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今月の映画評「すばらしき世界」 昨年観た映画は109作でした。その中で、ベスト5に入った作品です。 魅力は、主人公三上を演じた役所広司に尽きます。人生の大半を刑務所で過ごした主人公が、再出発をする話です。もはや若くはないし持病もある。今度こそまともな職に就こうと頑張るのだけど、社会はなかなか彼を受け付けない。しかも、アパートの騒音を注意するのに、ついヤクザまがいの強面を使って見せたりする。仏の顔と鬼の顔が共存する難しい役を、役所広司は絶妙な演技でやって見せました。隣に三上が越してきたら、私たちはどう対応するのでしょうか? 保護司やケースワーカー、町内会長、昔のヤクザ仲間、そして当初彼をテレビ番組で扱おうと取材を始めて途中で諦めた若い作家崩れの青年(仲野太賀)の目を通して、等身大の三上という人間が浮き彫りになっていきます。 西川美和監督は凡そ15年以上前の著作で「まだ諦めきれない、もう一度闘うんだ、やりなおすんだ、と歯を食いしばっているような人物たち。そういう悔恨だらけの、黄昏の中に佇むヒーロー」を描いてきた、と告白しています。今作も正にその通りであり、それは翻って私自身でもありました。 いろいろと我慢しなくてはいけないことが多く、理不尽なことも多い。「シャバは空が広い」それだけが、この「すばらしき世界」の正体なのかもしれません。 主人公の最後に、力を貰いました。(原作・佐木隆三「身分帳」、2021年作品、レンタル可能)
2022年01月15日
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12月に観た映画の最後の2作並びに2021年のベスト10を発表します!「マトリックス レザレクションズ」恐ろしいことに、20年経っても全く同じことを、まるで猫の「デジャヴ」のようにやっていた。反対に言えば、20年前から仮想現実の話を作ろうとしたら、アレ以上のこと(当然少しは変化はある)が出来ないのだということを証明してしまった。キアヌ・リーヴスもキャリー=アン・モスも、20年の歳だけをとった。それは見事に現れていて、それを記録した作品とも言える。スミスもサイフォスも、代替わりしたのに、である。STORYネオ(キアヌ・リーヴス)は自分の生きている世界に違和感を覚え、やがて覚醒する。そして、マトリックスにとらわれているトリニティーを救出するため、さらには人類を救うため、マトリックスと再び戦うべく立ち上がる。キャストキアヌ・リーヴス、キャリー=アン・モス、ジェイダ・ピンケット=スミス、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世、プリヤンカー・チョープラ・ジョナス、ニール・パトリック・ハリス、ジェシカ・ヘンウィック、ジョナサン・グロフ、クリスティナ・リッチ、(日本語吹き替え版)、小山力也、日野由利加、諏訪部順一、中村悠一、内田真礼、津田健次郎、本田貴子、水樹奈々、間宮康弘、小野大輔スタッフ監督:ラナ・ウォシャウスキー上映時間148分2021年12月27日MOVIX倉敷★★★「偶然と想像」必ず、人生にしても、ドラマにしても偶然がドラマツゥルギーを与える。監督・脚本家の想像が、ドラマをつくるだけでなく、俳優の想像がドラマを創造する。極限に限定した設定で、終始彼らにそのセリフを喋らせることで、ひとつの世界が出来上がる。更に観客が、それを解釈してゆく。何度も観たい!そう思わせる、稀有な作品。特に女優がいい。古川琴音が全面に出ているが、玄理、森郁月、占部房子、河井青葉が良い。彼女たちになんらかの賞を挙げたい特に森郁月が良かった。(解説)親友同士の他愛のない恋バナ、大学教授に教えを乞う生徒、20年ぶりに再会した女友達…軽快な物語の始まり、日常対話から一転、鳥肌が立つような緊張感とともに引き出される人間の本性、切り取られる人生の一瞬…小さな撮影体制でリハーサル・撮影時間を充分に確保し、俳優たちの繊細な表現を丁寧に映した。まるで劇中に流れるシューマンのピアノ曲集『子供の憧憬』のように軽やかかつ精緻で、遊び心に溢れた俳優の演技は必見だ。日本映画の新時代を感じさせる映画体験が、観るものの心を捉えるだろう。偶然――それは、人生を大きく静かに揺り動かす第一話 魔法(よりもっと不確か) 撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。第二話 扉は開けたままで 作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。第三話 もう一度 高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターであや(河井青葉)とすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。2021年12月30日シネマ・クレール★★★★2021年Best10 1.「シン・エヴァンゲリオン」2.「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」3.「コレクティブ 国家の嘘」4.「デューン 砂の惑星」5.「すばらしき世界」6.「花束みたいな恋をした」7.「サマーフィルムにのって」8.「グレタ ひとりぼっちの挑戦」9.「アオラレ」10.「21ブリッジ」
2022年01月09日
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12月中間の3作品です。「ラストナイト・イン・ソーホー」怖くない、ホラー映画。というよりか、青春かつalways調の特撮映画、さまざまな楽しみ方ができる作品だった。最後まで、自分を殺そうとしたラスボスを許して仕舞う、珍しい作品。こういう英国映画良いと思う。STORYファッションデザイナー志望のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学するが、寮生活に向かず一人暮らしをすることに。新しいアパートで暮らし始めた彼女は、1960年代のソーホーにいる夢を見る。エロイーズは夢の中で、歌手を夢見るサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)と出会い、肉体的にも感覚的にも彼女と次第にシンクロしていく。キャストトーマシン・マッケンジー、アニャ・テイラー=ジョイ、マット・スミス、ダイアナ・リグ、テレンス・スタンプ、リタ・トゥシンハム、シノーヴ・カールセン、マイケル・アジャオ、ジェシー・メイ・リー、カシウス・ネルソン、レベッカ・ハロルドスタッフ監督・脚本・製作:エドガー・ライト製作:ニラ・パーク、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー脚本:クリスティ・ウィルソン=ケアンズ撮影監督:チョン・ジョンフン衣装:オディール・ディックス=ミロー編集:ポール・マクリス音楽:スティーヴン・プライス美術:マーカス・ローランド2021年12月12日MOVIX倉敷★★★★「あなたの番です 劇場版」2時間で決着つけるとしたら、そうなるよね。それでも、テレビを見てないとイマイチわからないつくりはどうなのか?それに、真相がわかったからと言って、何か観客に得になるようなことはあったのか?何もない。それなのに、こんなに観客がいる。田中圭が「死んじゃダメだ。みんな誰からから愛されているんだから!」と叫ぶ。セリフとしては、感動的だけど、作品としては、人生観が変わるほどの説得力はない。それに、とうとう管理人さんを巡る謎が解けなかった。(←ネットで調べると、黒島と内山が、なんらかの彼らの計画を察知して殺した説を採用していた。でも、映画本編でちゃんと解説しろよ、と思う)(ストーリー)穏な日々をおくる菜奈と翔太は、引っ越して2年後、晴れて結婚!住民会を通じて仲良くなったマンションの住人たちを招待して船上ウェディングパーティーを開催することに。幸せいっぱいの菜奈と翔太と住人たちを乗せて出港するクルーズ船。そして、起こる、連続殺人・・・!逃げ場のない船上で、一人、また一人と殺されていく。謎解きに乗り出す、菜奈と翔太と住人たち。だが、そこには、思わぬ殺意が交錯していた・・・!!?監督 佐久間紀佳出演 原田知世、田中圭、西野七瀬、横浜流星、浅香航大、奈緒、山田真歩、三倉佳奈、大友花恋、金澤美穂、坪倉由幸、中尾暢樹、小池亮介、井阪郁巳、荒木飛羽、前原滉、大内田悠平、バルビー、袴田吉彦、片桐仁、真飛聖2021年12月20日岡山イオンシネマ★★★「ビルド・ア・ガール」「ほぼ」事実を基に描かれた、フィクション。90年代に突如出現した辛口「女子高生批評家」のアップダウンを描く。原作者自身(現在40数歳?)が脚本担当。最後は定番、まとめにかかるなど、かなりわかりやすい。「ビルド・ア・ガール」は「自分づくり」と訳されていた。しかも、本格的にライターとして描き始めたコラムのテーマなんだ。16歳にして、既に街の図書館の本を全て読み込んだと豪語する彼女は、男の子との「偶然の出会い」によって道が開ける可能性はよう知っているだけにないと知る。1ページの作文の宿題に30ページを渡してしまい、実は300ページの元作文があるのだと教師に言ってしまうような、暴走気味、容姿はイケテナイ女の子。いそうでいない、いなそうでいる、女の子。やってみて、潰れて、それでも若い、やり直せる、という主張が眩しい。部屋の好きな作家たちが、見事にバラバラ。結局、この「教養」が彼女を助ける。目的なくとも、本は読んでおくに越したことはない。(解説)主人公のジョアンナを演じるのは、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』や『レディ・バード』での名演技で強烈な印象を残した新星ビーニー・フェルドスタイン。劣等感もパワーに変えて、自らの力で未来を切り開くヒロインを魅力たっぷりに熱演する!そんな彼女が初めて恋するロック・スターのジョンを演じるのは、人気ドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシオン・グレイジョイ役で注目を集めたアルフィー・アレン。ミステリアスな雰囲気と大人の包容力を備えた、ヒロインに寄り添う紳士を好演する。さらに主人公の運命を占う重要な役どころでオスカー女優のエマ・トンプソンが登場。オアシス、ブラー、プライマル・スクリーム、ハッピー・マンデーズやマニック・ストリート・プリーチャーズといった人気バンドが旋風を巻き起こした90年代前半のUKロックシーン。原作はキャトリン・モランの半自伝的小説「How To Build A Girl」で、脚本も彼女自身が担当。当時のロック・ジャーナリズム業界の裏事情もうかがい知れる。「何かが起こるのを待っていても人生は変わらない!」と、勇気を出して初めての世界へ一歩踏み出したジョアンナは、数々の失敗を経験する。それでも“いま”のジブンをフル活用し困難に立ち向かう。その姿には世代を超えて、誰もが勇気をもらえるはず。がむしゃらに突き進むジョアンナに共感せずにはいられない!2021年12月26日シネマ・クレール★★★★
2022年01月08日
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2021年12月に観た映画は8作品でした。三回に分けて紹介します。「そして、バトンは渡された」映画の時、私は「絶対ファンタジーにしてほしくない」と思っていた。ちょっとあり得ない設定だけど、あり得るかな、と思わせて欲しい、と思っていた。それは出来たか?子役は可愛かったけど、やはり荷が重かったと思う。ファンタジーにしないためには、みぃーたんが父親に捨てられたと思ったとき、みーたんが母親に捨てられたと思ったとき、その傷を隠しながら立ち直る様を映像として見せなくてはならなかった。それは観客の想像にまかされた。でも、それは奇跡だと思う。もちろん、泣くよりは笑顔でいようという母親の教えがあったからこそ、高校生活を乗り越えられたとは思う。でも1番重要だったのは、小学校5-6年だ。その時の複雑な心情を全部省略したのはダメだ。稲垣来泉が幼い頃の宮崎あおいにそっくりで、ファンとしては、父親になったような気持ちになった。もちろん、幼い頃のようなカリスマ性はない。でも、そっくりというのは、こんな複雑な気持ちなんだ!【ストーリー】瀬尾まいこ原作『そして、バトンは渡された』(文春文庫 刊)を永野芽郁×田中圭×石原さとみ出演で映画化。4回苗字が変わっても前向きに生きる優子(永野芽郁)と義理の父森宮さん(田中圭)。そして、シングルマザーの梨花(石原さとみ)と義理の娘・みぃたん(稲垣来泉)。ある日、優子の元に届いた母からの手紙をきっかけに、2つの家族が紐解かれていくー。優子が初めて家族の《命をかけた嘘》を知り、想像を超える愛に気付く物語。映画のラスト、驚きと感動であなたの幸せな涙があふれ出す……。【公開日】 2021年10月29日【上映時間】 137分【配給】 ワーナー・ブラザース映画【監督】 前田哲【出演】 永野芽郁/田中圭/岡田健史/稲垣来泉/朝比奈彩/安藤裕子/戸田菜穂/木野花/石原さとみ/大森南朋/市村正親2021年12月6日イオンシネマ岡山★★★「コレクティブ 国家の嘘」もの凄いドキュメンタリーを観た。最初はジャーナリストが鋭く国家の嘘を大暴きにして、国が転覆しないまでも一新するのではないかと期待をもたせる。お決まりの重要人物の事故死があり、直ぐに反対派が保健相に就くなどの改革まである。想田監督と同じ、観察映画に徹する絵つくりが、まるで映画のような緊迫感を生む。そして、まさかのラスト。2016年ごろから世界を席巻するポピュリズムの政治、そして2020年から始まる世界感染症の医療危機をも彷彿させる、ヨーロッパの一小国の「9割が腐敗している」現状、そしてまるで今年冬の日本の総選挙を彷彿させる程投票率のもとでの保守党の「圧勝」!「もう30年、ルーマニアは変わらないぞ」と叫ぶ父親の電話が、もう痛くて痛くて。(ストーリー)2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ・コレクティブでライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる保健省大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。カタリン・トロンタンCATALIN TOLONTAN (47)調査報道記者・スポーツ記者ガゼタ・スポルトゥリロル紙の編集長を務めるスポーツ記者。この数年間、ルーマニアのスポーツと政治の腐敗に関する一連の調査を主導し、何人もの大臣の辞任や、何人もの政治家の投獄に繋がった一連の裁判を引き起こしたことで、大きな名声を得た。 クラブ「コレクティブ」の火災の後、編集者チームのミレラ・ネァグ(47)とラズバン・ルツァク(21)と共に、コレクティブの悲劇に関与した国家機関の役割を調査し始めた。コレクティブの火傷患者に影響を与えたブカレストの病院での医療行為に関する彼らの調査は、ルーマニアの歴史において最も偉大なジャーナリストによる捜査のひとつである。また、ヘキシ・ファーマ社に対する徹底的な調査は、医療システム全体を崩壊させた。ヴラド・ヴォイクレスクVLAD VOICULESCU (33)金融スペシャリスト、慈善家、保健相(2016年5月〜12月)ウィーンにあるエルステ銀行の投資部門の副社長として長年勤務していた。27歳で「サイトスタティック・ネットワーク(cytostatic network)」を設立し、薬を入手できない患者のために、オーストリア、ドイツ、ハンガリーからルーマニアにがん治療薬を密輸する数十人のグループを結成。患者の権利を守る活動をしていた彼は、前任者が辞任に追い込まれた後、新たに保健相に就任した。彼は大臣のオフィスをアレクサンダー・ナナウ監督に開放し、保健省への前例のない常時アクセスを可能にする。テディ・ウルスレァヌTEDY URSULEANU (29)建築家火災の生存者。頭や体に重度の火傷を負い、指は切断しなければならず、容姿は大きく変わってしまう。しかし、彼女は前向きで、生きていることに喜びを感じる。新しい自分を受け入れ、自分のトラウマをアートで癒すことで、他の人の手本になりたいと考えている。カメリア・ロイウCAMELIA ROIU (47)ブカレスト大学病院の麻酔医「コレクティブ」クラブの火災の後、ルーマニア初の内部告発者となった。彼女は、火傷患者の死因についてルーマニア当局が厳重に管理していた秘密を、ガゼタ・スポルトゥリロル紙のトロンタン氏と彼の調査チームに明かすことを決意する。彼女の勇気に触発され、医師や関係者らは、ルーマニアの医療システムに蔓延る不正の告発に乗り出した。2021年12月7日シネマ・クレール★★★★「パーフェクト・ケア」医者と施設と後見人が結託したら、合法的にやり放題なのか?とっーても怖い作品。途中からヤクザと知恵合戦、復讐合戦になるけど、それは映画的サービスに過ぎない。まぁ、どっちともやられて欲しい、できたらマーラの方がやられて欲しいと感じたのではあるが、最悪の展開に‥‥。ラストも、気持ちいい終わり方じゃない。でも、これがこの作品の価値だといえば、その通り。観て後悔はしない、観て良かった。この恐怖感をあと数十年間持続して、間違い犯さないようにしよう!ところで、途中マーラが奥歯を死体に埋め込んで偽装工作をやる映像が執拗に出てきたが、意味ないので、あれは編集でカットしたほうが良かったんじゃないか?それよりも、あのあとCEOとして成功する過程をもっと描いて欲しい。全然リアルじゃない。悪の描き方としては、近年ないエグさ。女の同性愛者というのは、あり得る設定であり、許せる。相棒(エイザ・ゴンザレス)も美人で、ちょっと羨ましい。そういえば、敵役も小人で、監督にちょっとこだわりがあるのかもしれない。まぁキャラ設定としては、アメリカあるある。日本ではあまりやらない。STORY判断力の衰えた高齢者をサポートする法定後見人マーラ・グレイソン(ロザムンド・パイク)は裁判所からの信頼も厚いが、その正体は合法的に高齢者の資産を奪い取る悪徳後見人だった。彼女は新たな獲物として、資産家のジェニファー(ダイアン・ウィースト)に目を付ける。身寄りのない彼女なら難なくだませるはずだったが、その背後にはロシアンマフィア(ピーター・ディンクレイジ)の影が見え隠れしていた。(解説)デヴィッド・フィンチャー監督の映画『ゴーン・ガール』(14)で失踪した妻エイミーを怪演し、第87回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど高い評価を獲得した俳優ロザムンド・パイクのあらたなる最高傑作が誕生した!主人公マーラを演じたロザムンド・パイクは本作で第78回ゴールデン・グローブ賞 主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞。監督は『アリス・クリードの失踪』(11)のJ・ブレイクソン。キャストロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス、ダイアン・ウィーストスタッフ監督:J・ブレイクソンプロデューサー:テディ・シュウォーツマン、ベン・スティルマン、マイケル・ハイムラー撮影監督:ダグ・エメット美術監督:マイケル・グラスリー衣装デザイナー:デボラ・ニューホール音楽:マーク・キャナム2021年12月14日MOVIX倉敷★★★★
2022年01月07日
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「暗数殺人」Amazon primeで鑑賞(10月末で配信終了)。誰かが「良かった」と言っていたので、寝不足になるのを承知でつい観てしまった。刑事の執念の調査。というのではポン・ジュノの「殺人の追憶」が有名であるが、あれは犯人が見つからなかったし、刑事は大きく脚色されていた。ところが、この作品は驚くことに、最後の字幕で、実在の刑事は1人であり、まだ(未解決の残りの殺人)の捜査をしている。犯人は自殺したことが告げられた。2018年作品であるが、つい最近の終身刑決定の実在事件を映画化していたのである。刑事の役は、かつて「1987、ある闘いの真実」で国家権力の塊のような警察署所長を演じたキム・ユンソクが、今度は定年間近の僅かな証拠から知能犯の供述の隙を見出すベテラン刑事を演じた。犯人役のチェ・ジフンは、残っている供述ビデオを見て研究したのか、鬼気迫る犯人像を作り出した。まるで最近の事件とは思えない、まるで長い間に韓国民の血肉の記憶となっているかのような悪夢のような連続殺人犯人を演じた。「殺したのは7人」と犯人は供述したが、明らかになったのはまだ2人(と13歳の時の父親殺し)だけだ。でもおそらく後2人は確実に殺している。それも事件化されていない「暗数殺人」として残ってる。韓国は、このような人の怨念が漂っているかのようなラストを描くのが得意である。釜山周辺の街がロケ地になっていて、ロケ地巡りになかなか打って付けの作品。キム・テギュン監督作品。2021年10月29日深夜。Amazon prime★★★★
2021年12月25日
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実は、今月の映画評は「グランパ・ウォーズ」の前に、もう一つ作っていた。これ以上字数を削れなかった為と、あまりにも過去の作品なので、締切直前になって方向転換した。勿体ないので、ここに記録する。「初恋のきた道」「家族で楽しめる正月映画ってないだろか?」「では、とっておきの隠れた名作を紹介しよう」「我が家は、難しい年頃の中高生がいるんだけど」「そんな世代こそ観て欲しい。初恋はあらゆる世代に、心に響くと思うんだ。チャン・イーモウ監督の『初恋のきた道』(2000年作品)です。主演はチャン・ツィイー。デビュー作です。ブクブクの赤い服を来て、人形のようにコトコト走る田舎娘が超カワイイ。初めと終わりは、1998年のパートで白黒、間に1958年のカラーの昔話が入るという構成も新鮮でした」「どんな初恋なの」「簡単にいえば、村一番の美しい娘が、町から来た小学校のイケメンの先生に恋をして、ひたすら追っかけ回し、そして恋を成就するお話です」「少女マンガみたい。何処が名作なの」「当時、これは身分違いの恋だったの。娘をそれを自覚しているから、当番で先生の賄い食を作る時張り切ったり、子どもと一緒に歩いているところを毎日遠くから見たりすることしかできない。でも、そういう想いは必ず狭い村の中で、青年にもつたわるもので、もう少しで両思いになりそうになる。でも‥‥という話です。この時、2人に訪れる困難は、マンガにありがちな人の意地悪ではなく、時代なんです」「時代って?」「それらしきセリフがひとつあるだけなんだけど、どうも青年は毛沢東の権力闘争のひとつだった反右派闘争の煽りを食って、都会に嫌気がさして地方に来たみたい。そしたら地方は、貧しいけど、美しい。古いしきたりはあるけど、お焼きやマントウ、餃子は美味しく、瀬戸焼き直しのような物を大事にする文化もある。秋は白樺林の紅葉が綺麗で、冬の吹雪は厳しくも美しい」「私たちの子供の頃とかぶるね」「そういう家族の話もできるだろ?美しい少女の一途な恋と、それに応える誠実を絵に描いたような青年を見て、新春から少し福をもらって欲しい」(2000年中国作品)
2021年12月24日
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今月の映画評です。映画評「グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告」「家族と一緒に正月に楽しめる作品を探しているんだけど、何か良いのある?」「ピッタリのがあるよ。一人暮らしになったお爺さんを心配して娘が同居を決めてしまったお陰で、中学1年のピーターは屋根裏部屋に移されることになっちゃう。ピーターは部屋の交換を求めてお爺さんに宣戦布告をするんだ。最初は取り合わなかったお爺さんも度重なる孫の悪戯に相手をするようになる。果たして戦争の行方は?というやつです。なかなか楽しいアメリカのコメディでした」「爺さん世代は、孫と会話弾むかもしれませんね」「お爺さんは、名優ロバート・デ・ニーロで、孫との知恵比べが段々と面白くなっていく様がおかしみになっています。娘のお母さんは「キル・ビル」以来のユマ・サーマン。脇役に芸達者が揃っていて、子役のオークス・フェグリーを引き立てています。中学のいじめ問題も絡んでいて、子どもも共感するんじゃないかな」「悪戯に悪戯を返すのは、ちょっと大人気ない気もします」「お爺ちゃんは戦争を始める前に家族を巻き込まない、家族には秘密にする等、交戦規定をむすぶんだけど、ピーターに『本当の戦争はゲームじゃない。勝者も痛みをともなう』とクギを刺すことを忘れません。やがて、2人の戦争は大騒動と発展していき、孫は「痛み」とは何なのか、わかってゆくというお話です」「落とし所も良さそうですね」「それに、デニーロはギャングのボスも散々やってきたから、途中それらしき格好になる展開もありニヤリとします」(2021年米国ティム・ヒル監督作品)
2021年12月18日
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後半の4作品です。 劇場版「きのう何食べた?」 安達奈緒子脚本は、実にストレートにLGBTの生活問題に切り込む。原作通りの自然体なのではあるが、それをまともに扱ってきたマンガがないために、思った以上に見応えがある。しかも、大画面で見ると、シンさんとケンジの心の動きが手にとるようにわかる。 ぶり大根食べたくなる。 STORY 小さな法律事務所で働く弁護士・筧史朗(西島秀俊) は、同居する恋人の美容師・矢吹賢二(内野聖陽)の誕生日プレゼントとして京都旅行を提案。賢二は大喜びで旅を満喫するが、旅行中のある出来事をきっかけに、二人は互いに本心を明かせなくなってしまう。そんな中、仕事帰りの史朗は見知らぬイケメン(松村北斗)と賢二が親密な様子で歩いているのを目撃。動揺する史朗は、賢二にその青年のことを聞くことができず悶々とする。 キャスト 西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、松村北斗、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子 スタッフ 原作:よしながふみ 監督:中江和仁 脚本:安達奈緒子 主題歌:スピッツ チーフプロデューサー:阿部真士 プロデューサー:佐藤敦、瀬戸麻理子、齋藤大輔 企画監修:神田祐介 音楽:澤田かおり 撮影:柴崎幸三 照明:赤羽剛 美術:井上心平 2021年11月21日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「リスペクト」 今年秀逸のドキュメンタリー映画「アレサ・フランクリン」のゴスペルコンサート場面をクライマックスに配した、アレサの半生を描いた作品。 黒人シンガーとして、2018年に没するまで第一線で活躍しながら、その生涯を描いた作品は作られなかった。今何故アレサか?もちろん亡くなったから、というのもあるかもしれないが、それよりもミーツーと事件は反差別運動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」が関連していると見るべきだろう。 夫や父親との葛藤、少女期の妊娠、等々のドラマを見てから、72年のライブの冒頭の神に捧げるゴスペル詩を聴けば、見事に彼女の人生を言い表していたのだとわかる。正に、ドラマとドキュメンタリーは、コインのうらおもて。 見どころ 「ソウルの女王」と称されるアレサ・フランクリンの半生を描く伝記ドラマ。世界的なスターへと上り詰め華やかな活躍を見せる一方、私生活では苦悩の多かった彼女の姿が描かれる。監督はドラマ「ウォーキング・デッド」などに携わってきたリーズル・トミー。アレサを『ドリームガールズ』などのジェニファー・ハドソンが演じ、数々の名曲を熱唱する。そのほかオスカー俳優フォレスト・ウィテカー、『最凶赤ちゃん計画』などのマーロン・ウェイアンズ、『ボディカメラ』などのメアリー・J・ブライジらが共演。 あらすじ 子供のころから圧倒的な歌唱力で天才と称され、ショービズ界の華として喝采を浴びるアレサ・フランクリン(ジェニファー・ハドソン)。しかし輝かしい活躍の裏では、尊敬する父(フォレスト・ウィテカー)や愛する夫(マーロン・ウェイアンズ)の束縛や裏切りに苦しんでいた。ぎりぎりまで追い詰められた彼女は、全てを捨て自分の力で生きていこうと決断する。やがてアレサの心の叫びを込めた歌声は世界を熱狂させ、彼女自身も自らへの「リスペクト」を取り戻す。 2021年11月23日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「グレタ ひとりぼっちの挑戦」 2018年、彼女がたった1人で選挙期間中の1人ストライキを始めた時、「◯◯効果とか◯◯曲線とか知らない政治家やジャーナリストが多すぎる」と15歳が嘆いていた。未だに知らない大人の1人として(既に名詞を忘れている)、私はもはや危機感のない大人。 彼女はベジタリアンになり、飛行機に乗らない。しかしそれが必要だと一言も言わない。むしろ、欧州気候変動会議で議長が大仰にグレタを迎えた後に、わずかな改善策を得意気に提案した時に、失望してイヤホンを外すことで、見事に示していた。そうなんだ、割り箸を使わないことで環境問題に「責任を果たした」と思っている、我々大人が間違っているのである。大切なのは「今すぐ」「政策を変える」ことであり、そのように「子供が大人になるのを待つことなく」政府に「それを強制する」ことである。具体的には「化石賞」をとるような日本政府を「変える」ことこそが「我々の責任」なのだ。それをこの時16歳のグレタに教えられた。 (解説) 傷つくことを恐れず、 正面からNOと言う。 科学を信じて、 新しい時代を生きよう。 それがグレタのめざす道。 greta 環境問題、 SDGsへの関心が高まる今、 観てほしい注目の映画! 2018年8月。15歳の少女グレタ・トゥーンベリはスウェーデン・ストックホルムにある国会議事堂前で学校ストライキを始めた。気候変動対策を呼びかけるため、一人で座り込み、自作の看板を掲げてリーフレットを配りながら通行人の質問に答える。毎週金曜日にストライキをすることから「Fridays For Future(未来のための金曜日)」と名付けられた運動は次第に注目を集め、世界中の若者たちがグレタの考えに賛同していった。たった一人で始めたストライキは、数か月のうちに国内外へ広がるムーブメントになった。 本作は、グレタが気候行動サミットで世界に訴えたスピーチの1年以上前から彼女に密着。犬や馬と戯れるくつろいだ姿や、アスペルガー症候群を持つグレタが重圧に悩み、葛藤する姿を映し出す。気候問題に関する知識と覚悟を持ち、国連総長アントニオ・グテーレスやフランスのマクロン大統領、ローマ教皇など世界のリーダーらと議論を重ねていく様子を、スウェーデン人監督ネイサン・グロスマンは最も身近なところで捉える。 強いメッセージと行動力で、環境活動家のリーダーとして若者から熱烈な支持を得る一方で、反感や偏見を持たれることも少なくない。本作は、彼女の考えを最も正確に色濃く反映し、これまで誰も知らなかったグレタの素顔を知ることが出来る貴重な映像の記録。2020年のヴェネチア国際映画祭やトロント国際映画祭などで高く評価され、コロナ禍の世界20か国以上で公開された。グレタは何のために闘うのか。私たちはパンデミック後の世界でその思いにどのように向き合い、生きるべきか。爽やかな余韻の中に深く思いを巡らせること必至のドキュメンタリー。 グレタ・トゥーンベリ 2003年、オペラ歌手の母・マレーナ、俳優で作家の父・スヴァンテの長女として生まれる。現在18歳で、妹のベアタと4人家族でストックホルムで暮らす。2011年に学校の授業で環境問題に関する映画を見た後、摂食障害になるほどショックを受け、それ以降、塞ぎこむことが増えた。後に、アスペルガー症候群と診断される。彼女は菜食主義者になり、飛行機での旅行を断るなど、生活習慣を変えた。気候問題に関しての独学を続け、2018年には学校ストライキをはじめ、彼女の活動が世界に波及すると、グレタは世界各地の会議に出席。大物政治家などの大人たちを相手に動じることなく厳しく批判し、気候変動の具体的対策を打つよう訴えつづけている。グレタの「Fridays For Future(未来のための金曜日)」と名付けられた運動は、南極大陸を除くすべての大陸で広がった。米タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に史上最年少で選出され表紙を飾り、2019年、2020年と2年連続でノーベル平和賞にノミネートされている。 Comment 小さな国の小さな女の子が本気で考えて、そして行動して、自分の言葉に責任を持って、 大人たちを冷静に見つめた結果、世界を変えた!でも彼女にとってはこれからでしょうね。。 LiLiCo(映画コメンテーター) 彼女はヒーローでも政治家でもない。彼女はグレタ。自分の信じる道をしっかりと生きている。私たちはどうだろう? 彼女の目から見える世界を少しでも体感できるこの映画と出会えてよかった。それがドキュメンタリーの美しさだと思う。 伊藤詩織(映像ジャーナリスト) 生きれる未来がほしい。と立ち上がったグレタ。ゆるぎなくて聡明なスピーチの数々の裏では沢山の葛藤があったんだと知りました。 子供からティーンへと成長していく彼女を支える家族の姿にも感動です。ぜひ、家族、友達とみてほしい作品。 小野りりあん(気候アクティビスト) グレタに違和感や嫌悪感を持つ人にこそ、この映画を見て欲しい。彼女の考えがはっきりとわかるはずだ。 そして、この深刻な気候危機を前に、彼女だけに戦わせてはならないということも。危機解決の責任は私たち大人にある。 斎藤幸平(経済思想家) 初めは知らないことがあるのは当然。知らないことを知ろうとする。そう心掛けて生きてきた。自分にできることは何か。 私も行動に移した一人だ。彼女の挑戦をきっかけに、世界に変化が訪れることを願っている。そして、もっと変わりたいと思った。 中島沙希(モデル・「EF.」共同創設者) 世界の気候変動ムーブメントを一変させた彼女の等身大の姿。怒ってるグレタしか知らない人に見てほしい。 江守正多(気候科学者) 本質を突くグレタさんの言葉は、「地球を将来につないでいくために何をすべきか」と私たちに問い掛ける。 市民一人ひとりに世界を変える力があると、行動で示してくれると同時に、「荷が重すぎる」とまで語った葛藤を乗り越えた、 一人の少女の成長物語でもある。 根本かおる(国連広報センター(UNIC)所長) 地球の危機に立ち向かう行動に人生が変わってしまうほどの決意をした人達が世界中にいる、僕もその一人だ! そしてその背中を押してくれたのは間違いなくグレタさんだ! 武本匡弘(NPO気候危機対策ネットワーク代表) 2021年11月28日 シネマ・クレール ★★★★ 「ディア・エヴァン・ハンセン」 エヴァンのやったことは許されないってことが一点。 鬱病の原因は夫々、しかも深刻なことが多いのに、全員、一つも深刻な原因が出てこない。ってことが一点。 歌の中で、「ずっと闇の中でも、助けがなくても、君は1人じゃない」ってことを、何度も何度も「歌で」語りかける映画なんだということはわかるけど、これを観た病人にホントに救いになるのだろうか?この映画の狙いは、結局はそこなんだろ?いや、そうじゃない。これはエヴァン・ハンセンのような、比較的「軽い?」病人に対する、家族の在り方を示した作品なのか?それにしても、これが刺さる人たちはどれくらいいるのだろうか? (←そのあと、「(周りは全然だったけど)私は刺さった」という方の感想を聞いた。確かに、あれは美談じゃない。それを描いたことは良かったのかもしれない) ゾーイも、エヴァンも、優等生の振りをしている彼女も、みんな最低に見える。だから最後はみんな赦しあったのか? エンドロールで、エイミーアダムスってわかったけど、ずっとそっくりさんだと思っていた。あんなにブクブク太って、彼女に何があったのか? STORY 家でも学校でも居場所のない高校生エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、ある日自分宛てに書いた手紙を同級生のコナーに持ち去られる。その後コナーは自殺し、手紙を見つけた彼の両親は、文面から息子とエヴァンが友人だったと勘違いする。彼の家族をこれ以上悲しませたくない一心で、思わずエヴァンはコナーと親友だったとうそをつく。彼らに聞かれるままに語ったありもしないコナーとの思い出は、人々を感動させSNSを通じて世界中に広がっていく。 キャスト ベン・プラット、ジュリアン・ムーア、ケイトリン・デヴァー、エイミー・アダムス、ダニー・ピノ、アマンドラ・ステンバーグ、コルトン・ライアン、ニック・ドダーニ スタッフ 監督:スティーヴン・チョボスキー 脚本・製作総指揮:スティーヴン・レヴェンソン 楽曲・製作総指揮:ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール 2021年11月30日 MOVIX倉敷 ★★★
