日常・・・

日常・・・

リッカー (第三章)



マニーはその姿を目の当たりにし、腰を抜かした。
外見恐竜。高さは約六メートル、全長は十五、六メートルほど。口は長くくびれていて、背中には大きな帆がある。立っている後ろ足はガッシリと、前足は頑丈で太くなっていて、凄い武器になりそうだ。
そんなことをマニーは考えていたがあることに気付いた。
―ゼイドのバッグだ・・・―
恐竜の足元には、船の中で配られた高性能爆弾が転がっていた。その長い筒には赤い液がついている。まさか・・・。
マニーはそれを持ってきたデジタルカメラでそっと撮影すると、身を引くことにした。
しかし、まさに行動に移したとき、向こう側から悲鳴が聞こえた。
見ると恐竜の向こう側に唖然と立ち尽くしているバランが見えた。恐竜は大きなつめでバランを攻撃した。
バランは何とか交わす。更に口を出し、バランをくわえようとしたがそれも交わす。
その隙にマニーはバランから貰った小型ミサイル発射装置を取り出し、恐竜に構えた。
ただの筒状の物なので発射には適さなく、更にかなり軽く本当に小型ミサイルが入っているのか、怪しく思えてきた。一発使い捨てのようだ。
そしてマニーは恐竜の背びれに向かって放った。しかし、小型ミサイルということで大きな恐竜にはまったく効果がない。恐竜はなおも暴れている。
次の瞬間、恐竜の前足の大きなつめが逃げるバランの背中をかすめた。しかし、もう一振りしてきた。それがバランの太ももを直撃して、バランは崩れ落ちた。
更に恐竜が止めを刺そうというとき、マニーがH&K MP5A3を恐竜に向け連射した。恐竜は少し痛がるしぐさを見せた。そしてマニーは小型爆弾のスイッチを押し、恐竜の足元に近づいた。
暴れる恐竜はマニーを振り払おうと必死になる。しかし、マニーは恐竜の足の間に強引に筒状の爆弾を押し込み、倒れているバランの元へいき、気の根の近くに押し込む。
次の瞬間、恐竜の足元で小型爆弾が爆発した。それに怯えたのか、恐竜は奥へ逃げていった。
「大丈夫かバラン?」
マニーはバランに問いかける。バランに意識はあったようだ。
「大丈夫だ・・・」
マニーはバランの傷を確認した。太ももに傷が付けられていて、かなり傷が深く出血が酷い。
「早いとこ戻ろう。バラン、片足で立てるか」
マニーはバランの傷を簡単な止血をし、何とか片足で立たせ歩を進めた。
数分後、やっとの思いでマニーはバランを抱え、隊長やネイオがいる砂浜へ辿り着いた。行く時は短かったが、帰りはかなり長い距離に感じられた。
「大丈夫かバラン」
二人を確認したナイズが早速駆け寄る。
「ネイオ、スコット。マニーたちが帰ってきた」
船の中で武器の手入れをしていたネイオ、スコットにマインが声をかける。
ネイオはかなり心配していた。あと五分で帰ってこなかったら確認に駆けつける予定だった。
「大丈夫なのか」
スコットがネイオの気持ちも一括して代弁する。
「俺は大丈夫だ。しかし、バランが怪我をした。太ももの出血が酷い。カプラン、応急処置を頼む・・・」
カプランはバランを背負うと船の中へ連れて行った。
そして海岸に残された者たちはあることに気付いた。スコットがそれを発言する。
「なぁ、ゼイドはどうしたんだ・・・?」
スコットの言葉にマニーは一瞬顔を背けた。隊長、ネイオ、スコット、マイン、O・B、ナイズがマニーの顔をまじまじと見る。マニーは耐えられなくなり、ついに打ち明けた。
「ゼイドは死んだ・・・」
一瞬、皆の顔が硬直した。そして、何故、という疑問がやってきた。マニーはそれを察知した。
「今のうちに説明しておく、この怪物に襲われた」
マニーはバッグからカメラを取り出し、先ほどの画像を見せる。
隊長らは信じられない怪物の画像を見て、唖然とした。
「これは一体なんなんだ・・・」
O・Bは画像を見て、つい言葉を発してしまった。
「これは・・・恐竜の一種だ」
ネイオが何とか言葉を発すると、今度はネイオに皆が注目した。
「あくまで推測だけど・・・今から一億年ほど前に生息していた恐竜の一種の可能性が高い・・・。映画かなんかで見たことがないかな?スピノサウルスといって肉よりは魚を好む恐竜だが、肉も食う。大きさはそれくらいのはず・・・。でも、何でそれがこんなところに・・・」
