舞い降りた天使は闇夜を照らす 3

渋谷に着く数駅前の電車の中で健也に「もうすぐ着くから」とメールを打った。
電車の中ではずっとガラスに映り込む自分の姿を見ていた。



どこか漏れがないか?
羽織ったジャケットの襟を掴んで何度もジャケットの前を開いたり閉じたりしてみたり、セットした髪の毛を極力弄らないように毛先だけをつまんで捻ったりして忙しなかった。



それほど混んでいない車内で視線を感じてそちらの方を見ると20代半ばのOLが怪訝そうに僕を見ていた。
目が合った瞬間OLは手にしていた携帯電話に視線を落とした、それと同時に居心地が悪くなった僕は隣の車両に移ることにした。



今日の僕はどうかしている。
いつもなら自分の容姿になんか気を遣わないのに…
やっぱり期待しているのかな?
胸ポケットに入れてあるアレをジャケットの上からつついてみた。
あんまりつついたら穴があくんじゃないかと思い、そっとフェザータッチでツンツンと。


「初めてなんだから極薄なんて買うんじゃねぇぞ! すぐいっちまったら女に童貞だって悟られるからよ。」



健也に言われた言葉だ。
しかし最近のは極薄が主流だという。
一風変わったもので原宿のコンドミニアなどで「いぼ付き」「味付き」などを購入できると家を出る前にググッて知った。


2ちゃんねるでは「極薄でも2枚重ねならいくのを遅れさせることができる」と書き込みがあった。



僕が買ったのは数枚しか入っていない1000円程度の超極薄。
…だってさ、薄い方がいいじゃん!
初めてなんだから、初めてなんだからと何度も自分に言い聞かせて…
いざ出陣!!


その前に健也に会って今日の打ち合わせだ。



どうやら誠ももう渋谷に到着しているらしい。
3人で今日の「会議」を成功させるためのプランを立てなくてはならない。



1週間くらい時間をくれれば図書館なりネットなりで調べて「会議」成功策のレポートをA4用紙で5枚くらいにまとめられたのに。



急に聞かされたからそんな時間はなかった。


今夜は健也と誠にまかせて…
いや、僕も本音を言わせてもらえば「おいしい」トコロを持って行きたい。
女の子のメアドだけでもゲットしたい!



様々な思惑が脳裏を過っては消えていく。



ふと外を見ると見たことのない景色が見えた。
気がついたら電車は渋谷を通り過ぎていたのだ。
アホー


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