彩感(つれづれ日記と社労士受験)

彩感(つれづれ日記と社労士受験)

懲戒解雇

あなたは死刑判決を受け入れますか?

懲戒解雇は、退職金や予告手当の不支給、再就職に対する不利益など、雇用保険の3か月の給付制限及び給付期間が短くなるなど、いわば労働者に対する極刑であり、その適用については厳格な制限があり、法規制に密接にかかわってくるものです。



それにもかかわらず、個人商店やワンマンな経営者がいる会社では、いとも簡単に懲戒解雇が行われ、労働者の権利が侵害されています。

経営者なら、もう少し社会通念なり法律なりを勉強してほしいものです。



懲戒解雇が適法に行われる条件とは、下記の通りです。



1、罪刑法定主義の原則

行為の時に就業規則等に規定にない事項で懲戒解雇をすることはできず、またその適用に類推解釈は禁止されています。すわわち、就業規則に書かれている事項と似たようなケースだからという事で、懲戒解雇はできません。難しく言えば、列記主義を採用し、就業規則に書かれている事項は一般例ではなく、その事でなければならないとされています。



2、平等待遇の原則

Aという人は上司の評判がよかったので、甲という行為に対し減給処分で済んだが、Bは上司から疎まれていたので、懲戒解雇にしたということは、もちろん禁止されています。



3、相当性の原則

処分の対象となる行為と処分の重さはバランスのとれたものでなければならず、就業規則に規定があっても同じです。裁判の判決文によく出てくるのですが「被告にとっては酷なので・・・」という解釈です。



4、一時不再理の原則

同じ行為で、2度も3度も処分することは許されません。その行為に対し一度処分を行っておきながら、後でその処分が軽すぎるから改めて重い処分を下すようなことはできないのです。



5、個人責任の原則

他人の行為に対して、連帯責任は問うことはできません。ただし、上司の管理責任は例外です。



6、公正手続きの原則

気に食わないからといって即日解雇はできません。就業規則の手続きに沿わない懲戒処分や、本人の弁解を一切聞かないなど、手続き的に不公正な処分は無効となります。

この事から、懲戒解雇は原則として即日解雇はできないものと考えられます。



さて、問題なのはあなたが会社から懲戒解雇を通告されたとき、どうしたらよいのかです。



順番を追って説明します。

まず会社に確認すること

1、解雇事由を確認する

会社が懲戒解雇を通知するからには、それなりに理由を用意しているはずです。それを確認しましょう。と共に、解雇事由を明記した退職証明書を要求してください。労働基準法で労働者に理由を付記した(労働者が要求した場合)退職証明書を書面にて渡すことは、義務付けられています。これを会社が拒否した場合、労働基準法違反になります。解釈では、「遅滞なく」とされていますので遅くとも1週間以内には発行しなければなりません。



2、予告除外認定を受けたのか

予告手当のページで説明しましたが、会社はこの認定を受けない限り予告手当の支給をしなければなりません。(即日解雇の場合)

もとより、いきなり即日解雇を言われた場合は、労働基準監督署から予告除外認定の申請に関する問い合わせが来ていないことから考えても、会社が申請を出している可能性が低いと考えます。



自分で確認すること

3、解雇事由が懲戒解雇に相当する事由なのか

繰り返し説明しているように、懲戒解雇事由はよほどの事がない限り、該当しないものです。あなたの言われた解雇事由が該当するのかどうか、一番確かな方法は、過去の判例を調べることです。地方裁判所のホームページを見ると、さまざまな判例が公開されており労働紛争事件もたくさん載っています。その中に、必ずあなたのケースに似た判例があるはずです。または、労働関係の本を読んでみるのもいいかと思います。

もちろん、法律の専門家(弁護士・司法書士・行政書士等)に相談してみるのも、有効な方法です。ただ、それぞれの専門があるので、労働法に詳しい人でないと親身になって相談にのるとは限りません。何人か当たってみる必要があります。もちろん、個々でその判断が違うことは当然予想されます。

その他、都道府県の労働局も相談を受け付けています。(労働基準監督署でも相談は受け付けてくれるのですが、監督署は明らかに違法である場合を除いて判断することができないので、このような民事的な事件にはあまり明確な回答をしない傾向があります。)



ちなみに判例では「懲戒処分に当たるかどうかの判断は、その行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸事情から総合的に判断して、その行為により企業の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。」としています。



4、解雇事由に相当性がないと確信した場合

いろいろと確認した結果、解雇事由に相当性がなく異議を唱えようと決めた場合、まずやらなければならないのは、その意思表示です。

ア、会社に対し、証拠の残る形で異議を申し入れる(内容証明が最適です。)
イ、労働基準監督署に、当該懲戒解雇を報告し、予告除外認定の申請の有無を確認する。と共に、当該懲戒解雇には異議がある旨を伝える。(もし会社が、事後に予告除外認定の申請を提出してきた場合に、配慮をしてもらえる可能性があります。)

ウ、公共職業安定所に会社からもらった離職票を提出し、おなじように異議がある事を伝え、給付制限など、検討してほしい旨相談する。適切なアドバイスをもらえるはずです。



5、予告手当について

くわしくは別ページで説明していますので、参照してください。ここでは、ちょっと難しい話をします。頭のいい会社では、後々裁判等の紛争になったときの事を考えて、解雇時は労働者に懲戒解雇を通知しておいて、その後予備的に諭旨解雇を通知することがあります(予告手当を支払う)。

この意味は、もし懲戒解雇だけを通知したときはその懲戒解雇が無効かどうかを争うので、無効であったならば解雇そのものがなくなり、社員としての地位が復活します。前述したように、懲戒解雇の要件は非常に厳格なので、無効になることが多いのです。一時不再理の原則からも、そうなれば堂々と会社に復帰できます。

ところが、会社が予備的に諭旨解雇を通知していれば、例え懲戒解雇が無効になっても次にこの諭旨解雇の有効性を争わなければなりません。諭旨解雇の条件は、もちろん懲戒解雇より緩いのでこの有効性は非常に微妙な部分で争うことになるのです。

いわば、予備的に普通解雇を通知することは会社にとっての保険です。懲戒解雇の無効判決がでれば、会社は数百万単位で損害賠償金や補償金等を払わなければならないので、予告手当で済めば安いものなのです。



6、行動を起こす

あとは、あなた自身の権利を守るため行動を起こす事です。具体的には「解雇の無効」のページを読んでください。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: