愉快なジョン家

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出産の思い出-その1



ある夏の日、私は臨月の腹を抱えて産婦人科にいた。この日は、定期健診の日。前日が出産予定日だったにもかかわらず、まだまだ生まれる兆候はないそうだ。

苦しくも?、3日後には私の誕生日が迫ってきている…。できれば、誕生日を迎える前に生まれてきて欲しかった。少しでも若く母になりたいという悲しい女のサガ…(苦笑)。そうじゃなければ、誕生日後……。自分の誕生日と重なることだけは避けたかった。何故なら、子供と誕生日が同じだと、その瞬間私の誕生日は忘れ去られてしまうのでは…、と危惧したからだ。(←浅はか…笑)

でも結局、自分の誕生日と重ならなくっても、既に私の誕生日は忘れ去れつつあるが……。まぁ、今更誕生日なんて祝ってもらったってねぇ…。



そんなことを考えながら診察を受けていた。


「う~~ん、まだまだだねぇ。これはお産は2週間後くらいかな……。」

ドクターがのんびりと言う。


これで、少しでも若くして母になるもくろみは泡となったようだ。(笑)



そして、この日の夕方、立会い出産を強く希望した夫が、1週間の予定で日本に来ることになっていた。


あ~~あ、可愛そうに。こりゃお産に立ち会うのは無理やね…。夫よ…。
まぁいいや、最後の夫婦水入らずの時間を楽しく過ごそう…。

夕方、駅まで夫を迎えに行った。夫には、「まだ生まれないから出産には立ち会えないよ。」と軽く伝えた。

すると私のデカイ腹に向かって、

「お父さんが来たで~~。明日かあさって生まれておいで~~。」

と言っている。

……あんた、私の話聞いてないのか!




しかし、夫の声が通じたのだろうか?



その日の夜、何故か頭が冴えて眠れない。寝苦しくて夜中トイレへ行った。




すると……、




出血している?!!




ひょっとしてこれは“オシルシ”とかいうヤツ?

すぐに産院からもらった『入院案内の手引き』を見た。それにお産の流れが書かれているからだ。
それによるとどうやらオシルシというのに間違いないようだ。

いよいよお産が始まるのかな…。

さすがにドキドキしてますます眠れなくなってしまった。
そうこうしていると、緊張のためか?お腹が張り出す。


チクチクチクチク……



これってひょっとして陣痛!?



しかし、とても軽い痛みだ。まさかねぇ。


とりあえず、間隔を図ってみた。10分間隔くらいだ。『入院案内の手引き』によると、初産の場合は、陣痛が10分間間隔になると病院へ来るように、とある。これって陣痛なんだろうか……。

でも、こんな軽い痛みで生まれるハズもない。これは陣痛じゃないよなぁ。気を取り直して、眠れないけど、とりあえず朝まで布団に包まって目を閉じようとした。だけど…、興奮状態になってしまい眠れない。結局朝まで一睡もできず………。こんなに夜が長いと感じたのは初めてだったかもしれない。


そして、隣で大いびきをかいて寝ている夫を恨めしく思うのだった……(苦笑)




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