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楽器演奏者概論(その2)
★ドラマーのタイプ
小生の演奏活動の中で、過去に様々なドラマーを見て来ました。唸るしかない程ウマイ人から、反面教師にさえならないような人まで色々な人がいました。ここでは、アマチュアについてのみ述べます。
(1)オカズ命タイプ
多少の素質があり、楽器を始めてからの上達が早く、周りや先輩から「ウマイね」と言われ、自分でもそう思っている人が陥りやすい状態です。練習は、どこかから仕入れて来た「カッコイイ」フレーズしかやりません。もちろん、メトロノームも使いません(素質のお陰で、ある程度メトロノームに「合わせる」事はできるため、自分はテンポキープもできている、と思い込んでるフシがあります)。闇雲にそのようなフレーズを練習しまくって(しかも、速いテンポで出来るのを第一義とする)は、曲の中の思わぬ部分で使います。「そこでそれはないだろう?!」という苦笑が広がっているのも気付かずに、本人は気持ち良く叩いてます。良く分かってない人たちに「すごいねえ!」と誉められて、その気になっちゃってます。良いんですよ、素人受けするのは大切な事です。アマチュアの場合、聴いてる人は殆どが素人(家族とか、友人とかね)の場合が多いんですから。
ただし、音楽として捉えた場合、その人のは音楽にはなってません。ある意味「曲芸」でしかないんですよね。フリーのドラムソロは、そういう訳でものすごく上手かったりします。ところが、曲の中でグルーブすべき所で一向にグルーブしません。むしろ、他の人の出すビートに乗っかって、その部分の「パターン」をなぞっている状態です。と、オカズになると急に元気になって「カッコイイ」フレーズが出て来ます。落ち着くと、また他の人のビートに乗っかってヨレヨレしています。そもそも、自分がビートを出してバンドのグルーブ感の基礎を作るなんて事は夢にも思っていないため、他の人に掛かる負担(特にベース)が大きくなります。オカズも曲のテンポやストーリーを無視してドカーンとやってしまいます。バラードが苦手(スローテンポはなおさらキープできない)なのも、この種の人の特徴ですね。
(2)ビート命タイプ
先天的な感覚だと思うんですが、すごくグルーブします。大したフレーズをやっている訳でもないのに、(というか、むしろシンプルなプレイの中で特に)グイグイと引っ張られる、あるいはスムーズにドライブするビート感がバンドを包み込みます。他の人は、ビート感はドラマーに全面的に任せてそれに乗っかるだけなので、演奏の幅が断然広くなります。オカズも、例えば前項のような人よりはフレーズ自体はシンプルであっても、途切れない完璧なビートの中に添えられるため、カッコイイです。テンポが途中で変わってしまうのが玉に傷な人もいますが、それを差し引いて余りある、何にも替え難いビート感があります。なかなかいないんですよね、このタイプ。
(3)テンポ感無しタイプ
ビートも無ければテンポもない、君は一体、何を叩きたいんだ?! 申し訳ありませんが、多分音楽の素養が無いとしか考えられません。練習の仕方なんて、ある程度までは自分で考えて組みたてられるし、細かい話をする前に到達するレベルというのはあると思うんです。ドラムに対する憧れとか、ジャズか好きで、とかいう気持ちだけは買いますが、気持ちしか買えません。その気持ちを汲んで、高校生とか学生ならまだアドバイスのひとつもしますが、大人にはそこまでもできません。黙って聴くのみです。
(4)ヤル気なしタイプ(というか・・・)
