幸せな大学生活・5

2004年 5月

彼女は怠惰な僕の学生生活に絶妙な角度で風穴と…それに伴う傷口を開けてきた。
風穴は暗く湿った心に潤いを。
傷口は徐々に身体の限界を超えた喜びを僕に与えてくれた。

躁鬱病と診断されてからの僕は喜びや楽しみに敏感で、傷付く事には鈍感だった。

躁の状態では全てが爽快なのだ。
どんなに走って騒いでも疲れる事を知らない。
気持ちがイイ、動いていなければ逆に苦痛が襲う…
喜びと楽しみは何倍にも感じられる事が出来る。
しかし細かい事に頭が回らなくなる。
モノを買う際に小銭を出せないでいる自分自身に驚く事さえあった。
自分が自分で無くなる感覚。
普段なら絶対にしないような事をしてしまう。
脳が身体の限界を超えてもその危険のサインを教えてくれない。
体力の限界を超え走り続けて最後には疲れきり倒れ鬱に入る。
躁鬱病とは自分の感情をコントロール出来なくなる病気なのだ。

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彼女は何処か放って置けない、否、その表現は適切では無いかもしれない。
放って置けないと言うよりも…
彼女の周りでは皆が磁石のN極であり彼女はS極なのである。(全部の人とは言い切らないよん)
特定の周波数を持つ者同士、つまりメンヘラ同士ではそれが顕著に現れる。
良い例が保健室のメンバーだ。

保健室には彼女を慕い募るメンバーがいる。
それは女性であったり男性であったり保健室の先生であったり…
メンヘラな彼女にサンバイザー付けまくりな彼氏のカップルであったりした。
兎に角、一人一人が彼女を中心に置き保健室生活を送っている。

ある日僕は彼女に食事に行こうと誘われたことがある。
最初は「二人きりでゆっくりファミリーレストランにでも…」と思っていたのだが良そうに反して彼女の友人たちが付いてきた。
先ほど書いた彼女はS極である事の裏付けの様な出来事だった。
彼女も「二人で行きたかった」と言っていたがS極な彼女をN極な保健室メンバーは放って置けなかったのだろう。
僕は殆ど知らない保健室のメンバーの女性『キャシー』とヤンキー上がりの23歳男性『たっくん』と一緒にマックに行く事になった。

マックでは彼女と対面する形で四人掛けの席に座った。
僕から見ると左は壁、右には『たっくん』右斜め前は『キャシー』
正面の彼女は執拗に机の下から僕に足を擦り付けてきていた。

僕と彼女はお互いに唇以上の感触を味わいたがっていた。


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