2021年12月13日
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11月に観た映画は全部で8作品。2回に分けて紹介します。 「由宇子の天秤」 誰もが正義を振りかざす時代になった。 権力を持ったものや、富んだものだけが、「振りかざす」わけではない。SNSの時代には、誰もが全世界に「正義」を発信できる。その象徴的映像が、由宇子が弱った相手に振りかざすスマホ録画という武器である。女から突きつけられて、男は逃げることも、暴力を振るうことも、捲し立てることも出来ずに、微かに本音を喋る。決定的瞬間をドキュメンタリー監督は撮るわけだ。 しかし、それは由宇子をも撃つ。これの一部始終を例えば、エリの父親が告白記として出せば、たちまちのうちに由宇子は、矢野教諭の家族と同じ目に遭うだろう。 登場人物みんな善人で、みんな嘘をついている。でも、そうじゃない方が珍しいのが今の世の中である、と製作者は呟いているかのようだ。当然天秤は。AかBかを明らかにしない。由宇子のスマホが最後に自分を録画しようとしているのが、その象徴だろう。 (解説) 息もつけないほどの緊迫と衝撃!日本公開を前に、すでに世界中の映画祭を席巻中! 一体何が真実なのか?そして、「正しさ」とは何なのかー?. ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、究極の選択を迫られる。 女子高生いじめ自殺事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子が、父から聞いた「衝撃の事実」。由宇子は、究極の選択を迫られることになるー。 超情報化社会を生きる私たちが抱える問題や矛盾を真正面から炙り出した衝撃作は、世界三大映画祭の一つであるべルリン国際映画祭をはじめ、瞬く間に世界中の映画祭を席巻! 先の読めない巧みな脚本、観る者を釘付けにする役者陣の熱演、そしてラストに観客が突きつけられる究極の問いかけに驚嘆と絶賛の声が止まらない。監督・脚本は、デビュー作『かぞくへ』が高く評価される春本雄二郎。さらに、長編アニメーション『この世界の(さらに いくつもの)片隅に』の片渕須直がプロデューサーとして参加している。 今年、日本映画界の「台風の目」となること間違いなしの『由宇子の天秤』がついに日本公開となる! 主演・瀧内公美の圧倒的存在感、日本映画界を支える役者陣の熱演が光る! 主人公の由宇子を演じるのは、『火口のふたり』でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞に輝き、本作でラス・パルマス国際映画祭最優秀女優賞に輝いた瀧内公美。正義感溢れる自立した女性がやがて思わぬ窮地に追い込まれていく様を、圧倒的存在感で見事に演じきった。 そして脇を固めるのは『佐々木、イン、マイマイン』の河合優実、『かぞくへ』の梅田誠弘、バイ プレイヤー光石研ほか、日本映画界を支える実力派の役者陣が集結した。撮影前に丹念に リハーサルを重ねることで生まれた、様々な立場で生きる人たちの息遣いがスクリーンに焼き 付く。記憶に残る熱演の数々を、ぜひ見逃さないでいただきたい。 (ストーリー) 3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子は、テレビ局の方針と対立を繰返しながらも事件の真相に迫りつつあった。そんな時、学習塾を経営する父から思いもよらぬ「衝撃の事実」を聞かされる。大切なものを守りたい、しかし それは同時に自分の「正義」を揺るがすことになるー。果たして「「正しさ」とは何なのか?」。常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる…ドキュメンタリーディレクターとしての自分と、一人の人間としての自分。その狭間 で激しく揺れ動き、迷い苦しみながらもドキュメンタリーを世に送り出すべく突き進む由宇子。彼女を最後に待ち受けていたものとはー? 2021年11月8日 シネマ・クレール ★★★★ 「エターナルズ」 うーむ、せっかく宇宙規模のこれ以上ない設定を作ったのに、それと地続きを宣言しながら、またもや神様世界を作ってしまった。 なんでもあり。 それにシャン・チーやアベンジャーズ にあんなに出まくりだったマ・ドンソクは、不在の間セナは大丈夫だったの?(←勘違いしていました) シャン・チーの腕輪との関係は? 破壊と誕生を繰り返すことで、神さまに似たものを作るのだとしたら、地球を破壊することは一旦置いといて、それってかなり人間的な発想なのだけど‥‥。 なんかどう見ても子供騙しみたいに思える。 (←多分また見ると思う) STORY ヒーローチームが不在となった地球で、人類の行動が新たな脅威を呼び起こしてしまう。そんな中、7,000年にもわたって宇宙的規模の脅威から人類を見守ってきたエターナルズと呼ばれる10人の守護者たちが、数千年の時を経て次々と姿を現す。散り散りになっていた彼らは、人類滅亡まで7日しかないと知って再結集する。 キャスト ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、サルマ・ハエック、クメイル・ナンジアニ、リア・マクヒュー、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ローレン・リドロフ、バリー・コーガン、マ・ドンソク、キット・ハリントン、 スタッフ 監督:クロエ・ジャオ 2021年11月11日 MOVIX倉敷 ★★★ 「アイの歌声を聴かせて」 AI特区の村を、荒唐無稽にならないぐらいに詳細にさりげなく設定していて、その上にたった青春物語になっていて、心に響くアニメだった。 エンドロールを見るまで、詩音が土屋太鳳とは全く想像していなかった。透き通る歌声、良かった。 「最後に秘密は明かされるんだよ」 という少しうまく行き過ぎ物語で、何故か天才肌の学生がいるところも「竜とー」と同じ。20年前には想像もしなかったアニメが今は普通に展開される。これから20年したら、いったいどんな社会になるんだろう?技術的には似たような人形ロボットがいるんだろうか? 見どころ 『イヴの時間』シリーズや『サカサマのパテマ』などの吉浦康裕が監督・原作・脚本を務め、女優の土屋太鳳らがボイスキャストに名を連ねたアニメーション。学業優秀でスポーツ万能、何かと言えばミュージカル調で歌い出す主人公が、転校先の学校で周りの人たちを幸せにしていく。ボイスキャストは土屋のほか、福原遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子、日野聡などが担当する。 あらすじ 高校生のシオンは転校初日、クラスで孤立するサトミに「わたしが幸せにしてあげる」と宣言し、ミュージカルのように歌い出す。変わり者だが勉強もスポーツもでき、明るいシオンは、すぐにクラスに溶け込む。そして、ところ構わず歌い出したり、突飛な行動で周りを騒動に巻き込んだりしながら、サトミやクラスメートたちの心を動かしていく。 2021年11月9日 イオンシネマ岡山 ★★★★ 「梅切らぬバカ」 映画館は、久しぶりに賑わっていた。ただし、お年寄りばかりで。みんな家族には何かを抱えて、或いは抱えさせて、日常を過ごしているのだ。 何も問題は解決していない。 お母さんとの「共倒れ問題」は継続中である。 地域コミュニティとの不和は、解決していないどころか、拡大中で映画が切れてしまった。もう少し脚本は、先を描いても良かった。 それでも、クスクス笑いが漏れる良い映画だったと思う。自閉症の世界は、私たちにはよく見えない。でも、早急な結論を出さずに、お隣さんのようにじっくり付き合うように腰を据えれば、未来は見えてくるんじゃないだろうか? 見どころ 女優の加賀まりこが自閉症の息子の将来を案じる老いた母親を演じるヒューマンドラマ。地域社会から孤立し、息子と二人きりで生きてきた母親が、息子の自立を模索する。お笑い芸人で『間宮兄弟』などの俳優としても活動する塚地武雅が息子を演じるほか、渡辺いっけいや森口瑤子、斎藤汰鷹、林家正蔵、高島礼子などが共演。監督を『禁忌』などの和島香太郎が務める。 あらすじ 占い師の山田珠子(加賀まりこ)は自閉症の息子・忠男(塚地武雅)と二人で暮らしていたが、ある日、忠男の通う作業所で知的障害者のためのグループホームへの入居を勧められる。珠子は自分の死後の忠男の人生を考え、忠男の入居を決める。しかし、環境の変化に戸惑った忠男は、ホームを抜け出した際に、ある事件に巻き込まれてしまう。 キャスト 加賀まりこ(山田珠子) 塚地武雅(山田忠男) 渡辺いっけい(里村茂) 森口瑤子(里村英子) 斎藤汰鷹(里村草太) 徳井優 広岡由里子 北山雅康 真魚 木下あかり 鶴田忍 永嶋柊吾 大地泰仁 渡辺穣 三浦景虎 吉田久美 辻本みず希 林家正蔵(大津進) 高島礼子(今井奈津子) スタッフ 監督・脚本 和島香太郎 製作代表 松谷孝征 エグゼクティブプロデューサー 市井三衛 槙田寿文 小西啓介 プロデューサー 本間英行 根津勝 矢島孝 深澤宏 共同プロデューサー 杉本雄介 音楽 石川ハルミツ 撮影 沖村志宏 照明 土山正人 2021年11月16日 シネマ・クレール ★★★★
2021年12月11日
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今月の映画評「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」 今月は、現在公開中の007シリーズの最新作にして、ダニエル・クレイグ主演最終作の紹介です。今ならばアマゾン・プライムでシリーズ全てが見放題配信。特にクレイグ初主演の「カジノ・ロワイヤル」(2006)だけは見て欲しい。今回と、それは見事に「対」になっているからです。 クレイグのシリーズは、今までをリセットしてボンドが007になるところから始まりました。しかも、凡ゆる面でシリーズがリセットされています。髪は初めて金髪になり、若返ったことで激しいアクションが売りになりました。マティーニはシェイクが好みだったのにこだわらなくなり、女性とも必ずしもベットインせず、女性を対等に扱っています。しかもシリーズ全体は続きものになりました。幾人かが数作品に出演して消えていきます。 そして、なによりも特筆すべきなのは、2人の女性です。「カジノ」においてヴェスパー(エヴァ・グリーン)との愛と裏切りを経ることで非情なスパイとなったボンドは、本作冒頭では、それでも007を辞めてまで一緒になったマドレーヌ(レア・セドゥ)が裏切ったと思い、直ぐに別れます。ヴェスパーのことがあったからです。でも本作は、そこから物語が始まる。そして、ボンドの恋に決着がつき、凡ゆる不可能なミッションをこなしてきたボンドに最大の試練を与えます。最終作にして、リアル路線の集大成、もちろん各国をまたにかけた贅沢なロケとアクションも健在でした。大画面で見納めを。(2021年米国キャリー・フクナガ監督作品、公開中) ※アマプラでシリーズ見放題と言っても、最新作は当然映画館でしか観ることはできません。アマプラのこともあり、急いでレビューを載せました。本当はシリーズ全体を解説しないと意味が通じないところが多数あるのですが、「エヴァ」とは違い、人口に膾炙している作品なので強行しました(←県労会議事務局長がファンということも後押し)。
2021年11月19日
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後半の3作品です。 「最後の決闘裁判」 1360年から1386年までの中世フランスの歴史劇を重厚に見せる作品。 てっきり、藪の中的な展開になるのだと思っていたら、ル・グリ視点でも十分「同意なしの強◯」であるとわかる映像。3人に分けた理由がわからない。 カルージュは、いわば戦うことしか能がない騎士バカ。ル・グリは実務型の野望家。その2人は若い時は友人同士だったことは確かなのだろう。しかし、領地を奪われていって、最後は憎しみ合いしか残らない。 マルグリットは、その中で野望もなく、確かに子孫を残すためだけに旧家に嫁いだ美しく聡明な女性という位置付け。 そんなに驚く設定も、驚く展開もない。 何がみんなを感心させているのか、わからない。 STORY 中世のフランスで、騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、夫の旧友であるル・グリ(アダム・ドライヴァー)から暴力を受けたと訴える。事件の目撃者がいない中、無実を主張したル・グリはカルージュと決闘によって決着をつける「決闘裁判」を行うことに。勝者は全てを手にするが、敗者は決闘で助かったとしても死罪となり、マルグリットはもし夫が負ければ自らも偽証の罪で火あぶりになる。 キャスト ジョディ・カマー、マット・デイモン、アダム・ドライヴァー、ベン・アフレック スタッフ 監督:リドリー・スコット 脚本:ニコール・ホロフセナー、マット・デイモン、ベン・アフレック 原作:エリック・ジェイガー 上映時間 153分 2021年10月26日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「燃えよ剣」 新撰組は、滅びざるを得なかった。万が一幕府主導の新政府ができたとしよう。テロ集団の新撰組の何処に居場所があるだろうか?近藤勇の思惑と外れて、日本で1番のチャンバラ集団を目指していた土方歳三にとっては特に居場所はなかった。 そんなことを思わせないほどに、見どころを数分で済ませて、次から次へと進んでいく場面。 岡田准一の殺陣は素晴らしかったし、京都の街並み、リアルな殺陣、山崎丞の諜報、山南の進退は少し異常だし、徳川慶喜の解釈には?がっくし、ええじゃないかは要ったのか疑問だけど、総じて見応えあった。 田舎のバラガキ時代を尺を取ってじっくり見せてくれたのがとても新鮮でした。 それにしても、土方歳三という男、1862年から1869年まで、たった7年間でバラガキ→試衛館幹部→浪士隊副長→新撰組副長→臨時隊長→日本を代表する幕府方兵士→五稜郭隊長という役割を一流で駆け抜けた。こんな男はもう現れないかもしれない。 STORY 江戸時代末期、黒船来航と開国の要求を契機に、天皇中心の新政権樹立を目標とする討幕派と、幕府の権力回復と外国から日本を守ることを掲げた佐幕派の対立が表面化する。そんな中、武士になる夢をかなえようと、近藤勇(鈴木亮平)や沖田総司(山田涼介)らと京都に向かった土方歳三(岡田准一)は、徳川幕府の後ろ盾を得て芹沢鴨(伊藤英明)を局長にした新選組を結成する。討幕派勢力の制圧に奔走する土方は、お雪(柴咲コウ)という女性と運命の出会いを果たす。 キャスト 岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、山田裕貴、たかお鷹、坂東巳之助、安井順平、谷田歩、金田哲、松下洸平、村本大輔、村上虹郎、阿部純子、ジョナ・ブロケ、大場泰正、坂井真紀、山路和弘、酒向芳、松角洋平、石田佳央、淵上泰史、渋川清彦、マギー、三浦誠己、吉原光夫、森本慎太郎、高嶋政宏、柄本明、市村正親、伊藤英明 スタッフ 原作:司馬遼太郎 脚本・監督:原田眞人 音楽:土屋玲子 撮影:柴主高秀 照明:宮西孝明 美術:原田哲男 録音:矢野正人 編集:原田遊人 衣装デザイン:宮本まさ江 上映時間 148分 2021年10月31日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「DUNE/デューン 砂の惑星」 良くあることではあるが、冒頭タイトルから「part1」と表示しているので、最近の鑑賞者は「騙された」と思っているかもしれない。 しかし、話の筋自体は、基本的にはポールが目覚めて砂の惑星の救世主となるのは、決定していていて、しかも既にPart2になる映像はそこかしこに『予知夢』として流れていて、それを見て「話か単純だ」「ネタバレ満々」と不満に思う最近の鑑賞者はいるに違いない。 しかし、それは『直ぐに答を欲しがる』現代人の病というべきだろう。ラストで『予知夢』はそのまま「現実」として現れないことが、現れている。ポール自身はそのことを知っているから、命懸けで戦ったのである。 香料自体の正体がよくわからない。普通の香料ではなく、幻覚剤のようでもある。覚醒剤のようでもある。しかし、この下の「ストーリー」では『抗老化作用のある秘薬「メランジ」』と言っていて、ソレ映画の何処に解説していたの?その他、原作を読まないとわからないところが散見するのは確かに欠点。 しかし、それを含めて10000年を過ぎた年代は、人間の文明が始まって1万年後の世界を描いたということであり、その世界は「皇帝が支配する宇宙」という設定。宇宙の秘密はまだまだありそうではあるが、武力が支配を決定するそして民族の抵抗者が反撃する世界観は、もはや古い、とも思える。それを如何に崩すか、これから見ものという気がする。 映像的には大満足であり、これを見た後には原作を読めばさらにイメージしやすいはずだという期待感があり、原作を読みたいと非常に思ってしまった。ファンタジーは大好きです。 惑星の経済、水変換の仕組み、トンボ型飛行艇の理由、兵士以外の民の生活等々、気になるところは多数。黒人やイタリア系等の多国籍映画にわざとしているのだが、この辺りは監督の狙いだろう。続きが作られることを切に望む。 STORY 人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた未来。皇帝の命により、抗老化作用のある秘薬「メランジ」が生産される砂の惑星デューンを統治することになったレト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共にデューンに乗り込む。しかし、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝がたくらむ陰謀により、アトレイデス公爵は殺害されてしまう。逃げ延びたポールは原住民フレメンの中に身を隠し、やがて帝国に対して革命を決意する。 キャスト ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ゼンデイヤ、ジェイソン・モモア、ハビエル・バルデム スタッフ 監督・脚本:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 脚本:エリック・ロス、ジョン・スペイツ 原作:フランク・ハーバート 2021年10月28日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年11月07日
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10月は「たった」6作品しか観れなかった。 「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」 最後は何処からかウサギのぬいぐるみが現れると思っていたんだけど‥‥。 スマートでタフでヒューマンな、スパイ映画として、ちゃんと楽しめるエンタメ映画を10数年も演じてくれたダニエル・クレイグに感謝。 次はどうやって、「ジェームズ・ボンド」がリターンしてこれるのか見て期待。 観たはなから忘れる。 でも面白かった。 それで良いんだと思う。 でもどうしてあの敵役は日本趣味になったんだろ。 実は後でじわじわと傑作だったと思うようになった。 今月半ばに「今月の映画評」に、上と全く違う感想を書きます(^^)。 ストーリー 諜報(ちょうほう)員の仕事から離れて、リタイア後の生活の場をジャマイカに移した007ことジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、平穏な毎日を過ごしていた。ある日、旧友のCIAエージェント、フェリックス・ライターが訪ねてくる。彼から誘拐された科学者の救出を頼まれたボンドは、そのミッションを引き受ける。 キャスト ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、ロリー・キニア、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ダリ・ベンサーラ、デヴィッド・デンシック、ラシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック スタッフ 監督・脚本:キャリー・フクナガ 脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・Z・バーンズ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ 製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 2021年10月6日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)」 ホントに彼らのファンならば、途中で歌を絞られるインタビューなど挿入するな、と言いたいかもしれない。しかし、ほとんどリアルタイムでは彼らの音楽に触れてきていなかった私にはちょうど良い入門編だった。 「マイガール」など耳に覚えのある曲は数曲あったけど(これが黒人音楽台頭の中で歌われたとは思いもしなかった)、多くは、ハーレムで生きることや、信仰の歌、人類愛の歌、抵抗の歌など、今を辛く生きている黒人に向けて歌った歌が歌われた。 19歳のスティーヴィー・ワンダーがピアノなど無視しているのに見事に弾きこなす。スライの自由な服装に観客が反応する。当時の黒人の置かれた状況、開催当日アポロ11号の着陸の日であったけど黒人の反発、さらにはそれを批判した歌や批判するパフォーマンス、様々なインタビュー、50年後の人々のインタビューなどが、入れ替わり立ち現れる。とても、一度見ただけでは、理解しきれない程の情報量が映し出される。今年最高のドキュメンタリーである。 (解説) 50年間封印されていた音楽フェスの頂点、ついに解禁! ウッドストックと同じ1969年の夏、160キロ離れた場所で、もう一つの歴史的フェスティバルが開催されていた。30万人以上が参加したこの夏のコンサートシリーズの名は、「ハーレム・カルチャラル・フェスティバル」。このイベントの模様は撮影されていたが、映像素材はその後約50年も地下室に埋もれたままになっていた。誰の目にも留まることなく――今日この日まで・・・・ 才気に満ち溢れた若きスティーヴィー・ワンダーの勇姿、1年前に非業の死を遂げたキング牧師に捧げる、ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルズの、会場を異次元に導く歴史的熱唱、ウッドストックでもベスト・アクトの一つと称された当時人気絶頂のスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの圧巻のパフォーマンス、そして後世に語り継がれ、聴くものの人生を変えたニーナ・シモンのメッセージ・・・この約50年間、ほぼ完全に未公開だったことが信じられない、音楽の頂点を極めた貴重すぎる全てのシーンがハイライトと言える。この2021年に世に出るべくして出た、今年最も心躍り、感動的かつ重要な、時空を超えた最高のドキュメント! スタッフ 監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン 出演 スティーヴィー・ワンダー、B.B.キング、ザ・フィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン、ハービー・マン、デヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップス、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、モンゴ・サンタマリア、ソニー・シャーロック、アビー・リンカーン、マックス・ローチ、ヒュー・マセケラ、ニーナ・シモンほか 2021年10月17日 シネマ・クレール ★★★★★ 「総理の夫」 原作から少しづつ変えて、政策的にもジェンダー的にも大きく後退する脚本にしていた。脚本家、プロデューサー、監督共に、どうしようもない旧守家でした。 増税法案は自民党そっくりのものに変わっていて、原作では茶番の後に総理を辞めないことに決意したのに、辞めることにするなんて! 普通今の時代ならば、産休取って、普通に復帰を選ぶべきでしょ?何考えてんの? 中谷美紀の女性総理はぴったりの配役だけに、男の論理がまだ製作陣にいることがわかりガッカリ。 STORY 少数野党の党首を務める凛子(中谷美紀)を妻に持つ、鳥類学者の相馬日和(田中圭)。もし総理大臣になったら不都合はあるかと凛子に尋ねられた日和は、それを気に留めることもなく野鳥観察の出張に向かう。電波の届かない孤島で彼が10日にわたって野鳥観察をしている間、凛子は日本史上初の女性総理大臣に選出される。突如、総理の夫となってしまったことに戸惑いつつ、妻を全身全霊で支えようとする日和だが、夫婦の愛と絆を試されるような問題が次々と降りかかる。 キャスト 田中圭、中谷美紀、貫地谷しほり、工藤阿須加、松井愛莉、木下ほうか、長田成哉、関口まなと、米本学仁、国広富之、寺田農、片岡愛之助、嶋田久作、余貴美子、岸部一徳 スタッフ 原作:原田マハ 監督:河合勇人 脚本:松田沙也、杉原憲明 音楽:富貴晴美 製作:鳥羽乾二郎、村松秀信、西新、佐藤政治、今村俊昭、渡辺章仁、與田尚志、岩野裕一 エグゼクティブプロデューサー:福家康孝、柳迫成彦、三輪祐見子 企画・プロデュース:谷戸豊、橋本恵一 プロデューサー:山本章 共同プロデューサー:小久保聡、大森氏勝 キャスティングプロデューサー:福岡康裕 宣伝プロデューサー:小沼賢宜 撮影:木村信也 照明:石黒靖浩 美術:黒瀧きみえ 録音:日下部雅也 編集:瀧田隆一 装飾:鈴村高正 VFXスーパーバイザー:赤羽智史 衣裳:遠藤良樹 ヘアメイク:百瀬広美 スクリプター:杉本友美 選曲:長澤佑樹 音響効果:松井謙典 助監督:木ノ本豪 制作担当:赤間俊秀 2021年10月12日 MOVIX倉敷 ★★
2021年11月06日
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今月の映画評「82年生まれ、キム・ジヨン」 2年前、日本で韓国文学が異例の数十万部を売り上げました。「キム・ジヨンは私だ」という女性の声が後を絶ちません。親戚付き合い、父親の男女差別、就職、痴漢行為、等々、今まで見過ごされてきたジェンダー問題が見事に浮き彫りになっていました。 例えば、韓国独特の「ママ虫」という言葉があります。「専業主婦」のことを男性や独身女性が「我々は頑張っているのに、彼女たちはいい身分だよな」というニュアンスで使われているようです。子供のために仕事を辞めて頑張っているキム・ジヨン(チョン・ユミ)は、そうやってひとつづつ、少しづつ傷ついていました。そうして彼女に「憑依」という現象の多重人格が現れ出した、という所から映画が始まるのです。 映画では、現代の話に焦点が絞られていたし、コン・ユが理解ある夫になっているので、原作ほどの説得力はないかもしれません。 それでも、これを観た男性の映画仲間は「あの時の夫のあの一言はないよね」と憤っていました。この言葉を見逃すか、見逃さないかに、男性のジェンダー感度がかかっていると言っても過言はない、と私は思います。(←甘いかな) ものすごい決定的なドラマがあるわけではありませんが、それでも女性には大きな共感を持って迎えられたようです。最後は原作にはない救いがあります。原作を豊かに膨らませた部分もあります。これが映画的な作法でしょう。これは鑑賞者が試されている、そういう作品です。 (2020年韓国キム・ドヨン監督作品、レンタル可能)
2021年10月17日
