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最終章 【CLOSE】
マックスとサーフは、地図には確認されなかった謎の部屋の探索をしていた。
「ここはなんなんだ」
「それが分かった苦労はしないさ」
マックスは呟き、部屋の外に出た。
のっそりのっそりとゾンビ共が近づいてくる。
しかし、かなり遠くであるのであと四、五分は大丈夫だろう。
ふとマックスはひらめいた。
「俺達の任務内容を覚えているか?」
突然質問する。
「ああ、確かここの動力源を止める、だった気がする。でも色々あって、それどころじゃなかったけど」
サーフは確実に答えた。
そしてマックスは自分の考えを話し出した。
「そうだよ!ここがその主動部分だ!恐らく侵入者に確認されないようにデータから消し、
こんなに人目につかないところにおいたのだろう・・・」
「そっか!だったら、ここをとっとと爆破かなんかすれば・・・」
サーフは希望じみた声で、マックスを見つめる。
「そうだ。任務達成だ」
マックスは小さく笑いながら呟いた。
レベル1のホール部分に、スーパーアンデットが歩いていた。
ショットガンを片手に、ひっそりひっそりと歩いている。
すると、ホールの壁に小さめのリッカーが数体張り付いていた。
これは、アローンを殺しかけたリッカー達だろう。
スーパーアンデットを確認すると、リッカーは瞬時に飛び掛ってきた。
それをモスバーグ銃で軽く撃ち落す。
一体が倒れると、別のリッカーがのしかかってきた。
スーパーアンデットの顔に張り付く。
それを強引に払いのけると、ショットガンで何度も何度も撃ちまくった。
最後の一体は、強引なとび蹴りで気絶させた後、強力な筋肉の付いている腕を引きちぎった。
最後の一体の死を確認すると、スーパーアンデットは雄たけびを上げた。
ホール中に響き渡る。
・・・その響きが消えかかったころ、スーパーアンデットの背後に人の気配を感じ取った。
スーパーアンデットは銃を向け、引きがねを引いた。
相手には命中したものの、そいつは微動だにしなかった。
スーパーアンデットは、その脅威の敵を確認した。
そこに立っていたのは、自分より数段大きく、体は人間なもののその皮膚にはリッカーの特長を
兼ね備えている、リッカーアンデットが立っていた。
驚きの声をあげ、スーパーアンデットは一歩後退し、もう一度銃口を向けた。
しかし、リッカーアンデットに瞬時に銃を取り上げられた。
そしてリッカーアンデットはスーパーアンデットの腹に右拳を入れた。
そして長い爪の生えている左手で胸を切り裂いた。
スーパーアンデットは力尽きて、倒れこんだ。
リッカーアンデットは銃を拾い上げ、何処かへ向かい始めた。
「やっとレベル3にあがれるぜ」
スコットは、目の前に見えた階段を見てそう呟いた。
「ここはサブ通路だ。あまり使われてないんだろう。俺達も来る時はメインの方からきた」
とクロウが解説したとき、電気が当然消えた。
「何だ!?」
「また電気室で誰かが切ったのか!?」
全員が自然に慌てだす。
しかし、次の瞬間に非常電源に切り替わった。
「なんだったんだ?」
ルークが誰とも無しに質問する。
そして沈黙が降りる。
それをネイオが破った。
「登り続ければもうレベル1だ。登るか!」
ネイオが気合を入れ叫んだとき、足元の床が動いた。
「何だ!」
ネイオは銃を構え、動いた床を見つめなおす。
スコットたちも同じように銃を向けていた。
すると、一部の床板がパカッとはずれ、人間が出てきた。
「マックス!?」
マックスが床を伝って出てきたのだ。
続いてサーフも出てきた。
「サーフ!・・・どうしてこんな床から!?」
スコットが歓喜あまって尋ねた。
「ああ、レベル5の何処か通路を歩いていたら壁際に梯子があったから上がってきた。
そしたらここに出た。お前達とは偶然だな」
マックスが一人、解説する。
そしてスコットが切り出した。
「よし、行くか」
「待て。重要なことがある」
サーフが階段を登ろうとするスコットを止める。
「なんだよ?」
サーフは一息入れ、説明を始めた。
「俺達の任務目的はなんだった?恐らくほとんどが忘れていると思うけど、ここの動力の切断だった」
“動力の切断”という言葉を聞いて、ネイオは慌てだした。
「ああ、やばい。完全にそれを忘れてた・・・でも今は脱出に重点を・・・」
「あ、そんな心配はいい」
サーフがネイオを静止する。
「俺達が下の通路を歩いていた時、それらしきものを破壊した。だから主要電気は消えたんだろう。
今は余っている電力を非常電源として使用しているらしい。でも長くは持たない」
「だから・・・何よ?」
長ったらしい説明に、スコットが水を持ち込んだ。
「だから・・・ここの動力は完全に停止したから、もう脱出しようってこと」
サーフは多少イラつきながら返答した。
「よし、今度こそ・・・登るか!」
ネイオは気合を入れなおし、階段へ向き直った。
「失礼します、私はアンサー・ドアー警部補です」
最高司令室の扉が開いて、中年の男が入ってきた。
ソニックはなにやら威厳を持ったような感じで対応する。
「どうも。私がアン・ソニック。そこの椅子に」
ソニックは、手前のソファにドアーを招く。
そして、小さなテーブルを挟み、自分もソファに腰掛ける。
二人が座り込んで、一瞬の沈黙が流れる。
「で、私になんのようです?」
ソニックが切り出した。
「はい。今回、あなたはアローン社の地下研究施設に数名の特殊部隊員を送り込みましたね」
「それがどうした・・・というか、何でそれを知っている?最大の極秘任務のはずだ」
ソニックが疑い深げな顔をする。
「まず目撃情報です。あのビルに数十名の人間が入っていくというのを目撃した人が何人か居ました。
それにヘリの音もなんだかんだで聞き取られていました。これは、普通にありえますね?」
ドアーは詳しい説明に入る前に、いくつか余談を加えているのが分かった。
「そうか、あそこに入ったのがいけなかったか・・・」
「違います」
ドアーはさらっと否定する。
「では何だ!」
成り行き上、ソニックの声も荒れている。
「あなた方は何であそこがアローン社の地下研究施設だと分かったんです?」
いかにも刑事らしく、ソニックに尋ねた。
「特殊部隊の情報収集力を馬鹿にするなよ!お前らこそ、何であそこが研究施設・・・」
「簡単。あなたが以外の特殊部隊員に聞けばすぐ分かりましたよ。きちんと敬意を払う」
嫌味っぽく、ソニックに言葉を浴びせる。そして続けた。
「しかしですね。皆さんに聞いてみたたところ、あなたが一番最初に見つけたそうじゃないですか。
情報収集班に友人がいるんですよ。彼らではなく、あなたが見つけたといってます。
大体、あんな隠れたような場所になっているところ、普通は発見できませんよ。
見つけるのにも一苦労だし、それが研究施設と判明するのなんて、実際入らないと無理なんですよ。
それをどうやって見つけたか・・・あぁ、どんどん疑問は膨れ上がってきましたよ」
ドアーはソニックの顔をチラッと見る。
「偶然データがもれていた・・・それで発見できた」
先ほどとは変わって、今度は沈黙が流れる。
しかし、その静寂をドアーが破る。
「ふうん・・・それなら納得できる。最強の特殊部隊員だったんでしょうからね」
「だろ?」
ソニックは勝ち誇ったように返す。
しかし、その勝利の言葉も、さらに返された。
「しかしながら君はこういったらしいじゃないですか。『施設の動力は切れている』と」
ドアーはソニックの顔をまじまじ見ながら訊く。
「言った」
「なら、何で今回の任務の内容が「施設の主要電力を切れ」・・・なんでしょうか?」
最初は、この大きな矛盾点に気付かなかった。
ソニックは首を小さくひねった。
「説明不足ですか?矛盾しているんですよ?」
そして、だんだんとソニックの顔が青ざめていった。
ドアーは腰に手をかけた。
「まずかったですね。任務内容が施設を完全消滅・・・とかなら我々も対処できなかったんですが・・・
作戦の名前・・・という小さなにも頭を回すべきでしたね」
そして手錠を取り出して、ソニックの前に立った。
「アン・ソニック・・・逮捕する。詳しいことは後々な」
そういうと、入り口から数人の警官と、銃を持った特殊部隊員が入ってくる。
「なんでだ!?なぜだ!証拠は何もないはずだ!」
ソニックが立ち上がりながら口調を荒げる。
しかし、ドアーがソニックのデスクにおいてある電話を指差すと、話し始めた。
