ほしはひかるのかな????

ほしはひかるのかな????

その5


「ぐはぁっ!」
最初の一匹が宙に舞った。おいらは手前の目が信じられなかったね。丈のやつ、向かってくる奴を軽くいなしてやがる。しかも、片方の前足だけでだぜ。こんな小物相手じゃあ、片前足1本で充分てか。あっという間に子分5匹がのびちまった。
「くそうなめやがって!」
白虎の轟とやらも、体格はいっぱしだが、なんせ相手が悪かった。やはり、片前足1本で後ろ手にされて、うめいている。 
「もう風の旦那に迷惑かけないと約束したら、離してやる。」
「た、ただで済むと思うなよ。手前の女房がどうなるか・・・」
仕舞いまで言う前に、白虎の轟の後ろ足が、吹き飛んだ。声にならない叫びをあげて、悶絶する轟。
「女房に手ぇ出して見ろ。次は足だけじゃあ済まねえぜ。」
その鋭い眼光。ぞっとするような声だったぜ。これが、紅龍の丈か。とおいらは思ったね。
「あ、兄貴・・・兄貴の足が・・・」
子分どもはあまりの光景に、ちびってやがる。そいつらに、丈は近づいた。
「ひひい。お助けを!!」丈は困ったように触覚を揺らした。
「何もしねえよ。あの、ねころがってる奴を連れて、さっさと消えてくれればな。」
「はははいいい」
奴ら、可愛そうなくらいびくつきながら、いっちまった。

丈は羽をたたむと、ゆっくりと言った。
「旦那、お見苦しいところを見せちまって、済みません。」
「・・・いや、おいらの方こそ、面倒かけちまって。しかし、まさかお前さんが」丈は口に前足を当てた。
「それは、言わないようにしましょう。俺は、惚れた女のために全てを捨てた、ちっぽけな只のゴキブリですよ。」
「・・・そうか。かみさん、元気だって?」
「はい。先日、可愛い子供が沢山できましてね。」
「おお、そうかいそうかい。大事にしてやんなよ。」
「はい。旦那も、お元気そうで・・・・」
「ああ、こちとら、まだまだ現役よ。いつでもチビを連れて遊びに来な。だが、中は困るぜ。」
おいら達はそろって笑った。久々に、すかっとしたねえ。ま、そんなわけだ。サカナのねえちゃん、そのへんに散らばってるもんは、全部ゴロツキどもの仕業だからな、まあ、足の一件は丈だがな。丈を責めないでやってくれよ。じゃ、あばよ!



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