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九月見た最後の3作品。 「MINAMATA」 ラストに世界中の公害訴訟写真が(おそらく現在も闘われている)映し出される。間違ってはいけないのは、この映画は、そういう世界的視野で作られた作品なのだということだ。 日本映画では滅多に見ない「これは事実に基づいた作品」キャンプションが冒頭を飾る。ところが、現像ラボの焼き討ちはホントにあったことだとしても、警官の問答無用の家宅捜索や工場の命令口調の妨害はホントにあったことだとは思えない。あんなに酷くはないと言いたいのではなくて、日本人ならばもっと陰険にやる。その辺りがワールドワイドな作品らしい。真田正之や加瀬亮、浅野忠信、國村隼みたいな大物が参加しているのが、解る。 よく考えたら、水俣の委任状操作、焼き討ち、工場での催涙弾、交渉過程等々、そして2013年の首相による宣言など、これがはじめての日本のドラマなのだということが恥ずかしい。もうまるきり原発映画と同じではないか? (解説) 伝説の写真家ユージン・スミスと水俣の実話から生まれた衝撃の感動作 ジョニー・デップが、全世界に関わるある重大なメッセージをハリウッドから発信する。伝説の写真家ユージン・スミスと当時の妻が、1975年に発表した写真集「MINAMATA」の映画化だ。ユージン・スミスは、今尚注目される史上最も偉大なフォトジャーナリストの一人、そんな彼が日本の公害病“水俣病”を取材した写真集である。ジョニーは今もまだ続く水俣の危機に当てたスポットライトで、各国で同じ環境被害に苦しむ多くの人々をも照らし出そうと、主演し自らプロデューサーにも名乗り出た。共演は英国の名優ビル・ナイに、日本からは真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子と、国際的に高い評価を受ける実力派が集まった。また、音楽は産業公害に強い関心を持つ坂本龍一が同じ志を持つ者として引き受けた。 人々の暮らしに寄り添ったユージンの瞳とカメラを通して私たちが見るのは、闇に包まれた苦難の瞬間にも、光として浮かび上がる人間の命の輝きと美しい絆。警告と希望を焼き付けた、今こそ体験するべき一本が誕生した。 (STORY) 1971年、ニューヨーク。アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは、今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。そんな時、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれる。水銀に冒され歩くことも話すことも出来ない子供たち、激化する抗議運動、それを力で押さえつける工場側。そんな光景に驚きながらも冷静にシャッターを切り続けるユージンだったが、ある事がきっかけで自身も危険な反撃にあう。追い詰められたユージンは、水俣病と共に生きる人々にある提案をし、彼自身の人生と世界を変える写真を撮る──。 2021年9月23日 シネマ・クレール ★★★★ 「空白」 悪意の押し付け 善意の押し付け 苦しい。観る方がかなり苦しい。 遺族がモンスターになる という事前宣伝のミスリード そういう単純な話ではなかった。 衝撃の「空白」が明らかになる そういう単純な話ではなかった。 古田新太の7年振りの主演。 その割には、一切テレビ宣伝に出なかった。何故? 非常に「誠実な」作品だった。 私は兄貴がこの夏に死んだ時に、空白の3時間を少しはしゃいで推理した。バカなことをした。 (解説) はじまりは、娘の万引き未遂だった。 ある日突然、まだ中学生の少女が死んでしまった。スーパーで万引きしようとしたところを店長に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれたというのだ。娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無実を証明しようと、店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も恐るべきモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく。 『新聞記者』『MOTHER マザー』のスターサンズが、『ヒメアノ~ル』『愛しのアイリーン』などで、衝撃と才能を見せつけた監督・𠮷田恵輔とタッグを組み、現代の「罪」と「偽り」そして「赦し」を映し出す、𠮷田恵輔監督オリジナル脚本で挑むヒューマンサスペンス。 観る者の心臓をあわだてる悪夢のような父親・添田充を、7年ぶりの主演映画となる古田新太が演じる。土下座しても泣いても決して許されず、人生を握りつぶされていくスーパーの店長・青柳に、古田新太と実写映画初共演となる松坂桃李。その他 出演者には、田畑智子、藤原季節、趣里、伊東蒼、 片岡礼子、そして寺島しのぶなど実力派俳優から、眩しいまでの才能を放つ若手までが揃った。この現代に生きるすべての人々の、誰の身にも起こりえる出来事に鋭く視線を向けた監督・𠮷田恵輔の「脚本」に俳優陣がケレン味なく体当たりした。 日本映画史に残る息の止まる感動のラストシーンに、𠮷田監督最高傑作との呼び声も高い渾身の一作が誕生した。 いちばん近くにいるのに、一番分からない。それでも、父親でありたかった。 STORY スーパーの化粧品売り場で万引きしようとした女子中学生は、現場を店長の青柳直人(松坂桃李)に見られたため思わず逃げ出し、そのまま国道に飛び出してトラックと乗用車にひかれて死亡してしまう。しかし、娘の父親(古田新太)はわが子の無実を信じて疑わなかった。娘の死に納得できず不信感を募らせた父親は、事故の関係者たちを次第に追い詰めていく。 キャスト 古田新太、松坂桃李、田畑智子、藤原季節、趣里、伊東蒼、片岡礼子、寺島しのぶ スタッフ 監督・脚本:吉田恵輔 音楽:世武裕子 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 プロデューサー:佐藤順子 アソシエイトプロデューサー:山本礼二 ラインプロデューサー:道上巧矢 撮影:志田貴之 照明:疋田淳 録音:田中博信 キャスティング:田端利江 装飾:吉村昌悟 衣装:篠塚奈美 ヘアメイク:有路涼子 助監督:松倉大夏 制作担当:保中良介 題字:赤松陽構造 編集:下田悠 2021年9月26日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「アウシュヴィッツ・レポート」 「過去を忘れる者は、必ず同じ過ちを犯す」(ジョージ・サンタヤナ) 元ドイツ大統領の言葉ではない。それよりもかなり厳しい言葉である。それが冒頭に示される。そして、エンドロールで歌は流れない。。代わりに、直近の有名政治家のあらゆる「ヘイトスピーチ(当然トランプのそれもある)」が流れて終わった。移民を許せば国家が不幸になる、という様な言葉が延々と五分以上続くのである。 その間に映し出されたのは、目も背けたくなる様なアウシュヴィッツの実態だった。レポートを書いた二人の逃亡は、実は映画の1/3に過ぎない。2/3は残された人々のドイツ軍人からの報復の様な虐待である。まるまる三日間9棟の約50人は立たされたまま、逃亡の情報はないか、絞り出されるのである。当然人は死ぬ。おそらく5人は死んだ。それよりも生きている方がつらい。真冬の中三日間立つことは想像できない。 死体処理班(コマンダー)が命がけで収集し、命懸けで運び込んだ証拠や証言も、1944年5月段階の連合国首脳部を動かさなかった。12万人が助かった、彼らの英雄行為を讃えるかの様なCMが流れているが、彼らの要望は、一瞬でも早くアウシュヴィッツ自体を彼らの仲間ともども空爆して欲しい、ということだった。今の倍する犠牲者を出さないために。結局、アウシュヴィッツの犠牲者は600万人に及んだ。現代よ忘れられない悲劇だろう。 (解説) 1942年にアウシュヴィッツに強制収容された二人の若いスロバキア系ユダヤ人は、1944年4月10日に実際に収容所を脱走し、アウシュヴィッツの内情を描いた32ページにも渡るレポートを完成させた。収容所のレイアウトやガス室の詳細などが書かれたレポートは、非常に説得力のある内容で、このレポートは「ヴルバ=ヴェツラー・レポート(通称アウシュヴィッツ・レポート)」として連合軍に報告され、12万人以上のハンガリー系ユダヤ人がアウシュヴィッツに強制移送されるのを免れた。本作の監督は、スロバキア人のペテル・ベブヤクが務め、本年度アカデミー賞国際長編映画賞のスロバキア代表に選出された。脱走する二人のスロバキア人は、『オフィーリア 奪われた王国』のノエル・ツツォル、新人のペテル・オンドレイチカが熱演。二人を救済する赤十字職員ウォレンには『ハムナプトラ』シリーズのジョン・ハナーが好演している。 (ストーリー) 1944年4月、アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。多くの囚人にとっては変わらない朝だったが、遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレートは、日々多くの人々が殺される過酷な収容所の実態を外部に伝えるため、同じスロバキア人のヴァルターとともに脱走を実行した。脱走が明るみになり、残された同じ収容棟の囚人らは、何日も寒空の下で立たせられ、ラウスマン伍長から執拗な尋問を受けていた。仲間の助け・想いを背負った二人は、なんとか収容所の外に脱走し、ひたすら山林を国境に向けて歩き続けた。今にも倒れてしまうほど疲弊していたが、奇跡的に助かり、赤十字によって救出された二人は、赤十字職員のウォレンにアウシュヴィッツの信じられない実態を告白しはじめた。果たして、彼らの訴えは世界に届くのか-。 2021年9月30日 シネマ・クレール ★★★★
2021年10月09日
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中間の3作品。「座頭ー」は既にアップしたが、流れを確認するためにも再掲。 「座頭市物語」 傑作。1962年作品。 既に座頭市の腕は知れ渡っていて、食客として賭場に入り、そして去ってゆくという形は出来上がっている。全ての渡世者作品(女に惚れられて振って去ってゆくことも)の形を踏襲しながらも、隅々まで神経の行き渡った「心理戦」が素晴らしい。座頭市が盲目なので、一段とピリピリとした画面になっている。なかなか見せなくてやっと披露する最初の居合抜きは、正に目にも止まらない。どう撮影したのだろう。そしてロケかセットかわからないけれども、リアルな美術も素晴らしい。当時の時代劇スタッフの底力が判る映像。 おたねが突然座頭市に告白するのは、現代にリライトするのならばもう少し説明が必要だけど、元はヤクザの兄貴の女だったのだからあり得ると見なければならない。一切濡れ場はないが、月夜の帰り道で座頭市に顔を触らせて微かに唇に触れさせるのは、かなりの熟練した女と見なくてはならない。実際かなりエロい場面である。それを清純派とも言えないけれどもそそとした美人の万里昌代にやらせる監督の強かさ(おたねは続編・4作目でも続投する‥‥万里昌代は68年を最後に銀幕から引退している)。ヤクザの出入りで、庶民が迷惑を被る、どちらのヤクザも、食客を利用する事しか考えていないなど、ヤクザに対する見方が厳しい、むしろコレがテーマだとも思える。「めくら」という単語が30-40回は出てくる脚本で、もはやテレビでは決して放映できないが、もっと知られるべき傑作である。 (解説) 勝新太郎が盲目のヤクザを演じて大ヒットし、合計26作品が製作された「座頭市」シリーズの記念すべき第一弾。原作は子母沢寛の随筆集『ふところ手帖』に収録された短編『座頭市物語』で、これを犬塚稔が脚色し三隅研次が監督した。勝新太郎と天知茂の名演技、伊福部昭の音楽など、見どころが満載。 (ストーリー) 貸元の助五郎は居合抜きの腕前を見込み、坊主で盲目の座頭市を食客として迎え入れた。市は結核に冒された平手造酒という浪人と知り合うが、彼は助五郎のライバル笹川親分の食客となってしまう。二人は酒を酌み交わしながら、ヤクザの喧嘩で斬り合うのはごめんだなどと話した。助五郎たちと笹川一家の緊張が高まる中、造酒が血を吐いて倒れてしまう。 2021年9月14日 TOHOシネマズ岡南午前10時の映画祭 ★★★★★ 「白頭山大噴火」 ツッコミどころ満載ではあるが、例によってスピード感ある脚本によって最後まで楽しめてしまう。それと、米国と中国の思惑通りにはいかないぞ、という韓国民の伝統的な思惑も観れる。彼らの都合で地震の噴火の阻止を阻止させられたら溜まったもんじゃない! 相変わらず、イ・ビョンホンはかっこよく、ハ・ジョンウは今回は臆病な軍人を演じるけどちゃんと最後には男気出します。マ・ドンソクが最後まで学者だったのが意外。 それにしても、遠く離れたソウルであんなにビルが倒壊するのならば、今すぐにでも建築法を変えないと‥‥。 (解説) 『KCIA 南山の部長たち』などのイ・ビョンホン、『クローゼット』などのハ・ジョンウ共演によるディザスタームービー。朝鮮半島にそびえる白頭山の大噴火沈静化を命じられた韓国軍大尉が、その鍵を握る北朝鮮の工作員と核燃料を探し出すために同国に潜入する。監督は『22年目の記憶』などのイ・ヘジュン、『監視者たち』などのキム・ビョンソ。『スタートアップ!』などのマ・ドンソクのほか、チョン・ヘジン、ペ・スジらが脇を固める。 (ストーリー) 北朝鮮と中国の国境付近に位置する火山・白頭山で、観測史上最大級の噴火が発生する。噴火によって大地震も誘発され、ソウル市内のビル群が倒壊するなど人々はパニックに陥る。白頭山の地質研究の権威である大学教授カン(マ・ドンソク)がさらなる大噴火の発生を予測したことを受けて、韓国政府は韓国軍大尉チョ・インチャン(ハ・ジョンウ)と彼が率いる爆発物処理班に対し、北朝鮮に潜入して火山沈静化を図る秘密作戦の遂行を命じる。そのためにインチャンたちは、作戦成功の鍵を握るとされる北朝鮮人民武力部の工作員リ・ジュンピョン(イ・ビョンホン)を見つけようとする。 2021年9月14日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 『先生、私の隣に座っていただけませんか?』 流石の黒木華。まさかの奈緒がそういう反応するか。 「もう遅い」私もそう思いました。でも、それだとありきたりな結末なので、もう一捻りふた捻りしたところが、この作品の新しいところ。 しかも、テイストはギャグ映画。えっ違う?それは貴方に後ろくらいところがあるからでは? 受けの柄本祐はそうなるのかなあ、悔しいけどありうるなあ。 反論ある方もいるかもしれませんが、黒木華は不倫はしていないに一票。 超低予算映画なのに、キチンと観させる。素晴らしい企画だと思う。 何故か、20代らしき黒木華の愛読書が、90年代初めの小学館「BASARA」と70年代中頃の「ポーの一族」って、ちょっと違うだろ?なんでそれが実家の本棚にあるの? ちなみに、私にはある仮説がある。 日本は史上何回か、倫理に厳しい時代を繰り返してきた。 本来は女系社会だった古代では、男の血統などは関係なかったから処女性はおろか、不倫などは問題にならなかったようだ。時代が下って源氏物語やとりかえばや物語の世界では、不倫し放題。しかし、その頃になると「人妻」という言葉は一切出てこなくなる。万葉集には15首もある。一種のブームである。実はこの時期(7世紀後半)中国の法制度に倣った律令が制定された。この時だけ「人妻と情交した者・人妻の身で情交に応じた者」が処罰の対象になった。この時だけ、これは「タブー」になったのである。だから、かえってこれは「甘い誘惑」を伴う新鮮な言葉になった。男の血統を保証する宦官制度は、遂に日本に導入されなかった。平安時代半ばになると、後宮は公達の集まるサロンと化す。娘を天皇家に入内させ、生まれた皇子の後見役として勢力を伸ばす「セックス政治」に徹し、「ゆるい」サロンで人心をつかむ方向に政治は変わる。 日本は最初から国選歴史書で兄妹間で子供をもうけて国づくりをしている。ずっと国の最高権力者たちが「性愛」の物語の作成と普及に積極的関わって来た。万葉集、古今和歌集、源氏物語、能狂言、歌舞伎。ただ、外の目を気にした時に(飛鳥、戦国、明治)タブーが厳しくなった。そういう意味では、オリンピックを迎えた2021年前後が、日本史上、4回目か5回目かの倫理に厳しい時代に突入していると思う。だから、こういう作品が生まれるのは、ある意味「必然」なのである。 (ストーリー) 結婚5年目を迎えた、俊夫(柄本佑)と佐和子(黒木華)の漫画家夫婦。佐和子が不倫をテーマにした新作を描き出すが、佐和子の担当編集者である千佳(奈緒)と不倫をしていた俊夫は、佐和子の新作に登場する夫婦が自分たちとそっくりであることに気づき、自らの不倫がバレたのではないかと考える。そして漫画のストーリーは、佐和子をモデルにしたらしき女性と自動車教習所の先生が恋に落ちる展開を迎える。 キャスト 黒木華、柄本佑、金子大地、奈緒、風吹ジュン スタッフ 脚本・監督:堀江貴大 劇中漫画:アラタアキ、鳥飼茜 音楽:渡邊琢磨 主題歌:eill 製作:中西一雄、小西啓介、鳥羽乾二郎、久保田修 プロデューサー:小室直子、村山えりか スーパーバイジングプロデュ ーサー:久保田修 ラインプロデューサー:原田文宏 撮影:平野礼 照明:川邉隆之 美術:布部雅人、春日日向子 装飾:加々本麻未 録音:加藤大和 編集:佐藤崇 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:外丸愛 助監督:成瀬朋一 制作担当:仙田麻子 宣伝プロデューサー:鶴田菜生子 上映時間119分 2021年9月20日 MOVIX倉敷 ★★★★★
2021年10月08日
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9月に観た映画は9作品でした。比較的良作が揃っていたと思います。3回に分けて紹介します。 「虎狼の血level2」 鈴木亮平の上林が怖すぎる、という評判を楽しみにしていたのですが、怖すぎました。私ホラー苦手なんです。少年の時に両親を惨殺して、ずっと自殺したかったサイコ野郎が、どんどん暴走してゆくさまを、初めから予想して絵を描いていた上層部が怖すぎる。 大上(狼)に育てられた日岡が、自らを犬と認めてゆく様を描いた作品。これが成立するのも、ヤクザ法が成立する平成4年以前の話だから。 もうヤクザ映画というのは、今年の3作のタイプを除くと成立しないのだろうか? 西野七瀬がどこまで脱ぐのか?と期待していたが、まさかあそこまでとは!ある意味すごい。それなりに大人の女の色香は出していたのに、勿体ない。 STORY 広島県警呉原東署刑事二課の日岡秀一(松坂桃李)は、マル暴の刑事・大上章吾に代わり、広島の裏社会を治めていた。しかし、上林組組長の上林成浩(鈴木亮平)が刑務所から戻ったことをきっかけに、保たれていた秩序が乱れ始める。上林の存在と暴力団の抗争や警察組織の闇、さらにはマスコミのリークによって、日岡は追い詰められていく。 キャスト 松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、西野七瀬、早乙女太一、斎藤工、吉田鋼太郎、滝藤賢一、中村獅童、音尾琢真、矢島健一 スタッフ 原作:柚月裕子 監督:白石和彌 企画・プロデュース:紀伊宗之 プロデューサー:天野和人、高橋大典 脚本:池上純哉 音楽:安川午朗 撮影:加藤航平 照明:川井稔 美術:今村力 録音:浦田和治 2021年9月2日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「子供はわかってあげない」 子供はわかってあげない、と言いながら、大人の事情は十分新釈できるつくりになっているが、それを含めて子供はわざと無視するのだろう。 「いい子に育った」 藁谷さんの呟きには実感がある。 クスクス笑える、夏の癒しムービー。 田島列島の世界のまんま。 見どころ モーニングで連載され「マンガ大賞2015」の2位に選出された田島列島のコミックを実写映画化。高校生たちのひと夏の冒険を描く。ヒロインを『羊と鋼の森』などの上白石萌歌、相手役を『町田くんの世界』などの細田佳央太が演じ、『スマホを落としただけなのに』シリーズなどの千葉雄大をはじめ、古舘寛治、斉藤由貴、豊川悦司らが共演。『南極料理人』などの沖田修一がメガホンを取った。 あらすじ ひょんなことから仲良くなった水泳部員の朔田美波(上白石萌歌)と書道部員の「もじくん」こと門司昭平(細田佳央太)は、突然送られてきた「謎のお札」をきっかけに、幼い頃に別れた美波の実の父親を探すことに。もじくんの兄(千葉雄大)の協力を得て実父・藁谷友充(豊川悦司)の居所を探し出した美波は、家族に内緒で父を訪ねる。再会した父の怪しげな雰囲気に戸惑う美波だったが、夏休みをともに過ごし……。 キャスト 上白石萌歌(朔田美波) 細田佳央太(門司昭平) 千葉雄大(門司明大) 古舘寛治(朔田清) 斉藤由貴(朔田由起) 豊川悦司(藁谷友充) 高橋源一郎 湯川ひな 坂口辰平 兵藤公美 品川徹 きたろう (声の出演) 富田美憂 浪川大輔 櫻井孝宏 鈴木達央 速水奨 スタッフ 監督・脚本 沖田修一 脚本 ふじきみつ彦 音楽 牛尾憲輔 原作 田島列島 プロデューサー 筒井竜平 吉田憲一 佐藤美由紀 久保田傑 撮影 芦澤明子 DIT・VE 鏡原圭吾 照明 永田英則 美術 安宅紀史 装飾 山本直輝 録音 近藤崇生 整音 高田伸也 音響効果 勝亦さくら 編集 佐藤崇 スクリプター 田口良子 衣裳 馬場恭子 ヘアメイク 有路涼子 VFX・ライン編集 野間実 キャスティング 山口正志 助監督 玉澤恭平 制作担当 芳野峻大 劇中アニメ「魔法左官少女バッファローKOTEKO」 監督 菊池カツヤ キャラクターデザイン 奥山鈴奈 音響監督 横田知加子 プロデューサー 櫻井崇 2021年9月7日 岡山メルパ ★★★★ 「シャン・チー/テン・リングスの伝説」 指パッチン後の世界の物語。 もはや宇宙を滅ぼす謎は全部明かされたと思たのに、新たにテン・リングスという謎が生まれたという物語。 まさかのケイ・ティーやシム・リウというあまりパッとしない者が主人公に選ばれる、中国台頭世界。 トニー・レオンを父に持つのは、それを僅かに補正しようというアレなのか。 絶対父親殺しの物語だと予想していたのに、単なる世界救世物語でした。うーむ、つまらん! STORY 犯罪組織を率いる父親(トニー・レオン)に幼いころから鍛え上げられ、最強の力を持ったシャン・チー(シム・リウ)は、組織の後継者とみなされていた。だが、彼は自らの力を封印し、過去の自分と決別してサンフランシスコでホテルマンとして平凡に暮らそうとする。だが、伝説の腕輪"テン・リングス"を操る父親が世界を恐怖に陥れようとしたため、シャン・チーはついに封印していた力を解き放つ。 キャスト シム・リウ、トニー・レオン、ミシェル・ヨー、オークワフィナ、(日本語吹き替え版)、細谷佳正、内田真礼、山路和弘、ニケライ・ファラナーゼ スタッフ 監督:デスティン・ダニエル・クレットン 2021年9月9日 ★★★ MOVIX倉敷
2021年10月07日
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今月の映画評です。 「パブリック 図書館の奇跡」 岡山県には、日本最大の借し出し数を誇る県立図書館があります。此処に人が大勢集まるのは、単なる本の貸借の場所だけではなくて、様々な企画もあり人が落ち着いて過ごせる「公共」の機能もあるからです。 米オハイオ州シンシナティの公共図書館で、実直な図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)が常連の利用者であるホームレスから思わぬことを告げられます。「今夜は帰らない。ここを占拠する」。大寒波の影響により路上で凍死者が続出しているのに、市の緊急シェルターが満杯で、行き場がないというのがその理由でした。スチュアートは独断で彼ら100人のホームレスの占拠を認めます。市長選への立候補が迫って、強い立場を示したい検察官(クリスチャン・スレーター)や、目立つ報道をしたいテレビ局キャスターなどの思惑がすれ違い、予測不可能なラストにもつれ込む佳作でした。 いったいどうしたら良かったのでしょうか? 法と秩序のために力による排除を主張する検察官に対して、図書館の館長は「私は市民の情報の自由のために全人生を捧げてきた。公共図書館はこの国の民主主義の最後の砦だ」と叫んでホームレスと一緒に立て篭もります。「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る」とした実在する「図書館の自由に関する宣言」を思い出しました。 主演で監督を果たしたエミリオ・エステベスは、安易なラストにせずに公共のあり方を観客に問うています。(2020年米国作品、レンタル可能)
2021年09月18日
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8月残りの3作品。8月は面白い作品は多かった。 「ドライブ・マイ・カー」 実はどこが良いのか、よくわからない。 普通の「喪失感」の描写のような気もする。 ただ、ドライバーの褒める点は、私自身の仕事の見直しになった。実際、急発進や急ブレーキなどを一切感じさせずに運転するのは至難の業なのである。 ラストは、どう考えても「プレゼント」されたとみるべきか。 見どころ 村上春樹の短編小説を原作に描くヒューマンドラマ。妻を失い喪失感を抱えながら生きる主人公が、ある女性との出会いをきっかけに新たな一歩を踏み出す。『寝ても覚めても』などの濱口竜介が監督と脚本を手掛け、『きのう何食べた?』シリーズなどの西島秀俊が主人公、歌手で『21世紀の女の子』などで女優としても活動する三浦透子がヒロインを演じ、『運命じゃない人』などの霧島れいかや、『さんかく窓の外側は夜』などの岡田将生らが共演する。 あらすじ 脚本家である妻の音(霧島れいか)と幸せな日々を過ごしていた舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)だが、妻はある秘密を残したまま突然この世から消える。2年後、悠介はある演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島に向かう。口数の少ない専属ドライバーの渡利みさき(三浦透子)と時間を共有するうちに悠介は、それまで目を向けようとしなかったあることに気づかされる。 キャスト 西島秀俊(家福悠介) 三浦透子(渡利みさき) 霧島れいか(家福音) パク・ユリム(イ・ユナ) ジン・デヨン(コン・ユンス) ソニア・ユアン(ジャニス・チャン) アン・フィテ ペリー・ディゾン 安部聡子(柚原) 岡田将生(高槻耕史) スタッフ 原作 村上春樹 監督・脚本 濱口竜介 脚本 大江崇允 音楽 石橋英子 プロデューサー 山本晃久 撮影 四宮秀俊 照明 高井大樹 2021年8月21日 シネマ・クレール ★★★★ 「ザ・スーサイド・スクワッド 極悪党、集結」 彼らはいつからこんなに「反権力」になったんだろ。 でも嫌いじゃない。いや寧ろ好きかも。 ピースメーカーが、秩序のためならば犠牲を厭わない「信念」の下に、軍の中の「正義者」を裏切る。それでも、悪物は「仲間」を助けるために、ピースメイカーをやるという構図が、如何にもアメリカ。 ハーレークイーンの「譲れない点」が、そうは言っても「当たり前」すぎて、だったら悪役やるなよ、と思ってしまう。あの大統領可哀想と思ったのは私だけかな? 何故ネズミか。それは、嫌われ者でも生きているから。 この視点が、怪物にも仲間のサメ男にも、あのキモい男にも徹底されていて、エリート女軍人と上手いこと対称になっている。 水槽のキモコワイ生物が可愛い。でも怖い。 STORY クレイジーなハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、最強スナイパーのブラッドスポート(イドリス・エルバ)、敵をチーズに変える能力を持つポルカドットマン(デヴィッド・ダストマルチャン)ら凶悪な犯罪者たちを集め、特殊部隊が結成される。彼らは成功すれば刑期短縮、失敗すれば即死、命令に背けば首に埋め込まれた爆弾で殺されるという命懸けのミッションに挑む。 キャスト ヴィオラ・デイヴィス、ジョエル・キナマン、ジェイ・コートニー、ピート・デヴィッドソン、メイリン・ン、フルーラ・ボルク、ショーン・ガン、ネイサン・フィリオン、マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ダニエラ・メルキオール、シルヴェスター・スタローン、デヴィッド・ダストマルチャン、マイケル・ルーカー、ピーター・キャパルディ、アリシー・ブラガ、ファン・ディエゴ・ボト、ホアキン・コシオ、(日本語吹き替え版)、東條加那子、山寺宏一、悠木碧、宮野真守、大塚明夫、玄田哲章、宮内敦士、立木文彦、日野聡、姫野惠二、津田健次郎、上村典子、水樹奈々、江川央生、加藤亮夫、武内駿輔、ファーストサマーウイカ スタッフ 監督・脚本:ジェームズ・ガン 製作:チャールズ・ローヴェン、ピーター・サフラン 製作総指揮:ザック・スナイダー、デボラ・スナイダー、ウォルター・ハマダ、シャンタル・ノン・ヴォ、ニコラス・コルダ、リチャード・サックル 撮影:ヘンリー・ブラハム 美術:ベス・ミックル 編集:フレッド・ラスキン、クリスチャン・ワグナー 衣装:ジュディアナ・マコフスキー 音楽:ジョン・マーフィ 2021年8月27日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://wwws.warnerbros.co.jp/thesuicidesquad/ 「サムジン・カンパニー1995」 実際の事件と違い、かなり脚色しているけれども、25年前のジェンダー意識、高卒格差、環境問題、大企業の放漫、グローバル問題からのだきグマ乗っ取りに至るまで、明るい脚本の中に、これでもか、と社会問題を打っ込む監督の手法は心地いい。 どんでん返しによるどんでん返しが、いかにも韓国映画らしい。 introduction ひとりひとりは微力でも、みんなが集まれば大きなパワーとなる。自らの知識と知恵と勇気で会社の不正に立ち向かった女性たちがいた―― 熾烈な学歴社会である韓国で、どんなに優れた能力があったとしても、大卒社員の補助的な役割しかさせてもらえない3人の高卒女性社員たち。それでも彼女たちがいなければ会社が回っていかない、そんな現実をうまく物語に落とし込みながら、内部告発というドラマチックな展開が発展していく。劇中のセリフにあるようにtiny tiny=ちっぽけな存在の彼女たちは、会社に妨害され、挫折を繰り返すけれど、決して諦めることなく自分たちの力を信じて地道に前進していく。その姿は、ひとりの女性が大企業相手に莫大な公害賠償金を勝ち取った映画『エリン・ブロコビッチ』(2000)や、落ちこぼれOLたちの活躍を描いた日本のドラマ『ショムニ』シリーズのように爽快でカッコよく、応援せずにはいられない! 女性社員たちが部署の垣根を越えて協力していく友情に感動し、愛する会社と地域の人々を守ろうとする正義感に胸がアツくなり、誰が本当の黒幕なのかわからない二転三転するストーリーにハラハラドキドキする。最後まで飽きさせないエンタテインメントの誕生だ。 1988年のソウルオリンピック、1993年の大田(テジョン)国際博覧会(万博)。国際的な一大イベントを成功させたこの時代、一気にグローバル化の波を迎え、街にパソコン教室や英語教室などが溢れていた韓国。その真っただ中である1995年を舞台にした本作は、実際に某大企業で商業高校卒の社員のためにTOEICクラスが開設されていたことや、1991年に起きた、斗山電子のフェノール流出による水質汚染事件がモデルとなっている。また、本作のジャヨンにもモデルが存在すると監督が韓国の取材で語っており、現パリバゲットのイム・ジョンリン支会長が若い頃に経験した会社での不当な扱いに立ち向かったエピソードをもとに制作をスタートした。 story 韓国発、実話をベースにした爽快な大逆転ストーリー! 1995年、金泳三大統領によってグローバル元年と位置付けられた韓国。ソウルでは語学学校が早朝クラスでも満席になるなど、街のいたるところで英語が聞こえてきていた。 ソウル・乙支路(ウルチロ)。サムジン電子に勤める生産管理3部のイ・ジャヨン(コ・アソン)、マーケティング部のチョン・ユナ(イ・ソム)、会計部のシム・ボラム(パク・ヘス)。大企業に勤める高卒の女性ヒラ社員たちは実務能力は高いが、主な仕事はお茶くみや書類整理など雑用ばかり。しかしそんな彼女たちにも、会社の方針でTOEIC600点を超えたら、「代理」に昇進できるチャンスが到来!ステップアップを夢みて英語を学ぶ彼女たちだったが、偶然、自社工場が有害物質を川に排出していることを知る。事実を隠蔽する会社を相手に解雇の危険を顧みず、力を合わせ真相解明に向けて奔走する3人。彼女たちの部署の垣根を越えた友情、会社を守りたいと思う愛社精神、そして不正に立ち向かう正義感に勝機はあるのか? 監督からのメッセージ message from Director 本作の出発点は、末端の高卒社員が力を合わせて成し遂げた実際の話からだった。 本質はその人々の中にあった「ファイト」という気持ち。それぞれの人生の中で静かに沸くファイト。 生きていく中で直面する大小さまざまな問題を、諦めず、文句を言わずに解決しようとする人々の物語。 果たして、解決できるのか?こんなことで世の中が変わるのか?と考えながらも、自分を守るため前に進んで行く人たちの話を作りたいと思った。 「たとえ小さな存在でも私たちは偉大なのだから」 そんな信念と共に、自分の仕事に責任感と誇りを持った人たちの話を楽しくかっこよく描きたかった。 何よりも堂々としていて凛々しい彼女たちの突き進む姿を見せたかった。 ―― 監督 イ・ジョンピル 2021年8月29日 シネマ・クレール ★★★★ https://samjincompany1995.com/
2021年09月12日
