日常・・・

日常・・・

プロローグ


大きなビルが少なく、小さなビルが多いアメリカのとある町、
その中で新築されたやけに白い建物があった。
「平和新党 L・ラーマス」と記されている看板が貼り付けてあった。
ここは平和党という新しい政党の事務所で、この町のダークホースであるラーマス議員の本拠地でもある。
ラーマスは事務所内の椅子に座り、事務机に肘を立てながら、何やら考え込んでいる。
「この件についてどう思う?」
ラーマスが近くにいた若い男性の秘書に訊く。
示された書類をみて、明るい顔を見せた秘書。
「良いと思いますよ!」
「よし、なら決まりだな」
ラーマスは積極的な新政策を多く試み、支持者も多数いる。
その一方、彼の政策に反対するものもおり、賛否両論が激しい政治家である。
当の本人は自分が正しいと思ったことにひたすら進むといった感じで、まったく世間のことは気にしてない様子である。
そのため賛否両論が激しいわけである。
しばらく上に通達するための報告書を書いていると、電話を切った秘書が歩いてきた。
「隣町から演説の要請がきてますが・・・」
ラーマスは顔を上げると、眼鏡を取って秘書に聞き返した。
「いつだ?そしてどこでだ?」
「日時は出来るだけ早くということで一週間後の8月3日は・・・?」
自信なさげに秘書が言う。
しばらくラーマスは考えていたが、再び顔を上げた。
「8月3日周辺に大きな予定は?」
秘書は予定が書かれている手帳を胸ポケットから出した。
「えぇと、今は選挙も無いので、比較的予定は少ないです・・・8月25日の選挙活動開始までは」
ラーマスはそれを聞いて、決断したようだ。
「分かった、8月3日だな。車と警護を用意するんだぞ」
少しの仕事でも、厳重な警備をつけることでもラーマスは有名だった。
そして秘書は頷くと、ラーマスの部屋から出て行った。
扉を閉めると、ラーマスに悟られないよう面倒くさそうにため息をついた。


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