ネイオは知っているだけの思考を回しそれを伝えた。
すると、今まで黙ってなにやら考え込んでいた隊長が口を開いた。
「・・・それがそのスピノ・・・じゃないとしても、その怪物がいることは事実なんだな?」
隊長は右腕のマニーを見つめる。マニーは頷く。しかしO・Bがそれに反論する。
「そんな画像、事前にパソコンか何かで作れたりするもんだろ。合成かなにか・・・。それを俺達に見せ、お前がゼイドを殺したって事はないのか?バランの傷だって・・・」
「それはないだろ。人とは思えない鳴き声も聞こえたし、バランの傷も人口では不可能に近い形だった・・・。マニーがやったって事はないだろ」
隊長はマニーを信じているようだ。
そしてスコットが隊長に聞いた。
「それより今後の動きはどうします?怪物もいるようです・・・生存者もいないと思いますが」
「いや、これから地下通路へ向かう。命を無くしてでも生存者を捜し出すのだ。分かったな?」
隊長は厳しい口調で話し、地下通路へ移動する準備を始める。
隊長がテントの器材を持ちながら先頭を。続いてマニーも器材を持ちながら。カプランがバランを背負い、ナイズが色々な荷物を持ちながら続く。しんがりをO・B。ネイオとスコットは脇で銃を構え警戒をしている。
しばらく歩いていると地面にマンホールを思わせる、シルバーのふたのようなものがあった。取っ手がついている。
「これだ・・・よし開ける・・・」
隊長が力を込め、ふたを上にあげ、開けたが意外と軽く簡単に開いた。
「この中に入れ・・・。何とか入れるだろ」
直径一メートルくらいだろうか。梯子がついており、下に降りられるようになっている。ネイオが先頭に入ることになり、一番初めに地面へたどり着けた。
中は幅六メートルほど、高さは三メートルほど、床も鉄のタイル、壁も鉄のタイル、天井も鉄のタイル、すべてシルバーの鉄のタイルである。歩くたびにこつこつと音が鳴る。
ネイオは安全だと隊長らに伝えて、隊長ら全員を何とかおろした。
「暗いですね・・・ライトをつけましょう」
ネイオは隊長に提案すると、小型ライトを取り出して奥を照らした。
かなりの奥行きがある。
「よし、これからこの一本道を進む。距離はかなりある。しかし、何か危険があるかもしれないから、気をつけて行動しろ」
隊長が皆に知らせる。隊員達はわかったとばかりに返事をする。
―――――それから二、三時間は歩いただろうか。一行はついに、通路の一番奥まで来た。
正面は壁で道が終わりだと分かる。
「隊長、これでこの通路は終わりのようです」
アフリカ出身のマインが叫ぶ。
道は終わったようだが、出口はどこにも見当たらない。
するとスコットが上に何かを見つけた。
「隊長、上から出られるんじゃないですか?ほれ、梯子もついています」
スコットは側面についている梯子をさす。よく見ると上に続いているようだ。
「でかしたスコット。これで出られる」
隊長はスコットを褒めて伸ばしたあと、今度は先頭に立って梯子を上る。
同じようにふたがかぶっていたが、これは強引に頭で押し開けた。
開けたとたんに光が差し込み、かなり涼しい風が入り込んできた。
「久しぶりに光を浴びたぜ」
ナイズが牢獄から出た囚人のような言い方をする。
でも確かに久しぶりに光を浴びたような感じがする。懐かしい気もした。
「ネイオ、早く出ろよ」
O・Bにせかされて颯爽と地下通路を出た。光がまぶしい。
「よし、これから偵察行動に移る」
マニーは個人的にはもう偵察はこりごり、と思ったが今度はカプランと怪我をしているバラン以外は周りの偵察に向かうということになった。
しかし、ここでカプランが提案を出す。
「すいません。勝手なんですが誰か一人補佐が必要なんですよ・・・。仮設テントの設置とバランの世話は一人ではとても・・・」
「いいや、俺は一人で大丈夫だから、お前はテントの設置に・・・」
バランが世話を焼かせないよう、必死でバランをおさえたが、隊長はナイズをカプランの補佐に回した。
「よし、さっきのこともあるから慎重に見回れ。もしなんかあったらすぐに報告するんだ。駆けつけるからな」
隊長はまた、決まり文句をいい偵察に入った。



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