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私はアナタのくれた指輪を見詰めているの。綺麗だわ、とても。透明で眩くて、こんな風にアナタと私の愛も、いつまでも輝いているのだと思っていた。でも、アナタは私のことなど、もう、どうでもいいらしく、今日も帰って来ない。今夜も私は一人きりで、誕生日のお祝いにアナタがくれた指輪を、こうして黙って見詰めているだけなの。・・・私は思い切り指輪を投げつけた。・・・指輪はむき出しのコンクリートの壁に当たり、甲高い音をさせながら、粉々に砕けて散った。この世で一番硬いはずのダイヤモンドが粉々に砕けるなんて・・・紛い物だったのね、この指輪もアナタの気持ちも、そのすべてが。
2006/04/30
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定年退職後の私の楽しみは旅行である。元気で身体が動く内にと、季節を問わずに日本中を巡っているが、中でも桜の時期は、ことのほか忙しい。それというのも、列島南端の開花の報とともに出かけ、北の先まで咲き染める桜を追いかけて行くからだ。初々しく花開いた桜も良し、満開の様の見事な様は言うまでもなく、また風が吹くたびにまき散らされるうす紅色の花びらは、年老いた胸になんとも切なく迫って来るものなのだ。そして、山桜の清楚さ、牡丹桜の艶やかさ、ランタンに照らされた夜桜の妖しいと言ったら…桜前線を追いかけるようになって、6年目の今年。今年も、あの人に会うだろうか?実は数年前から、行く先々で、その人に会うことに気が付いたのだ。私と同じようにリタイアしたと思われる年格好の男で、必ず咲き始めた桜の木の下で、静かにたたずんで居る姿を見かけるのだ。言葉を交わす事もなく、ただ黙って桜を観る間だけの付き合いともいえないような関係なのだが、人との交際が薄くなった私にとっては、会えば必ず会釈してくれるその人に、まるで旧知の知り合いのような気持ちを抱くようになっていた。それなのに、今年に限って桜の木の下のどこにもいつもの姿はなく、しかも桜の開花さえも遅れているようだった。私はため息をついて、蕾のままの梢を見上げていた。すると、ポンと肩を叩かれた。振り返ると、その人が立っていた。その人は、・・・遅れてすみません。すまなそうに言いながら、ごつごつとした古木のはだに軽く手を触れた。と、なんとも不思議な事に、蕾がほころび始めると、桜色が夜空を鮮やかに彩っていき、みるみる内に、桜並木は満開と変わっていったのだ。いつの間にやら、私は桜前線を追い越していたらしい。桜色に染まりながら、遠ざかっていくその人を見送りながら、私はそう気が付いていた。
2006/04/04
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・・・予約完了をお知らせします。待ちに待ったこの知らせが届いたことを、まっさきに連絡したのは勿論、友人たちにだった。彼らが一様に私のことを祝いながらも、内心は羨ましく羨ましくてどうしようもないぐらい、悔しがっているのはわかっていた。高齢化が進むのと、驚異的な医療の進歩のおかげで、人間の寿命は延びていた。好きなだけ、まさに理屈上は不死と同義的に生きられるようになったというわけなのだが、そうなると不思議なモノで、誰もがあまり生きることに執着するのでもなく、飽き飽きするほど生きる前に、さっさと終わらせることを望む者が増えたのも事実だった。かといって、それを好き勝手にさせておく政府でもない。まずは、自分の死にたい日を登録し、さまざまな選別を受けた後、ひたすらすべての手続きが完了するのを待つのだ。この死にたい日の選択が難しい。これだけ人口が多くなっていると、第10希望まで書かされても、なかなか希望通りに行かないのが常で、私も何百回となく登録を繰り返したものだ。友人たちもご同様であるからこそ、私が仲間内でこんなに早く予約完了したのを知って、羨ましがるのは当然のこと。そして、手続きは完了すれば、予約完了の知らせが届くという仕組みになっていて、その知らせが届いたというわけだ。さあ、これでわたしも晴れて死ねる。予約の日まで、指折り数えて待つだけだ。それが、たとえ1000年先の日であろうとも・・・
2006/04/02
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