「その電話!その回線を通じて我々は解析も出来ます。どこから、だれが、
どんな内容の電話をかけてきたか。そして忘れてはいけません、
どうやって2008年に前任のランコア最高司令官の死後、
突如それほどの地位でなかったあなたがこの地位に着くことになったのか。
あなたは記録に無い・・・本当に突如現れた人物なんですよ。
まぁ、詳しい事は署で話してもらいますよ」
「よし、来たぞ・・・」
サーフは叫んだ。
「ここはレベル1だ!後は主要通路、つまりここみたいな広い通路をたどれば出られる!」
電子地図を見ながら歓喜の声をあげた。
「やったぞ、脱出できる」
キットは安堵の顔をして息を弾ませた。
「よし、行こうぜ。外に出たいからな!」
スコットは声を喜ばせる。
一行は歩くたびに、次第に早足になってきているように感じた。
ここを出たら、地下トロッコに乗って、色々歩いて、外に出て、歓迎されたい、と誰もが思っていた。
「もうすぐ脱出できるぜ」
ルークも次第に明るくなってきた。
しかしガムだけは吐き出さない。
クロウだけが、銃を構えてそこら中を警戒している。
しかし、さすがに足取りは急いでいる様に感じる。
「見ろ、ホールだぜ!」
スコットが叫び、そして駆け出した。
「待てよ!」
ネイオが止めるが、スコットはホールめがけて走り出した。
「仕方ないな」
ネイオは全員に、顔で合図し一同もスコットを追う様に走り出した。
スコットは足は早かった。
バスに勝っただけある・・・いや、勝って無いが。
そしてスコットがホールに出た。
すると、突然右から鉄拳が喰らわされ、スコットは吹っ飛んだ。
「スコット!」
「おい!」
ネイオを筆頭に皆、思い思いの言葉を叫んで吹き飛ばされたスコットの元へ駆け寄った。
しかし同じように、飛び出たクロウも鉄拳を食らわされた。
クロウが吹っ飛ぶと同時に、今度はキットが左拳で殴られた。
ネイオは銃を構え、戦友三人を殴った正体を見た。
「おいおい・・・」
ネイオは驚愕した。
表面は腐っているような肉もあるが、ほとんどリッカー。しかし二本足で立つ姿はそれこそ人間である。
身長は二メートルを超え、肉体はまるでボディビルダーのように大柄・・・
リッカーアンデットがそこには立っていた。
ネイオは事実を受け止めると銃を構えた。
しかし、荒れた顔を良く見ると、何か懐かしい気もしてきた。
「・・・まさか・・・確か・・・ジムか!?」
――――2006年
ネイオたちが死闘を繰り広げたあの島から脱出した。
そしてスーパーアンデットに銃殺されたジム・タイフォの死体だけ取り残されていた。
ヘリコプターでその島に降り立った者がいた。
黒ずくめの衣装、アローンである。4年前なのでいまより若い。
彼はジムの元まで行くと、まじまじとその死体を眺めた。
「ウイルスは注入されていないのか・・・ならば、一からあの実験に使えるな」
アローンはジムの死体をそのまま担ぎあげると、ヘリコプターで島を後にした。
――――2009年
やっと研究開始だ。保存しておいたジム・タイフォの死体をLウイルスで浸っている
水槽の中に投入する。幾つもコードもつなぎ、体内にもその液体を注入させる。
「まずは細胞の再生だ・・・」
彼はそう言ってとある資料を見ている。
その資料こそ、「リッカーアンデット 製作に向けて」なのであった。
「お前はジムなのか!?」
そんなことを思っていると気付かぬ間に吹っ飛ばされていた。
床に打ち付けられて、かなりの衝撃が走った。
皮肉なことに、意識は失っていない。痛みとじっくり向き合う時間だ。
しかしもしあの怪物がジムだとしたら・・・いや、ありえない、そんな恐ろしい話などあるものか。
ネイオは一人で首を振る。
隣にはスコットが同じように倒れていた。
「・・・おお・・・ネイオ・・・お前も吹っ飛ばされたな」
「何だ、元気・・・じゃないか・・・」
ネイオは痛む腹を抱えながら呟いた。
「スコット様をなめんなよ!」
そういうとスコットは立ち上がった。
そして背中についていた筒状のものを構えた。
小型ロケットランチャーである。
「やめとけ・・・こんなところじゃ響いてうるさいぞ。というか、お前命中率少ないだろ!」
「見てろよ・・・火事場の馬鹿力だ!」
