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ファサード(正面の姿)

ファサード(正面の姿)

 マンションのファサード(正面の姿)を設計していつも思うのは、如何に街にマッチしたデザインかということと高級感を出すにはどんな材料が合うかということである。街にマッチしたデザインといっても将来こうあるべきと願って設計するから、時には極端にいえば掃きだめに鶴的な場合もある。ボクの設計したものだけが目立つという奴である。良いデザインと思っているから周りが影響されて良くなって行くのを見ると計算通りで嬉しくなる。かくして都市は美的感覚の優れた建物で一杯になるのだ。ところが既に出来上がって落ち着いた街にはそれなりの文化があるから自分のデザインで周りを壊してはいけない。


Shinsaibashi 1
マンションのファサード(道頓堀)


 新参者が自負心だけで自分のデザインを押しつけることでひんしゅくを買うのは嫌なものだ。青臭い言い方をすれば若い建築家は概してそういう目立ちたがり屋が居るもので、例えばピンクの外壁を落ち着いた街並みに持ってくるなぞがそれだ。下手をすると裁判にまで発展する。ボクも昔、軽井沢の別荘でそういう経験をしたことがある。クライアントが傲慢な男で、絶対にこの色にしてくれと指示されたのがピンクだったのだ。当初は難色を示し反対をしたが、ピンクにも色々あってショッキング・ピンクから淡いものまであるのだが、経年退色のことを頭において適当なところで妥協したのだった。


Tanimachi 1
マンションのファサード(谷町)


 果して、竣工した当時は苦情があったそうだ。あったそうだというのは、ボクは東京に居て直接耳に入らなかったのを地元信州の建設業者から後日言って来たのだ。矢張りあったかと思ったが、そのうち退色して目立たなくなるから、と言っておいたが、その後は何も言ってこなかった。規制地区でもなかったのが幸いしたのか、周囲が諦めたのか知らないが、ボクとしては心苦しい作品となった。クライアントを説得できなかった自分の非力と、そこに住む人々の感情が察知できたからだった。そういう作品はボクの手から離れるとクライアントの品性の問題になるから、クライアントが周囲との協調性に何処まで対応できるかに頼ることになる。あくまでも所有者の問題に変わってしまうから建築家の権限はそこでストップしてしまうのだ。


出来あがったビル
マンションのファサード(京橋)


 マンションの場合、不特定多数の人々が俄かにドッと移り住むので周囲との協調性は自治会でもできれば話し合いもできるのだが、概して居住者は管理組合の問題として無関心な場合が多い。分譲マンションならまだしも賃貸マンションなら尚更のこと居住者は我関せずで周囲の住民との交流もあまりない。それだけに孤立した居住空間がポツンと出来上がることになる。だから周辺からマンション建設反対の運動が生じることもある。都心部では流石にそういうことは少ないが、建築家は地元住民との話し合いに応じる場合もあれば全くノータッチの場合もある。ボクの場合は不動産屋と建設会社が処理することが殆どである。余程のことがない限りそれが設計条件にもなっている。


集会所
住宅団地の集会所のファサード


 だから事前に調査して如何に街並みに合うかとか下世話な心配をされないようなデザインにするかが当面の問題で、プラン(平面計画)や法的問題や経営収支は決まり切ったものだから当然クリアした上でのことだ。要はクライアントが建築家をどこまで信頼しているかにかかっている。信頼関係が崩れるとお互いの不信感が憶測を呼びお互いの方向が違ってくる。そうなれば二度と設計はしない関係になる。世の中には設計者は幾らでも居るのだ、媚を売ってまで設計はしたくないという自我が目覚める。商売上は困ったことで、設計事務所の経理は渋い顔をする。そこが建築家の品性の問題になる。武士は喰わねど高楊枝である。プライドに生きる商売なのである。


駐車場 2.
マンションのファサード(土佐堀)


 だが、プライドだけでは喰えない。霞を喰って生きて行ける仙人ならまだしも、人間である以上、たまには贅沢もしたいし名誉も欲しくなる。そこで妥協点なる方法を見出すか、二足のわらじを履くかになる。建築家の場合、大学教授とか講師になって最低限の食いぶちを稼ぐ人が多いのもそういう理由からだ。が、講師程度では高がしれている。夫婦共稼ぎというのもある。サラリーマン建築家というのもある。日本の場合、殆どがそうだ。独立した建築家というのは珍しい。何かの組織にバックアップしてもらって仕事をするというのが有名建築家の裏の姿である。見かけは派手なようで実態は地味なしょぼくれた商売なのである。欧米のように建築家が建設業者と対立した関係でないのも原因である。




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