幸せな大学生活・3 

彼女との距離はお薬やメンタルの話で盛り上がりドンドンと近づいて行った。
メールの回数も数分に1つとドンドンと増えていった。

メールから察すると彼女の母親は精神病に理解がない。
むしろ精神病は病気と認知しない人のようだ。

彼女は一人っ子で可愛がられて育てられた。
両親も年齢のいってからの一人娘で可愛くて仕方ないのだろう。

彼女は昔少しの間、精神科の病院に通院したのだそうだがどうも上手く治療はいかなかったようだ。
その証拠が左手首の無数のラインである。

僕と彼女はメールをしていくうちに共通の理想にぶち当たった。

『自殺』

僕は彼女に持っていた「完全自殺マニュアル」を貸してデパスを1シート1000円で売る約束をしていた。

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僕は『リスカ痕フェチ』である。
血の滴る傷口よりも…傷口が治って裂けた皮膚と皮膚がくっついた痕。
白い肌に残るラインに感情の高ぶりを覚える。
リスカやアムカのラインを見ているとその人の苦しみや悲しみの全てがそこに収縮されているんだと思えてくる。
ラインは触れると膨れ上がっており指先に感じるその感触がなんとも形容しがたい心地よさを僕に与えてくれる。
同じラインは存在しない。
十人十色でその人によって太さも深さも違う。

美しさはいつも苦悩の裏側に存在する。
擬似的に自殺を感じている手首たちは僕にとって「蜜の味」なのだ。

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メールを何回か交換しているうちに時々大学内で二人で隠れて会うようになった。
初めて二人きりで話し合ったのは図書館の3階の奥まった誰も来ない倉庫。僕と彼女はそこで数え切れないほど言葉を交わした。
その時の僕は躁の状態が酷く、自分の意識の無い時にも勝手に口が動き言葉を発していた。
奥まった誰も来る心配の無い場所と言うのは個室を連想させる。
僕は大学と言う場でありながら彼女を抱きしめていた。

僕と彼女は信じられ無いほど気が合った。

「閉所に閉じ込められる恐怖感」
「狭い場所に何時間もいたいと言う願望」

僕と彼女はスライド式の本棚に挟まれたり、本棚の棚を外して人が1人入れるようなスペースを作って スライド式の本棚でお互いを閉じ込めて遊んでいた。
それは僕と彼女にとって至福の時間だった。

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彼女の靴は黒のロッキンホースバレリーナだった。
僕はティンバーのMIDのブーツ。

お互いに足元のお洒落には美学があった。

…二人で図書館で遊んでいる時間、僕は講義の時間だった。
彼女は基本的に講義には出ないらしい。

講義を長時間抜け出しているわけにもいかず戻ろうと何回も思った。
しかし彼女の魅力に僕は圧されていた。
この共有している今と言う瞬間を逃したらもう二度と彼女を自分のもとに置いておけないような気がした。
事実彼女はモテル存在なのだ。

僕は講義に戻る寸前座った状態で後ろから彼女を抱きしめた。
拒まれはしなかった。

僕の動悸は激しくなり陰部は硬く強く大きくなっていた。
彼女は僕の陰部が腰のあたりに当たっているのを気が付きながらも気が付いていない風を装っていた。
対処の仕方に困ったのだろう。

僕は彼女の柔らかな唇に指先で触れてさらに強い欲情を感じた。
体制を入れ替え僕は彼女に後ろから抱きかかえられる形になった。
彼女はこの状態をどう思っているのだろう?
そんな事も関係なく、僕は彼女の唇を奪おうとした。
しかし拒まれ頬にお互いキスをしてこの時はそこでお開きとなった。

彼女とこんな風に遊んでいる間も年上の女性からはメールが着ていた。

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僕は躁の状態で気分が高まっていた。
大学の先輩とラップをした。

図書館でのキスの事。
年上の女性との中途半端な肉体関係。
フリースタイルで吐き出した。
友人たちはそれを聞き笑っていた。

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帰宅の電車の中。
男3人で僕らは帰っていた。
サカマサとPUNK。

しかしそこに偶然にも彼女がいた。
僕らは進行方向から見ると右のドア付近。
同じ車両の向かい側の左のドア付近にいた。
彼女は僕の貸した『完全自殺マニュアル』に気を取られ僕に気がついてない様子だった。
このまま電車が目的地に着くことを祈った。
何故ならサカマサもPUNKも年上の女性の事とキスの事を知っていたからだ。
僕は声をなるべく小さくして気付かれないように気を払った。

チョウド電車が乗り換えの駅に着こうとしたその時。

僕の背中を鈍い痛みが襲った。
後ろを振り向くと彼女が笑っていた。
彼女が僕をじゃれ付くように叩いたのだと理解するのにコンマ何秒かの時間差があった。
僕は困惑の表情を隠せずただただ引きつりながらもニコニコしていた。

サカマサは「図書館でキスしたんでしょ? したんでしょ?」

としつこく聞いてきた。
PUNKの目線は遠くを見ていた。

僕はしどろもどろになりとりあえず到着した乗り換えの駅に彼女と二人で降りた。
サカマサとPUNKは電車の方向が違うのでココでお別れだった。

彼女は言いふらされても関係ないという感じだった。
彼女はこれからバイトがあるからと帰って行った。

僕はすぐにサカマサに「おみゃーふざけんな!」とメールを送った。


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