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「サマーフィルムにのって」 「時かけ」や「サマータイムマシンブルース」その他の学園SFモノをミックスしたような作品、であることは重々自覚しているようで、凛太郎がタイムトラベラーであることは早々に発覚、しかも「宿命パラドックス」の説明によって、みんな明るくこの異常事態を単に映画完成のためだけに乗り切る。 ラストシーンのために、初めから合宿3日を用意している事自体すごい設定だなと思うんだけど、有名らしいハダシ監督のレビュー作品の内容はさっぱりわからない。 普通ラストは、(今回は)エンドでタイトルを出した後に、この映画の幻の作品が発見されました!などの「オマケ」がつくもんだけど、監督や脚本の三浦直之はそれを採用せずに、余韻を残したままエンドロールに突入するラストを選んだ。ホントにあれで良いのか?それを映画を見た仲間で話ってみたい。そういう「世界」も映画の世界だと思う。 場所は京都の千本かと思いきや、足利市でした!足利、映画ロケ地多いよね。スタッフに(見習い)というメンバーが2人も居て、想像を掻き立てる。高校生が混じったかな?三人娘の撮影担当、ビート板の河合優実がメイのゆきちゃんにソックリで、なんか他人事には思えなかった。祷キララも良かった。伊藤万理華のアイドル時代はまるきり思い出さないけど、あっという間に代表作が出来上がった。 明るいタイムパラドックス学園SF映画が、また出来上がった。 (解説) 日本映画界に彗星のごとく現れた『サマーフィルムにのって』。 第33回東京国際映画祭で上映されるやいなや話題を集め、世界各国の映画祭での上映が続々と決定。 青春映画には欠かせない恋と友情に加え、時代劇、SF、全ての要素が華麗にシンクロ。物語は奇跡的なラストシーンへと向かい、唯一無二の魅力を放つ。ここに新時代を代表する青春映画が誕生した。 主役には、猫背・がに股を披露し勝新オタクを熱演、殺陣にも挑戦している元乃木坂46の伊藤万理華。 共演に金子大地、河合優実、祷キララと、今後の活躍が期待される新星が勢揃いした。 監督はドラマや CM、MV など幅広く手掛ける松本壮史が務め、数々の映像作品を共に作り上げてきた盟友、劇団「ロロ」主宰・三浦直之が脚本を担当。 気鋭の若手クリエイターの元に次世代俳優たちが集結、瑞々しくスクリーンに輝く。 Story 時代劇オタクの女子高生監督が 主役に抜擢したのはタイムトラベラー!? 勝新を敬愛する高校3年生のハダシ。 キラキラ恋愛映画ばかりの映画部では、撮りたい時代劇を作れずにくすぶっていた。 そんなある日、彼女の前に現れたのは武士役にぴったりな凛太郎。 すぐさま個性豊かな仲間を集め出したハダシは、 「打倒ラブコメ!」を掲げ文化祭でのゲリラ上映を目指すことに。 青春全てをかけた映画作りの中で、ハダシは凛太郎へほのかな恋心を抱き始めるが、 彼には未来からやってきたタイムトラベラーだという秘密があった――。 2021年8月9日 シネマ・クレール ★★★★ 「17歳の瞳に映る世界」 正に少し田舎の17歳から見た!都会のペンシルバニア。現代アメリカを等身大で映して好感持てた。監督も役者も無名。それでも、こういう作品がアメリカで作られているのだ、それなりに少女に寄り添う公的機関もあるのだ、と思えるような、それでも少女はかなりのリスクを犯してではないと処置できなかった、という現実も描いている。まあまあ面白かった。 抑制の効いたストーリー展開は好み。例えば、彼女はどうやって男と寝て別れたのか、とか。それは観客には知りたいことだけど、彼女には苦痛の思い出でしかない。 (解説) 思いがけず妊娠した17歳の少女の旅路を描き、ベルリン国際映画祭審査員グランプリなどを受賞したヒューマンドラマ。おとなしくて目立たない高校生が、両親の同意なしで中絶手術を受けることができるニューヨークへ親友と共に向かう。監督を務めるのは『ブルックリンの片隅で』などのイライザ・ヒットマン。主演は本作が長編映画デビューとなるシドニー・フラニガン。 あらすじ 17歳のオータム(シドニー・フラニガン)は友達が少なく、目立たない高校生。妊娠していることがわかったオータムだったが、ペンシルベニア州では中絶手術に両親の同意が必要だった。オータムは彼女の異変に気づいた従妹であり親友でもあるスカイラー(タリア・ダイラー)と一緒に、中絶手術に両親の同意を求めないニューヨークへ向かう。 2021年8月15日 シネマ・クレール ★★★★ 「フリー・ガイ」 ゲームソフトの中のモブキャラは、ソフトが終わらない限りに何度でも生き返るけど、映画作品の中のモブキャラは基本的に一度だけの人生だ。 「竜そばかす」含めて、モブキャラに照明が当たっている。彼は成長するAIなので、これからどのように恋をしてゆくのか気になる。 STORY 銀行の窓口係ガイ(ライアン・レイノルズ)は、平凡で退屈な毎日だと感じる一方で、連日強盗に襲われていた。疑問を抱いた彼は、襲ってきた銀行強盗に反撃を試みると撃退でき、さらに強盗から奪った眼鏡を掛けると、街の至るところにこれまで見たことのなかったアイテムやミッション、謎めいた数値があった。やがてガイは、自分がいる世界はビデオゲームの中で自身がモブキャラであることを知り、愛する女性と街の平和を守ろうと正義のヒーローを目指す。 キャスト ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、リル・レル・ハウリー、ジョー・キーリー、タイカ・ワイティティ、 スタッフ 監督:ショーン・レヴィ 脚本:ザック・ペン、マット・リーバーマン 音楽:クリストフ・ベック 2021年8月17日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」 もうなんでもアリのウルトラチームバディ映画になってきていて、死んだ人間も蘇り、宇宙にさえゆく。 そもそも、車であんな谷の渡り方、「こんなのは初めて」。 あと二作で終わりというけど、あと二作もあるのか。多分見るけどね。シャリーズ・セロン様がラスボスになりそうだし。今回も彼女が良いところを攫っていってしまいました。 終わりが近づいてきたので、南米家族のルーツが語られる。 結局、彼らの価値観は家族>仲間>世界平和なんだと思う。それとも、世界平和(義理)は、家族(人情)に勝つことはあるのか?その辺りが最終的なテーマになりそう。 STORY レティ(ミシェル・ロドリゲス)と幼い息子のブライアンと共に穏やかに暮らすドミニク(ヴィン・ディーゼル)の前に、実の弟ジェイコブ(ジョン・シナ)が刺客となって現れ、次々に攻撃を仕掛けてくる。かつての宿敵サイファー(シャーリーズ・セロン)ともつながるジェイコブは、ある恐ろしい計画を実行しようとしていた。彼らの陰謀を阻止するため、ドミニクはファミリーと一丸となって立ち向かう。 キャスト ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースター、タイリース・ギブソン、クリス・“リュダクリス”・ブリッジス、ナタリー・エマニュエル、シャーリーズ・セロン、ジョン・シナ、サン・カン、アンナ・サワイ、ヘレン・ミレン、(日本語吹き替え版)、楠大典、甲斐田裕子、松田健一郎、渡辺穣、園崎未恵、坂本真綾、川島得愛、田中敦子、中村悠一、神谷浩史、浪川大輔、下野紘、木村昴 スタッフ 監督・原案・脚本:ジャスティン・リン 原案・脚本:ダニエル・ケイシー 脚本:アルフレッド・ボテーロ キャラクター原案:ゲイリー・スコット・トンプソン 製作:ニール・H・モリッツ、ヴィン・ディーゼル、ジェフ・キルシェンバウム、ジョー・ロス、ジャスティン・リン、クレイトン・タウンゼント、サマンサ・ヴィンセント 2021年8月17日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年09月11日
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8月に観た作品は11作品でした。3回に分けて紹介します。 「ベル・エポックでもう一度」 二万ユーロって幾ら?Yahooで調べたら約260万円だった。ヴィクトルは、タイムトラベルサービスを延長するために、元妻に内緒で別荘を売り払ってお金をつくる。 そのサービスのあまりにもの完璧ぶりに、驚く。ここまでの完璧ぶりはおかしい。これは必ずファンタジーにシフトするぞ、と思っていたら‥‥。 確かに相手の人生を再現するのはかなりの精神的な負担があるだろう。監督と主演俳優が恋人通しならば、無理強いして謝って無理強いしてのループや、ものを壊すわ、サドになるわもわかる気がする。 ちょっと前ならば、ヴィクトルとマリアンヌの関係は反対だった。女性が昔を懐かしんで再現を試みるだろう。これが時代というものか。 (解説) 大切な思い出を再現するサービスを通じ、忘れられなかった出来事を再体験した男性をめぐる人間ドラマ。メガホンを取ったのは『恋のときめき乱気流』などに出演してきたニコラ・ブドス。『画家と庭師とカンパーニュ』などのダニエル・オートゥイユが主人公、彼の妻を『星降る夜のリストランテ』などのファニー・アルダンが演じ、『セザンヌと過ごした時間』などのギヨーム・カネ、『ザ・ゲーム ~赤裸々な宴~』などのドリヤ・ティリエらが共演する。フランスのセザール賞で脚本賞など3部門を受賞した。 元売れっ子イラストレーターのヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は社会の変化になじめず仕事を失い、妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されてしまう。そんな彼を励まそうとした息子は、戻りたい過去を映画セットで再現する「タイムトラベルサービス」をプレゼント。希望の日時を申し込んだヴィクトルは思い出のカフェで運命の女性と「再会」し、夢のようなひとときを過ごす。輝かしい日々の再体験に感動した彼はサービスを延長すべく、妻に内緒で唯一の財産である別荘を売り払ってしまう。 2021年8月1日 シネマ・クレール ★★★★ 「スーパーノヴァ」 イギリスにおける知識人階級におけるLGBTの在り方と、認知症問題を抱えた、人生の終わらせ方。 周りの反応を。見ても、2人の在り方はそれなりに葛藤を経た上での到達だと思える。 超新星爆発は、目で見る事ができる。しかし、後でしかわからない。 (解説) 世界が感涙した、胸が張り裂けるほどの愛に喝采!! 家族・友人に恵まれ、ユーモアと文化を愛し、最高の人生を紡いできた2人。ところが時に運命は、彼らが紡いできた大切な物語を、思わぬ展開へと書き換えてしまう。予定より早く訪れた最終章。だが、それぞれが密かに思い描いていた結末は、全く異なるものだった──。理想的なパートナーを演じるのは、アカデミー賞受賞俳優のコリン・ファースと、同賞ノミネート経験を持つスタンリー・トゥッチ。製作スタッフからオファーされたスタンリーが、20年来の友であるコリンに自ら(実は独断で)脚本を手渡し共演を切望、チャーミングで愛おしい恋人同士を見事に体現した。彼らが選んだ切なくも美しいエンディングが、それまで共にしてきた人生を一層輝かせる、新たなる愛のマスターピースが誕生。 STORY 共に歩んだ人生を祝福する、愛の終わり方とは ピアニストのサムと作家のタスカーは、ユーモアと文化をこよなく愛する20年来のパートナー。 ところが、タスカーが抱えた病が、かけがえのないふたりの思い出と、添い遂げるはずの未来を消し去ろうとしていた。 大切な愛のために、それぞれが決めた覚悟とは──。 (コラム) タイトル『スーパーノヴァ』にこめられた想い タイトルの『スーパーノヴァ』は、タスカーが夜空にロマンと人生そのものを感じていることを表していると同時に、この愛の物語が壮大な宇宙を背景にしていることも指している。マックイーンは、「スーパーノヴァ(超新星)というのは、星の進化の最後に起こる巨大な爆発だ。私はこれがタスカーを象徴していると思っている。何をしても明るく輝いていて、どんな場面でも光と笑いをもたらし、そしてもちろん死を前にしている。彼は、最終章が目前に迫っていることを知っているんだ」と説明する。さらに、マックイーンは付け加える。「ミクロ対マクロという構図にも興味があった。壮大な湖水地方の風景に対比して、キャンピングカーが小さな点のようであるように、彼らの関係も果てしなく巨大な宇宙の基本をなす小さな一部分だ」 マックイーンはまた、死を迎えるという診断を下された人が、向き合う末期の決断についても探求しようと考えた。その際に、シリアスな現実を捉えながらも、軽いタッチで描こうと決めた。マックイーンは、「どう考えるべきかをはっきりと示唆するような映画を作ることに興味はない。決めるのは観客だ。しかし、二人が窮地に立たされていて、そのことが二人を引き離しつつあるのだという事実を主張したかった。私たちはこの映画を観た人々が、他人とどう接するかについてもっと考え、そういう立場に立たせられたらどんなに厳しいかに想いを馳せてくれることを期待している」と語る。 最初は逆の配役だったサム役とタスカー役 ファースは、「最初に脚本を読んだ時、どちらがどちらの役を演じるべきなのか分からなかった。スタンリーから彼はサム役を依頼されたと聞いていたけれど、僕は両方の人物に心を奪われていた」と振り返る。 そして、脚本を何度も読むうちに、ファースは役を入れ替えるべきだと思い始め、トゥッチも同じように考えていたことが判明する。トゥッチは、「ハリーの前でそれぞれが両方の役を演じてみせたら、どうするべきか即座に悟ったよ。なぜかは分からないが、その方がいいと思えたんだ」と語る。 ファースは、「スタンリーがタスカーを演じるのを見た時、他の誰も彼ほどうまく演じられないと分かった。問題は、彼がサムを演じた時にも、同じように感じたことだ。僕は家に帰ろうと思ったよ」と笑う。さらにファースは、「僕たちには役柄にふさわしい演技をするという任務がある。俳優という職業にとって神聖なことで、最終的には自然に決まった」と説明する 監督 ハリー・マックイーン 2021年8月1日 シネマ・クレール ★★★★ 「キネマの神様」 無数のモノにならなかった助監督の物語。 モノにならなかった脚本の物語。 でも、映画だから時間を越えて実現できる。 山田洋次が最晩年に描くのは、それでもやはり「何が幸せなのか」という物語だった。 「カットとカットの間にシネマの神様は宿るんだよ」 100通りのカットがある。 役者の演技がある。 志村けんのままに演技した沢田研二がいる。 それは、私は良くないと思うけど、それが山田組の映画なのかもしれない。 キチンと、コロナ禍を反映した脚本になっていた。おそらく決定稿は昨年3月には出来ていたはずだが、そこからかなり変えている。映画は「現場」でつくられるものなのである。 映画の神様は、そういうラストを作った方がいいのだ。 STORY ギャンブル狂いのゴウ(沢田研二)は、妻の淑子(宮本信子)や家族にもすでに見捨てられていた。そんな彼が唯一愛してやまないのが映画で、なじみの名画座の館主テラシン(小林稔侍)とゴウはかつて共に映画の撮影所で同じ釜の飯を食った仲だった。若き日のゴウ(菅田将暉)とテラシン(野田洋次郎)は、名監督やスター俳優を身近に見ながら青春を送っていた。 キャスト 沢田研二、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、小林稔侍、宮本信子 スタッフ 監督・脚本:山田洋次 脚本:朝原雄三 原作:原田マハ 音楽:岩代太郎 VFX監修:山崎貴 撮影:近森眞史 美術:西村貴志 照明:土山正人 編集:石島一秀 録音:長村翔太 プロデューサー:房俊介、阿部雅人 2021年8月10日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「妖怪大戦争 ガーディアンズ」 やはり前作(2005)を超えることはなかった。やはり小豆洗いは、一切年月を気にさせない。妖怪大戦争だー!と威勢は良いけど、いざという時に逃げ出すのは同じ。妖怪獣と大魔神を呼び出して対決させて、その後の死屍累々の都会には無頓着、そもそも1人も人間の逃げ惑う姿が出てこないのは、子どもに質問されたらどうしよう。 ‥‥と、ここまで前回同様。16年経ったら、もう見る層は違うということか。 メッセージは、こちらの方が饒舌だ。 「ともだちは見捨てない」 「弟は絶対守る」 「闘いよりも話し合いだ」 その高尚な兄弟の決意に、アンナに数万年の怨念をもとにやってきた妖怪獣の力がなくなってゆく。なんだったの?ソンナモンで良いの? 前回は、偶然が勝利を呼んだのだけど、今回はそんな「説得力」はなし。 しかも、「あの方」の存在がずーと物語を引っ張っていたのに、結局ラストで名前だけが少し出てきただけ。 しかもなんと「彼」が「あーあ」と言って、終わり。どうして「彼」がこの場面で出てくるの?あまりにも都合良すぎじゃない? 知らない妖怪は少なかった。 大島優子が色っぽかった。 (ストーリー) 大地溝帯・フォッサマグナから発生した妖怪獣たちが東京に襲来し、世界は危機に直面する。日本の妖怪のリーダー格であるぬらりひょん(大森南朋)は、この危機を回避するために伝説の大魔神を目覚めさせて妖怪獣たちと戦わせることを思いつく。そしてその能力を持つ、いにしえの妖怪ハンター・渡辺綱の末裔である少年・渡辺ケイ(寺田心)に目をつける。 キャスト 寺田心、杉咲花、猪股怜生、安藤サクラ、大倉孝二、三浦貴大、大島優子、赤楚衛二、SUMIRE、北村一輝、松嶋菜々子、岡村隆史、遠藤憲一、石橋蓮司、HIKAKIN、荒俣宏、大森南朋、大沢たかお スタッフ 監督:三池崇史 製作総指揮:角川歴彦、荒俣宏 脚本:渡辺雄介 音楽:遠藤浩二 主題歌:いきものがかり 製作:堀内大示、松岡宏泰、川崎由紀夫、奥野敏聡、永田勝美、松下智人、藤田晋、五十嵐淳之 プロデューサー:椿宜和、坂美佐子 共同プロデューサー:前田茂司 ラインプロデューサー:今井朝幸、青木智紀 撮影:山本英夫 照明:小野晃 美術:林田裕至 録音:中村淳 編集:相良直一郎 装飾:坂本朗 装置設計:郡司英雄 VFXスーパーバイザー:太田垣香織 妖怪デザイン:寺田克也、井上淳哉 スタントコーディネーター:辻井啓伺、出口正義 サウンドエディター:勝俣まさとし キャスティングプロデューサー:杉野剛 キャスティング:平出千尋 キャスティングスーパーバイザー:柿崎裕治 キャラクタースーパーバイザー:前田勇弥 ヘアメイクディレクター:酒井啓介 妖怪特殊メイク造型ディレクター:石野大雅 画コンテ・妖怪デザイン:相馬宏充 音楽プロデューサー:杉田寿宏 協力プロデューサー:水上繁雄、今安玲子 アシスタントプロデューサー:土川はな 宣伝プロデューサー:北原夏樹 妖怪担当:山村淳史 助監督:長尾楽 制作担当:小笠原寿 2021年8月13日 MOVIX倉敷 ★★★
2021年09月10日
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すみません、6作品じゃなく5作品でした。残りの2作品の感想を置く。 「ゴジラVSコング」 アダム・ウィンガード監督世界観の大怪獣シリーズは、これで終わり。次回作につながる映像はなかった。良く頑張ったと思う。ゴジラはあくまでも人間になんとかなる存在ではないことは、貫き通した。 コングは守護神でもない。彼を心配している小さな人間の娘を信頼しているだけだ。 「人間の味方じゃなくなった」というメディアに対し、「あそこを襲ったのはゴジラの理由がるはず」というオタクの娘も登場して、人間世界はほぼふた通りで進行する。 芹沢蓮(息子?)くんが、ほとんど意味のない存在だったのは残念でしかない。 これまでの人者の人間関係が切れているのは、仕方ないけど残念。 結局ああいう落とし所しかなかったのかな。 ⚫︎⚫︎ゴジラの登場を隠し通したのは素晴らしい。 ほとんど、無敵だったじゃない。しかもエヴァだったし。 ゴジラの尾鰭の斧がもう少し活躍して欲しかった。もしかして残った? ⚫︎⚫︎ゴジラを無条件でに悪者にした脚本には?がつく。 STORY モンスターたちの戦いの後、特務機関モナークが巨大怪獣(タイタン)の故郷(ルーツ)の手掛かりを探る中、深海からゴジラが再び現れる。世界の危機を前にゴジラが暴れまわる原因を見いだせない人類は、キングコングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出し、ゴジラと対決させようとする。 キャスト アレキサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイサ・ゴンサレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル スタッフ 監督:アダム・ウィンガード 脚本:エリック・ピアソン、マックス・ボレンスタイン 2021年7月13日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「竜とそばかすの姫」 普通の上映なのだけど、終わった後に拍手が起きた。1人だけだけど。 ずっと細田守の子育てと連動しながら、作品を作ってきた細田守作品の今回は、高校生が主人公。けれども、すらすらと難しい連立方程式を解ける友人がいたり、インターハイに個人で出場できる男の子、スーパー高校生だけど思いやりあふれる男の子、そしてすずはうた作りにポテンシャルのある、みんな隠れた才能ある高校生が登場。 ネットの悪いところも少しは出ているけど、基本的には世界を信頼している。 世界はなくならない。 自分はホントは孤立していない。 誰かが見守っている。 ネットは少しは役に立つ。 そういうメッセージをストレートに出した佳作。 STORY 高知の田舎町で父と暮らす17歳の女子高生・すずは周囲に心を閉ざし、一人で曲を作ることだけが心のよりどころとなっていた。ある日、彼女は全世界で50億人以上が集うインターネット空間の仮想世界「U」と出会い、ベルというアバターで参加する。幼いころに母を亡くして以来、すずは歌うことができなくなっていたが、Uでは自然に歌うことができた。Uで自作の歌を披露し注目を浴びるベルの前に、ある時竜の姿をした謎の存在が現れる。 キャスト (声の出演)、中村佳穂、佐藤健、成田凌、染谷将太、玉城ティナ、幾田りら、森川智之、津田健次郎、小山茉美、宮野真守、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世 スタッフ 監督・脚本・原作:細田守 作画監督:青山浩行 CG作画監督:山下高明 CGキャラクターデザイン:Jin Kim、秋屋蜻一 CGディレクター:堀部亮、下澤洋平 美術監督:池信孝 プロダクションデザイン:上條安里、Eric Wong 音楽監督・音楽:岩崎太整 音楽:Ludvig Forssell、坂東祐大 2021年7月22日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年08月08日
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7月に観た作品は少し少なくて6作品。2回に分けて紹介します。 「アメイジング・グレイシス/アレサ・フランクリン」 技術的な問題だけでなくて、現代の情勢がこの作品の完成を後押ししたのだろう。観客の9割は黒人である。正に、ゴスベルは、黒人による黒人のための「キリスト布教歌」である。 最後の方に教義の歌は少し出てくるが、あとはひたすら「信じよ」「主は共にいる」「信じて良かった」という単純な絞り出すような祈りの歌である。 元々に、アフリカの単純なリズムがあり、その上にオルガンやギターのコードが流れ、その上に山の上まで届くような声量のアレサの歌が乗る。 そうやって、黒人はこの200年間の差別と少しの平穏と来世での平和を思い起こすのであろう。みんな悉く泣いているのが、特徴的で、信仰の持たない私などは蚊帳の外から眺めるばかりというタイプの映画である。 (解説) 2018年8月16日、惜しくもこの世をさってしまった「ソウルの女王」 アレサ・フランクリン(1942-2018)。 1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で 行われたライブを収録したライブ・アルバム「AMAZING GRACE」は、 300万枚以上の販売を記録し大ヒット。史上最高のゴスペル・アルバムとして今も尚輝き続けている。 その感動的な夜が遂に映像で蘇る。コーネル・デュプリー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、 バーナード・パーディー(ドラム)らに加えサザン・カリフォルニア・コミュニティ聖歌隊をバックに、 アレサが自らのルーツであるゴスペルを感動的に歌い上げた今や伝説となっているこのライブは、 実はドキュメンタリー映画としても撮影されていた。撮影したのは、 映画『愛と哀しみの果て』で知られアカデミー賞を受賞しているシドニー・ポラック。 アルバム発売の翌年に公開される予定だったが、カットの始めと終わりのカチンコがなかったために 音と映像をシンクロさせることができないというトラブルに見舞われ、未完のまま頓挫することに。 しかしいま、長年の月日が経てテクノロジーの発展も後押しし、遂に映画が完成。 音楽史を塗り替えたといわれる幻のライブが、日本で初めてスクリーンに登場する! 2021年7月1日 シネマ・クレール ★★★★ 「Arc」 原作が純文学なので、ケレン味あふれるSF的な仕掛けは期待してはいなかったが、もう少し色気を出してもよかったのでは? 少なくとも85歳の頃は、今よりも100年後と思えるはず。それにしては、あまりにも風景や小道具が変わらなさすぎる。 それに、こういう仕掛けならば、社会の決定的な変革があっても良かったのではあるが、みんな少しデモがあっただけで受け入れている。メンテナンスは毎日しなくてはいけないのか、それとも一年に一回なのか、映画ではよくわからなかった。メンテナンスが必要ならば、果たして不老を受け入れるのか?我々の感覚ならば、五分五分というところではないか? 彼女が初めて135歳で、老化を止めた人というのはおかしい。もっと前に止める人はたくさんいるはずだ。SF仕掛けがないだけではなく、ストーリー的にも疑問が多く残る作品だった。ただし、人と感想を述べ合うにはピッタリの作品かもしれない。 STORY 近未来、放浪生活を送っていたリナ(芳根京子)は人生の師となるエマ(寺島しのぶ)と出会い、遺体を生前の姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する「ボディワークス」という仕事に就く。一方、エマの弟で科学者の天音(岡田将生)は、この技術を発展させた不老不死の研究に打ち込んでいた。30歳になったリナは不老不死の処置を受け、人類で初めて永遠の命を得る。やがて、永遠の生が普通となった世界は人類を二分し、混乱と変化をもたらしていく。 キャスト 芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫 スタッフ 原作・エグゼクティブプロデューサー:ケン・リュウ 監督・脚本・編集:石川慶 脚本:澤井香織 音楽:世武裕子 撮影監督:ピオトル・ニエミイスキ 照明:宗賢次郎 美術:我妻弘之 録音:山本タカアキ 編集:太田義則 キャスティング:吉川威史 装飾:山川邦彦 スタイリスト:高橋さやか ヘアメイク:酒井夢月 振付:三東瑠璃 VFXスーパーバイザー:鈴木信哉 音響効果:柴崎憲治 助監督:近藤有希 製作担当:三村薫 エグゼクティブプロデューサー:川城和実 製作:河野聡、池田宏之 コエグゼクティブプロデューサー:濱田健二 プロデューサー:加倉井誠人、仲吉治人 ラインプロデューサー:古賀奏一郎 VFXプロデューサー:加賀美正和 音楽プロデューサー:杉田寿宏 上映時間 127分 2021年7月6日 MOVIX倉敷 ★★★ 「いとみち」 全国の引っ込み思案女史が観たら、きっと元気出ると思う。 津軽弁ネイティブの駒井蓮ちゃんの、まるでドキュメンタリーのような作品。 見どころ 映画化もされた「陽だまりの彼女」などで知られる作家・越谷オサムの小説を原作にした青春ドラマ。強い津軽なまりと人見知りに悩む青森の女子高生が、メイドカフェでアルバイトを始めたことをきっかけに成長していく。監督・脚本は『俳優 亀岡拓次』などの横浜聡子。津軽三味線が得意な主人公を『名前』などの駒井蓮、彼女の父を『後妻業の女』などの豊川悦司、メイドカフェの先輩を『美人が婚活してみたら』などの黒川芽以が演じるほか、横田真悠、中島歩、お笑いタレントの古坂大魔王らが共演する。 あらすじ 青森県弘前市の高校に通う16歳の相馬いと(駒井蓮)は、強烈な津軽弁と人見知りが悩みの種で、大好きなはずの津軽三味線からも遠ざかっていた。そんな状況をどうにかしたいと考えた彼女は、思い切って青森市のメイドカフェ「津軽メイド珈琲店」でアルバイトを始める。当初はまごつくものの、祖母のハツエ(西川洋子)や父の耕一(豊川悦司)、アルバイト先の仲間たちに支えられ、いとは少しずつ前を向いていく。そんな中、津軽メイド珈琲店が廃業の危機に見舞われる。 2021年7月8日 シネマ・クレール ★★★★
2021年08月07日
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6月に観た映画、最後の4作品。1dayパスでで観た。 「漁港の肉子ちゃん」 イオンシネマ1デイパスポート2作目。 子供の視点で、強かに生きる大人たちと子供たちの世界を均等に描く。アニメだから、肉子ちゃんも、二宮も、ゆりこちゃんも、サッさんも、実のお母さんも、単純化されているけど、実は本質を捉えているという、なかなか凝った作品。これがなぜ明石家さんまのプロデュースなのか、そこはよくわからないけど、あっという間に時間が経った。 釜の石という漁港にしているし、ラストが冬の後の春なので、かなり身構えていたけど、普通に終わってよかった。 普通が1番だと思う。 【ストーリー】 企画・プロデュースに明石家さんま、西加奈子の原作「漁港の肉子ちゃん」(幻冬舎文庫 刊)をアニメーション映画化。食いしん坊で能天気な肉子ちゃんは、情に厚くて惚れっぽいから、すぐ男にだまされる。一方、クールでしっかり者、11歳のキクコは、そんな母・肉子ちゃんが最近ちょっと恥ずかしい。そんな共通点なし、漁港の船に住む母娘の秘密が明らかになるとき、2人に、最高の奇跡が訪れる……。 【公開日】 2021年6月11日 【上映時間】 97分 【配給】 アスミック・エース 【監督】 渡辺歩 【出演】 大竹しのぶ/Cocomi/花江夏樹/下野紘/吉岡里帆/マツコ・デラックス/中村育二/山西惇/八十田勇一/石井いづみ/本村玲奈/植野瑚子/原口紗綾 2021年6月22日 イオンシネマ岡山 ★★★★ 「モータル・コンバット」 イオン1DAYパスポート3作目。 ストーリーはあってなきが如くだから突っ込みたくないが、ハンゾウの血統をなによりも大切にしているはずなのに、龍のマークは何故に勇者に血統に関係なく与えられるのか?この仕組み誰か説明してくれないだろうか? 魔族と人間界を借りた、異種格闘技戦であのには間違いないのだが、基本は武術である。だとしたら、るろうに剣心の武術が如何に速いものだったのかを、証明する作品にもなった。 【ストーリー】 激しすぎるバトルと相手にトドメを刺すシリーズ定番描写である「フェイダリティ」の残虐さを理由に日本では現在未発売となっているゲームシリーズ「モータルコンバット」を映画化。胸にドラゴンの形をしたアザを持つ総合格闘技の選手のコール・ヤングは自らの生い立ちを知らぬままお金のために戦う日々を送っていたが、ある日、魔界の皇帝シャン・ツンがコールを倒すために放った最強の刺客であるサブ・ゼロに命を狙われる。コールは家族の安全が脅かされることを恐れ、特殊部隊少佐ジャックスに言われるがまま同じく特殊部隊所属のソニア・ブレイドという女性戦士と合流し、地球の守護者であるライデンの寺院を訪れる。そこで太古より繰り広げられてきた世界の命運を懸けた格闘トーナメント「モータル・コンバット」の存在と、自らが魔界の敵たちと戦うために選ばれた戦士であることを知る。コールは新たな仲間たちとともに、自らの秘められた力を解放し、家族、そして世界を救うことが出来るのか……。 【公開日】 2021年6月18日 【英題】 Mortal Kombat 【映倫情報】 R15+ 【上映時間】 110分 【配給】 ワーナー・ブラザース映画 【監督】 サイモン・マッコイド 【出演】 ルイス・タン/真田広之/浅野忠信/ジョー・タスリム 2021年6月22日 イオンシネマ岡山 ★★★ 「ファブル 殺さない殺し屋」 イオンシネマ1デイパスポート4作目。 岡田准一のあくしは、相変わらずキレキレなのだが、どう考えても、日本であれだけの頭数のピストル持った殺し屋(チンピラ)集めるのは山口組でも無理でしょ。でも、そんなこと詰める映画ではないのかもしれない。 思ったよりも、平手友梨奈が良かった。次から次へと表情を変えてゆく。決してうまくはないけど、確かに存在感あり。 憑依型女優として羽ばたいて欲しい。 木村文乃も前よりも良かった。アシストだけじゃないのね。 【ストーリー】 南勝久による同名原作コミックを岡田准一主で映画化した『ザ・ファブル』の続編。どんな相手も6秒以内に殺す「ファブル」(岡田准一)は、裏社会で誰もが「伝説の殺し屋」と恐れる存在だった。ある日、ボスから「一年間、誰も殺すな。「普通」に暮らせ」と命じられ、素性を隠して佐藤アキラという偽名を使い、相棒ヨウコ(木村文乃)と兄妹を装い「初めて一般人として」普通に暮らしている。アキラの初めてのバイト先であるデザイン会社では、社長(佐藤二朗)と社員のミサキ(山本美月)が、今日もアキラの描く子供のような絵に爆笑中。しかし一見平和なこの街では、表向きは子供を守るNPO代表、裏では緻密な計画で若者を殺す危険な男・宇津帆(堤真一)が暗躍。凄腕の殺し屋・鈴木(安藤政信)と共に、かつて弟を殺した因縁の敵・ファブルへの復讐に燃え綿密な計画を立てていた。同じ頃アキラは、宇津帆の元で暮らす、過去の事件でファブルが救えなかった車椅子の少女・ヒナコ(平手友梨奈)と再会する。しかしこれが後に想像もつかぬ大騒動へと急発進する……。 【公開日】 2021年6月18日 【上映時間】 131分 【配給】 松竹 【監督】 江口カン 【出演】 岡田准一/木村文乃/堤真一/平手友梨奈/安藤政信/山本美月/佐藤二朗/井之脇海/安田顕/佐藤浩市/宮川大輔/橋本マナミ/黒瀬純(パンクブーブー)/好井まさお(井下好井) 2021年6月22日 イオンシネマ岡山 ★★★★ 「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」 イオンシネマ1デイパスポート5作目。 No.1は観ていない。けれども、その始まりの1日目を10分ほど見せて、一挙に500日以上経った現在地の母親、息子娘、赤ちゃんの逃避行の場面に移る。だいたいのことはわかった。 突然の大音にビクッビクッとする。新しいホラー映画だなという認識。庶民目線なので、当然エイリアンたちの性質、目的などはわからない。 手話のできる家族なので、彼らは生き残れたのか? 最後は、子供たちの自立を仄めかして終わる。 【ストーリー】 音に反応し人間を襲う「何か」によって荒廃した世界で、生き残った1組の家族・アボット家。夫・リーを亡くし、家は燃えてしまい、母・エヴリン(エミリー・ブラント)は、産まれたばかりの赤ん坊と2人の子供たちを連れて新たな避難場所を探しに出発する。ノイズが溢れる外の世界で、敵か味方か分からない他の生存者たちに遭遇する一家。そして、彼らを待ち受ける更なる脅威とは何か......。 【公開日】 2021年6月18日 【英題】 A Quiet Place Part2 【上映時間】 97分 【配給】 東和ピクチャーズ 【監督】 ジョン・クラシンスキー 【出演】 エミリー・ブラント/ミリセント・シモンズ/ノア・ジュプ/キリアン・マーフィ/ジャイモン・フンスー ほか
2021年07月12日