高校や大学のクラブ活動の中では、こういう人も必ずいます。学生時代、自分の大学のフルバンで同じ1年生のドラマーがいたんですが、授業サボって練習室に入り浸る小生(何しろ楽器に飢えていたので、可能な時間は全て練習していました)に対し、彼は週2回の(当時ジュニアバンドの)合奏に出てきて、その時に与えられている2~3曲を交代で叩くも、あまり練習してないのでしょう、前回から進歩が見られません。その次の合奏でも同じです。しかも、合奏以外の時間に個人練習あるいは譜読みしておくべき内容が一向に進歩しない。切磋琢磨どころか、1分でも長く叩いていたい小生から見ると、小生の叩く時間(しかも、合奏となれば尚時間が限られる)を奪う奴という位置付けになってしまったものです。
友人としては悪い人間では決してないし、バンド以外では普通に接していましたが、ある時彼が、「このクラブに入って本当に良かったと思うよ。何がって、友達が出来て、一緒に飯食ったり遊んだり出来るのが一番良かった。」という趣旨の発言を(何を悪びれる事もなく)していて、何だよおい、と思ったものです(小生の大学は地方出身者の一人暮しが多いのは事実)。確かに他にも、授業が終わって夕飯までの間に、一緒に定食屋で飯を食うべき仲間と一緒に時間を潰す場所、ぐらいの態度の人もいましたし。良く言えば家庭的なのんびりした雰囲気のバンド(クラブ)故、そんな彼でも居続ける事が出来たのでしょうか、それ以外の様々な状況から、小生の求める物とかけ離れていたため、結局1年の秋には別の大学のバンドに移りました(彼は結局卒業までやったらしい)。
一方、小生の出身高校のビッグバンドクラブは顧問の先生は形だけで、OB・OG(良く行く人でも20代半ばまでですが)が現役の面倒を見るのを伝統としていますが、小生も卒業後は頻繁に行きました。実は<母>との初対面もそこで、OBと現役という立場でした。で、色々な後輩を見て来ましたが、幸いドラムの子達はヤル気に満ちて、楽器が好きでしょうがないという人が多いのですが、やはりたまに居るんです、箸にも棒にも・・という奴が。そもそも楽器が好きかどうかって、叩いてる姿を見れば一目瞭然、そうでなくとも時と共に上達して行く過程を見ていれば良く分かるものですが、これが全く見られないのも中にはいます。素養の問題であればそれも分かるので、その子に合ったアドバイスをするのですが、そういうのでもない。明らかに、ドラムに対して思い入れがないんですよね。それこそ、「ヌカに釘」「暖簾に腕押し」「馬の耳に念仏」とかその手の言葉が全て当てはまるんですよ。ドラムについて何か言われてる事は理解できても、それが自分の事とも思っていないような感じ。クラブとかでなければ、そういう人は強いられて練習するでもなく、自然消滅して行くのでしょうが、そういう集団の中ではそのような人でも居たいと思えば(楽器に対する興味に関わらず)居続ける事が出来るので、尚タチが悪い。「やめちまえ」と言えるのが一番楽なんですが、そのクラブではそれがタブー(特にOBからは)なんです。現役高校生が毎年、その手の音楽以外の議論をする所にも意義を置くというのも、このクラブの伝統です。ま、近年は議論すら無くなっているようですが。
(5)ブラバン出身タイプ
何しろ音がキレイなのが、この人達です。中学あるいは高校でブラバン(クラシック)をやってた人は、音の出し方が違います。パンク上がりの小生などは羨ましい限りで、学生時代に相当意識して練習してみたのですが、どう頑張っても彼らの域には達しません。基礎って本当に大切なんだな、と思い知らされる事しきりでした。
音がキレイだと、演奏の内容(ビート感とかフレーズとか)に多少難があっても、全部吸収してしまうんですよね。まず音に聞き惚れてしまいます。音楽に疎い方でも、細かい事はともあれ、気持ち良く聴こえるのは間違いないと思います。まあ、この種のドラマーは基礎練習をしっかりやる人ばかりなので、テンポ感もフレーズもしっかりしてるのが常です。たまに、ドラムソロの時に多少手数に物足りなさを感じたり、練習した事がないパターンを急に要求されて困る様子が見えたりしますが、すぐに(遅くとも次のリハまでには)それなりにして来ます。練習の虫でもあります。
(6)じゃあ自分は何なんだ
小生がドラムを演奏する場合のポリシーには以下のようなものがあります。
1.ドラムとベースは一体となってバンドの土台を強固に支える
