『今、着きました。どこに出ればいい?』


すぐ、電話が鳴る


「もしもし?ん??聞こえないって、なに??聞こえないってぇ」


って、言ってる間に、ぽんぽん っと、後ろから肩を叩かれて振り返ると、そこの、にっこりする彼


「おぉぅ!!!!来たねぇ 来ちゃったねぇ♪」


黒く焼けた肌に、白い綺麗な歯並び
写真より、断然良すぎ


「ん、じゃぁ~、行くぞっ♪ ほれほれ着いてこぃ」


って、いきなり、手、引っ張られて、彼の車まで行く


「あ、この車、写真で見せてくれたヤツでしょ?」


「そそそそぉ、コレだよぉ いいだろぉ (^^)V」


わたしには、車の良さはわからないけど、この車が大好きなのは、にっこり子供のように微笑んで、ぴぃすサインを寄越して来た時点で伝わってきた


「うん、うん 好きなんだねぇ?」


「ん、好きだよぉ おまえもな」


(ん?ん?ん?ん?ん? 何?『おまえもな?』って言った?ん?!)


そんな彼、車内に流れる曲を大きな声で歌ってごまかす


『♪~君の好きなモノ、順番に並べて、リストを作ったときに、僕の名前がもしもしあったなら、いったい何番目だろう?~♪』


(へ?? なになに??どぉなってる?!??)


どんどんわたしの頭の中は、こんがらがる


何かしゃべらなきゃって、思っていると、彼からの質問


「なぁなぁ、俺、どぉよ?」


「ぇ!? んとんと、かっこいいので、やばいです(笑)」


その言葉で、彼は大爆笑、そしてつられて私も大爆笑


「やっと笑ったなぁ ホッとしたぞぉ さっきの言葉から、笑わないんだもんなぁ いつものおまえらしくないから、困ったぞ 俺(汗)」 


「だってさぁ~あぁ」


と、言った直後、引き寄せられて、頭を撫でられた




- 5 -


高速に車を滑らせてスピードを上げて車が流れて行く


「んと、今更アレなんだけど、どっか行きたいところはぁ・・・?(苦笑)」


「あ、あのぉ(笑)、もう高速乗ってるし?決めちゃってるでしょぉ(笑)」


「ぅわっははあはは ばれてたか(汗) ん、ここなら良いかなぁって所があるんだよな」


少し走ると、海の上に掛かる大きな橋を、車が流れる


「ぅわぁぁ~~~ すっごぃ!!! おぉぉ~~」


「だろぉ、俺も結構走るんだけどさ、あんまゆっくりこうして走る事ないんだよねぇ(笑)おぉ、マジすげ~なぁ」


「ちょ、ちょっと(笑)、あ、危ないしぃ(笑)見上げないでよ もぉ(笑)」


「あ、あ、そだな。でもよ、だってよぉ、見たいじゃん、おまえも見てるし うんうん(笑)」


『無邪気だなぁ。。。やっぱ、変わらないや。この時間止ればいいのに』


そんな気持ちを抱きながら、目的地に到着する




 - 6 - 


そこは、高速上のPA
ちょうどお腹もすいたので、作って持ってきたお弁当を彼に渡す。
「おっ、弁当? マジで? 言ってたヤツやろぉ?」


「うんうん^^ 作って来ちゃったよぉ」


実は、話していた中で、お弁当を持って、ピクニック良いねぇって、話をしていたので、内緒で作っていったのだ
わたしは彼にPAの売店のご飯をご馳走になる
嫌いな人以外とのご飯は何でも美味しく食べられるので、にこにこしながらご飯を食べる


(味・・・どぉなのかなぁ・・・)


の、想いとは裏腹にばくばくほおばってくれる


「ねね、おいしぃ?」


「ん^^ 美味いぞ^^」


(ホッ・・・)