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6月に観た映画3段目。 「アオラレ」 最初の五分で、社会的テーマは出尽くしている。単なる煽り運転の批判映画ではなくて、格差社会のストレスがあらゆる処に噴き出て、犯罪やその他酷いことが増えていると、ニュースでたくさんの事例が出る。 そして、この「お話」もその事例の一つなのだ。相当酷いとは思うが。 もっと煽り煽られてのシーンが続くかと思いきや、サイコ野郎の復讐の仕方がかなりえげつない。スマホが相手に渡ったら、もう何をされてもわかんないということですな。彼の場合は、時間がなかったから、既に自分の命はどうでもいいと思っているから、こういう暴力形態になったが、万が一彼に時間があれば、もっと陰惨なことになっていたろう。 ラッセル・クロウは役づくりで太っているのでは無い、と思わせる存在感だった。だって最近主演がないし、あんな風になってもおかしくはない、という絶妙なキャスティング! 彼は見事な役づくりをしていた。名前は与えられていない。説明はないが彼の行動と持っている薬とかで推理すると、以下のような男だろう。 小さな頃は順調だった(もしかしたら、IT産業?)。秀才で顔も良く、ラガーマンで、大学時代は有名だった。しかし、持ち前の性格の悪さと「社会のせいで」会社を首になり、妻からも離婚される。妻子は郊外に家を持つ男と結婚する。男はその時からぶくぶく太り出す。悪いことに病気が見つかる。末期癌だった。最早妻子の家族を道連れにしようと決意する。それは呆気なく終わった。そのあと、どうしようかと迷っている時に、後ろからカーフォンで鳴らされる‥‥。 終始、緊張しっぱなしで、予想以上に面白かった。 (STORY) 寝坊した美容師のレイチェル(カレン・ピストリアス)は、息子のカイル(ガブリエル・ベイトマン)を学校へ送りながら職場に向かう途中、大渋滞に巻き込まれてしまう。いら立つ彼女は、信号が青になっても発進しない前の車にクラクションを鳴らして追い越すと、ドライバーの男(ラッセル・クロウ)は後をつけてきて謝罪を要求する。彼女がそれを拒否し、息子を学校に送り届けガソリンスタンドに寄ると、先ほどの男に尾行されていることに気付く。やがて、レイチェルは男の狂信的な行動に追い詰められていく。 (キャスト) ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス、ガブリエル・ベイトマン、ジミ・シンプソン、オースティン・マッケンジー (スタッフ) 監督:デリック・ボルテ 脚本:カール・エルスワース 製作:リサ・エルジー、マーク・ギル、アンドリュー・ガン 撮影監督:ブレンダン・ガルヴィン プロダクションデザイン:フレディ・ワフ 編集:マイク・マカスカー、スティーヴ・ミルコヴィッチ、ティモシー・ミルコヴィッチ 衣装デザイン:デニス・ウィンゲイト 音楽:デヴィッド・バックリー キャスティング:メアリー・ヴァーニュー、レイリン・サボ 上映時間 90分 2021年6月15日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「戦場のメリークリスマス」 観たと思っていたが、勘違い?ほとんど何も覚えていなかった。 今見てもよくわからない。 英国から観た日本、日本から観た英国を、戦争という異常事態の中で戯画的に描いたのか? ハラとローレンスが最後のお辞儀をする場面は、斜め上から映している。未だない角度である。 いくら日本軍でも、あんなハラキリばかりはやっていないだろう。あんなにみんな英語喋らないだろう。46年時点で、ヨモイ大尉はすぐに戦犯として処刑されている。そんなことないだろう。 ローレンスの回想とセリアズの回想の意味が今ひとつわからない。誰にも人生には赦してもらいたい過去があるということか。ヨモイのそれは2.26に参加できなかったことであろうが、それとどうリンクするのかわからない。 そもそも、セリアズはどういう仕組みで俘虜収容所に入ってきたのか、仕組みがわからない。 4kで、服の目地一つ一つが見えた。一方で、花屋敷の花がひとつも鮮明でないのは、日本人撮影者じゃなかったから?よく考えたら、女優が1人も出ない作品は珍しい。ヨモイは最初からセリアズにラブラブだけど、セリアズの頬のキスは弟にするようなキスだろう。 事故前のタケシの顔が素晴らしい。 ひとり過去になんの後悔もない、案外知的な男として登場した。 (解説) 後世に多大な影響を残し、人々に鮮烈な印象を与え続けた鬼才・大島渚監督。今回の上映は、2023年に大島監督の作品が国立機関に収蔵されることから、最後の大規模ロードショーとして企画された。『戦場のメリークリスマス』(1983)は、デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、内田裕也など、本業が俳優ではない顔ぶれをメインキャストに迎えて描く、ジャワ島の日本軍捕虜収容所を舞台にした異色の戦争映画。本作で初めて映画音楽を手掛けた坂本による「Merry Christmas Mr. Lawrence」は、映画を観ていない人も知る名曲として、広く愛され続けている。4Kのデジタル修復版。 (ストーリー) 1942年、ジャワ。山岳地帯の谷間レバクセンバタに日本軍の浮虜収容所がある。まだ夜が明けきらない薄闇の中日本軍軍曹ハラは、将校宿舎に起居する英国軍中佐ロレンスを叩き起こし、閲兵場に引き連れて行く。広場にはオランダ兵デ・ヨンと朝鮮人軍属カネモトが転がされていた。カネモトはデ・ヨンの独房に忍び込み彼を犯したのだ。ハラは独断で処置することを決め、万一の時の証人として流暢に日本語を操るロレンスを立ち合わせたのだった。そこへ、収容所長ヨノイ大尉が現れ、瞬時にして状況を察した彼はハラに後刻の報告を命じて、軍律会議出席のためバビヤダへ向かった。バビヤダ市内の第16軍拘禁所にある法廷では、英国陸軍少佐ジャック・セリアズの軍律会議が開廷された。ヨノイは魔に魅入られたかのように異様な眼差しでセリアズを凝視する。セリアズはレバクセンバタ浮虜収容所へ送られてきた。ヨノイはハラに、セリアズをすぐに医務室へ運ぶよう命令する。そこへ浮虜長ヒックスリが連れてこられた。ヨノイは彼に、浮虜の内、兵器、銃砲の専門家の名簿をよこせと命ずるがヒックスリは、敵に有利となる情報を提供するわけにいかないと拒否する。ある日、ヨノイの稽古場にハラが現れ、気合の鋭さに浮虜が怯えているため、ロレンスが面会を申し入れていると告げる。そんなロレンスに、ヨノイは唐突に、自分は二・二六事件の3ヵ月前満州に左遷されたため決起に参加できず、死に遅れたのだと語った。そして、その場でカネモトの処刑をいい渡した。処刑場にはヒックスリ以下浮虜側の上級将校も強制的に立ち会わされ、ハラがカネモトの首を切り落とした瞬間、デ・ヨンが舌を噛みきった。「礼を尽くせ」とヨノイは命ずるが浮虜たちは無視する。激昂したヨノイは、収容所の全員に48時間の謹慎と断食の〈行〉を命じる。無線機を持ちこんでいたという理由でロレンスとセリアズは独房入りとなった。壁越しに話をする2人。ロレンスは、たった2度しか会わなかった女性の思い出の中へ。セリアズは、耳許に内向的だった弟の歌声を聞く。衛兵の長靴足音が聞こえ、2人は司令室に連行された。そこには酒で上気し「ろーれんすさん。ふあーぜる・くり~すます」と笑いかけるハラがいた。ハラは2人に収容所に帰ってよいといい渡す。ヨノイの命令で、浮虜全員が閲兵場に整列させられたが、病棟の浮虜たちがいない。病人たちをかばうヒックスリに、激怒したヨノイは再び「兵器の専門家は何人いるか」と問う。「おりません」とヒックスリ。ヨノイは「斬る」と軍刀を抜いた。そのとき、浮虜の群からセリアズが優雅に歩み出、両手でヨノイの腕をつかむと、彼の頬に唇を当てた。後ろに崩れ落ちるヨノイ。ヨノイは更迭され、新任のゴンドウ大尉が着任した。閲兵場の中央に深い穴が堀られ、セリアズが首だけ出して生き埋めにさせられる。ある夜、月光の中からヨノイが現れ、無残な形相となったセリアズの金髪を一房切り落とし、どこへともなく立ち去った。時は流れ、1946年、戦犯を拘置している刑務所にロレンスがやってくる。処刑を翌日に控えたハラに面会にきたのだ。ロレンスは、ヨノイから日本の神社に捧げてくれとセリアズの遺髪を託されたことを告げる。クリスマスの日の思い出を語り合う二人。やがてロレンスは出口へ向かう。その瞬間、収容所で何度も聞かされたあの蛮声でハラが「ローレンス」と怒鳴る。そして、振り向いたロレンスの眼前に「めりい・くりすます。みすたあろーれんす」と告げるハラの笑顔があった。 出演 デヴィッド・ボウイ セリアズ 坂本龍一 ヨノイ 北野武 ハラ トム・コンティ ロレンス ジャック・トンプソン ヒックスリ 内田裕也 拘禁所長 三上寛 イトウ憲兵中尉 ジョニー大倉 カネモト 室田日出男 ゴンドウ大尉 戸浦六宏 軍律会議通訳 金田龍之介 フジムラ中佐 監督 大島渚、脚本 大島渚 ポール・マイヤーズバーグ、原作 ローレンス・ヴァン・デル・ポスト、製作 ジェレミー・トーマス、撮影 成島東一郎、美術 戸田重昌、音楽 坂本龍一 2021年6月20日 シネマ・クレール ★★★★ 「キャラクター」 イオンシネマ1デイパスポート一作目。 予想と違った。 誰もが予想するやり方の裏をかいたのかもしれないが、だとすると真相を隠すやり方は、どうなの? マンガはキャラクターを作れば、売れるのか?長崎尚志はそういう作り方をしたのか?私は彼に言いたい。 これ、続きを作らないとみんなモヤモヤするタイプでしょ? 絶対おかしい! 【ストーリー】 もしも売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?その顔をキャラクター化して漫画を描いて売れてしまったとしたら?登場人物(キャラクター)それぞれが幾重にも交錯する物語を描いたダークエンターテインメント。漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族……そして、彼らの前に佇む一人の男。事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。それどころか、自分だけが知っている犯人をキャラクターにサスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。山城は売れっ子漫画家の道を歩むのだった。そんな中、漫画「34」で描かれた物語を模した事件が次々と発生。そして、山城の前に、再びあの男が姿を現す。「両角って言います。先生が描いたものも、リアルに再現しておきましたから。」交わってしまった2人。山城を待ち受ける結末とは……。 【公開日】 2021年6月11日 【映倫情報】 PG12 【上映時間】 125分 【配給】 東宝 【監督】 永井聡 【出演】 菅田将暉/Fukase(SEKAI NO OWARI)/高畑充希/中村獅童/小栗旬 2021年6月22日 イオンシネマ岡山 ★★★
2021年07月11日
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6月に観た映画2段目。 「いのちの停車場」 最初は、救急医療手術でこんなに丁寧に看護士に指示する医者はいないだろ、それにこんな年寄りが田中泯をお父さんにしちゃダメだろ、等々違和感ありありだったけど、やはり吉永小百合でなければ在宅医師は務まらないし、最後はまさかの「夢千代日記」になった。終わり方は、あのままだとこの親子はいいとして、周りは不幸になる、ダメだろ、とも思うのだけど、吉永小百合ならば許そうとかになる。だから、決して褒められた作品ではなく、決して映画史に残すべき作品ではないのだけど、たくさん泣かせてもらった。年寄り中心に観客も入っている。たいした映画だと思う。 【ストーリー】 現代医療制度・尊厳死・安楽死に向き合う社会派ヒューマン医療ドラマを描く、南杏子の小説「いのちの停車場」の映画化。救命救急医として、長年大学病院で患者と向き合ってきた咲和子は、とある事情から石川県にある父の住む実家へと戻り、在宅医療を通して患者と向き合う「まほろば診療所」に勤めることになる。「まほろば診療所」の院長・仙川をはじめ、長年診療所を支えてきた看護師の麻世、また自分を追いかけて診療所へやってきた元大学病院職員の青年・野呂たちと在宅医療という、これまで自分が行ってきた医療とは、違ったかたちでいのちと向き合う。はじめはその違いに戸惑いを感じる咲和子だったが、まほろばスタッフに支えられて徐々に在宅医療だからこそできる患者やその家族、そして命との向き合い方を見つめていくようになる……。 【公開日】 2021年5月21日 【上映時間】 119分 【配給】 東映 【監督】 成島 【出演】 吉永小百合/松坂桃李/広瀬すず/田中泯/西田敏行/石田ゆり子/伊勢谷友介/小池栄子/泉谷しげる/南野陽子/みなみらんぼう/柳葉敏郎 2021年6月10日 岡山イオン・シネマ ★★★★ 「るろうに剣心 最終章 The Beginning」 ビギニングは、もう前作の補論みたいなもの。 肝のアクションは少なめ。それよりも、最後に、作品のテーマを立ち上げる構成。 しかし、がっかり。 正義のためにはテロは正当化されるのか? という問いを雪代巴は出した。 それに対して、 剣心は、 愛する人はどんなことになっても殺さない。 しかし、今まで殺したことの意味がなくなるので、維新がなるまではテロは続ける。 それ以降は止める。 というわけのわからない答えを出した。 雪代のとうたのはそんなこっちゃないでしょ? アクションは、冒頭の歯て刃を噛んで10数人殺しまくる奴と、 維新のスーパースター沖田総司との戦い。の2点。。 うーむ。 【ストーリー】 佐藤健の主演アクション映画『るろうに剣心』シリーズの最終章。監督を大友啓史が務める。『るろうに剣心 最終章 The Beginning』では、これまで語られることのなかった<十字傷>の謎に迫る。動乱の幕末期と明治維新後の新時代の2つの時代を通して描く。 【公開日】 2021年6月4日 【上映時間】 137分 【配給】 ワーナー・ブラザース映画 【監督】 大友啓史 【出演】 佐藤健/伊勢谷友介/中原丈雄/北村一輝/有村架純/江口洋介/高橋一生/村上虹郎/安藤政信 ほか 2021年6月10日 岡山イオン・シネマ ★★★ 「クルエラ」 イオンワンデイ・パスポートで結局4作観た。9時に3時間早く映画館が閉められなければ、やはり5作は観れたのに!! 冒頭から縦横無尽のカメラワーク、そしてピッタリのミュージック、素晴らしいデザインの数々、もう邦画と格が違う。そして、テーマソングからみちびきだされる、ダークヒロインの誕生の瞬間。 大変面白かった。 【ストーリー】 『美女と野獣』『アラジン』のディズニーが、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンを主演に迎え、名作アニメーション『101匹わんちゃん』のヴィラン(悪役)「クルエラ」の誕生秘話を実写映画化。パンクムーブメント吹き荒れる70年代のロンドンに、デザイナーを目指す一人の少女・エステラが降り立つ。「アートを作りたい」と野望に燃えながら、一秒たりとも無駄にはできない彼女は裁縫やデザイン画の制作に必死に励み、デザイナーへの階段を駆け上がろうと過酷な日々を乗り越えながらも切磋琢磨しながら働き続ける。その姿は「ヴィラン」とは程遠い、夢と希望に溢れる若者。私たちと何ら変わりない日々を送る彼女は、このままデザイナーへの道を歩んでいくと思われたが、カリスマ的なファッションデザイナーのバロネスとの出会いがエステラの運命を大きく変えいく。そして彼女はまるで同一人物とは思えない、狂気に満ち溢れたクルエラの姿へと染まっていく。夢と希望にときめくごく普通の少女は、なぜ邪悪なヴィランへと変わり果てたのか……。 【公開日】 2021年5月27日 【上映時間】 140分 【配給】 ウォルト・ディズニー・ジャパン 【監督】 クレイグ・ギレスピー 【出演】 エマ・ストーン/エマ・トンプソン/マーク・ストロング 2021年6月10日 岡山イオン・シネマ ★★★★
2021年07月10日
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6月に観た作品はなんと12作品。4回に分けて、紹介します。 「HOKUSAI」 「絵で世界を変えるんだ」 「誰にも指図されずに絵を描ける日が来ないかなぁ」 北斎の若い時から、 蔦屋への弾圧、歌麿の手鎖50日、柳亭種彦の切腹という事件を縦糸に、北斎の絵師としての成長を横糸に描く、野心あふれる北斎像である。 お栄の女優見たことないなと思ったら、企画・脚本まで書いた河原れんだった。殆ど彼女の作品と言っていいのかもしれない。まだ若いのに、ものすごい野心的で、一生懸命2時間にいろんな要素を、これぞ映画だ、映画でしか出来ないんだ、という気持ちで作ろうとしている。 しかし、写楽の登場があまりにも突発的でもっと広がるのかと思いきや、次の章では広がらず、佐吉が滝沢馬琴だというのは知っている人はわかるかもしれないが、普通の人には伝わらない。せめて寛永何年とかの表示があって、幕府の以降の背景もわかればいいのだけど、蔦屋の弾圧も、柳亭種彦の弾圧も、背景が分からず、結果的に4章の話が上手く繋がらない。 テーマはハッキリしているのだが、それがすんなり入ってこない。まるで舞踏のように田中泯が演技をするし、それは見応えあるのだけど、作品全体から言う若干浮いている。 つまり、作品としては、少し空回りした野心作であった。 写楽と麻雪に新人を使って、ちゃんと存在感出していた。彼らは舞台俳優か? STORY 町人文化全盛の江戸。後の葛飾北斎である貧乏絵師の勝川春朗(柳楽優弥)は、不作法な素行で師匠に破門されたが、喜多川歌麿や東洲斎写楽を世に送り出した版元の蔦屋重三郎(阿部寛)に才能を認められる。北斎は次々と革新的な絵を手掛け、江戸の人気絵師となるが、幕府の反感を買ってしまう。 キャスト 柳楽優弥(葛飾北斎(青年期)) 田中泯(葛飾北斎(老年期)) 玉木宏(喜多川歌麿) 瀧本美織(コト) 津田寛治(永井五右衛門) 青木崇高(高井鴻山) 辻本祐樹(瑣吉/滝沢馬琴) 浦上晟周(東洲斎写楽) 芋生悠(麻雪) 河原れん(お栄) 城桧吏(葛飾北斎(少年期)) 永山瑛太(柳亭種彦) 阿部寛(蔦屋重三郎) スタッフ 監督:橋本一 企画・脚本:河原れん 音楽:安川午朗 エグゼクティブプロデューサー:細野義朗 プロデューサー:中山賢一 共同プロデューサー:吉原大佑 「アメリカン・ユートピア」 コレは某映画ランキングでは、「茜に焼かれる」「ファーザー」を抑えてトップの位置にいることから観ることにした。 もっと物語がある(ミュージカル)のかと思いきや、殆どコンサート。 音楽映画には疎い私は、途中意識が飛んだ。 ドラマは緊張感が続くのになあ。 結局、 銃は無くそうね 家にかえろうよ そんなことは言っていたと思う。 アメリカの逆にムキになったユートピアを、まだ希望はある、と励ます作品なのかな。よくわからんかった。 マイク・リーから見たデヴィッド・バーンのショウなのだけど、実にまんべんに判るように編集されていて(←上と言っていることが違う)素晴らしいと思う。 STORY 元トーキング・ヘッズのメンバーで、現在はソロ活動をするデヴィッド・バーンが手掛けたアルバムを基にしたブロードウェイの舞台が評判を呼ぶ。これを受けてデヴィッドは映画監督のスパイク・リーに映像化の話を持ち掛け、本作が完成する。冒頭では、プラスティックの脳を手にしたデヴィッドが登場。人間の脳の進化や、現代社会が抱えるさまざまな問題について語り始める。 キャスト デヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ、ダニエル・フリードマン、クリス・ジャルモ、ティム・ケイパー、テンダイ・クンバ、カール・マンスフィールド、マウロ・レフォスコ、ステファン・サンフアン、アンジー・スワン、ボビー・ウーテン・3世 スタッフ 監督・製作:スパイク・リー 製作:デヴィッド・バーン 字幕監修:ピーター・バラカン 2021年6月8日 MOVIX倉敷 ★★★ 「しあわせのマスカット」 イオンワンデイパスポート一作目。 赤磐の桃映画のこともあるし、全く期待しないで観たら、まぁ悪くない作品だった。 ロケ地は全編岡山市と船穂、それと少しサービスなのか美観地区。無理ない移動距離で作られていた。最初、イオンやら源吉兆庵が嫌というほど出てくるのは、まぁ仕方ない。無理ない使い方なので、まぁいいでしょう。 最後は「しあわせのマスカット」か「太郎さんのマスカット」お菓子が完成するかと思いきや、それは作品上からもこんな新人に作らせるのは無理と思わせてちゃんと終わる。じゃあ何を描いた作品かというと、マスカット農家の大変さではなくて、新入社員は初志貫徹して頑張れ!という励まし映画でした。 おそらく、唯一真備の大水害を大きく脚本の中に取り入れた唯一の映画になるだろうから、そういう意味でも貴重です。主演は元気なだけが取り柄の福本莉子。まぁいいんじゃない? 演出・脚本は、もう少し考えて欲しい。65点。 【ストーリー】 フルーツ王国と呼ばれる岡山県を舞台に、ぶどうの女王“マスカット・オブ・アレキサンドリア”を使った果物和菓子に出会って魅了された高校生が、いつかは自分が創作した和菓子を作ることを目標に、その和菓子会社に入社していろんな失敗を重ねながら、会社、農家、そして2018年7月に起きた西日本豪雨による未曾有の大水害を体験しながらも、自分の夢を叶えようと奮闘するさまを描く。北海道から修学旅行で岡山に来ていた相馬春奈(福本莉子)は、入院中の祖母のために、ぶどうの高級品と言われる“マスカット・オブ・アレキサンドリア”をお土産にしようとしたが財布を落としてしまう。あまりの値段の高さに諦めに境地だったが、そんな時に見つけたのが、アレキサンドリアをそのまま和菓子にした「陸乃宝珠」だった。手元に残っていたお金でそれを買った春奈は、祖母が食べて喜んでくれたことに感動し、「お菓子は人を幸せにする!」と、その和菓子を発売していた岡山の老舗和菓子メーカーに就職をした。笑顔で元気な春奈だったが、研修中は何をやらせても失敗ばかりで、困った人事部は、昨年の新入社員が半年足らずで辞めてしまったという、偏屈で名高い、ぶどう農家・秋吉伸介(竹中直人)のところに配属させたのだった。拒否されながらもなんとか紳介にくらいつく春奈。なかなか心が通いあえなくても負けずに頑張るその姿に、次第に紳介との距離を縮めていく。そんな時、岡山県に未だかつて経験したことのないという、大雨、大洪水が襲った……。 【公開日】 2021年5月14日 【上映時間】 93分 【配給】 BS-TBS 【監督】 吉田秋生 【出演】 福本莉子/中河内雅貴/本仮屋ユイカ/土居裕子/長谷川初範/竹中直人 2021年6月10日 岡山イオン・シネマ ★★★
2021年07月09日
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今月の映画評「朝が来る」 河瀬直美監督の特別養子縁組をテーマにした作品です。 タワーマンションに住む夫婦と朝斗という6歳の男の子のいる家族に「息子を返して欲しいんです。できなければ、お金をください」と電話がかかります。片倉ひかりと名乗るその若い女性に会った夫婦は、養子のことは秘密でもなんでもないと告げ、夫婦の知っている母親のひかりとは全く違う風貌の女性に向けて「あなたは誰ですか?」と聞くのです。 河瀬監督は、常に「役積み」を役者に課します。役になりきるために、撮影する前からずっと作品と同じ環境で生活してもらうのです。栗原夫妻(永作博美と井浦新)と朝斗の歯磨き風景が自然なのも、養子縁組仲介施設「ベビーバトン」での少女たちが、まるでホントの妊婦のようだったのもそういうわけです。 一方、本作は母親を名乗る女性はいったい何者なのかというミステリ仕立てになっていました。演技は自然なのに、ドラマチックでした。 物語は、栗原夫妻が不妊治療から養子縁組に至る経緯をじっくりと描き、そのあと中学生で幼い妊娠をしてしまった片倉ひかり(蒔田彩珠)の出産、家出、東京での暮らしを丁寧に描きます。最後の数分間で物語は急展開するのですが、あくまでもリアルな養子縁組の問題点を描いたものになっていました。 昨年はコロナ禍のもとにやっと見始めた映画で、まだまだ観客は少なかったのですが、是非いろんな人に見てもらいたい。エンドロールも最後まで「聴き」逃せません。(2020年作品レンタル可能) 今回より字数が削減されて2/3になった。そのことで、作品の本質が書けなかった。 ホントは 「育てられる親のために子供が犠牲になっちゃダメなんです。」という信念の、ベビーバトン代表浅見(浅田美代子)の立ち位置がとてもいい。 ベビーバトンの場所がえる広島のある島(似島)の子宮のような海に囲まれた風景がとてもいい。 浅見の「親が子供を見つけるための制度じゃなくて、子供が親を見つけるための制度だと思ってやっています。」という言葉が重い。 だからこそ、 小学校に上がる前に必ず告げる 共働きはダメ という厳しい原則がある。 まほ(葉月ひとみ)の誕生パーティーで泣いた女の子 「こういうケーキ、都市伝説かと思っていた」「スカウトの人に初めて可愛いね、て言われて嬉しくて風俗入っちゃった」 という女の子の存在も貴重だ。 「なかったことにしないで!」 というひかりの隠れた本音が最後に生きる。 ラスト・エンドロールのサプライズ「会いたかった」が、この後の推移をきちんと想像させてくれます。 という事も入れたかった。 まだまだ600字に慣れていない。精進します。
2021年06月18日
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5月後半の3作品です。 「ファーザー」 登場人物は数人しか出ないし、舞台も限定されている。おそらく低予算で作られた作品ではあるが、テーマは高齢者の認知症である。極めて現代的テーマであるからこそ、想いもかけずアカデミー賞主演男優賞を獲ったのだろう。 時計を盗ったと主張する。 いつも今何時かわからなくなる。 突然、時が経った気がする。 目の前の人が誰だかわからなくなる。 現実と過去と夢と幻影がごちゃごちゃになる。 というような病状が自分に出ていることがわかって不安でならなくなる。 突然大声を出す。 自分の尊厳のために嘘で誤魔化す。 赤ちゃん帰りをする。 アンソニーは、80歳とは思えない達者な声量と顔の表情で、人それぞれで全く違うけれども、それでも認知症特有の病状を演じた。 観客はどこから現実で、何処からアンソニーの幻想なのかと翻弄されるけれども、実はほとんどが現実だったのではないか?ただ、後で思い出しているので、若干人の「入れ違い」があったのと、時があまりにも速く過ぎ去ったのかもしれない。ローラはホントに居たのか等々推理しても仕方がない。 ひとつ残念だったのは、明らかにアンソニーの主観でなく、娘アンしかわからない場面(例えば建物を出てタクシーに乗る場面)が幾つかあったこと。観客は状況を掴むには助かったが、作品としては、完成度に欠けた。 (解説) 世界中で上演された舞台を映画化したヒューマンドラマ。年老いた父親が認知症を患い、次第に自分自身や家族のことも分からなくなり、記憶や時間が混乱していく。原作を手掛けたフロリアン・ゼレールが監督と脚本を担当し、『羊たちの沈黙』などのアンソニー・ホプキンスが父親、『女王陛下のお気に入り』などのオリヴィア・コールマンが娘を演じ、『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』などのマーク・ゲイティスや、『ビバリウム』などのイモージェン・プーツらが共演する。 (ストーリー) ロンドンで独りで暮らす81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、少しずつ記憶が曖昧になってきていたが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が頼んだ介護人を断る。そんな折、アンが新しい恋人とパリで暮らすと言い出して彼はぼう然とする。だがさらに、アンと結婚して10年になるという見知らぬ男がアンソニーの自宅に突然現れたことで、彼の混乱は深まる。 製作総指揮 エロイーズ・スパドーネ アレッサンドロ・マウチェリ ローレン・ダーク オリー・マッデン ダニエル・バトセク ティム・ハスラム ヒューゴ・グランバー ポール・グラインディ 音楽 ルドヴィコ・エイナウディ (キャスト) アンソニー・ホプキンス 役名:アンソニー オリヴィア・コールマン 役名:アン マーク・ゲイティス 役名:男 ルーファス・シーウェル 役名:ポール イモージェン・プーツ 役名:ローラ オリヴィア・ウィリアムズ 役名:女(オリビア) 2021年5月27日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「茜色に焼かれる」 石井裕也監督の「川の底からこんにちは」系の作品。 いったい何処でブチ切れるんだろう。と思いながら見ていた。息子どころか、良子も無意識のうちに貧乏ゆすりをしている。 勝負服着て、まぁどこまでホンキでブチ切れたかわかんないんだけど、尾野真知子が「どうか、これを映画館で観てください」と言った内容の作品だった。聞いた時には、遂に泣き落としか!と思ったのではあるが、これをお茶の間で観たらキツいよ、これは映画館で観るべき映画だよ。 (解説) この世界には、誰のためにあるのかわからないルールと、悪い冗談みたいなことばかりがあふれている。そんな、まさに弱者ほど生きにくいこの時代に翻弄されている、一組の母子がいた。哀しみと怒りを心に秘めながらも、わが子への溢れんばかりの愛を抱えて気丈に振る舞う母。その母を気遣って日々の屈辱を耐え過ごす中学生の息子。もがきながらも懸命に生きようとする勇気と美しさに、きっと誰もが心を揺さぶられ、涙する。いよいよ社会のゆがみが浮き彫りになっている現代日本。そこで生きていくことは決して楽じゃない。でも、生きるに値する未来は必ずやってくる。茜色の希望をたなびかせて、厳しくも澄みきった人間賛歌がここに誕生した! 傷つきながらも、自身の信念の中でたくましく生きる母親・田中良子を尾野真千子が驚くべき存在感で体現。良子の息子・純平を演じるのは次世代の注目株・和田庵。その純平が憧れを抱く良子の同僚・ケイには出演作が相次ぐ片山友希。そして、交通事故で命を落とす夫・陽一にオダギリジョー、良子とケイを見守る風俗店の店長にベテラン、永瀬正敏が脇を固める。あえて今の世相に正面から対峙することで、人間の内面に鋭く向き合ったのは、今や日本映画界を牽引する石井裕也監督。観るものに時に衝撃を、時に温もりを与え、これまでのどの作品よりも自由にして、同時にどこまでも優しい世界を作り上げた。 ストーリー 1組の母と息子がいる。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇に傾倒しており、お芝居が上手だ。中学生の息子・純平をひとりで育て、夫への賠償金は受け取らず、施設に入院している義父の面倒もみている。経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、そのせいで息子はいじめにあっている。数年振りに会った同級生にはふられた。社会的弱者―それがなんだというのだ。そう、この全てが良子の人生を熱くしていくのだからー。はたして、彼女たちが最後の最後まで絶対に手放さなかったものとは? 石井裕也(監督・脚本・編集) 1983年生まれ、埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(05)でPFFアワードグランプリを受賞。24歳でアジア・フィルム・アワード第1回エドワード・ヤン記念アジア新人監督大賞を受賞。商業映画デビューとなった『川の底からこんにちは』(10)がベルリン国際映画祭に正式招待され、モントリオール・ファンタジア映画祭で最優秀作品賞、ブルーリボン監督賞を史上最年少で受賞した。2013年の『舟を編む』では第37回日本アカデミー賞にて、最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞、また米アカデミー賞の外国語映画賞の日本代表に史上最年少で選出される。『ぼくたちの家族』(14)、『バンクーバーの朝日』(14)などで高い評価を獲得し、第67回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)では多くの映画賞で作品賞や監督賞を受賞し、第91回キネマ旬報ベストテンでは、日本映画ベスト・テン第1位を獲得するなど国内の映画賞を席捲した。近年も『町田くんの世界』(19)、『生きちゃった』(20)などコンスタントに作品を発表し続け、公開待機作に、初めて韓国の映画スタッフとチームを組んで制作された映画『アジアの天使』(21)がある。 コメント ※順不同、敬称略 仲野太賀(俳優) 誰しもが歯を食いしばり、生きてる。 誰かを傷つけない為に、演じてる。 母ちゃんから受け取った誇りは、きっとあの少年を勇敢にする。 親子の帰り道、純真な愛の告白に涙が溢れました。 池松壮亮(俳優) 人類の終末感に相応しい美しい夕焼けと、生き延びてきた自己の物語。 どんなに世界に傷つけられても田中良子は生きている。 その魂の咆哮に、涙が止まらなかった。 身一つで請け負う女性のその圧倒的な姿は、夕焼けよりも美しい。 前田敦子(女優) 石井監督やっぱりすごいです。尾野さん、はじめとするみなさんの熱演、 本当に全てが素晴らしすぎて、魂が震える感覚を知れた気がします。 「愛」の底力って計り知れない。 古舘寛治(俳優) このクソのような世の中で 真面目に誠実に日本の映画を撮ろうとしたらこうなった。 そんな映画だ。 松尾貴史(タレント) 今の社会にこびりつく理不尽な決まり事に踏みつけられる母と子の、 ひたすらにしなやかでひたむきな姿に、ただ心を締めつけられる。 我が事として、今見るべき物語。 角田光代(作家) 静かな笑みという鎧でなんとか自身を保っていた ひとりの母親が、鎧を脱ぎ捨て、丸腰で闘う姿に、 唖然とし、落涙し、そして強く励まされた。 加藤千恵(歌人・小説家) 激しい作品だ。 良子の苦しみが、純平の切実さが、ケイの絶望が、 そしてどうしたって溢れでてしまうあらゆる愛が、願いが、 見ているわたしたちに一つずつ突き刺さる。 はあちゅう(ブロガー・作家) どこかで大きなどんでん返しや、救いがあってほしいと願いながら見続けた。 私たちは「努力すれば報われる」とか「神様はきっと見ている」と 心のどこかで信じているけれど、本当にそうだろうか? 誰にも救ってもらえない人生は、どう生きるのが正解だろうか。そんなことを考えた。 室井佑月(作家) 人は哀しい。どうしてこんなに哀しいんだろう。 映画を観て、あたしは泣いた。 映画に、自分やまわりの人々を投影したからだ。 それでも、人でありたいと願う多くの仲間に、 この映画を勧める。観て良かった。 齋藤薫(美容ジャーナリスト/エッセイスト) 完全なる不幸の中に散りばめられた、 一瞬の幸せの一つ一つに心が震える。 しかもその単純ではないコントラスト表現の見事さと、 尾野真千子の喜怒哀楽の素晴らしさにも目を見張った。 伊藤詩織(映像ジャーナリスト) 「なんで怒らないの」何度もどこかで聞いた言葉だ。 人に起きたことなら怒れるのに、なんでだろう。 自分の怒りと素直に向き合えた時、人は解放されるのかもしれない。 鮫島浩(ジャーナリスト) 公営団地に暮らす母子家庭、母の失恋そして包丁の追憶。 息子の境遇が我が身に重なり、感情移入してしまった。 格差が格差を生む理不尽な社会に差し込む茜色の未来が美しい。 