リアリティセラピー



リアリテイセラピーの概要と理論
 現実療法(Reality Therapy)


精神科医ウイリアム・グラッサー(William Glasser. 1925~ )
によって提唱されたカウンセリング手法。1965年に『現実療法』(Reality Therapy)が出版されて
一躍注目されるようになった。これまでの過去、感情、症状に焦点を当てる方法とは異なり、
現在の満たされていない重要な人間関係にいち早く焦点を当てることによって、問題解決を
試みるカウンセリング手法である。ことさら洞察を目指すものではないので、小さな子どもか
らどんなレベルの人にも関われる手法である。対象年齢を問わず、犯罪矯正、薬物依存、精
神病、親子・夫婦の家族関係、スクール・カウンセリング、職場のマネジメントと適用範囲は広
範囲である。 グラッサーは、1970年代にはカウンセリングにステップを使っていたが、後に
「コントロール理論」を現実療法の基本的理論とするようになり、1996年にコントロール理論を
「選択理論」に改名した。1996年以降の著作では、グラッサーの考え方に大きな違いが見られ
るようになった。 最近のグラッサーは、「すべての不幸な人が抱えている中心問題は、(貧困、
不治の病、政治的横暴などを除けば)お互いが望んでいるのに、互いにうまく関わっていけない
こと」であると主張する。 カウンセラーが焦点を合わせる中心問題には二つある。一つはカウ
ンセラーとクライエントとの関係である。良い関係が築かれなければ、問題解決の過程は進展
しない。二つ目は、クライエントの不満足な人間関係、あるいは満足した人間関係の欠落である。
グラッサーは「人間にとって唯一の問題 は不幸であること」とする。人が不幸なときには、
とてつもなく創造的になり、その結果非行、犯罪、薬物依存、暴力、精神病と呼ばれるような行
動をとるようになる。 現実療法のカウンセリングには3つの前提がある。1. クライエントが不
幸なのは、満足できる人間関係を持っていないからである。2. クライエントが満足できる人間関
係を持っていないのは、どちらかあるいは両方が、関係を改善しようとして、外的コントロール心
理学を用いているからである。3. そのような関係からは苦痛がもたらされるので、どちらかあるい
は両方が、相手が用いている外的コントロールから逃れようとしている。 外的コントロール心理
学の表れ方は、致命的な7つの習慣となる。1. 批判する、2.責める、3.文句を言う、4.ガミガミ言う、
5.脅す、6.罰する、7.ほうびで釣る。この習慣が実践されるところでは、基本的欲求が充足されず、
問題が発生する。 グラッサーのアイディアを教育界で使ってグラッサー・クオリティ・スクールが
いくつも誕生している。実践校では7つの習慣は実践されず、教師と生徒との関係は対立構図で
はない。外的コントロールを使わない、温かい人間関係のなかで、クライエントは問題解決をし、
生徒は勉学に取り組んでいると報告されている。 (柿谷正期)


[参考文献]


グラッサー. W. (柿谷正期訳) 2000 グラッ サー博士の選択理論 アチーブメント出版
グラッサー.W. (柿谷正期・柿谷寿美江訳) 2000 15人が選んだ幸せの道 アチーブメント出版


『現代カウンセリング事典』(国分康孝編、金子書房、2001年12月)より







   リアリテイセラピーの位置づけ
 リアリテイセラピーは、現実療法と訳されている。Gerald Corey博士は、 カウンセリングを学ぶ大学生や大学院生のための教科書(Theory and Practice of Counseling and Psychotherapy)で9つの精神療法を挙げている。そのひとつが現実療法である。それほどメイジャー(主要)な療法と言えよう。現実療法は、精神科医ウイリアム・グラッサー博士によって提唱され30年以上米国、カナダを始めとした国々に大きな影響を与えている。






   選択理論とは何か
 リアリテイセラピーは、人は外側の刺激によって反応するのではなく、内側から動機づけられて行動を選択するという選択理論心理学を基盤としたカウンセリングの一手法である。
 リアリテイセラピーが他の療法と大きく違う点は、過去ではなく現在に焦点を合わせ、より良い将来を選択するお手伝いをすることにある。選択理論は、人が幸せな人生を送ろうとするなら、 過去がどんなものであろうとも、今を生き、今の情況で計画しなければならないことを教えている。そのため、リアリテイセラピーは、効果のある短期療法と言える。リアリテイセラピーの実践にあたっては、 温かい信頼できる関係をクライエントと築き、クライエントの望んでいるものと、現在選択している行動を自己評価していただく。この自己評価に基づいて、達成しやすい願望を手に入れる方法を共に考える。



© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: