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不思議日記
ある家族のお話
私の友人KENさんがアメリカのホームスティー引率で体験したとてもいいお話しです。
原文 http://blog.livedoor.jp/pollock324/archives/50650822.html#comments
March 10, 2005Don't forget to Stop and Smell the Roses
最後の授業で話したアメリカでの経験談。
14年前、ワタシはとあるきっかけでチャンスを得、アメリカ1ヶ月の中学生ホームステイの引率をすることになりました。とはいえ、実を言うとそれまでワタシは海外への渡航経験は皆無。当時すでに英語の教員になっていたにもかかわらず、ワタシは「言葉が通じないのだから、簡単に心が通じ合うはずがない」などと、懐疑的な考えを持っていたのです。
アメリカに着いてしばらくした頃、ある中1の生徒がワタシのところに来て、こんなことを言ってくれました。
「昨日お母さんに、“何か手伝おうか?”って話しかけたら、“いいえ、あなたはそこに座っていて、私の作ったクッキーをおいしいと言って食べてくれたらそれでいいのよ。それが私の幸せなのよ”って言ってくれた。」
ワタシはちょっと驚いて、「だって、それ全部英語で言われたんでしょ。どうして全部わかったの?」と聞き返しました。
するとその子は、「なんだかよく分からないけど、全部わかったみたい。」というのです。
またしばらくしてホームステイも終わりに近づいたある月曜日、同じ生徒が眼に涙を浮かべながら次のような話をしてくれました。
「昨日(日曜)、お父さんが“君がアメリカで一番心に残っている場所はどこだい?”っていうから、家族でドライブに行ったサンフランシスコの海がきれいだったって、答えた。そしたら“よし、じゃあもう一回思いで作りに行こう”って言ってくれて、家族で海を見に行った。海岸でお父さんが海(太平洋)を指さしながら、“この海のずっとずっと向こうに君の本当のお父さんとお母さんがいるんだね。君をここに来させてくれた君のご両親に心から感謝するよ”」そう言って、お父さんは彼女の首にペンダントをかけてくれたそうです。そのペンダントには鍵がつけられていて、さらにこう言ってくれたというのです。
「これは僕の家の鍵だよ。君はもう僕の家族なんだから、この鍵を使って、いつでも“ただいま”って言って帰っておいで。」
もちろんすべて英語での会話です。中1の生徒がたった一人で体験したお話です。
28人いたホームステイのメンバーたちは、多かれ少なかれこうした心の交流をすることができたようです。しかし、この中1の生徒の家はどこか特別な空気を持っているように感じました。
そこで、帰国も間近に迫ったある日、その家にディナーに招待されたのをきっかけに、少し詳しくお話を聞いてみようと思ったのです。
すると…(以下次号)
March 15, 2005Don't forget to Stop and Smell the Roses(続き)
(生徒に話したアメリカでの体験談の続き)
そのホストファミリーのディナーで聞いた話によると、お父さんは若くして会社の社長。家もかなりの豪邸。どちらかというと家族を顧みずに仕事に没頭するタイプで、たくさんのお金を儲け、家を買い、高級車を持つことが家族の幸せだと考えていたのだそうです。(実際、BMWが3台ありました。)
しかし我々が訪れた前年、小学生の長女が交通事故で亡くなってしまったのだそうです。家族は悲しみに打ちひしがれ、お父さんは娘の死に目にもあえなかった自分を責め続けました。そして、それまでの自分の考え方や生活を心から悔いたのだそうです。
そして、いつまでも悲しんでばかりいると亡くなった娘にも申し訳ないと考えるようになり、少しでも誰かの役に立ちたいと外国人の子どものホームステイを受け入れる決心をしたのだとか。
家族は言葉の通じない日本人の、中学一年生の女の子を本当の娘が帰ってきたかのように愛してくれました。3歳の小さな妹も、姉が使っていた部屋に飛び込んできた女の子を、まるで本当のお姉さんが帰ってきたかのように喜んでくれていたのです。
涙ながらにそう話してくれるお父さんとお母さんの心は痛いほど伝わってきました。知らず知らずのうちに私も泣いていたような気がします。
「伝えようとすれば心は伝わる。言葉はその手助けにすぎない。」と心から思えたのは、実はこのときが初めてでした。
その日の帰り、お父さんはかつての自慢だったBMWで私を家まで送ってくれました。そしてその車中で、お父さんは突然私に「君には愛する者が誰かいるか?」と聞いてきました。
私は当時独身で彼女もなく、「いや、いない。強いて言うなら音楽が好きだから、ギターを愛してる。」とつまらない答え方をしてしまいました。
すると、お父さんはまじめな顔で、「君がギターを愛してるなら、毎日ギターを弾いているか?」とさらに聞いてきます。「いや、仕事も忙しいし、毎日は弾けない。」と答えると、「それはいけない。本当に愛しているなら、一日にどんなに少ない時間でも愛する者のために時間をかけなさい。私はそれができなくて後悔しているのだから。」と言うのです。
車を降りる間際、彼は最後に私に向かって次の言葉を贈ってくれました。
Don't forget to Stop and Smell the Roses.
「どんなに忙しくとも、たとえつらいときでも、そこにバラの花が咲いていれば、立ち止まってその花の匂いをかぐ心を忘れるな」という意味の英語のことわざです。
それ以来私の一番好きな英語の表現となり、彼の教えてくれた心とともに、大切にしていきたいと思っている言葉です。
ホームステイが終わるとき、中1の生徒とその家族とがどのようなお別れをしたかはご想像にお任せします。ただ、今でも彼らの心の交流は続いていると聞いています。
(そして、今年の本校の卒業アルバムの表紙にも、こっそりこの言葉が添えられていたりします(笑)。)
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