スコットは、抵抗するサーフを攻撃しているリッカーアンデットに、発射口を向けた。
「やめておけスコット。当たらなかったやばいぞ・・・」
そういっているネイオの肩に、ぽんと手が置かれた。
そこにいたのはクロウだった。
「賭けてみるんだ」
そしてじっくりとスコットを見た。
「くたばりやがれ・・・」
そういって、スコットは引き金を引いた。
大きな音がホールに響く。
発射されたロケットはリッカーアンデットめがけて、まっすぐ向かっていった。
そして・・・
「命中したぞ!」
銃を片手に撃ちまくっていたマックスが叫んだ。
リッカーアンデットは肩に着弾したロケットに吹き飛ばされ、受付の辺りまで吹っ飛んだ。
「ひゃっはーー!俺最高だぜ!」
スコットが使い捨てのそれを捨てると、再びマシンガンを構えた。
「ネイオ!今のうちに逃げるぞ!」
マックスはルークとサーフを呼び、倒れているキットを起こし、ネイオらのもとへ駆け寄ってきた。
ネイオは頑張って起き上がった。
「急がなくても大丈夫だ・・・奴は俺のヘッドショットでしとめた・・・」
スコットが自慢した時、ホールの向こうの通路から四速歩行でのっしのっし歩いてくるものが目に入った。
ワニのように貫禄のある歩きをしている。
一目で分かった。
「リッカーめ・・・」
クロウが呟く。
「逃げよう。ほら早く」
ネイオはみんなを急かすと、ホールを歩き、出口へ向かう長い廊下を歩き出した。
リッカーはホールにたどり着いた。
先を逃げる人間達が目に入った。
すぐさま腰を曲げ、猛ダッシュの体制に入った。
しかし、すぐ脇に倒れているものに目が留まった。
リッカーアンデットである。
同士だということは、リッカーもすぐ気付いた。
いくら脳が小さいからといって、そこまで判断できないわけじゃなかった。
リッカーアンデットは腰を上げた。
しかし、その行動はリッカーに対し、食ってくれ、と宣言するようなものだった。
幼体を瞬殺したリッカーアンデットも、成体のリッカーには部が悪い。
腰を上げた瞬間、リッカーは同士に飛びついた。
リッカーアンデットは強靭な足腰で避けると、右の爪をふる。
しかし、空振りをしてしまい、リッカーの前足の爪が、先にリッカーアンデットの腹を切り裂いた。
とどめを、と思ってリッカーはもう片方の腕を振った。
しかし、身の危険を感じたのか、リッカーアンデットは後方に宙返りすると、ネイオたちが先ほど
走ってきた通路を戻り始めた。逃げたのである。
リッカーは逃げた同士に雄叫びをむけると、今度は出口を通ずる通路を見た。
奥では人間達が走っている。
リッカーは、その人間たちめがけて走りだした。
その人間達、もちろんネイオたちである。
殿をいくマックスは、チラッと後ろを振り返った。
するとリッカーがこちらへ向かって走ってくるではないか。
「やばいぞネイオ!来た!リッカーが来たぞ!」
ネイオはマックスの言葉を聞いてあせった。
「クソ!もうきやがったか・・・」
そしてさらに速く、オリンピック選手並みのスピードで走り出した。
ようやく前に扉が見えた。
「扉だぜ!」
ルークが叫んだ。
ネイオ、スコットが先頭で入り、クロウ、キット、サーフ、ルークが続く。
マックスも扉に入るため、手前の小さな階段を登った。
銃でリッカーを牽制しながら後ろ向きで走っていたため、その段につまずいてしまった。
「マックス!」
ネイオはマックスの手を引っ張り、こちら側に引っ張ろうとした。
しかし、リッカーも追いつきマックスの足に噛み付いた。
「くそぉ!」
マックスが悲鳴をあげる。
スコットがもう一回、ロケットランチャーを構えた。
しかし、至近距離ゆえマックスに当たったらしゃれにならない。
スコットは諦めて、ネイオに手を貸し共にマックスを引っ張る。
クロウも銃を構えて、引き金を引いた。
しかし、弾は発射されなかった。
「マジかよ・・・」
弾切れである。
「もうマシンガンの弾は無い!」
クロウは一人叫んだ。
特殊部隊員とリッカーはマックスの争奪戦を行っていた。
マックスの手をつかんでいるのはネイオである。
「クソ!マックス、離すな!・・・」
ネイオは必死でマックスを引く。
「マックス!耐えてくれ!」
キットもそう叫ぶ。
しかし、マックスは何を思ったか切り出した。
「離してくれ」
「は?」
