日常・・・

日常・・・

プロローグ




「前進だ!」
「十時方向にモンスター!」
「アレックス軍曹!応答願います!!」
「飛行部隊の到着はいつだぁ!!」
「衛生兵!どこにいる!直ちにこいつを・・・」
そう叫んだ兵士が、赤いレーザーによって腕を吹き飛ばされる。
うめき声を上げる兵士に、止めの一撃が食らわされ兵士は倒れこんだ。
何百名もいる兵士が、ウイルス生物に対抗しているのだ。
このような光景を珍しがっていては、頭がおかしい人間ではないかと誤解されるほどである。
続いて10人ほどまとめて銃を持った兵士が、赤いレーザーが飛び交う前線に立った。
「撃てぇ!!」
その兵士らは一斉に発砲した。しかしようやく何体か相手は倒れるほどで、簡単に返り討ちを喰らう。
身を潜めていた中佐は無線機を取り出した。
「聞こえるか!?こちらミハエル・ジュロウ中佐だ。どうぞ!」
周りの銃撃音のため、声を張り上げて会話をする。
『聞こえるぞ。どうした、中佐?』
「第12地区もウイルス生物に制圧されました!仲間も半分以下になりました!救助ヘリを」
無線機は雑音を鳴らして、数秒後男の声が聞こえてきた。
『了解した。あと10分ほど持ちこたえてくれ。ヘリはあんたの北10キロに着陸する』
「分かった!急いでくれよ!」
ジュロウは無線機をきると、そっと呟いた。
「人類移住計画が成功しないと、俺らは滅亡だな・・・」
そして瓦礫から飛び出すと、赤いレーザーを持つ歩兵のようなウイルス生物、フィアに向かって発砲を始めた。
「おい!みんな!北10キロにヘリが着陸する!直ちにいくんだ!」
身を潜めて銃撃を続けていた兵士達が、ボロボロのビルの裏路地に入って北を目指す。
ジュロウは辺りを見回し、誰もいなくなったと確認した。
しかしフィアが発砲するストリートを横切ると近くで2人の兵士をみつけた。
1人は瓦礫にもたれ、もう1人はその1人を懸命に看病しているようだ。
ジュロウはすぐに2人に近づく。物影なので銃撃が命中する可能性は低かった。
「何をやってる!北へ向かわないか!」
看病している兵士が顔をジュロウに向ける。
オゼル・ドローという入隊二年目の若手兵士が真剣な目をジュロウに向けた。
「スピアナ中尉が撃たれました!しかしまだ生きてます!運ばないと・・・」
ジュロウは、頭から血を流しわき腹にレーザーを受けたと思われるスピアナの首に手を当てた。
「どうです?まだ脈はあるはずです!」
「脈はある・・・」
しかしいつ死んでもおかしくない状態であった。
次の瞬間目の前の瓦礫にレーザーが命中した。
「クソ!オゼル、スピアナを担げ!俺が援護する!!」
「分かりました!」
選択の余地がないと思ったジュロウはショットガンを手にすると、スピアナを担ぐオゼルを先導した。
オゼルはよっこらとスピアナを担いで、ジュロウの後に続く。
「遅れるなよ!」
裏路地に入った途端、目の前にフィアが出現した。
ジョットガンから強力な弾が発射されて、フィアは一瞬で黙りこくった。
「オゼル、大丈夫か・・・」
そうジュロウが振り返ったとき、後ろでフィアがランチャーを構えているのが目に飛び込んできた。
いつ発射されてもおかしくはない・・・
「オゼル!危ない!!」
ジュロウはとっさにオゼルに飛びつき倒れこむと同時に、ランチャーはその上を通過した。
そしてジュロウが手榴弾をフィアに向かって投げた。
「よし、オゼル、大丈夫か?」
オゼルもようやく起き上がる。
「大丈夫です・・・」
しかしオゼルの目に、さっきより酷い状態になったスピアナが飛び込んだ。
「・・・オゼル、行くぞ」
ジュロウは静かに言うと、オゼルも立ちあがって走り出す。
その直後、背後からレーザーが飛んできて、その進行方向に対して横向きだったオゼルの背中をかすった。
先ほどジュロウが投げた手榴弾の爆破を生き延びて、倒れこみながら最後の反撃に出たフィアが銃を構えていた。
「クソ!!・・・」
オゼルが背中をおさえようと手を後ろに回すが、痛みで言うことが聞かないようだ。
「待ってろ、俺が運んでやる!」
ジュロウがオゼルを担ごうとして、オゼルの肩に手を回す。
その瞬間、ジュロウの目に入ったのは、未だ銃を構えているフィアであった。
そして赤いレーザーが発射された瞬間、ジュロウは命中寸前にオゼルの前に飛び出して、
赤いレーザーを自らの胸元に命中させた。
同時に手榴弾を投げて、今度こそフィアを木っ端微塵にする。
しかしそこで力尽きた。
ジュロウが倒れこむと、オゼルは背中の痛みも忘れて涙を流し始めた。
「馬鹿な・・・こんなことが・・・」
急いで体を上に向けると、ジュロウはうっすらと目を開けた。
「ジュロウ中佐!おきてください!」
「・・・オゼルか・・・お前は早くヘリに迎え・・・」
オゼルはジュロウを担ごうとした。しかしジュロウは重装備ゆえ、重い、自分の背中の傷もあった。
「待っててください・・・今助けますから・・・」
「さっさとヘリに行け!!」
ジュロウは持ち上げようとするオゼルに怒鳴った。
しかし次は静かな吐息のような声になる。
「・・・はやく・・・行くんだ・・・」
オゼルはどうしたらいいか分からず、ジュロウをただただ見やっていた。
ジュロウは静かに微笑むと、小さな声で呟いた。
「見捨てることも・・・大切だ・・・」
そのジュロウのその言葉が、オゼルの胸に深く突き刺さった。
「では・・・いかせてもらいます!」
オゼルはしっかりとジュロウに敬礼をすると、ヘリコプターのほうへと向かっていった。




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