フロリダ盲学校ニュース・1


マイアミ・オレンジ・ボール、障害者の為のスポーツ大会 2003年12月投稿        

 毎年12月の最初の週末に、障害を持つ若者の為に水泳と陸上競技を競うスポーツ大会がマイアミで開催されます。 フットボールの試合の名を借りて、その名もオレンジ・ボール。 今回も盲学校の中学部からも希望者をつのり3泊4日の遠征旅行が企画されました。 学校では恥ずかしがり屋のミッシェルだが、根性はなかなかの者。水泳部に入り頑張る彼女に、コーチからは家から離れる良い機会だしと参加を勧められました。 最初はしり込みをするミッシェルの事ですから、その場で「行かない!」ときっぱりと断ったそうですが、大人の手も必要だし、私もボランティアとして一緒に旅行に参加すると言う事で本人も納得。それに、木曜・金曜と学校を休める事も魅力的だった様子。 初めての遠征旅行となりました。

 出発当日が近づいてだんだんとその気になって来たミッシェルは、以前とは打って変わって、

「ママは来なくても平気だよ。」とか、
「来るんなら、別の部屋にしてね。 私はお友達と話がしたいから。」

となんだか嬉しい事をいい始めました。 へえ、、あれほど家を離れるのを嫌がっていたミッシェルも、こんな事を言う日が本当に来たんだ、と私は不思議な気持でおりました。 最後の晩に開かれるディスコパーティーのドレスを買いにいったり、あれこれ荷造りをしながら、笑顔のこぼれるミッシェルに私は幸せ一杯でした。

 今回参加したのは、男子が8人、女子が4人。男性職員が3名にボランティアは私の他に、以前盲学校の高校で先生をしていたと言うコーチの奥様のバレリーさん。ミッシェルの希望どおり、彼女はバレリーさんのグループとなり、私は6年生の女子二人を引き受けることになりました。 セント・オーガスチンからマイアミまではバスに揺られて約6時間。 感謝祭の前後から急に冷え込み始めたセント・オーガスチンの寒さがうその様に、マイアミの空気はほんわりと暖かく、皆の緊張をほぐしてくれました。

 さて、懸念していた天気ですが、初日の金曜日は屋外プールでの競泳にはもってこいの日差し。皆、日焼け止めを塗り日陰で出番を待つほどの暑さでした。役員の話ではこの日の参加者は役80名。 又、翌日の地元の短大の競技場で行われる陸上競技と5キロマラソンの行事には300人が参加の予定だそうです。 

 開始時間が近づくと、他のチームもぞくぞくとプールに集まりました。 半数以上は車椅子に乗った子供達。 種目事に車椅子の選手達、盲や聾など他の障害を持った選手達が別れて競技に参加。 年齢と障害の状態によってクラスがいくつもに分かれており、全盲の女子は人数も少なかった精もあってか、ミッシェルは参加5種目で金・銀メダルを5個獲得しました。 参加する事に意義がある、楽しむ事に意義があるこの大会ですが、やっぱりメダルを受け取る時の子供達の笑顔は最高です。

 翌日は、北風の吹きつける寒い朝となりました。昨日とは打って変わって冬の天気。皆トレーナーを来込んで、日向ぼっこで出番を待ちます。 寒いとはいえ、マイアミの日差しの強さには驚き。 日焼け止めを塗り忘れて、ホテルに帰る頃にはどの子の顔も真っ赤になっていました。 

 参加する競技種目は、本人がコーチと話し合って決めたそうですが、生徒の中には当日ぶっつけ本番で望んだ種目もあった様子。でも、何よりも参加して皆で楽しむ事が目的ですから気にしない! ミッシェルは走り幅跳び、ソフトボール投げ、砲丸投げ、100メートル・400メートル・800メートル走に参加しました。 この日も6種目参加して、6個のメダルを獲得。 なんだかとっても得した気分です。  

 何よりも素晴らしかった事は、競技に参加して観客からの声援と拍手に迎えられ、きらきらと輝く子供達の笑顔。 競技中はどの子もどの子も真剣そのもの。 思った様に走れなくて泣く子。100メートル走でゴールラインまで笑顔一杯だった車椅子の男の子。 この大会での思い出は、子供達の心にも、その場にいた人たちの心にも大きな光となって残ったに違いありません。 やっぱりスポーツは素晴らしい。 今年はオリンピックの年です。 この子供達の中から、将来のオリンピック選手も出てくるかもしれません。

 帰りのバスでコーチが「来年も参加したい者?」と聞くと、皆に混じってミッシェルの手もさっとあがりました。 競技の後は、全員でマイアミ一大きなショッピング・モールに買い物に出かけたり、二日目、三日目ともボランティアの働きで夕食会やダンスパーティーが開かれ、ミッシェルの心にもとても楽しい思い出となって残ったようです。 何よりも、ディスコでコーチや友達に誘われて初めて踊ったダンス。 そしてダンス・コンテストでは思いもよらずに1等賞になり、CDプレーヤーをいただきました。

  今回の旅行でまた一歩成長したミッシェル。 家を離れる事をとても嫌がっていた彼女でしたが、今年は毎年9月に行われるスペースキャンプにも参加したいと次の目標を語って先生を驚かせています。 親の私にとってもトンネルの向こうに光が見えた、そんな旅となりました。




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