独裁政権誕生!

独裁政権誕生
あれは今から3年前。それまで1年ごとの持ち回りをベースに構成されていた理事会が入居当時から自分の番を心待ちにしていた人に引き継がれた。
突然マンションの雰囲気が変わってしまった。 まず、管理人室の備品チェック。管理人への個人的な贈り物や管理人が個人的なサービスを提供していることを追及し始めた。 管理人室で理事長夫人の姿をしばしば見かけるようになった。

うちのマンションには、管理人と清掃人という職務の人が一定時間勤務している。入居当時からこの時までいてくれた人達は夫婦で働いていたため、所定の勤務時間よりも長い時間を超過手当て等を要求することもなく、みんなのために尽くしてくれていた。 入居後1週間もすると名前を覚えてくれるなど、住民のために働くことを、管理人としてのあり方というのをよく考え認識している立派な方だった。また子供がルールを守らないと厳しく注意するし、どの子にも平等に声をかけ、話を聞いてやり、人気のおじいちゃんでもあったのだ。 不審者が入ろうとすると厳しくチェックもしてくれた。 住人の後についてセキュリティロックされたドアを通り、セールスを行う会社には管理人さんがじきじきに電話をして文句を言ってくれた。

当時うちは上の階の騒音に悩んでいた。この家は男の子3人を持つ5人家族で、ご主人は昼間の仕事、奥さんは近所に居酒屋を持っていて夕方から深夜の仕事。1時過ぎに帰宅すると未就学児の子供が起きて喜んでしまい大興奮。 で、2時、3時にドッシーンというものすごい音がする。
どうやらソファーなどから飛び降りて遊んでいるらしい。寝ていたうちの子は驚きとおそらく恐怖で泣き出してしまう。私は翌日の仕事もあるし、ほとほと困り果てて管理人さんに相談した。すると「俺がうまく言ってやるからさ!」と太鼓判。
2日ほどすると上の家5人そろって挨拶にやってきた。管理人さんは「ちょっと音が響いているようだよ」とやんわりした注意をしてくれたそうだ。
こんなことがあって私も他の大多数の住人と同様管理人夫妻をとても信頼していた。
日々の業務遂行姿勢にとても感謝していたので、オットの田舎から届くサケなどの魚やうちでは飲む人のいない頂きモノのお酒などは管理人さんに差し上げて喜んでもらう顔を見るのがとても嬉しかった。
管理人さんはそういったことを覚えていて、自分の休憩時間に我が家も含めた数件の包丁を研いでお返ししてくれたこともあった。
しかしある日会社から帰宅して、いつものように管理人さんに挨拶すると「ちょっと。○○さん。」と小窓をあけて話かけてくる。 「何でしょ。」と聞くと「俺辞めることにしたから。」

実は新理事長は入居当時に管理会社が定めた自転車置き場の料金徴収方法がおかしいと主張していた。当時、その規則にしたがってマンションの他の住人が料金を支払っているのに、主張を曲げず駐輪料金を払わないで管理人ともめるという前科があった。
新理事長は夫婦そろって理屈を立て板に水状態で話すのがとてもうまく反論する隙を与えない人達なのだ。

「前からあの人が理事長になることがあったら、辞めようとおもってたんだ。」 と彼は言った。
うちのマンションではあいている駐車スペースを時間極めの料金で来客用駐車場とすることになっており、管理人がその駐車利用届けを受け取り、料金を徴収する。また駐車場料金を銀行引き落としではなく現金払いをしている住人が数人おり、それらも管理人が受け取った上で理事会に渡していた。
まずは、これを着服しているのではないかと徹底的に調べたらしい。 さらに管理人室の文房具等の備品を徹底的にチェック。管理人が横領しているのではと疑ったそうだ。また、彼が一部の住人に個人的サービスをしたことは管理業務服務規程違反だと掲示板で告示。

マンション内には不穏な空気が流れ始めた。 このあと、独裁体制がしかれ、ついには管理会社をクビにし、怪文書が飛び交い、現在は管理会社からの告訴に応じた裁判...と続く。 ああ、自分の住むところがこんな風になってしまうなんて、甘い新婚生活を夢見て購入した時には思っても見なかったのに...
                           【次回に続く】


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