上野千鶴子(社会学者) 日本のシングルマザーが経験するありとあらゆる苦難がこれでもかと。 それをコロナ禍がさらに直撃した。 でも、誇りは捨てない。この怒りは誰に届くだろうか? 湯浅誠(社会活動家・東京大学特任教授) 追いつめられ、壊れかけつつも、踏みとどまっているーー その際(エッジ)を生き抜くすべての人々が 等身大の〈自分〉を見出せる映画だ。 三浦瑠麗(国際政治学者/山猫総合研究所代表) 不条理を一身に浴びながら、それでも生きていく主人公が眩しい。 溜めすぎた怒りを、悲しみを、叫びを受け止めながら、終いに癒しに導かれる。 すごい映画でした。 水谷修(夜回り先生) 「生きる」とは、幸せを求めることと考えている人たちにこそ、見て欲しい。 墜ちても落ちても抗い生きる。つらい苦しみの中にこそ在る生きる意味。 こころに刺さります。 武田砂鉄(ライター) 息苦しい社会なのに、息の苦しさは隠蔽される。 この作品は、その隠蔽を剥がして剥がして剥がして明らかにする。 荒々しい息が聞こえてくる。たじろぐ。情けないほどにたじろく。 尾野真千子 拝啓 皆様いかがお過ごしですか。 私は、この度、どうにもやりにくいこの世の中で、 映画の登場人物達が戦うように 私ももがき、あがき、力の限り戦ってみました。 どうぞごらんください。 和田庵 初めて台本を読んだ時、役の重要さにプレッシャーと気合い、そして感謝という色んな感情が同時に溢れたのを覚えています。主演の尾野さんは、とてもやさしく面白い人で、殆どの時間を一緒にいて、本当の親子のように接していたのでクランクアップの時はとても寂しかったです。石井監督は普段はとても気さくで話しやすいお兄さんという感じですが、いざ撮影が始まると怖いくらい集中して別人のようになります。そして監督の良い映画を作りたいという強い想いが現場全体に伝わり、僕も拙いながら「このチームの一員として良い作品を作りたい」と意欲が湧きました。 今回、この素晴らしい作品に役者として参加出来たことを僕は誇りに思います。母と子を取り巻く矛盾や理不尽さの中でコントロール出来ない感情に振り回されながら、それでも幸せになりたいと願う親子を描いた作品です。純平を演じて僕自身も精神的に成長出来たと思います。その親子の姿は皆さんにとって、きっと忘れられない作品になると信じています。 片山友希 完成した映画を観ている最中、これで良くなかったら私はやめた方がいいんだろう。縁がなかったんだろう。 とふと、思いました。が、そんな事どうでも良くなりました! 映画ってかっこいい!映画を作ってる人達ってかっこいい!まだまだ私の熱は冷めません! ここには書ききれない毎日がありました。 時間が経って、今になって監督は私を信じてくれたんだと気づき涙が出ました。 永瀬正敏 石井裕也監督の世界に触れさせていただきたい、、、 その想いだけでした。 素晴らしい体験、感謝しています。 オダギリジョー 一生懸命に生きることって、何よりも大事だと思う。 そして時には、闘うことも必要だ。 自分の為にも。大切な人の為にも。 石井裕也監督 とても生きづらさを感じています。率直に言ってとても苦しいです。悩んでいるし、迷っています。明らかに世界全体がボロボロになっているのに、そうではないフリをしていることに疲れ果てています。コロナ禍の2020年夏、しばらく映画はいいやと思っていた矢先、突然どうしても撮りたい映画を思いついてしまいました。 今、僕がどうしても見たいのは母親についての物語です。人が存在することの最大にして直接の根拠である「母」が、とてつもなくギラギラ輝いている姿を見たいと思いました。我が子への溢れんばかりの愛を抱えて、圧倒的に力強く笑う母の姿。それは今ここに自分が存在していることを肯定し、勇気づけてくれるのではないかと思いました。 多くの人が虚しさと苦しさを抱えている今、きれいごとの愛は何の癒しにもならないと思います。この映画の主人公も、僕たちと同じように傷ついています。そして、理不尽なまでにあらゆるものを奪われていきます。大切な人を失い、お金はもちろん、果ては尊厳までもが奪われていきます。それでもこの主人公が最後の最後まで絶対に手放さないものを描きたいと思いました。それはきっと、この時代の希望と呼べるものだと思います。 これまでは恥ずかしくて避けてきましたが、今回は堂々と愛と希望をテーマにして映画を作りました。と、まあこうやってつらつら書きましたが、尾野真千子さんがその身体と存在の全てを賭して見事に「愛と希望」を体現しています。尾野さんの迫力とエネルギーに心地よく圧倒される映画になっていると思います。尾野さんの芝居に対する真摯な姿勢には心から敬服していますし、共に映画を作れて、とても幸せに思っております。 2021年5月27日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「地獄の花園」 もう、鉄板のマンガ通りのヤンキー作品の展開を、サクッと見せてくれる。あっという間に時間が経っていた。 永野芽郁ちゃんが、ずっと普通のOLでいて欲しかった。 次々とラスボスが出てきて、最後はあゝこういう究極の戦いになるんだ。これって、どの漫画を押さえてるんだろ? でも、オチはこれしかないよね。 終わり方も潔すぎ。 でも、大笑いできなかった。もっと大笑いしたい。女優たちがものすごく楽しんでる。 【ストーリー】 永野芽郁主演、バカリズムによるオリジナル脚本で描かれる、喧嘩上等空前絶後のOLバトルロワイヤル。普通のOL生活を送る直子(永野芽郁)の職場では、裏で社内の派閥争いをかけOL達は日々喧嘩に明け暮れている。ある日、一人のカリスマヤンキーOLが中途採用されたことをきっかけに、全国のOL達から直子の会社は狙われることに。テッペンをかけた争いから直子は平穏無事なOLライフを全うすることができるのか……。 【公開日】 2021年5月21日 【上映時間】 102分 【配給】 ワーナー・ブラザース映画 【監督】 関和亮 【脚本】バカリズム 【出演】 永野芽郁/広瀬アリス/菜々緒/川栄李奈/大島美幸/松尾諭/丸山智己/勝村政信/遠藤憲一/小池栄子 2021年5月31日 イオンシネマ ★★★★
2021年06月12日
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5月に観た作品は7作でした。2回に分けて紹介します。 「るろうに剣心 ザ・ファイナル」 そもそも、お姉さんを殺されたぐらいで国そのものに復讐しようとする厨二病の弟の気持ちが誰も共感できない時点で、脚本が成立しない。 でも、映画はそれをみさせる作品ではなく、ひたすら、ガンでも拳でもなく、「剣アクション」を映画界に成立させるための作品だった。 ともかく、最初ら最後まで怒涛アクションでした。 いったいどうやって撮ったのか?それを見極める為には、メイキングを観る必要かあるのだろう。 STORY 人斬り抜刀斎の異名で知られた緋村剣心(佐藤健)は、日本転覆を企てた志々雄真実と死闘を繰り広げた後、神谷道場でのどかに生活していた。あるとき、東京の中心部を何者かが連続して攻撃し、剣心と仲間たちにも危険が及ぶ。その事件は、剣心の過去と頬に刻まれた十字傷の謎に関わっていた。 キャスト 佐藤健、武井咲、新田真剣佑、青木崇高、蒼井優、伊勢谷友介、土屋太鳳、三浦涼介、音尾琢真、鶴見辰吾、中原丈雄、北村一輝、有村架純、江口洋介 スタッフ 原作 和月伸宏 監督・脚本:大友啓史 音楽 佐藤直紀 主題歌 ONE OK ROCK 2021年5月13日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「ジェントルメン」 「巨額な利権」目指して!よーいドンのバトルが始まるかと思いきや、時制も人物も行ったり来たりの、組んでほぐれつ騙し合いでした。 そういうのが大好きならば、お見事となるのですが、魅力的な人物が1人もいないということもあって、あゝそうなのね、タイプの映画。 STORY イギリス・ロンドンの暗黒街。一代で大麻王国を築き上げたマリファナ王のミッキー(マシュー・マコノヒー)が、総額500億円に相当するといわれる大麻ビジネスの全てを売却し引退するという情報が駆け巡る。そのうわさを耳にした強欲なユダヤ人大富豪、ゴシップ紙の編集長、私立探偵、チャイニーズマフィア、ロシアンマフィア、下町の不良たちが、巨額の利権をめぐって動き出す。 キャスト マシュー・マコノヒー、チャーリー・ハナム、ヘンリー・ゴールディング、ミシェル・ドッカリー、ジェレミー・ストロング、エディ・マーサン、トム・ウー、バグジー・マローン、リン・ルネー、コリン・ファレル、ヒュー・グラント スタッフ 監督・脚本・原案・製作:ガイ・リッチー 原案・製作:アイヴァン・アトキンソン 原案:マーン・デイヴィース 製作:ビル・ブロック 製作総指揮:ボブ・オシャー、マシュー・アンダーソン、アンドリュー・ゴロヴ、アラン・ワンズ、ロバート・シモンズ、アダム・フォーゲルソン 共同製作:マックス・キーン 撮影監督:アラン・スチュワート 美術デザイン:ジェマ・ジャクソン 衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン 編集:ジェームズ・ハーバート、ポール・マクリス メイク・ヘアデザイン:クリスティン・ブルンデル 音楽作曲:クリストファー・ベンステッド 2021年5月18日 MOVIX倉敷 ★★★ 「JUNK HEAD」 前半寝落ちした。地下に落ちていったことだけを覚えている。 意味不明な未来語と独特の音楽が心地よい子守唄になるんだよね。 それはそれとして、後半はしっかり見た。 どう見てもアンドロイドなのに人類になっているのが、そもそもわからないのだけど、人びとの生まれ方が「生命の樹」によるものだという世界観が、7年経ってもまだ小出しで、ホントにちゃんと世界を確立して作っているのか疑問に思う。 ファンタジーの評価は、以下に世界を確立しているかにあるので、よってまだ判断できない。 2021年5月25日 シネマ・クレール ★★★ 「僕が跳びはねる理由」 自閉症児(という言い方は絶対正確ではないが)の内面世界を一生懸命、映像化しようとしたドキュメンタリー。 予想を遥かに超える映像体験だった。 私たちをヒト科では理解できなかった新しい世界に連れて行ってくれる。 世界5組の自閉症者の状況と家族の「説明」と、それに合わせた映像と音を我々に提供する事で、彼らは決して低知能ではないし、呪われた子供でもないし、むしろ素晴らしい個展を開いたインドの子のように新しい可能性を秘めた子供である事を証明する。それに合わせて、東田直樹さんの著書からの引用を日本の10歳くらいの自閉症者が「世界を見てゆく」体裁になっている。 「普通の人」は普通全体から部分を見てゆく。彼らは部分から見始めるという。彼らの目は、ほとんどズームレンズだ。世界は異様に美しく不思議で、そして音は突然鳴り響き、そして不思議だ。 彼らの記憶は「まるで予測つかない?スライドショーだ」とイギリスの親は言う。2歳や3歳の記憶が!10代後半になっても昨日のようによみがえる。他の子供も、ベッドの上で、突然海で反応した同じ踊り?を踊っていた。こんな風に脳が働くのだとしたら、世界認知はかなり大変だと思う。実際、東田さんは普通の人たちの会話はあまりにもスピーディでついて行けないという。だから、東田さんの文章はあまりにも論理的で「普通」なのき、実際には言葉は上手く発せられないし、普通の会話も難しいという。けれども、会話はとても重要らしい。まるで普通会話のようにタイピングで会話をするアメリカの自閉症者の2人の若者も登場する。 映像は、あくまでも監督が解釈した彼らの世界だろうと思う。親は更に彼らを知っている。だから、確信を持って彼らの尊厳を守ろうとしている。 自閉症者の世界はまだまだわからない。でも、見ると世界が広がる。 「僕らはきっと文明の支配の外に生まれた。 多くの命を殺し、地球を壊した人類に 大切な何かを思い出してもらうために生まれたんだ by東田直樹」 INTRODUCTION 自閉症者の内面を語った内容が大反響を呼び、世界30か国以上で出版された大ベストセラーを映画化! 『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫、角川つばさ文庫)は会話のできない自閉症という障害を抱える作家・東田直樹がわずか13歳の時に執筆したエッセイ。他者との会話が成立しづらいため、今まで理解されにくかった自閉症者の内面の感情や思考、記憶を分かりやすい言葉で伝えた内容が大きな注目と感動を呼び、その後30か国以上で出版され現在117万部を超える世界的ベストセラー作品に。 サンダンス映画祭で観客賞受賞など、海外映画祭で絶賛! このベストラー作品をもとに映画化された『僕が跳びはねる理由』は世界最大のインディペンデント映画祭としても有名なサンダンス映画祭(第36回/2020年1月開催)ワールド・シネマ・ドキュメンタリーコンペティション部門において観客賞を受賞、更に同じく2020年10月に開催された第39回バンクーバー国際映画祭の長編インターナショナルドキュメンタリー部門観客賞とインパクト大賞のダブル受賞など、高い評価を受けた。2005年、わずか13歳の少年が紡いだ言葉が海を越え、今もなお世界中の自閉症者やその親たちに希望を与え続けている。 自閉症者が見つめ、感じ、生きる世界を通じて、「普通」とは何か、そして「会話」の大切さを描く、感動のドキュメンタリー! この映画は自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるか、また彼らにとって自閉症という障害が意味するもの、そして彼らの世界が「普通」と言われる人たちとどのように異なって映っているのかを、世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を追い明らかにしていく、誰も観たことのない驚きと発見に満ち溢れている。そして、「普通とは?」「個性とは何か」という普遍的な疑問、「会話(=コミュニケーション)の大切さ」「多様性の重視」など…他者と分断されている今を生きる誰もが共感しうる、感動のドキュメンタリー映画である。 原作 東田直樹 監督 ジェリー・ロスウェル 2021年5月23日 シネマ・クレール ★★★★★
2021年06月11日
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映画評「男と女 人生最良の日々」 フランス恋愛映画の傑作「男と女(1966年作品)」の出演者、スタッフが奇跡的に再集結して、50年以上経た彼らのその後を撮った作品です。クロード・ルルーシュ監督は、周囲の反対を押し切り「駄作だったら公開しない」と説得して作ったそうです。結果は「人生」を感じさせる素晴らしいものになりました。 フランスの高級老健施設の中にかつてカーレーサーとして名を馳せたジャン・ルイがいます。今やまるで惚けた老人です。57歳になった息子がアンヌを探し出します。「会いに行って欲しい。いつもあなたのことを思い出している」と。 娘がジャン・ルイの息子と寄宿舎で同級生だったことがキッカケで愛し合うようになったアンヌですが、彼の女遊びのために別れたようです。躊躇うけれども逢いに行きます。 ジャン・ルイを演じたジャン=ルイ・トランティニャンはクリクリとした目で笑い、女たらしだった時のことを彷彿させます。一方、アンヌを演じたアヌーク・エーメは50数年の月日が経ったとは思わせない美貌を保っています。端々に一作目の映像が出てきて、一作目を見ていなくても充分に2人の物語は分かるつくりになっています。 アンヌと出会っても、ジャン・ルイは彼女が彼女とはわかりません。 「いつも女性を愛していた。特にあなたに似ている女性を」 「今は最悪の中のベストだな」 「死は収めるべき税金だ」 2人の会話が、さすがフランス、エスプリが効いています。 ジャン・ルイは時には朗々と詩を暗唱し、アンヌとのことは細部まで覚えていて、認知症を患っているのか、周りをからかっているのか、医者でさえも判断つかないようです。観客の我々も翻弄されます。何処までが彼の体験で、何処からが彼の夢なのか。 アンヌはやはり彼を愛していたし、今も愛している、と言葉にしないでも表情でわかります。 シャンソンが、彼らの想いを雄弁に代弁します。素晴らしき作曲、或いは選曲。作曲家フランシス・レイが、この仕事の直ぐ後に亡くなったなんて、信じられない。冒頭と最後にお馴染みの「ダバダバダ‥‥」のスキャットが鳴り響き、「最良の日々は、この先の人生に訪れる(byヴィクトル・ユーゴー)」ことを信じることが出来そうな作品になっていました。(2020年フランス作品レンタル可能)
2021年05月21日
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「約束の宇宙(そら)」 事実に基づいた映画のように作られた、母親宇宙飛行士物語。訓練描写は本物の欧州宇宙機関(ECA)の協力を得て、ドキュメンタリーのように撮影された。その中で、識字障害などを持つ7歳の娘ステラと2ヶ月後に1年間離れ離れになる生活を送る。 宇宙は、地球の端に出張するのとはわけが違う。子どもは母親離れをするのには幼過ぎ、母親も子ども離れできるほど、子どもから離れられない。子どもを預ける夫と離婚していたのなら尚更だ。「プロキシマ」計画とは「約束」計画かと思っていたら違っていた。「最も近い」計画だそうだ。「離れるほどに強くなる、親子の愛と絆」という煽り文句そのままの作品でした。 けれども、宇宙では何が起きるかはわからない。「詐欺連鎖」は上でも下でも起きるかもしれない。子どもは1年経てば刮目して見よ、となるかもしれない。しかし、それはこの作品のテーマではない。 見どころ シングルマザーの宇宙飛行士と娘の絆を描いた人間ドラマ。待望の任務に選ばれるも、キャリアと娘への愛情のはざまで葛藤する女性を描く。監督は『ラスト・ボディガード』などのアリス・ウィンクール、音楽は坂本龍一が担当。主人公を『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』などのエヴァ・グリーン、その娘をおよそ300人の中からオーディションで選ばれたゼリー・ブーラン・レメルが演じ、『ハウス・ジャック・ビルト』などのマット・ディロン、『ありがとう、トニ・エルドマン』などのザンドラ・ヒュラーらが脇を固める。 あらすじ 欧州宇宙機関(ESA)で日々過酷な訓練に励んでいる宇宙飛行士のサラ(エヴァ・グリーン)は、夫と離婚し、7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と二人で暮らしていた。ある日、サラは「Proxima(プロキシマ)」と呼ばれるミッションのクルーに選出される。長年の夢がかなう一方で、一度宇宙へ飛び立つとおよそ1年もの間、まな娘と離れ離れになってしまう。出発日が迫る中、母と娘は「打ち上げ前に、二人でロケットを見る」という約束を交わす。 2021年4月25日 シネマ・クレール ★★★★ 「ザ・スイッチ」(原題Freaky) 普段は観ないのだけど、「面白かった」という映画仲間の一言だけで朝早く起きて観た。もちろん、ホラー大好き青年の一言なので、そこまで凄い期待はしていない。 あゝなるほど、プラム(高校生卒業パーティー)の時期にブッチャーなどの殺人鬼が突然出現するのは、「ハメを外すな」という大人たちの戒めなのか!高校生たちはそれを逆手に取って、殺人鬼に追い回されること自体を楽しんでいるのか!アメリカ若者文化なのね。 今回の肝は、殺人鬼がお約束のように「突然」出現するのだけど、何故か気弱くて肯定感低くて実は美人の女子高生と魂が入れ替わり、パーティーが終わる12時までに決められたことをしないと元に戻れないという「設定」になっていること。 けれども、家族は殺されないし、黒人女友達と、ゲイの男友達と、片想いの優しい彼氏は仲間になってくれる。安心して観ていられる。殺されるのは、前半で主人公に意地悪した者だけ。完全にお約束だ。 なるほど、お約束をちゃんと観させてくれた、という事で「面白かった」のか。 最後の死んだはずの殺人鬼が何故か生き残って、主人公と最後の対決をして、気弱だった主人公が「私はたいしたタマよ」と決め台詞を吐くというのは、うーむ、これもお約束なの? (ストーリー) ミリーは、片思い中の同級生にも認識されない地味な高校生。親友たちと普通の学校生活を送っていたが、ある13日の金曜日、連続殺人鬼“ブッチャー”に襲われ謎の短剣で刺されてしまう。間一髪、命は取り留めたミリーだが、次の朝目覚めるとミリーとブッチャーの身体が入れ替わっていた。女子高生姿のブッチャーが虐殺計画を進めるなか、中年男姿のミリーは24時間以内に身体を取り戻さないと一生元の姿に戻れないことを知り・・・。 ※R15+ 監督 クリストファー・ランドン 出演 キャスリン・ニュートン、ヴィンス・ヴォーン 2021年4月29日 TOHOシネマズ岡南 ★★★ 「21ブリッジ」 まさか、こんな作品だったとは!の典型作品。 ニューヨーク85分署区域内で、麻薬強盗関連で警官8人殺しが起きる。敏腕刑事のデイビスは麻薬捜査官と操作に当たるが、犯人2人を数時間で目星をつけ、日の出までの真夜中ニューヨーク・マンハッタン封鎖に踏み切る。そして、夜中のうちに犯人逮捕までいくであるが、そこにあったのは驚愕の真実であった‥‥。 無駄に発砲する刑事ではなく、ホントの正義のために撃つ刑事。そういう意味では、おそらく2019年撮影だろうけど、2000年の問題を先取りした作品だった。これで最優秀男優賞をとってもおかしくはない。この時、大腸癌と戦っていたなんて信じられない。あんなに走って、あんなにガンアクションしているのに! 「シリーズ化して欲しかった」という声が出ているのも宜なるかな。 STORY マンハッタン島で、8人の警察官が殺害される事件が発生する。かつて警察官だった父親を殺害されたデイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)は、全面封鎖されたマンハッタンで調べを進めていくうちに、思いがけない事件の真実にぶち当たる。窮地に立たされた彼は、たった1人で事件の背後に隠されたニューヨークの闇と向き合うことになる。 キャスト チャドウィック・ボーズマン、シエナ・ミラー、ステファン・ジェームズ、キース・デヴィッド、アレクサンダー・シディグ、テイラー・キッチュ、J・K・シモンズ スタッフ 監督:ブライアン・カーク 脚本・ストーリー原案:アダム・マーヴィス 脚本:マシュー・マイケル・カーナハン 製作:ジョー・ルッソ、アンソニー・ルッソ、マイク・ラロッカ、ロバート・シモンズ、ジジ・プリッツカー、チャドウィック・ボーズマン、ローガン・コールズ キャスティング:アヴィ・カウフマン 音楽:ヘンリー・ジャックマン、アレックス・ベルチャー 衣装:デヴィッド・ロビンソン 編集:ティム・マレル 美術:グレッグ・ベリー 撮影:ポール・キャメロン 2021年4月29日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★
2021年05月13日
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「シン・エヴァンゲリオン」 2回目の鑑賞である。大きな目的は、台詞の確認である。それは達成できただろうか? 「個人的にQよりも更にわからんかった。後半は何?」 「一挙に回収したからな」 このトイレでの某青年たちの会話が殆どの感想だろう。 おまじないの台詞をメモした。順番に、 「おやすみは、みんな安心して眠るためのおまじないかな」 「おはようは、今日もいっしょに生きていくためのおまじない」 「さようならは、また会うためのおまじない」 そして(握手は)「仲良くなるためのおまじない」 気がついたのは、シンジは第3村にいた時にずっと「失語症」に陥っていたわけじゃない。彼は突然大人になったわけじゃない。徐々になったのだ。その大きなきっかけは、やはり綾波レイそっくりさんどの会話だった。彼女の「仲良くなるためのおまじない」を聞いてからだ。それは他人との触れ合いである。 そして村中で、シンジは明確に 「自分のやったことにケジメをつけるため」に、ウェラに乗っている。 驚いたのは、英国留学していたはずのマリが、シンジが生まれた時には側にいたのである。 シンジは強くなった。 「涙で救えるのは自分だけだ。だから、もう泣かない」 後半で使うのは二つのおまじないだった。 「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」そして渚司令に対して? 「仲良くなるためのおまじないだよ」 カジと渚が、部下上司の関係だったとは! 仲良くなるためのおまじない、はやはり強烈であり、それが大人になったシンジの初めてやったことだった! もしかしたら、庵野監督はおまじないが呪いと書くのを知らなかったかもしれない、と思い始めた。でも、私は再度言う。 これは、エヴァの呪い(のろい)を、握手して、さよならという呪い(まじない)で解放した作品である。 見どころ 1990年代に社会現象を巻き起こしたアニメシリーズで、2007年からは『新劇場版』シリーズとして再始動した4部作の最終作となるアニメーション。汎用型ヒト型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオンに搭乗した碇シンジや綾波レイ、式波・アスカ・ラングレー、真希波・マリ・イラストリアスたちが謎の敵「使徒」と戦う姿が描かれる。総監督は、本シリーズのほか『シン・ゴジラ』なども手掛けてきた庵野秀明。 キャスト (声の出演) 緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、長沢美樹、子安武人、優希比呂、大塚明夫、沢城みゆき、大原さやか、伊瀬茉莉也、勝杏里 スタッフ 企画・原作・脚本・総監督 庵野秀明 監督 鶴巻和哉 中山勝一 総作画監督 錦織敦史 作画監督 井関修一 金世俊 浅野直之 田中将賀 新井浩一 副監督 谷田部透湖 小松田大全 デザインワークス 山下いくと 渭原敏明 コヤマシゲト 安野モヨコ 高倉武史 渡部隆 CGIアートディレクター 小林浩康 CGI監督 鬼塚大輔 3Dアニメーションディレクター 松井祐亮 3Dモデリングディレクター 小林学 3Dテクニカルディレクター 鈴木貴志 3Dルックデヴディレクター 岩里昌則 2DCGディレクター 座間香代子 動画検査 村田康人 色彩設計 菊地和子 美術監督 串田達也 撮影監督 福士享 特技監督 山田豊徳 編集 辻田恵美 音楽 鷺巣詩郎 音響効果 野口透 録音 住谷真 台詞演出 山田陽 総監督助手 轟木一騎 制作統括プロデューサー 岡島隆敏 アニメーションプロデューサー 杉谷勇樹 設定制作 田中隼人 プリヴィズ統括制作 川島正規 エグゼクティブプロデューサー 緒方智幸 コンセプトアートディレクター 前田真宏 テーマソング 宇多田ヒカル 映画詳細データ 製作国日本制作 スタジオカラー 配給 東宝 東映 配給・製作 カラー 技術カラー 2021年4月8日 MOVIX倉敷 ★★★★★ 「BLUE/ブルー」 負け続ける話。 いつ小川の頭が破綻するのか いつ瓜田は諦めるのか いつ楢崎の才能が開花するのか 結局、そんな感動的なラストは現れない。 何度も繰り返される試合。 こんなにもクライマックスに近い試合があるボクシング映画は初めてだ。 人生って、そうなのかも。 「これが勝負」は何度も訪れる。 無理をする。女にわかるはずがない、とも思う。 でも、負ける。 一回の勝利が忘れられない。 才能ある者も、勝つことの人生以外考えられなくなる。 女にはわからない。でも、多分女性の方が正しいとはわかっている。 千佳はホントによく耐えている。 奇跡的だよ。 挫折を味わった東出の人生も垣間見える。松山ケンイチはもちろん完璧である。 INTRODUCTION リアリティ溢れる描写で人間の光と影を表現し続ける𠮷田恵輔。30年以上続けてきたボクシングを題材に自ら脚本を書き上げ、「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」と語る本作で描いたのは、成功が約束されていなくとも努力を尽くす挑戦者たちの生き様。主演は演技派俳優として確固たる地位を築く松山ケンイチ。同じジムに所属する仲間を東出昌大と柄本時生が演じ、『聖の青春』以来5年ぶりの共演を果たす3人の掛け合いも見所。ヒロインは𠮷田監督作品への出演を熱望した木村文乃。実力派キャストが集結し、理想と現実の間で悩みながら生きる登場人物たちを熱演。夢に焦がれた若者たちの葛藤だらけの青春の日々が、観客の心に深い余韻を残す。 時に人生は残酷だ。 どれだけ努力しても、どれだけ才能があっても、 約束された成功なんてない。 STORY 誰よりもボクシングを愛する瓜田は、どれだけ努力しても負け続き。一方、ライバルで後輩の小川は抜群の才能とセンスで日本チャンピオン目前、瓜田の幼馴染の千佳とも結婚を控えていた。千佳は瓜田にとって初恋の人であり、この世界へ導いてくれた人。強さも、恋も、瓜田が欲しい物は全部小川が手に入れた。それでも瓜田はひたむきに努力し夢へ挑戦し続ける。しかし、ある出来事をきっかけに、瓜田は抱え続けてきた想いを二人の前で吐き出し、彼らの関係が変わり始めるー。 2021年4月18日 シネマ・クレール ★★★★ 「パーム・スプリングス」 ループモノの新たな定番。 しかも、今回はかなり好条件。 何しろ、苦労する必要はない。 結婚式当日だから、飲み放題、食べ放題。好きな女の子口説き放題。無茶し放題。 でも、これが永遠に続くとしたら? たまたま、そこにもう1人の女の子が現れた。 さて、質問。永遠に2人で過ごすか?毎朝目覚める時は、違う男女と最悪の寝覚をするのを無視すれば可能だ。 それとも、死んで消滅する可能性はあるけど、ループから逃れることを試すか? 女は迷いがない。成功しても失敗しても、男は取り残される。だとすれば、男は女についてゆくだろう。 これって、二十年前ならば男女反対だった。そして、この姿が、現在の夫婦の未来なのだろう。 一つ疑問なのは、サラが物理学教授を納得させるまで学問するには、何百回もループしなくちゃいけないと思うけど、その間2人は出会わないって、そしてナイルズがあのテンションで待ち続けるのは無理があるのでは? まぁ適当に理屈つけているけど、このループ現象自体物理的に無理があると思うけど。 STORY 砂漠のリゾート地パーム・スプリングス。花嫁の介添人として結婚式に出席したサラ(クリスティン・ミリオティ)は、そこで出会った不思議な雰囲気の青年ナイルズ(アンディ・サムバーグ)とロマンチックなムードになるが、突然ナイルズが謎の老人(J・K・シモンズ)に弓矢で襲撃される。近くの洞窟へ逃げ込んだ彼を追うサラは洞窟内で強い光に包まれ、目覚めると結婚式当日の朝に戻っていた。状況を飲み込めない彼女がナイルズを問いただすと、彼は数え切れないほど同じ日を繰り返していると話す。 キャスト アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、J・K・シモンズ、メレディス・ハグナー、カミラ・メンデス、タイラー・ホークリン、ピーター・ギャラガー スタッフ 監督:マックス・バーバコウ 脚本:アンディ・シアラ 製作:ベッキー・スロヴィター、アンディ・サムバーグ、アキヴァ・シェイファー、ヨーマ・タコンヌ、ディラン・セラーズ、クリス・パーカー 製作総指揮:ギャビー・レビリャ・ルゴ 2021年4月19日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年05月12日