「また、不安な顔するなよぉ^^;」


「だってさぁ・・・」


「ったくぅ~(笑)」


と言われた後、また頭を撫でてくれた


「ってかさ、よく喰うなぁ(笑)」


「げ~~ いいじゃんかぁっ、残しちゃ駄目なんだぞぉ(笑)」


「はぃはぃ(笑)」


ご飯も食べ終えて、表に出る
凄く良い天気なので、青い空に青い海


「なんかさ、うん、ほんわかすんな~、変わらないな そのままやね」


「うんうん あたしもそう思ってた」


「ココで、まったりで良い訳?」


「うん、一緒にいられれば、良いから^^」


「おっ、なんだ、乙女チックかぁ?(笑)」


「いいじゃんかぁぁぁ(笑)だって、ほんとなんだもん。」


「ん^^ あ、そろそろ行くか?腹もふくれたし? もう満足?(笑)」


「あのぉ、もう食べられないんでぇ(笑)」


「はぃはぃ(笑) じゃ、行こっか」


来た道を引き返す。また、違った風景が目に飛び込む
(もう、来る事はないだろうしなぁ ちゃんと目に納めておこう 彼の顔も 仕草も・・・)




 - 7 - 


まだ時間があるから、彼が自宅に招いてくれた
男の人の部屋って初めてに等しいので、緊張する


「適当に座ってて」と、彼。
ソファーに腰掛けると、横に彼も座る
ドキドキする反面、凄く落ち着く
黙って側にいても嫌な感触を覚えないこの空間
喋らないと、時間がもったいないと思いつつ、ついているTVをぼぉ~っと見る
何かを取ろうと振り返ったとき、彼の口が私の口をふさぐ


(ん?????!!!!!!!)


長い長いkiss


こうなる予感はしていたけど、あまりにも突然すぎて驚いてしまった




・・・・彼と、身体を重ねあう・・・・




「嫌・・だった・・・?」


「ううん。。。」


「うん、なら良い^^」


「帰りたくなくなっちゃったよ・・・」
彼にしがみつきながら耳元で囁く


「今帰らないと、次はないぞ^^」
明るく、口から滑るように出た言葉


いやだ・・と心で思いながら、明るく私も言葉を返す
「だ~よねぇん^^」と




 - 8 - 


「さっ、時間だ行くぞっ。」


空港まで送ってくれる車の中
彼はにこやかに話しかけてくれる
私もそれに答えようと、にこやかに会話していたつもりだった
信号が赤になり車が止った時、彼が口から発した言葉


「泣きそうな・・顔・・・するなよっ。」


心はよまれていた
ずっと笑っているつもりだったのに・・・


「嘘~ そんな顔してないよぉ」と・・・。


会話はとぎれとぎれになり、空港に着く


「ん、じゃ・・なっ」


「うん。ありがと。来れて良かったよ。」


「うん、俺も会えて良かった。」


私は帰りたくない気持ちを抑えるために、彼の手を握る
彼はその手を引き、私の身体を引き寄せてくれた


涙が・・・後から後から止めどなく流れる


それに気がついているのか、彼は私の顔を見ないように頭を撫でる
初めに言葉を切り出したのは私だった


「行かなきゃ^^」


「あ、うん、うん。乗れなくなっちゃうしな。」


「うん、じゃ、ありがとっ^^」


そう言って車から降りて、車見てると、窓が開き、


「行けってばっ」と。


へっ? って顔してると、


「俺がおまえを見送るの!あ、それとメルくれな^^」と。


「うん^^」


彼に背を向けて歩き出す
振り向かず、空港の入り口目指して・・・


『また、ここに・・・来れるかな・・・』


そんな気持ちを残して、飛行機が飛び立つ




  - 9 - 


空港に飛行機が降り立ち、現実の世界に戻る・・・


『彼、今何してるんだろ』


そんなことを考えてメルをする


「着いたよん♪^^」


着信音が鳴る


「もしもし?お疲れさん^^ ありがとなぁ また喋ろうなぁ^^」


「うんうん・・・」


そういうのが・・・精一杯だった。
後は、涙がまた溢れ出して話が出来なかった
彼は・・・凄く困っていたけど、それが精一杯の私の答えだったから ・・・




 - 10 - 




あの言葉から始まって・・・もう2年です


彼からたまにメルが来ます


どんなメルでも笑顔がこぼれます


彼は今も飛行機で飛んで行った地に腰を据えています


今でも・・・彼のことは・・・




 - end -


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