「離せといったんだよ!」
「何でだよ!」
状況がうまく飲み込めないネイオは何度か聞き返した。
マックスが苦痛に歪む顔で、オールを示した。
「名案がある」
ネイオはオールを見た。
そして気が付いた。
「・・・おい・・・まさか」
「そのまさかだ」
マックスは呟いた。
「離すんだ」
ネイオはマックスを見つめた。
「しくじるなよ・・・」
「ああ・・・」
ネイオは手を離した。
悲鳴と同時にマックスは引きずられていく。
キットから新たな弾をもらって、マシンガンを連射しようとリッカーに銃口を向けた瞬間だった
クロウは、あまりに突然だったのであっけに取られてしまった。
「あんたら正気かよ!」
クロウの叫びに、スコットが説明をする。
そしてネイオは扉を閉めた。
今回は暗証番号入力は不要だ。
「何で離した・・・なんで離したんだ!?」
ルークがネイオに迫ってきた。
「何で離した!!」
ルークがネイオの胸倉を掴む。
「おいおい、よせルーク」
スコットが止めに入る。
ネイオはうつむいていたが顔を上げた。
「マックスは・・・これの・・・」
これ、と言ってオールを指した。
「オールの裏機能を使ってあいつを倒す気だ」
そういうとキットとサーフ、ルークは一歩足を引いた。
「それって・・・」
「ちょっと待て、どういう意味だよ」
スコットが訊く。
「お前オールの裏機能を知らないのか?」
クロウがスコットに言う。
「そのオールはたくさんの目的で使えるんだ・・・」
間を空ける。
ネイオもスコットをまじまじと見つめる。
「オールの裏機能・・・時限爆弾だよ」
足を引きずられている時、マックスはオールを操作していた。
メニュー画面から「裏」というところを選択する。
パスワード入力画面になって、パスワードをすばやく入力した。
すると、「時間入力」という画面に移った。
「ふん、一分だな・・・」
マックスはそういって「1」のボタンを押した。
しかし次の瞬間、マックスは思い切り持ち上げられてリッカーの口の中へダイブした。
最期の瞬間、マックスは今までの人生を振り返った。
(さらば友よ・・・)
それっきり、意識は切れた。
しかし、不運なことが発生した。
マックスが飲み込まれる瞬間、「3」ボタンが決定ボタンを押す前に押されてしまっていた。
つまり・・・13分・・・
「速く逃げるぞ!サーフ!早いところ出発だ!」
今度は操縦感があるところが一番後ろの列だ。
サーフはそこに乗り込む。
全員が乗り込むと、ゆっくりと進み始めた。
「早く・・・早く・・・早く」
スコットは呟き続けていた。
そして、ようやくトロッコはスピードに乗り始めていた。
「ふう・・・もう大丈夫だろうな」
ルークが呟いた。
「マックスは残念だった・・・」
クロウが突然ネイオに向かっていった。
ネイオは明るい笑顔で答える。その笑顔は、無理に作り出しているのが素人でも分かった。
「カルロスやユアンも・・・帰ったらみんなをきちんと送らないとな」
「今回も生き残るとは、お前やっぱり何か持ってるぜ」
ルークがネイオにむけてそんな言葉を発する。
「いやいや、俺だけじゃない、みんなの協力で・・・」
ネイオがそういったとき、一番後ろの列にいたサーフが叫び声をあげた。
「リッカーが来たぞ!」
その言葉に、一同は驚きを隠せなかった。
「何!」
ネイオはこの目で確認した。
「マックスは無駄死にかよ!」
ルークが叫んだ。
リッカーはトロッコに追いつくくらいのスピードで走ってきた。
追いつく直前に側面の壁に飛び移った。
「やばいぞやばいぞ!」
スコットが前から3両目の車両に移ると、そこにいたルークが叫んだ。
「サーフ!後ろの列に移れ!」
最後尾で操縦を担当していたサーフは何とかトロッコをスピードに乗せようと奮闘していた。
壁に張り付きながら追い続けていたリッカーは、ジャンプしてサーフに飛び掛る。
「くっ!」
サーフは即座にハンドガンを抜いたが遅かった。
飛びつかれたサーフはリッカーと共にトロッコから落下して、線路へと落ちてしまった
「くそ!サーフ!」
スコットがサーフとリッカーに銃を向ける。
「もう遅いぞ!」
クロウがスコットの体を前の座席へ追いやった。
一回はサーフを食っていたか、見えなくなったリッカーだが、再び追いかけてきた。もちろんあのスピードで。