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4月に観た作品は9作品,3回に分けます。 「ミナリ」 レーガン大統領云々と言っていたから、おそらく80年代の米国。まだ一部では、米国が夢の国として韓国から信頼されていた時代だと思う。 ミナリが、韓国語でセリと分かり、それがやがて「ミナリ、ミナリ、ワンダフルワールド」とデビッドが唄う時点で、ハッピーワードとは予測がつくが、脚本はわざと最後の直前まであざなえる縄の如く、うまくいく場面とダメになる場面を交互に見せてゆく。今になっては、それが狙いとわかるが、みている間は感情が揺さぶられる。 最後に「全てのおばあさんのために」とキャンプションがでて、典型的な韓国婆さんのユン・ヨジョンがキーワードだったとわかる。 でも、狙いと分かっていても、モニカの夫への非難は肯じられない。 韓国語は優しい単語ばかり。おそらく、中国役者のための脚本、米国映画だったからだろう。ハングル学習に最適。 (ストーリー) 本年度アカデミー賞6部門ノミネート 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞 1980年代、農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アメリカはアーカンソー州の高原に、家族と共に引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、いつまでも心は少年の夫の冒険に危険な匂いを感じるが、しっかり者の長女アンと心臓に病を持つが好奇心旺盛な弟のデビッドは、新しい土地に希望を見つけていく。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。だが、一家に思いもしない事態が立ち上がる──。 監督 リー・アイザック・チョン 出演 スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョン、ウィル・パットン、スコット・ヘイズ 2021年4月1日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「ノマドランド」 ノマドとは放浪者のこと。主人公は「ホームレスじゃないわ。ハウスレスよ」と少し胸を張る。数ヶ月単位で職を渡り歩き、アメリカ大陸を横断する。石屋、国立公園管理者、そしてAmazon労働者等々と、ひと自治体の労働が消えてしまってついた彼女の生き方も、それは飛び込んでみれば人生そのもの、アメリカという自然そのもの。旅は百代の過客にして行き交う水も‥‥。 「私が死んだら、石を焚き火に入れて」そう残して、余命半年の彼女は死に場所まで旅をする。やがて1年後に10人ほどが石を焚き火に投げ入れて、彼女をしのぶ。それもやはり理想の生き方かもしれない。 子供と孫の元に帰っていく生き方もある。けれども、彼女は、そんな自分をイメージできなかったのだろう。 自然と共に生きたい、と言った彼女の自然は、厳しく美しいという。それは乾いた高原と山の世界だ。日本人にとってはそれは自然ではなく「荒野」だ。でも、それを自然と言える人類が世界にいるのだろう。荒野こそが、私達の生きる世界だと思える人たちがいるのだろう。 そうやって世界はできている。 まるで、哲学的な、神話のような、社会派ではない、作品だった。 (ストーリー) 本年度アカデミー賞6部門ノミネート 作品賞、監督賞、主演女優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞 リーマンショック後、企業の倒産とともに、長年住み慣れたネバダ州の企業城下町の住処を失った60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)。彼女の選択は、キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、「現代のノマド(遊牧民)」として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流とともに、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく。 監督 クロエ・ジャオ 出演 フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、リンダ・メイ 2021年4月1日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「奥様は、取り扱い注意」 テレビシリーズが大好きで、つい観てしまった。物語は、テレビシリーズの最後の場面からの続きと、それよりもさらに過去の話からの因縁と、公安の新しい任務と、更にはそこから炙り出される二人をはめる罠と、それを利用した「爽やかな?」ラストを描く。 2020年作品になっていたので、実際の撮影は2019年であることは明らか。綾瀬はるかの身体の切れは半端ない。惚れ惚れします。ところが、なかなかそれが始まらない。いや、始まらなくても良いんですよ。もっとスパイものの怪しい雰囲気をどんどん出してくれれば。それなのに、物語の半分ちかく経っても延々と料理場面を出すものすごいいらない編集をやっていた。前田敦子の医者が出てきた時点で彼女が公安職員だというのは見え見えなのだから、もはや2/3ぐらいになっても「驚き」場面がひとつもないというのは、ちょっとスパイコメディものとしてどうかと思う。 STORY ある出来事で記憶喪失になった伊佐山菜美(綾瀬はるか)は、夫の勇輝(西島秀俊)と共に桜井久実と裕司に名を変え、地方都市の珠海市で新しい生活を送っていた。ここは新エネルギー源「メタンハイドレード」の発掘でにぎわう一方、海を守ろうとする開発反対派と市長ら推進派の争いが激しさを増していた。さらに開発の裏で、国家レベルの陰謀がうごめいていた。 キャスト 綾瀬はるか、西島秀俊、鈴木浩介、岡田健史、前田敦子、みのすけ、セルゲイ・ヴラソフ、中林大樹、浅利陽介、やしろ優、渕野右登、イゴリ、鶴見辰吾、六平直政、佐野史郎、檀れい、小日向文世 スタッフ 監督:佐藤東弥 原案:金城一紀 脚本:まなべゆきこ 音楽:得田真裕
2021年05月11日
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昨日、思いもかけずNさんから「今回の映画評は良かった」とお褒めの言葉を頂きました。〆切過ぎても書ききれず、苦しんで書いた文章だったので、望外の言葉でした。 今月の映画評「ジョジョ・ラビット」 冒頭、1944年秋ドイツ、青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に、10歳のジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)が勇躍して参加しようとしています。その場面に、なんとビートルズの「抱きしめたい」の楽曲が被さります。ヒトラーに熱狂している人々の実物映像も被さります。とってもポップで詩的な反戦映画ができあがりました。 あゝこれはリアルなヒトラー映画じゃないな、という予測がつきます。ポピュリズム(大衆迎合主義)を戯画化しているのかな。ところが、だんだんコメディタッチが、深刻な真実をあぶり出してゆくのです。子供たちが合宿で学ぶ「武器の使い方」「人の殺し方」「ユダヤ人の差別の仕方」。心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺せず、教官から<ジョジョ・ラビット>という不名誉なあだ名をつけられてしまいました。それでもジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)の助けを借りて、立派なナチスになろうと奮闘するのです。ナチスの洗脳教育の愚かしさをこれでもかと見せつけます。 ベルリンの家では、隠し部屋にユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)が匿われていました。ヒトラーの子分みたいなジョジョは、「アンネの日記」から出てきたようなユダヤ人少女に逢ったならばば、何を選択するのでしょうか? 10歳の子供から見たら、世界はこのように見えるのかもしれません。冷静に見たら、狂気の世界が見えます。密かに反戦活動をしているお母さん(スカーレット・ヨハンソン)がかっこいい。密かに母親に恋している大尉(サム・ロックウェル)もかっこよかった。 靴の紐を一人で結べなかったジョジョは、お母さんの死に出会って、必死の想いでお母さんの靴の紐を結びます。この場面の処理の仕方が、とっても悲しくて秀逸でした。 喜劇と悲劇、寓話とリアル、空想のヒトラーとユダヤ少女、二つが重なりながら、ダンスが嫌いだった少年はラスト、ボウイの「ヒーローズ」に乗せて踊り始めるまでに成長するのです。 そして最後はリルケの詩が、物語を締めました。 全てを経験せよ 美も恐怖も 生き続けよ 絶望が最後ではない (2020年 タイカ・ワイティティ監督、米国作品、レンタル可能)
2021年04月23日
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最後の2作品。比較的佳作が多かった。 「騙し絵の牙」 流石にあれだけ予告流して、騙すぞ騙すぞ、と言われると、具体的にはあまりわからないものの大まかな流れは予想つく。 ただ池田エライザのエピソードは、どこまで予想していたのか?原作には書いているのかな? 出版界の現状に合わせたやり方だし、高野の「騙し」も爽やか?で、好感が持てた。でもいくらなんでも3万2千円はないのでは?私ならば買わない。地元図書館が取り寄せないのならば、他のやり方を考える。 STORY 大手出版社の薫風社で創業一族の社長が急死し、次期社長の座を巡って権力争いが勃発する。専務の東松(佐藤浩市)が断行する改革で雑誌が次々と廃刊の危機に陥り、変わり者の速水(大泉洋)が編集長を務めるお荷物雑誌「トリニティ」も例外ではなかった。くせ者ぞろいの上層部、作家、同僚たちの思惑が交錯する中、速水は新人編集者の高野(松岡茉優)を巻き込んで雑誌を存続させるための策を仕掛ける。 キャスト 大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、坪倉由幸、和田聰宏、石橋けい、森優作、後藤剛範、中野英樹、赤間麻里子、山本學、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市 スタッフ 原作:塩田武士 監督・脚本:吉田大八 脚本:楠野一郎 音楽:LITE 2021年3月29日 イオン・シネマ ★★★★ 「愛しの故郷」 ポスターやあらすじだけを見たら、まるで共産党賛美映画のように映る人もおるやも知れぬ。チャン・イーモウもここまで堕ちたか、と嘆く人もおるやも知れぬ。 それでもいい作品だったと思う。驚くべき作品だったと思う。故郷を大切にする作品を作って何処が悪い。しかも、この二十五年間で、あまりにも様変わりした現代を舞台に、昔のいいところを世代継承を含めて繋げていこうとする作品を作って何処が悪いというのだろう。 コメディだから、泣けて笑える作品なのだ。甘いのは当たり前、ご都合主義は当たり前じゃないか。 とうとう最後の作品で涙腺やられてしまった。何一つノスタルジーやられる場面はなかったのに。 それにしても、この二十数年間で中国は大きく変わったんだなあ。それでも、まだホントに美しい場所は山ほどあるんだなあ。故郷を救う起爆剤は、現代ではやはり観光なんだな。おそらく映画のために全国から無数に携帯で送られてきた「故郷への想いを述べる画像」が五つの物語の合間を埋める。いやあ、それだけでも、庶民目線の作品だった。 見どころ 『SHADOW/影武者』などのチャン・イーモウ監督が製作総指揮を担当したコメディー。中国の人々が抱える故郷への思いを温かに描いた五つのエピソードが続く。『クレイジー・ストーン ~翡翠狂騒曲~』などのニン・ハオ、『スプリング・フィーバー』などのチェン・シーチェン、『ロスト・イン・ロシア』などのシュー・ジェンのほか、ダン・チャオ、ユー・バイメイなどが監督を務める。『運命の子』などのグォ・ヨウ、『氷の下』などのホアン・ボーに加え、ワン・バオチャン、リウ・ハオランらが出演する。 あらすじ 北京という名のお調子者は、名匠チャン・イーモウからの出演依頼を断ったとホラを吹いていた。UFOが出没したという南部貴州の田舎町を訪れたテレビクルーの前に怪しい村長、商人、農民発明家が登場する。アルツハイマー病を患う老教師のため、息子と教え子たちが彼にとって思い出深いものとなっている東部千島湖の村での授業を再現させようとする。西部で生まれたカリスマインフルエンサーと後輩が、母校の設立記念日に合わせて帰郷する。過疎化が進み年配の人々が大半を占める村で、画家とその妻が住んでいた。 (キャスト) グォ・ヨウ ホアン・ボー ワン・バオチャン リウ・ハオラン ドン・ズージェン トン・リーヤー ファン・ウェイ タオ・ホン チャン・イー ダン・チャオ イェン・ニー スン・リー シエン・トン マーリ (スタッフ) 製作総指揮 チャン・イーモウ 総企画 チャン・イーバイ 総監督・監督 ニン・ハオ 監督 チェン・シーチェン シュー・ジェン ダン・チャオ ユー・バイメイ ポン・ダーモ ヤン・フェイ 2021年3月30日 シネマ・クレール ★★★★
2021年04月11日
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次の三作品。 「あの頃。」 小泉(コズミン)の生前葬と追悼会が面白すぎる。ホントにやったのか?やったんだろう。 2010年、AKBがブレイクする寸前までの、2004年からの推したちのコアな生き方を見せてくれて幸せでした。ありがとう! 剱くんが、女の子となんとかなりそうで、ならないのがとってもリアル。仕事も発展しそうで発展しない。それでも、「僕は今が1番楽しいです」と言い切ることができる、なんとか「仲間」を見つけた。これが「友情」だとしたら、人間はなんと豊かなことか。 「推し」とは何か、を求めて映画を見たけど、そんなのは千差万別以外、決めれない。でも、人にとって大切なことは何かをやはり描いていたと思います。 (ストーリー) 大学院受験に失敗し、彼女なし、お金なし、地獄のようなバンド活動もうまくいかず、どん底の生活を送っていた剱(つるぎ)。ある日、松浦亜弥の「桃色片想い」のMVを見たことをきっかけに、剱は一気にハロー!プロジェクトのアイドルたちにドハマりし、オタ活にのめり込んでいく。藤本美貴の魅力を熱く語るケチでプライドが高いコズミンをはじめとした個性的なオタク仲間と出会い、学園祭でのハロプロの啓蒙活動やトークイベント、また「恋愛研究会。」というバンドを結成しライブ活動を行うなど、くだらなくも愛おしい青春の日々を謳歌する剱。しかし時は流れ、仲間たちはアイドルとおなじくらい大切なものを見つけて次第に離れ離れになり…。 監督 nbsp 今泉力哉 出演 nbsp 松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山崎夢羽(BEYOOOOONDS)、西田尚美 「秘密への招待状」 ほとんどジュリアンのキャリアと重なる設定。もしも自分が不治の病に罹ったならば、どうするか?寄付はしたいけど無駄な寄付はしなくない。子供たちを見守ってくれる、例えば子供の実の母親がもしいたならば、二千万ドル(20億円!!)だって惜しくはない。 娘の結婚の前に自分の財産を処分して、着々と死に準備をする。実の母親もとっくの昔に見つけていたのだろう。全てが終わった後に、夫から「死んだらあの娘と一緒になる?」と聞いて明確に否定してくれて、やっと「死にたくない!まだやることがある!」と泣き崩れる。これがジュリアンなのだろう。 ミッシェル・ウィリアムズは、30代手前の顔立ちをしているけれども、役の上では39歳。実際にも現在は41歳なのでは、ほぼ役のままだ。インドで子供たちのために十数年生きていたとしてもおかしくはない役になっていた。インド郊外の自然のままに作られた町が、とても興味深い。 ミッシェルは、「グレイテスト・ショウマン」の時はどんな役だったけ。 アビー・クインは「わたしの若草物語」でアニー役だったらしい。道理で達者な演技だと思った。 (解説) 孤児の救済活動をするイザベルに舞い込んだ多額の寄付。 それは資産家のテレサが愛する家族のために仕掛けた秘密の計画だった ラストに明かされる驚きの真実に、心が震える感動のヒューマンドラマ。 2006年にアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた、デンマークが誇るスザンネ・ビア監督の「アフター・ウェディング」。この作品に惚れ込んだオスカー女優のジュリアン・ムーアと、彼女の夫で監督のバート・フレインドリッチが製作に乗り出し、豪華ハリウッドリメイクを実現させた。オリジナル版では男性二人が主人公だったが、ハリウッド版では女性二人に変更された。 ジュリアン・ムーアが演じるのは、億万長者の会社経営者。一方、社会の不平等と戦う理想主義者のイザベルには、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」などで、アカデミー賞に4度ノミネートされたミシェル・ウィリアムズ。ニューヨークで自分の夢をかなえ続けるテレサ、インドで子供たちの夢をかなえる手助けをするイザベル。住む世界も考え方も全く異なる二人が、生みの親と育ての親という立場になり、愛と葛藤に引き裂かれていく姿を、ハリウッドのトップに立つ俳優たちが繊細かつエモーショナルに演じきった。 長きにわたって隠された真実が暴かれ、古傷の痛みに苦しむ4人の親子。だが、ようやくそれも乗り越えて前向きな関係性が生まれたかと思われたその時、新たな秘密が明かされる。人間という存在の奥深さに、心が震えずにはいられないヒューマンドラマ。夫オスカーはビリー・クラダップ、娘グレイスはアビー・クイン。 Story インドで孤児たちの救援活動に人生を捧げるイザベルは、施設の維持費を集めるために日々駆け回っていた。そんな彼女のもとに、多額の寄付の話が舞い込む。ただし、メディア会社を経営する支援者のテレサにニューヨークまで会いに行くのが条件だ。話をまとめて一刻も早く孤児たちの元へ帰りたいイザベルを、娘の結婚式に強引に招待するテレサ。寄付金のために渋々出席したイザベルは、テレサの夫を見て驚愕する。それは21年前、イザベルが18歳の時にいさかいの果てに別れた恋人、オスカーだった。さらに、目の前の新婦グレイスが、オスカーとの間にできたイザベルの娘だと気づく。結婚式への招待状をきっかけに明かされる、家族の衝撃的な〈真実〉と、新たな〈秘密〉。この日を境に、彼女たちの人生は予想もしない未来へと転がっていく。 2021年3月28日 シネマ・クレール ★★★★ 「私は確信する」 「ヒッチコック狂による完全犯罪とメディアがセンセーショナルに報じて大衆の好奇心を煽り立てるなか、本当に殺されたのかも判然としないまま開かれた殺人事件をめぐる裁判はフランス中の注目を集めた。」との予告並びにチラシの煽りを受けて、見る前は「一旦無罪になった容疑者の犯罪が暴かれる」と予想をつけて観た。 そしたら、冒頭で当のヴィギエは鬱病に罹っていてほとんど存在感のない存在になっていた。コレは演技なのか?それとも、娘の知り合いというだけで冤罪を晴らすために奔走する主人公女が秘密を握っているのか? ところが、話は一転二転するものの、ホントの主人公はそこではなかったことがわかる終盤の展開があった。 なるほど、コレは実はヴィギエ事件の真相を暴くのではなく、ノラ(唯一架空人物)を合わせ鏡にした日本にも通じる「事件」へのアプローチを批判した作品なのである。 しかし、日本はこんなことを言う弁護士は法相には抜擢されない。その時点で、日本と問題の「質」が違う! (ストーリー) 2000年2月、フランス南西部トゥールーズ。38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが3人の子供を残して忽然と姿を消した。夫ジャックに殺人容疑がかけられるが、明確な動機がなく、決め手となる証拠は見つからない。ジャックは第一審で無罪となるがすぐさま検察に控訴され、翌年の第二審で、再び殺人罪を問う裁判が行われる。 無実を確信するシングルマザーのノラは、敏腕弁護士デュポン・モレッティに弁護を懇願。自らも助手となり250時間の電話記録を調べるうちに、新たな真実と疑惑に気がつくが。 (解説) フランスで実際に起こった未解決のヴィギエ事件を映画化。「ヒッチコック狂による完全犯罪」とメディアがセンセーショナルに報じて大衆の好奇心を煽り立てるなか、本当に殺されたのかも判然としないまま開かれた「殺人事件」をめぐる裁判はフランス中の注目を集めた。スザンヌは本当に夫に殺害されたのか?刑事、ベビーシッター、愛人たちの食い違う証言。事件の真相とはー? 疑惑だらけの証人たちと対峙する白熱の法廷シーン、事件によって人生を狂わされたヴィギエ一家の苦悩、真実を求めて事件にのめりこむ主人公・シングルマザーのノラ。裁判の内外で繰り広げられる息をのむスリリングな展開と人間模様に、一瞬たりとも目が離せない。 本作は口コミで広がり、本国フランスで40万人を動員する大ヒットを記録した。フランスの辛口の批評家からも絶賛されたアントワーヌ・ランボー監督は、確かな演出力と巧みなストーリーテリングで、フランス特有の司法制度の問題点、「歪んだ正義」の危うさをあぶり出す。 主人公ノラを演じるのは、コメディエンヌとしても人気の高い実力派女優マリーナ・フォイス。本作の公開後、法務大臣に抜擢された実在の弁護士デュポン・モレッティに扮するのは、ダルデンヌ兄弟の「息子のまなざし」の名優オリヴィエ・ グルメ。すべての運命を決するクライマックスの弁論シーンで、オリヴィエ・グルメが披露する渾身のスピーチは圧巻、心を揺さぶるに違いない。 2000年2月27日 スザンヌ・ヴィギエ失踪 2000年3月1日 ヴィギエ、妻の捜索届を警察に提出 2000年3月8日 ヴィギエ、妻の誘拐・監禁被害届を提出 2000年3月10日 ヴィギエ勾留、家宅捜査 2000年5月11日 ヴィギエ、妻殺害の容疑で、予審決定 2000年5月12日ー2001年2月 ヴィギエ、未決勾留 2007年2月22日 ヴィギエ、妻殺害の容疑で重罪院に出頭 2009年4月20日ー4月30日 オート・ガロンヌ県トゥールーズの第一審でヴィギエ無罪。検察側控訴 2010年3月1日ー2010年3月20日 タルヌ県アルビでの第二審 2021年3月18日 シネマ・クレール ★★★★
2021年04月10日
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次の三作品。「シン・エヴァ」1回目、見た直後の感想を書いている。ここでは★4つであるが、その後考え直して★5つ、今のところ今年のベストワンである。 「どん底作家の人生に幸あれ!」 どうやら英国では、コメディ映画として分類されているらしい。けれども『スターリンの葬送狂騒曲』に監督がつくったのだから、笑えないコメディになっている。 そもそも19世紀らしき英国を舞台にしているのに、凡ゆる人種(黒人系、中国系など)が、普通に貴族や庶民になり、満遍なく差別もなく出演しているところからおかしい(決して可笑しくはない)。ディケンズの半自叙伝を原作にしているらしい。読んでいたならば(おそらく読んでいるのを前提とした作品なのだろうが)いろんなくすぐりがあるはず。しかし、私にはわからない。 みんな一癖二癖ある人物が、彼の半生に関係している。極貧の元貴族、継父としてデイヴィッドを労働者に落とす人物、船を逆さまににした家等々の魅力ある「物語」を、作者本人が批評する形で描く。さらに、それを映像化する入れ子方式の造りが、いかにも19世紀英国文学らしい映像化だ。 ひとつひとつのエピソードが深まめられていないので、惜しいつくり。ディケンズファンには、堪らない作品かも。 見どころ イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの半自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」を、『スターリンの葬送狂騒曲』などのアーマンド・イアヌッチ監督が映画化。不遇な幼少期を過ごした作家の波乱に満ちた半生を描く。『LION/ライオン ~25年目のただいま~』などのデヴ・パテルが主演を務め、ドラマシリーズ「ドクター・フー」などのピーター・キャパルディ、ドラマシリーズ「Dr.HOUSE -ドクター・ハウス-」などのヒュー・ローリーのほか、ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショーらが共演する。 あらすじ 優しい母と家政婦と共に幸せに暮らしていたデイヴィッドは、母の再婚相手によって都会の工場に売り飛ばされてしまう。過酷な労働に明け暮れる中、最愛の母が亡くなり独りぼっちになったデイヴィッド(デヴ・パテル)は、やがて唯一の肉親である変わり者の伯母(ティルダ・スウィントン)に引き取られる。伯母の助けで進学した上流階級の名門校を卒業後、恋に落ち、法律事務所に職を得てようやく幸せをつかみかけた矢先、事態が暗転する。 キャスト デヴ・パテル(デイヴィッド・コパフィールド) アナイリン・バーナード(スティアフォース) デイジー・メイ・クーパー(ペゴティ) ヒュー・ローリー(ミスター・ディック) ピーター・キャパルディ(ミスター・ミコーバー) ロザリンド・エリーザー(アグネス) ティルダ・スウィントン(ベッツィ・トロットウッド) ベン・ウィショー(ユライア・ヒープ) モーフィッド・クラーク(クララ・コパフィールド/ドーラ・スぺンロー) ベネディクト・ウォン(ミスター・ウィックフィールド) スタッフ 監督・脚本・プロデューサー アーマンド・イアヌッチ 脚本 サイモン・ブラックウェル 美術 クリスティーナ・カサリ 撮影 ザック・ニコルソン 2021年3月7日 シネマ・クレール ★★★★ 「野球少女」 まさか泣かされるとは思わなかった。 韓国映画だ、どんな作品も「情」に訴える。 もちろんジェンダー映画の部類に入るけど、 女性差別というよりも、 「人を性差ではなく、実力で評価して欲しい」 ということを、思ったよりも 地味目に扱ったもの。 水島新司「野球狂の詩」の左のアンダースロー、水原勇気を思い出す。彼女も直球では歯が立たず、ドリームボールという変化球に活路を見いだす。あの後彼女はどうなったのだろう。 STORY 最高134キロの速球と鋭い変化球が強みのチュ・スイン(イ・ジュヨン)は、高校卒業後にプロ球団でプレーすることを夢見て熱心に練習を重ねてきた。しかし、女子という理由でトライアウト(プロテスト)を受けられず、友人や家族からも夢を諦めるよう説得される。そんな折、かつてプロを目指すも断念したチェ・ジンテ(イ・ジュニョク)がコーチとして赴任し、スインの運命は大きく動き出す。 キャスト イ・ジュヨン、イ・ジュニョク、ヨム・ヘラン、ソン・ヨンギュ、クァク・ドンヨン、チュ・ヘウン スタッフ 監督・脚本:チェ・ユンテ 2021年3月8日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」 「シン」は、「真」でもあり、「深」でもあり、「新世紀」でもあり、「死んじゃった、エヴァンゲリオン」でした。 最後は父と息子の話に集約するのだけど、重要なのは、その前に甚大な災害にあった日本人たちの姿を、極めて詳細に描いたこと。しかも、死んだと思っていた彼らを成長させて。その後に究極のAI世界を描く。これは「現代日本」を描いた作品なのである。 それが、「シン・ゴジラ」を経た監督の進化なのだと思う。 ゲンドウは、やっぱり厨二病だった。それで人類補完計画を実行させられたら叶わん。ホンマ。そんなアニメに25年も付き合った我々もどうかしている。けど、我々はそれでもなんだかスッキリした。。もうそんな負の感情は、この25年間で使い切った。ともかくおそらくだけど、愛でたく終わらせてくれた。「終劇」と書いてくれた。ゲンドウとミサトさん以外は、多分助かっている。綾波やカヲルがいるのがよくわかんないけど、ともかく良かった。 映像はともかくすごかった。 音楽もよかった。 宇多田ヒカルはやはり天才だ。 あゝ終わって良かった。 企画・原作・脚本・総監督:庵野秀明 監督:鶴巻和哉、中山勝一 総作画監督:錦織敦史 作画監督:井関修一、金世俊、浅野直之、田中将賀、新井浩一 副監督:谷田部透湖、小松田大全 デザインワークス:山下いくと、渭原敏明、コヤマシゲト、安野モヨコ、高倉武史、渡部隆 CGIアートディレクター:小林浩康 CGI監督:鬼塚大輔 3Dアニメーションディレクター:松井祐亮 3Dモデリングディレクター:小林学 3Dテクニカルディレクター:鈴木貴志 3Dルックデヴディレクター:岩里昌則 2DCGディレクター:座間香代子 動画検査:村田康人 色彩設計:菊地和子 美術監督:串田達也 撮影監督:福士享 特技監督:山田豊徳 編集:辻田恵美 音楽:鷺巣詩郎 音響効果:野口透 録音:住谷真 台詞演出:山田陽 総監督助手:轟木一騎 制作統括プロデューサー:岡島隆敏 アニメーションプロデューサー:杉谷勇樹 設定制作:田中隼人 プリヴィズ統括制作:川島正規 エグゼクティブプロデューサー:緒方智幸 コンセプトアートディレクター:前田真宏 テーマソング:宇多田ヒカル 2021年3月9日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年04月09日
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次の三作品です。 「ライアー×ライアー」 酷い作品だった。 ドッキリバラエティを映画化したようなヤツ。後半は真面目に演技しているので、余計笑えない。 事務所がいい加減だと、新人女優にこんな作品にまで出させるのか?事務所出て正解だったよ森七菜さん。 【ストーリー】 原作は、累計発行部数170万部を突破し、2012年度「このマンガがすごい!オンナ編」にランクイン、2015年には第39回講談社漫画賞・少女部門にもノミネートされた金田一蓮十郎の同名コミック(講談社「KCデザート」刊)。潔癖症の地味系女子大生・湊(森七菜)は、両親の再婚で義理の弟になった同い年の透(松村北斗)と同居中。イケメンの透は、来るもの拒まず、女を取っ替え引っ替えするクール系モテ男。そんな透の女癖の悪さが原因で長らく迷惑をこうむってきた湊は、同じ大学に通う透に半径2m以内に近づかないという念書を書かせ、繋がりを断っている。ある日、友人の頼みで友達の高校時代の制服を着てギャルメイクで街に出た湊は、偶然にも透と遭遇してしまう。湊はとっさに別人の“女子高生・みな”と名乗り、それを信じた透はあろうことかJK姿の湊“みな”に一目惚れし……。 【公開日】 2021年2月19日 【上映時間】 117分 【配給】 アスミック・エース 【監督】 耶雲哉治 【出演】 松村北斗(SixTONES)/森七菜/小関裕太/堀田真由/七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)/ 板橋駿谷/竹井亮介/相田翔子 2021年3月1日 イオンシネマ岡山 ★★ 「あのこは貴族」 門脇麦(華子)はちゃんと貴族していた。と言っても、医者家系であり、彼女の前にやがて良家の生まれ政治家も出すホントの貴族(青木幸一郎)が現れる。 一方、富山の市民出、猛勉強して慶応に入ったが、実家の都合で中退、苦労人の水原希子(美紀)は、東京と自分たちは違う、と見える。「東京の街は棲み分けができている」 華子の家族も幸一郎の家系を「あそこが日本を動かしているのだ」という認識である。 2016年元旦から2019年にかけての物語。平成にかけて、そういう「階級差」が当然と受け入れられるような日本にいつの間にかなっているのかもしれない。 しかし、テーマは女性監督の脚本・演出によるジェンダー映画である。日本版、令和版「人形の家」だ。 【ストーリー】 山内マリコ原作の「あのこは貴族」を映画化。都会に生まれ、箱入り娘として何不自由なく育てられ、「結婚=幸せ」と信じて疑わない華子(門脇麦)。結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。気が付けば20代後半、名門女子校の同級生たちの結婚、出産の話を聞くたびに焦りが増すばかり。あらゆる手立てを使い、お相手探しに奔走した結果、ハンサムで良家の生まれである弁護士・青木幸一郎と出会う。幸一郎との結婚が決まり、幸せが叶えられたかに思えたのだが……。一方、東京で働く美紀は富山生まれ。猛勉強の末に慶應大学に入学し上京したが、学費のために夜の世界も経験したが、中退。恋人はなく、仕事にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。同じ都会で暮らしながらも、出会うはずもなかった2人の人生が静かに交錯した時、それぞれに思いもよらない世界が拓けていく……。 【公開日】 2021年2月26日 【上映時間】 124分 【配給】 東京テアトル/バンダイナムコアーツ 【監督】 岨手由貴子 【出演】 門脇麦/水原希子/高良健吾/石橋静河/山下リオ/佐戸井けん太/篠原ゆき子/石橋けい/山中崇/高橋ひとみ/津嘉山正種/銀粉蝶 ほか 2021年3月1日 イオンシネマ岡山 ★★★★ 「藁にもすがる獣たち」 物語の1/2を過ぎてチョン・ドヨン様が出てくるのに、もう作品の印象をひとりで掻っ攫ってゆく。サイコパスな女性を存在感持ってやり切る。 貧困問題と介護、DV等々の背景を元に、それでもやったらダメでしょの境界を越える悪い奴らを嬉々として演じてみんな楽しそうだ。 ひとつのカバンにざっと一億円ぐらい入っている。向こうの札束は五万ウオンがおそらく100枚だろうから、約50万円。あのあと、またあのカバンがどういう運命を持つのか?願わくば遺失物届けをして欲しい。 見どころ 曽根圭介の小説を基に、舞台を韓国に移して描くクライムサスペンス。ある男性が偶然大金の入ったバッグを発見したことから、ワケありの人物たちが自分のものにしようと奔走する。監督と脚本をキム・ヨンフンが担当し、『シークレット・サンシャイン』などのチョン・ドヨン、『私の頭の中の消しゴム』などのチョン・ウソン、『スウィンダラーズ』などのペ・ソンウのほか、チョン・マンシク、チン・ギョンらが共演する。 あらすじ 恋人が多額の借金を残して姿を消したため、金融業者からの取り立てに追われていたテヨン(チョン・ウソン)。暗い過去を帳消しにして新たな人生を歩もうとするヨンヒ(チョン・ドヨン)。借金で家庭が崩壊したミラン。ある日、事業に失敗してアルバイトで食いつないでいたジュンマン(ペ・ソンウ)がアルバイト先のロッカーで10億ウォンの入ったバッグを見つけたことから、それぞれの欲望が交錯する。 キャスト チョン・ドヨン(ヨンヒ) チョン・ウソン(テヨン) ペ・ソンウ(ジュンマン) チョン・マンシク(ドゥマン) チン・ギョン シン・ヒョンビン チョン・ガラム ユン・ヨジョン(スンジャ) スタッフ 原作 曽根圭介 監督・脚本 キム・ヨンフン 製作 チャン・ウォンソク 撮影 キム・テソン 編集 ハン・ミヨン 音楽 カン・ネネ 2021年3月2日 岡山メルパ ★★★★
2021年04月08日
