愉快なジョン家

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出産の思い出-その2



階下に降りて、とりあえずシャワーでも浴びることにした。それから洗濯をしたり、朝ごはんを食べたりして……。

実母に

「なんか、お腹が10分間隔くらいでチクチクするねんけど…。」

と漏らす。私の顔を見て母は

「まだまだ余裕ありそうやなぁ。そんなんでまだ生まれるわけないわ!!」

と言った。そーだよな。こんな“屁”みたいな軽い痛みで生まれてきたら人は苦労せーへんわ。と思い直した。そうこうしている内に、お昼頃には、痛みも遠のいていった。


一体あのチクチクは何やったんや?


どうしようか迷ったけど、産院に問い合わせてみることにした。夜中からの状況を電話で伝える。

看護師「ああ、それはおそらく前駆陣痛ですね。多分まだ生まれてこないと思うけど、夕方涼しくなってからでも、病院に来てみて下さい。念のため検査してみましょう。」



ゼンクジンツウ???


私は、お産を目前に控えている身の分際なのに、恥ずかしながらお産の知識も乏しく、初めて聞く言葉だった。


そして、夕方、母と夫を伴い産院へ…。

やはり、前駆陣痛との事。おまけにお産はあと1週間後くらいになりそうで、この前駆陣痛はそれまで続くそうだ。


……ガーーーン!!!


こんな中途半端な痛みがあと1週間も続くのーーー!!??
そんなんやったらさっさと生まれてきてくれーーー!!!


落胆しながら産院を後にした。その帰りにスーパーで買い物して、店内でかなりうろうろしていたら、またもやあの前駆陣痛の痛みがやってきた。今度は先般よりずっと強い痛みだ。


あああ、また来たか…。


家に帰って、サザエさんを観た。(日曜日だったようだ)
なんだか痛みがどんどんと増してきた。母が作ってくれた夕食を食べようと思ったけど、痛みでとても喉を通らない。そのうち、痛みで顔がゆがんできた。


そうだ!!シャワーに入ると痛みが消えるかも!?


そう思うや否や、風呂場へゴー!!しかし、シャワーしながらも、途中であの痛みが来て、風呂場でうずくまる始末…。何とかシャワーを終えたが、一向に痛みは消えてくれない。


でも、これも前駆陣痛ってヤツだよねぇ~~。今産院に行ってもまた帰されるのが関の山だ。


午後9時前くらいだったと思う。痛みが更に増してきた。間隔を計ってみると3,4分間隔になっている。鈍い私でもさすがに感じた。



これはひょっとしてホンモノの陣痛ってヤツではないだろうか…。


産院に電話すると、「では、今から荷物を持って来てください。」と言われる。


ふと、入院時にかかる延長料金のことが気になった。もし今から入院することになるとすると、日曜日料金プラス深夜料金が割り増しされる!!セコイ私は一瞬、明日の朝まで待ってみようか…とも思った。

でも、悩んでいるうちに痛みはどんどん増し、今にも出そうやーー!!!って感じになってきたので、母に車を出してもらい、夫とともに産院へ向かった。


着いたら、まず分娩台にて、チェック。

看護師「子宮口が8センチほど開いてますね~。あと1時間くらいで生まれそうですよ~~。」


えええーー!?もう生まれるの~~?今夜生まれるのーー!?
セコイ考えで朝まで家で待たなかったのは賢明だったようだ…。


そして、陣痛室を通り越して、そのまま分娩台でスタンバイした。それにしても、もう生まれるって信じられない…。この痛みはイタイけど、まだ耐えられるし、人と会話をする余裕もある。

看護師さんによると、私のは微弱陣痛らしかった。でも、子宮口がコレだけ開いてるから、微弱陣痛のまま生まれて来るそうだ。


助産師さんの言うとおり、分娩台に縛り付けられて本当に1時間後、娘がポーーーンと生まれてきた。


yuna3


かなり安産だったらしい。夫によく似た、おだてにも可愛いとはいいがたい顔の赤子だった(苦笑)。

しかし、例えブサイクな子でも(笑)、お産とは想像以上に感動的なものだった。さっきまでお腹の中でグニョグニョ動いていた足が、これか~、と思うと何だかとても不思議な気分だった。



こうして私は、ほんの少しだけ若くして母になることができたのでした…。





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