テンポキープは当然ですが、時にはそれを犠牲にしてもフロントが演奏し易いビートを作り出す事も重要です。何しろ、バンドがドライブするための台車の両輪がドラムとベースだと思っています。
2.バンドのダイナミクスの相当の部分を担う
ドラムはどの楽器よりも、音量の大小がコントロールできる楽器です。抑揚は誰よりも大きく、自分がバンドの抑揚を決めるつもりで叩きます。
3.決して全体の邪魔になってはならない
前項で述べた事を踏まえた上で、それが音楽として成立しなければ何の意味もないので、必要以上に全面に出る事は避けます。出るべき所も沢山あるので、押し引きは非常に微妙ですし、バンドリーダーから修正されるのは大抵この辺です。
4.ソリストの呼吸を聞き、呼吸し易い合の手(オカズ)を添える
管楽器でもそれ以外でも、ソリストの楽器の「歌」を聴きます。その歌の、呼吸がし易いような、また呼吸(間)が長くなるようなら必要に応じて長めのオカズで呼応します。
更に、フルバンで叩く場合は、
5.管楽器のアーティキュレーションに合わせたアクセントを付ける
曲のメロディーを吹く時、管楽器は棒吹きはしません。適切なアーティキュレーション(物理的には、アクセントと非アクセントの組み合わせ)で歌いながら吹きます。これに合わせて適所でアクセントを付けたり、曲の音符と同じフレーズを叩く場合はスネア、タム、シンバル等で自分も「歌い」ます。ここでは、高校時代に2年半、まがりなりにもフルバンでラッパを吹いた経験が非常に役立っています。管楽器のアーティキュレーションは、教えられて理解するものでもないので。逆に、管楽器が充分に歌わない場合は、小生が付けるアクセントで表情を付ける事もあります。
また、練習する際に心掛けているのが、
6.必ずメトロノームを使う
どんな練習をする時にも、必ずメトロノームを鳴らします。理想は、例えばひとつのフレーズを練習する場合でも下(60程度)から上(三連譜系なら200程度)まで最低でも「8」刻み(時間があれば「4」刻み)でテンポを変えながら全てのテンポで練習します。聞こえなければ意味がないので、セットでやる場合はアンプも使います。自分の演奏をメトロノームに合わせるのではなく、メトロノームのテンポが自分のキープするテンポの演奏に合っている(決して、「メトロノームに合わせる」事はしない)、という状態まで出来たら、次のテンポに移ります。また、1つ打ちのように高度に集中できる場合は、メトロノームの音の幅(「ピッ」という一瞬の音にも、集中して聴くと必ず長さがあります)の鳴り出しと自分の音の鳴り出しをピッタリ合わせる所まで意識を高めます。
これは、学生時代は実際にやってました。今よりは当然時間も沢山あったのですが、これを完璧にやるにはさすがに時間が足りず、多少間引きながらになりましたが。
7.自分の演奏を録音する
よく「自分の演奏の録音なんて聴きたくない」という人がいますが、「上手くなりたくない」と言っているも同然です。自分の演奏が下手なのは百も承知なんですから、敢えてそれを聴いて、自分のイメージとの違いを見つけて何をすべきか見出す事が、上達の早道であるとは思わないのでしょうか。また、下手な中にも必ず、僅かでも光る部分があるはずなのです。それを次回以降にも意識して繰り返す事を積み上げて行けば、光る部分がどんどん増えて行くはずなんです。実際、自分もそうしていますし。社会人になってからは練習時間が限られる事もあり、これは最大限実践しましたし、足りない時間を相当補ってくれたと思っています。
・・・という理想論と、小生の演奏がどうかというのは別問題ですし、自分で自分のタイプを分類するのは難しいですね。強いて言えば、目指しているのは上記2のタイプです。
平成14年11月2日
Coming soon・・・
★バンドの一体感と演奏者の集中力★
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