ネイオとクロウは三両目で、マシンガンを構えた。
「お前とあえてよかったネイオ」
「ああ、俺もだクロウ」
二人はそう言いあい、再び追いかけてくるリッカーめがけてマシンガンを連射し始めた。
もうダッシュのリッカーに次々に命中する。血が飛び散るのが痛々しい。
しかし、まったくといっていいほど効果がなかった。
もろともせず、リッカーはトロッコの五両目に・・・一番後ろに飛び乗った。
「うそだろ!」
一番先頭にいるキットが驚きの声をあげる。
そこから、嫌味のようにひたひたと向かってきた。
なおも連射を続けるネイオだが、クロウは射撃をやめていた。
そのときスコットがロケットランチャーを構えやってきた。
「俺にも一役買わせろよ!」
「スコット、何を・・・」
そして、命懸けで下の連結部分を見た。
「これなら狙えるさ・・・」
クロウはそういうと、トロッコの連結部分にロケットランチャーの弾を浴びせた。
小さな爆発が起こり、スコットはトロッコ内で吹っ飛ぶ。
ネイオとクロウはそんなスコットを見た。
3両目と4両目の連結が切り離され、4両目にいたリッカーが遠ざかっていた。
「よっしゃ!でかしたスコット!」
ネイオはそういった瞬間、トロッコは壁に衝突して止まった。
ものすごい衝撃が走った。
一同はトロッコの発着所に付いたのだ。
スピードが落ちずに、そのまま壁にぶつかってしまったのだ。
「よし、脱出だ!」
一同はトロッコから出ると、広い発着所を抜け、大きな扉まで来た。
来る時サーフが暗証番号を解読していたのを思い出す。
その時いた仲間は18人、今はたったの5人だ。
「よし皆逃げろ逃げろ!」
ネイオは叫び、スコットやルーク、キット、クロウを扉の向こうに押しやった。
「クロウ、キット・・・よし入ったな」
そして自分も入ろうとした。
そのとき、線路を伝ってリッカーが走ってきた。
「もう追いつきやがったな!」
ルークが怒鳴った。そしてマシンガンを連射する。
「早く入れネイオ!」
キットが手招きをした。
ネイオはそれに従い扉の向こうに入り込んだ。
「扉を閉めろ!」
スコットが叫んで、クロウが扉を閉めた。
「よし走れ!」
ネイオは叫び、扉から離れていった。
リッカーは扉を突き破ろうと、何度も体当たりをした。
扉がへこんできている気がした。
そして、ついにリッカーが扉を突き破ったのだ。
「くそ!」
「撃ち殺してやるよ!」
スコットが脇から登場し、残っていたランチャーをリッカーに向けて放つ。
爆音から放たれたそれは、リッカーをかすめて破壊された扉にぶつかった。
「やべぇ!」
「ばかじゃねぇのか!」
スコットとルークがそんなやり取りをする。
それに怒ったか、リッカーは一同を睨みつけた。
そしてネイオに向かって一吼えした。ネイオはにやりと笑いながら、リッカー見た。
左腕のオールも取り外す。
リッカーはそんなネイオに大口開けて飛び掛った。
「くたばっちまいなぁぁ!!!」
ネイオはオールを投げた。オールがリッカーの口の中に吸い込まれる。
そしてカレイにネイオは後ろに飛び込み回避をしながら全員に言った。
「皆にげろ!!」
クロウを先頭に、ルークとキット、ネイオとスコットもリッカーに背を向ける。
しかし、この期に及んでスコットはまた立ち止まった。振り返りリッカーを眺める。
「お前だけにおいしい思いはさせねぇ!」
スコットはリッカーに最後のランチャーを向けた。
「逝け!」
そういってスコットは完全な発射をした。
彼のはなったロケットは、リッカーの腹部に命中した。
「よっしゃぁ!」
「さすがだスコット!」
ネイオがそういうと、2人は背を向けて走り出した。
「言っておくが、20秒しか猶予は無い!」
「それって・・・オールの爆弾がか!?」
「そのとおりだ!」
2人は会話をしながら、苦しむリッカーを振り返る。
そんな2人にリッカーは気づいたのか、痛みに耐えながらも一吠えした。
「醜いやつだ・・・」
「お別れだぜ」
ネイオとスコットがそういって走り出したとき、リッカーは超音波のような轟きをあげた。
そのとき、
施設に通ずる通路で、爆発が起こった・・・
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