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3月に観た映画は、最近にない多さの14作品。5日間に分けて紹介します。 「カポネ」 アメリカ人には、カポネは荒ぶる神、或いは悪鬼の象徴なのかもしれない。だから、このようなあらゆるエピソードが再産されるのだろう。 結局、正気なのか否か、幻想か陰謀かを見紛うようなモノは最後に明らかになるが、金のありかは、果たして池のそばか、女神像の中か、或いは池のホバのコテージかは明らかにせず、そのまま終わった。こういう終わり方も、このアイコンには相応しいのかもしれない。 【ストーリー】 絶大な権力を誇り、恐れられた暗黒街の伝説のギャング、アル・カポネの知られざる最晩年を、トム・ハーディが全身全霊で演じた野心作。1940年代半ば、長い服役生活を終えたアル・カポネは、フロリダ州の大邸宅で家族や友人たちに囲まれ、静かな隠居生活を送っていた。かつて“暗黒街の顔役”と恐れられたカリスマ性はすでに失われ、梅毒の影響による認知症を患っている。一方、そんなカポネを今も危険視するFBIのクロフォード捜査課は、彼が仮病を使っていると疑い、隠し財産1000万ドルのありかを探るために執拗な監視活動を行っていた。やがて病状が悪化したカポネは現実と悪夢のはざまで奇行を繰り返し、FBIや担当医を困惑させ、愛妻のメエも彼の真意がつかめない。果たしてカポネは、本当に身も心も壊れてしまっていたのか……。 【公開日】 2021年2月26日 【英題】 Capone 【上映時間】 104分 【配給】 アルバトロス・フィルム 【監督】 ジョシュ・トランク 【出演】 トム・ハーディ/マット・ディロン/カイル・マクラクラン 2021年3月1日 イオンシネマ ★★★★ 「名もなき世界のエンドロール」 サプライズをすれば、相手は一生忘れない エンドロールが終われば、忘れられてしまう。だから、私は観るほうじゃなく演じるほうをしたい。 この二つの台詞を元に、最後から作った作品。そのためには人を殺しても、ツッコミどころ満載でも構わない。伏線回収にだけは熱心になる。これが今のゲーム世代、私は君たちを承認しない! 【ストーリー】 行成薫による「名も無き世界のエンドロール」(集英社文庫)を「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」『累-かさね-』などで知られる佐藤祐市監督が映画化。10年にもおよぶプロポーズ作戦。それは日本中を巻き込んだ、ある壮大な計画。複雑な家庭環境で育ち、淋しさを抱えて生きてきたキダとマコトは幼なじみ。そこに同じ境遇の転校生・ヨッチも加わり、3人は支え合いながら家族よりも大切な仲間となった。しかし20歳の時に、ヨッチが2人の前からいなくなってしまう。そんな2人の元に、政治家令嬢で、芸能界で活躍するトップモデルのリサが現れる。住む世界の違うリサに異常な興味を持ったマコトは、食事に誘うが、全く相手にされない。キダは「住む世界が違うから諦めろ」と忠告するが、マコトは仕事を辞めて忽然と姿を消してしまう。2年後。マコトを捜すために裏社会にまで潜り込んだキダは、ようやく再会を果たす。マコトは、リサにふさわしい男になるために、死に物狂いで金を稼いでいた。マコトの執念とその“理由”を知ったキダは、親友のため命をかけて協力することを誓う。以来、キダは<交渉屋>として、マコトは<会社経営者>として、裏と表の社会でのし上がっていく。そして、迎えたクリスマス・イブの夜。マコトはキダの力を借りてプロポーズを決行しようとする。しかし実はそれは、10年もの歳月を費やして2人が企てた、日本中を巻き込む“ある壮大な計画”だった──。ラスト20分、衝撃のエンドロールが幕を開ける……。 【公開日】 2021年1月29日 【上映時間】 101分 【配給】 エイベックス・ピクチャーズ 【監督】 佐藤祐市 【出演】 岩田剛典/新田真剣佑/山田杏奈/中村アン/石丸謙二郎/大友康平/柄本明 2021年3月1日 イオンシネマ岡山 ★★★ 「ファーストラヴ」 芳根京子は熱演だった。木村佳乃も相変わらず上手い。窪塚洋介がずっと不穏な表情をしていて、いつ豹変するのか怖かった。北川景子はあまりにも演技が大袈裟で、これは無いんじゃないか?残念ながら、これでこの作品はかなり損をしている。中村倫也は受ける演技なので、どう評価しようもない。相変わらず声が良いよね、ホント得をしている。 戦場写真がたくさん出てきて、良い写真だと思っていたら安田菜津紀さんだった、流石! 脚本は知らない女性だった。あれで、女性がこんなに追い詰められるのか?ということを男が考えると、それだけでこの作品は理解できなくなる。いくつかツッコミどころはあったが、極めて現代的な課題を含んだ努力作。役者さえ良ければ‥‥。 【ストーリー】 島本理生原作の同名小説を『イニシエーション・ラブ』、『十二人の死にたい子どもたち』などの堤幸彦監督がメガホンをとり、完全映画化。テレビドラマ「家売るオンナ」シリーズや、映画『スマホを落としただけなのに』の北川景子が主演を努め、女子大生による動機なき殺人事件の真相に迫る、主人公の公認心理師・真壁由紀を演じる。アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が面接試験を途中で放棄し、その足で向かった父親の勤務先で父親を刺殺した。「動機はそちらで見つけてください」 という彼女の挑発的な言葉は、マスコミを大いに賑わせた。彼女のドキュメンタリー本の執筆を依頼された公認心理師の真壁由紀(北川景子)は、二転三転する環菜の供述に翻弄されながらも、面会や手紙のやりとりを重ねていく。さらに彼女に関係する人々について調査していく中で、やがて由紀は環菜にどこか過去の自分と似たものを感じ始める。そして自身もまた、心の奥底にしまった<ある記憶>と向き合うことになるのだった…。 【公開日】 2021年2月11日 【上映時間】 119分 【配給】 KADOKAWA 【監督】 堤幸彦 【出演】 北川景子/中村倫也/芳根京子/板尾創路/石田法嗣/清原翔/高岡早紀/木村佳乃/窪塚洋介 2021年3月1日 イオンシネマ岡山 ★★★★
2021年04月06日
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今月の映画評「パラサイト 半地下の家族」 「こんにちは。いつもこの時期はアカデミー賞の話題を振っているようだけど、今年は2ヶ月も発表がズレていますね」 「コロナ禍だからね。でも去年は感染爆発直前の授賞式だった。そして歴史的な賞になったんだ」 「この作品がカンヌ最高賞をとってアカデミー作品賞もとったのは65年ぶりだそうだね」 「それどころか、非英語作品で作品賞をとったのは初めてだった。韓国では勿論初めての快挙だ。しかも、監督賞、脚本賞、外国語映画賞の主要部門もとってしまったんだ」 「韓国の格差社会を、半地下の家族と高台の豪邸という見た目で対比させて描いたという批評を見かけたよ」 「全員失業中のキム一家はその日暮らしの厳しい生活を送っていたんだ。長男のギヴ(チェ・ウシク)が、たまたまIT企業のCEOであるパク氏(イ・ソンギュン)の子供の家庭教師のありつく。味をしめて妹のギジョン(パク・ソダム)も身分を隠して家庭教師に。父親のギテク(ソン・ガンホ)も運転手、母親のチュンスク(チャン・ヘジン)も家政婦として潜り込む‥‥。彼らは寄生虫(パラサイト)の様に、金持ちのお裾分けを貰えれば良いと思っていたんだが‥‥」 「社会派の映画なの」 「韓国を旅すれば直ぐ思うけど、坂の斜面にへばりつくように家が建っているんだ。決して計画的に建てられたわけではない。よって道も迷路のようになっているし、階段も多い。おそらく最初の頃は上に行くほど不便になるので、下層民は下へ下へと家を密集させたと思う。ある時、坂の上に大きな道が通る。そうして、上層民は坂の上に家が建てられるようになる。だから、これは韓国の普遍的な景色を描いた作品なんだ。最初コメディで描いた後に、ホラーやサスペンス、そして結局人生の不条理へ我々の感情を持ってゆく」 「なんか、よくわからない説明ですね」 「金持ちだから悪いヤツとは限らない。奥さん(チョ・ヨジョン)はお嬢様育ちの世間知らずなだけ。頭は良いのに貧乏なギヴやギジョンたちは、そこにつけ込んだわけだね。どっちが悪いかわからない。途中から建物にまつわる秘密が現れて、どんどん驚愕のラストに持ってゆく。ジェットコースターに乗ったときの感じはあるかもしれない」 「好きな人にはエンタメだけど、苦手の人には後味悪いみたいな?」 「血もドバドバ出るしね」 「おい、脅かさないでくれよ」 「まぁ、ラストに救いがあると見るか、無いと見るかは人によるだろうね」 (2020年韓国ポン・ジュノ監督作品レンタル可能)
2021年03月15日
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2月の最後の4作品。 「さんかく窓の外側は夜」 正当BL作品でした。ラブシーンがあるわけではありません。念のため。 BLの定義を、人と人との愛の姿を、強くて美しい男性通しに託して、その理想を描くこと。決して家族を築くことにならずに、その愛を理想化する。とするならば、これこそがそうです。 除霊作品と言いながら、後半はそこから離れてトラウマ解消に走ったりよくわからない作品。特に悪の根源になんのメスもいれずに終わったのは、あまりにも酷い。 1番知りたかったのは、平手友梨奈は欅坂を脱退してまで始めた女優業をこのままやっていけるのかどうか、ということ。答えはかなり微妙。 存在感はあるが、このままではヤバい。 「小説家になる方法」の時には、あまりにもハマり役であり、そのままやればよかったが、今回はなんと感情の振り幅もあり、弱さも強さも見せる難しい役所で、前回と全く違うのに、ほぼ同じテイストで演じてしまった。可哀想だけど、このままではやっていけない。前田敦子にはなれない。前田敦子には女優でやってゆく覚悟があった。平手友梨奈にはないように感じる。 (STORY) 幼いころから霊が見える特異体質に悩む書店員の三角康介(志尊淳)は、除霊師の冷川理人(岡田将生)に能力を見い出され彼の助手になる。コンビを組んだ二人はさまざまな依頼を受けて除霊作業に関わる中、刑事の半澤(滝藤賢一)から1年前に起きた連続殺人事件について相談される。調査に乗り出して間もなく遺体を発見するが、その遺体には呪いがかけられていた。真相を追ううちに、二人は死んだ殺人犯の声を耳にする。 (キャスト) 岡田将生、志尊淳、平手友梨奈、滝藤賢一、マキタスポーツ、新納慎也、桜井ユキ、和久井映見、筒井道隆 (スタッフ) 原作:ヤマシタトモコ 監督:森ガキ侑大 脚本:相沢友子 主題歌:ずっと真夜中でいいのに。 2021年2月14日 MOVIX倉敷 ★★★ 「すばらしき世界」 「映画にまつわるXについて」で10年ほど前に西川美和は書いた。 「凡そ人の風上にも置けない主人公にばかり惹きつけられてきたような気がする。みんな人格も行動も間違いだらけで、賢人の忠告をはねのけ、自分の失態で人生が台無しになっている。けれど、まだ諦めきれない、もう一度闘うんだ、やりなおすんだ、と歯を食いしばっているような人物たち。そういう悔恨だらけの、黄昏の中に佇むヒーローを、心の糧にしてきた」(16p) 正に、今回もそうだった。 CM予告はフェイクだったのか?テレビの食いものにされるとか、直ぐ善良な市民に混じってやがて前科がばれていってにっちもさっちも無くなってゆくとか、そういう予想を、あっさりと裏切り(よって長澤まさみの出番は少ない)、三上の裏鏡として津乃田(中野太賀)を置き、じっくりと、出所からその2年後ぐらいまでを撮っている。 そうだね、お母さんに生まれた時のことをじっくり聞いていなかった。茫然とした津乃田の表情が、すなわち観客の我々である。 いくつかの破綻する展開をギリギリ回避して、それでも悪い人ばかりではない、ことを見せて、三上の見た最後は「すばらしき世界」だったのか。そうだったのかもしれない。でも、それは悲しい。三上の周りには、想定通りの酷い人ばかりが現れることはない。それでも、彼は幸せだったのか?それを我々に問いかける。 (ストーリー) 下町で暮らす短気な性格の三上(役所広司)は、強面の外見とは裏腹に、困っている人を放っておけない優しい一面も持っていた。過去に殺人を犯し、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしてきた彼は、何とかまっとうに生きようともがき苦しむ。そんな三上に目をつけた、テレビマンの津乃田(仲野太賀)とプロデューサーの吉澤(長澤まさみ)は、彼に取り入って彼をネタにしようと考えていた。 キャスト 役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、梶芽衣子、橋爪功 スタッフ 原案:佐木隆三 脚本・監督:西川美和 プロデューサー:西川朝子、伊藤太一、北原栄治 撮影:笠松則通 照明:宗賢次郎 録音:白取貢 美術:三ツ松けいこ 音楽:林正樹 編集:宮島竜治 衣装デザイン:小川久美子 ヘアメイク:酒井夢月 サウンドエフェクト:北田雅也 2021年2月13日 MOVIX倉敷 ★★★★ 「聖なる犯罪者」 聖と俗。 日本ならば、口笛を吹く寅さんのように、みんなの暗黙の了解の元、法事は取り仕切ることはできる。 ポーランドでは、現代でも、それはタブーなのだろう。明確な聖と俗。でも明確に仕切ることができるのか?という問いかけなのだろう。 ダニエルだけではなく、登場人物全員に「聖と俗(罪人)」がある。神父、その妻、娘、仲間、刑務所仲間、等々。 ポーランドの田舎の素朴なお地蔵さんみたいな、マリアのアイコン。あれこそが、キリスト教の素朴な信仰なのかもしれない。 びっくりしたのは、ダニエルは最初からクスリはやるし、酒は飲む、淫乱である。嘘もつく。7つの大罪のうちいくつかを犯す。そんな男が、神父として尊敬され、なおかつ、やつまでいけるという矛盾。 ちょっとよくわからなかったところ。 (1)ダニエルは何故葬式を強行したのか (2)刑事はどうして直ぐに捕まえなかったのか (3)何故2人の夫人は仲直りができたのか (4)刑務所仲間までもとに戻ったのは何故か (5)最後は何が起きたのか (解説) 2019年ヴェネチア国際映画祭内のヴェニス・デイズ部門でプレミア上映された本作は、その後トロント国際映画祭ほか世界中の映画祭で上映され数多くの賞を獲得した。またポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』やペドロ・アルモドバル監督『ペイン・アンド・グローリー』と肩を並べて第92回アカデミー賞国際長編映画賞に見事ノミネートされた。ポーランド代表作品がノミネートされたのは前年の『COLD WAR あの歌、2つの心』(18)に続き2年連続の快挙である。2020年3月2日ワルシャワで行われたポーランドのアカデミー賞とされる2020 ORL Eagle Awardsでは監督賞、作品賞、脚本賞、編集賞、撮影賞ほか11部門を受賞した。 監督は本作が3作目となるポーランド出身のヤン・コマサ。長編デビュー作「Suicide Room」(11)は第61回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品され、長編2作目となる『リベリオン ワルシャワ大攻防戦』(14)は本国ポーランドで180万人を動員する大ヒットとなった。最新作『ヘイター』(20/Netflixで配信中)ではトライベッカ映画祭のインターナショナル・ナラティブ部門で最優秀作品賞を受賞し、米HBOがTVシリーズ化することも決定した。主演は、弱冠28歳のバルトシュ・ビィエレニア。一度見ると忘れることのできない強い眼差しから放たれる、天使と悪魔の両面性をもった人物の危うさ、畏れ、悲しみ、怒り、諦めなど観る者を不安にさせるほど予測不可能なリアクションで見事に演じた。今ポーランド映画界を牽引する気鋭監督と若手俳優による渾身の衝撃作がいよいよ日本上陸となる。 (ストーリー) 少年院で出会った神父の影響で熱心なキリスト教徒となった20歳の青年ダニエルは、前科者は聖職者になれないと知りながらも、神父になることを夢見ている。仮釈放が決まり、ダニエルは少年院から遠く離れた田舎の製材所に就職することになった。製材所への道中、偶然立ち寄った教会で出会った少女マルタに「司祭だ」と冗談を言うが、新任の司祭と勘違いされそのまま司祭の代わりを任された。司祭らしからぬ言動や行動をするダニエルに村人たちは戸惑うが、若者たちとも交流し親しみやすい司祭として人々の信頼を得ていく。一年前、この村で7人もの命を奪った凄惨な事故があったことを知ったダニエルは、この事故が村人たちに与えた深い傷を知る。残された家族を癒してあげたいと模索するダニエルの元に、同じ少年院にいた男が現れ事態は思わぬ方向へと転がりだす…。 2021年2月21日 シネマ・クレール ★★★★ 「AWAKE」 脚本はヘボ将棋だった。 師匠が2人の対戦を総括した言葉が全てだった。 「2人とも立派だった。浅川くんは勝負に徹し、清田くんも棋士として戦った」 棋士として成長していく様は描けた。 しかし、もう一つのテーマである、コンピュータは棋士を超えることができるのか?ということは曖昧なまま終わった。 対戦の前に、こうなるとコンピュータは負けることが分かっていて、対戦はその方向でいくかどうかを、あまりにもゆっくり描いていて、観客をバカにしている。あたかも清田がそれを逆転するようなマウスの動きをしているのだけど、全く意味がない。あれは何だったのか?間が悪い。それから、清田がコンピュータの可能性について熱く語っているのに、磯田の妹は、それを受け止めきれない。あの場面は要らなかった。どうせ出すならば、あの語りから意外な「人間としての一言」が欲しかった。 吉沢亮は、発達障害的な主人公の役作りをよくやっていた。落合モトカも、癖のある先輩を存在感持ってやっており、ジャニーズと勘違いしていた浅川役は、存在感だけは出していた。 工夫すればもっと面白くなっていたのに! ところで、どうして電脳対戦はやめたのか? いくらやっても勝てるからなのか? そうではないという説もあるのだけど。 藤井聡太とやらせてみたい! (解説) 2015年4月11日の将棋電王戦FINAL第5局で繰り広げられた棋士とコンピュータの対局にインスパイアされたドラマ。プロ棋士の夢に破れた青年が、AI将棋の世界に飛び込んでいく。監督は『ハッピーエンド』などの山田篤宏。『青くて痛くて脆い』などの吉沢亮、『街の上で』などの若葉竜也のほか、落合モトキ、寛 一 郎、馬場ふみか、川島潤哉、永岡佑、森矢カンナ、中村まことたちが出演する。 あらすじ 棋士養成機関である奨励会で棋士を目指していたものの、人並み外れた強さを誇る陸(若葉竜也)に敗れて奨励会から去った英一(吉沢亮)。大学に入学し、コンピュータ将棋と出合い、そのプログラミングに興味を抱く。AI研究会に入った彼は、幼いころから将棋一筋だったために周囲との接し方が分からず戸惑いつつも、先輩・磯野(落合モトキ)の指導を受けながらプログラム開発にのめり込んでいく。数年後、棋士とコンピュータが対局する電王戦への出場を依頼された英一は、相手が陸であることを知る。 キャスト 吉沢亮(清田英一) 若葉竜也(浅川陸) 落合モトキ(磯野達也) 寛 一 郎(中島透) 馬場ふみか(磯野栞) 川島潤哉(山崎新一) 永岡佑(堀亮太) 森矢カンナ(山内ひろみ) 中村まこと(清田英作) スタッフ 監督・脚本 山田篤宏 製作総指揮 木下直哉 エグゼクティブプロデューサー 武部由実子 プロデューサー 菅野和佳奈 アソシエイトプロデューサー 新野安行 音楽 佐藤望 撮影 今井哲郎 照明 酒井隆英 録音 渡辺丈彦 美術 小坂健太郎 装飾 櫻井啓介 衣裳 松下麗子 ヘアメイク 小坂美由紀 音響効果 渋谷圭介 視覚効果 豊直康 PC画面制作 北郷弘行 演技事務 平藪明香 制作担当 米田伸夫 音楽プロデューサー 杉田寿宏 ラインプロデューサー 氏家英樹 映画詳細データ 製作国日本将棋協力 日本将棋連盟 将棋電王戦協力 dwango DENSO DENSO WAVE プログラミング協力 コンピューター将棋協会 製作 木下グループ 制作・配給 キノフィルムズ 2021年2月25日 シネマ・クレール ★★★
2021年03月09日
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2月に観た映画第二弾。 「KCIA 南山の部長たち」 韓国の現代史に詳しくないとわからない部分があり、それを無視すると、革命家気取り同士の部下が上司の思い上がりに幻滅したところから来る「単なるテロリズム」だった。イ・ビョンホンは、真面目な能吏を丁寧に演じ、静かに耐えて怒る演技を上手く演ったと思う。 最後まで、影のKCIAの正体は分からなかった。映像的には、隠し金庫を盗んだ奴なのだろうが、彼が表舞台に出たのかどうかはちょっとわからない。 1961年の革命は、基本的には軍部の反クーデター的な性格であり、その歴史が1979年の後、最悪な形で繰り返す。2年後、全斗煥は光州に迷いもなく、空挺部隊を送った。暴力による政権転覆では、決して政権は続かない。という見事な手本が韓国にあったということだ。市民の支持と市民の思いが叶って、政権を作らない限り、その国は続かない。1987年は、韓国の勝利だった。 見どころ 1979年10月26日に韓国で起きた朴正煕大統領暗殺を基にした金忠植の「実録KCIA-「南山と呼ばれた男たち」」を原作にしたサスペンス。韓国中央情報部の部長が、崇拝していたはずの大統領を暗殺する過程を描く。監督は『麻薬王』などのウ・ミンホ。『それだけが、僕の世界』などのイ・ビョンホン、『目撃者』などのイ・ソンミンのほか、クァク・ドウォン、イ・ヒジュンらが出演する。 あらすじ 1979年10月26日、韓国。大統領直属の諜報(ちょうほう)機関である中央情報部(KCIA)の部長を務めるキム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が、敬服していたはずの大統領(イ・ソンミン)を射殺する。事件の40日前、アメリカに亡命したKCIAの元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が下院議会聴聞会で韓国大統領の横暴を告発していた。キムは、かつての友人でもあるヨンガクに大統領の命で接触し、事態収拾を図るが、その再会が彼の人生を大きく狂わせていく 2021年1月28日 岡山メルパ ★★★★ 「100日間のシンプルライフ」 「シンプルライフ」と言いながら、お話はかなり「コンプリケイト」である。まるで消費生活批判がメインのお話のように見せて、途中かなり脱線するし、2人の掛け合いは気持ちが「友情」の「嫉妬」の間で行ったり来たりする。 ドイツ作品として、アメリカの大富豪に対する隠しきれない嫉妬と批判が見え隠れする。 ツッコミどころ満載だが、ゆるそう、けれども傑作ではない。元になったフィンランドのドキュメンタリーを観たい。 見どころ 全ての所持品を倉庫に預け、一日一つだけ必要なものを取り戻していく二人の男の勝負を描いたドラマ。持ち物全てを一度手放した若者の実験生活を追ったドキュメンタリー『365日のシンプルライフ』を翻案し、物や情報にあふれた現代における幸せの本質を問いかける。『お名前はアドルフ?』などの俳優フロリアン・ダーヴィト・フィッツが監督・脚本を務め、主人公も兼任。彼の対戦相手である幼なじみを『レッド・バロン』などのマティアス・シュヴァイクホファーが演じる。 あらすじ ビジネスパートナーでもある幼なじみのパウル(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)とトニー(マティアス・シュヴァイクホファー)は事業も順調で、多くの物に囲まれ充実した生活を送っていた。ある日大げんかした二人は大金を賭け、ある勝負をすることになる。それは衣服も含めた身の回りの所有物全てを倉庫に預け、裸一貫の状態から一日一つずつ必要な物を取り戻す生活を、100日間続けるというものだった。 キャスト フロリアン・ダーヴィト・フィッツ(パウル・コナスキー) マティアス・シュヴァイクホファー(トニー・カッツ) ミリアム・シュタイン(ルーシー) ハンネローレ・エルスナー(レナーテ・コナスキー) ヴォルフガング・シュトゥンフ(ヴォルフガング・コナスキー) カタリナ・タルバッハ(オマ・コナスキー) スタッフ 監督・脚本 フロリアン・ダーヴィト・フィッツ 2021年2月8日 シネマ・クレール ★★★ 「花束みたいな恋をした」 あんなに趣味が合う男女なんていない! そこで先ず映画的な仕掛けがある。 幾つかの、偶然というドラマチックな場面を作る。 でも、と恋人たちは思うのだろう。 多かれ少なかれ、これは私たちの物語だ。 21歳から26歳にかけての、 男女の学生生活から社会人になるまでの まるで、通過儀礼のような民俗学的実験のような作品。 私は今村夏子は嫌いだし、 その他の作家は大抵知らなかったが、 フィンランド映画「希望のかなた」は出た途端に分かったし、 「ゴールデンカムイ」が12巻ぐらいから面白くなる、って言う彼女の意見には賛成だ。ていうか、これってメジャーだろ? 濡れ場があると言う噂だったけど無かった。 別に無くても作品は成立していたけど、 変な前情報出すよなよ、と思う。 有村架純はこれで主演女優賞にノミネートされると思うし、して欲しい。そして最優秀は逃す。そうやって成長していってほしい。 菅田将暉はこのまますくすく育ってほしい。よくやっていると思う。 (STORY) ある晩、終電に乗り遅れた大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で偶然出会う。お互いに映画や音楽の趣味がよく似ていたこともあり、瞬く間に恋に落ちた二人は大学卒業後、フリーターとして働きながら同居を始める。ずっと一緒にいたいと願う麦と絹は、今の生活を維持することを目標に、就職活動を続ける。 (キャスト) 菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人、瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ、押井守、佐藤寛太、岡部たかし、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫 (スタッフ) 脚本:坂元裕二 監督:土井裕泰 編集:穗垣順之助 音楽:大友良英 衣裳:立花文乃 ヘアメイク:豊川京子 スクリプター:加山くみ子 イラストレーション:朝野ペコ VFXプロデューサー:赤羽智史 助監督:石井純 製作担当:宮下直也 企画:孫家邦、菊地美世志、那須田淳 プロデューサー:有賀高俊、土井智生 2021年2月9日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年03月08日
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2月に観た映画は10作品でした。毎年そうですが、2月は比較的力作が多い。3回に分けて紹介します。 「また、あなたとブッククラブで」 まさかキッカケが「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」だったとは!三部作なので、3ヶ月は熟女たちのお楽しみが続くというわけだ。アメリカでも、半分エロ本という位置付けだということを改めて知ったし、文庫本は無いのね、とかブックカバーはしないのね、とか習慣が面白い。 日本では映画の続編は来なかったとおもうので、結末がどうなったのか知らない。50通りの愛の方法を試した後に、どうやらホントの愛を知ったような雰囲気。 読書会が羨ましい。料理は最後はなかったけど、必ずワインは出てくる。知的女性の励ましだったんだろうな、と思う。シャロン判事の飼い猫の名前がギングス・バーグだというのは、当然BGへのリスペクトだろう。 ダイアン・キートンお相手のアンディ・ガルシアやキャンデス・バーゲンお相手のリチャード・ドレイファスが久しぶりで嬉しかった。Cバーゲンの太ったこと!でも変わらず綺麗だ。ジェーン・フォンダはちょっと衰えが目立つ容姿にはなったけど、未だラブコメできるのだから凄い!メアリー・スティーンバージェン(バックトゥーザフィーチャー3)が1番格が落ちるのかな? 終始笑いが絶えない、とっても楽しい作品であり、熟女・熟男応援作品としても佳作。あゝ、あんな風に誘って、初めてのデートではこんな粋な台詞が言えたらいいなと思わせるに十分な学習作品の役目ももつ。 INTRODUCTION 北米でマーベルの大作映画に次いで初登場3位の大ヒットを記録した話題作がいよいよ日本公開! D・キートン、J・フォンダ、C・バーゲン、M・スティーンバージェン全員がアカデミー賞、 ゴールデングローブ賞受賞の豪華女優たちによる夢の初共演! 70~80年代にかけてアメリカ映画の礎を築き、今もなお、衰えを知らない輝きでトップを走り続ける名女優たち4人の初共演で話題を呼んでいる本作。 『アニー・ホール』(77)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したダイアン・キートン、『コールガール』(71)、『帰郷』(78)の2作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジェーン・フォンダ、TVドラマ「TVキャスター マーフィー・ブラウン」(88-98)でエミー賞とゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞したキャンディス・バーゲン、『メルビンとハワード』(80)でアカデミー賞助演女優賞およびゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞したメアリー・スティーンバージェン。4人全員がアカデミー賞またはゴールデングローブ賞を獲得しており、その女優としての輝かしいキャリアと功績は言うまでもない。 本作の撮影当時、彼女たちの実年齢平均は72歳。確かな演技力とカリスマ性はもとより、そのあふれんばかりのバイタリティ、そして年齢と共に積み重ねてきたナチュラルな美しさがこの作品にとびきりの華やかさをもたらしている。 夫に先立たれ未亡人となり子供たちには年寄り扱いされるダイアン、会社社長であり独身貴族を貫く性に奔放なビビアン、裁判官として活躍しながら過去の離婚の痛手から立ち直れないシャロン、仕事を引退し活力を失った夫との結婚生活の危機に直面しているキャロル。それぞれに都会的で自立した人生を謳歌してきたものの、あれこれと悩みは尽きることがない。そんな旧知の4人の友情関係は、定期的に開催される「ブッククラブ」で培われている。いわゆる読書会ではあるものの、実際はワインや食事を楽しみながら互いの近況をおしゃべりする、いまどきの「女子会」のような場だ。そんなある日、ビビアンがお題本に提案したのは世界的大ヒットの官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」。はじめは難色を示したメンバーも、読み進めるうちにその刺激的な内容に徐々に感化されていく・・・。 監督は、これまで数々の作品で製作・脚本として携わり、本作で長編映画監督デビューとなるビル・ホルダーマン。43歳という若さで、ベテラン女優陣の見事なアンサンブルを撮り上げた。また、ダイアンの新しい恋人でイケメンパイロットのミッチェルには『ゴッドファーザーPART3』(90)のアンディ・ガルシア。ビビアンが40年ぶりに再会を果たす元彼アーサーにはTVドラマ「特捜刑事マイアミ・バイス」のドン・ジョンソン、シャロンがマッチングアプリで出会う紳士ジョージには『陽のあたる教室』(95)のリチャード・ドレイファス。メアリーの夫ですっかり生きる活力を失ってしまったブルースには『ポルターガイスト』(82)のクレイグ・T・ネルソン。豪華女優陣を盛り立てながら、しっかりと存在感を見せつけるベテラン俳優陣が脇を固めた。 人生の後半を迎えた女性たちの「恋と悩みと友情」を痛快なテンポで描いた本作は、ただ一度観るだけで生きるエネルギーがフルチャージされる可笑しみと歓びに満ちている。そして、「わかる!わかる!」「ある!ある!」な共感性の高いエピソードがデトックス作用となり、鑑賞後は年を重ねていくことに前向きになっている自分に出会えるはず。自分を変えるきっかけはどこにでもある、人生の新章はいつだって始められる。私たちの毎日にワクワクとトキメキを添える秘訣を教えてくれる1作。北米で興収70億円の大ヒットを記録した話題作が遂に日本に上陸する! STORY 旧知の女ともだち4人の恒例行事「ブッククラブ」。 そこで出会った1冊の本が、彼女たちの人生の第二章に輝きをもたらす――。 40年連れ添った夫を亡くしたダイアン(ダイアン・キートン)。恋愛感情無しでの複数の男性たちとの関係を楽しんでいるビビアン(ジェーン・フォンダ)。未だに何十年も前の離婚に苦しんでいるシャロン(キャンディス・バーゲン)。35年を経た結婚生活の危機に直面しているキャロル(メアリー・スティーンバージェン)。長年の友人である4人は、それぞれのライフキャリアを築き、各々の悩みを抱えながらも、読書にいそしむブッククラブを定期的に開催して交流を続けていた。ある時、お題本に選ばれたのは官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」。彼女たちはそのスキャンダラスかつ刺激的な1冊にたちまち感化され、悩ましい日常を忘れて、恋にロマンスに気持ちも行動も大胆になっていく。そして、代わり映えしなかった日常に大きな変化が生まれる。 2021年2月1日 シネマ・クレール ★★★★ 「ストレイ・ドッグ」 復讐か、贖罪かー。 激情と哀切が女刑事の身も心も焼き尽くす、 衝撃のネオ・ノワール。 復讐も贖罪も、なんだろうな。 女優というのは、ここまで顔を変えて貶すことができるのか。ストーリーもそうだったが、表情もアカデミー級の演技だったが、この顔が、終始17年間の復讐と贖罪を表していた。 ニコール・キッドマンの女優魂を脳裏に刻むためにも見ておきたい一作。 脚本的にも、まさかの叙述トリックを仕掛けており、やられたと思った。 ストーリー的には、全く単純なお話ですが、過去と現代を繰り返すやり方で最後まで観させる。 監督は日系女性監督カリン・クサマ。最後は失われた家族を取り戻すために、罪を被った女刑事は橋を渡ったのである。どうやっても、アメリカ映画は、最後は家族なのである。 見どころ 『インビテーション』などのカリン・クサマがメガホンを取ったフィルムノワール。過去の潜入捜査の失敗に今もとらわれている刑事に迫る。『ラビット・ホール』などのニコール・キッドマンが主人公を演じ、『猿の惑星』シリーズなどのトビー・ケベルや、『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』などのタチアナ・マズラニーらが共演。ニコールは銃撃戦などのアクションにも体当たりで挑み、本作で第76回ゴールデン・グローブ賞女優賞(ドラマ)にノミネートされた。 あらすじ 17年前、ロサンゼルス市警の刑事エリン(ニコール・キッドマン)は、 FBI捜査官のクリス(セバスチャン・スタン)と共に犯罪組織に潜入するが失敗。彼女はそのトラウマから酒に溺れるようになり、今では同僚や元夫、16歳の娘も寄り付かなくなり、孤独な日々を送っていた。あるとき、エリンは紫色に染まった1枚のドル紙幣が入った差出人不明の封筒を受け取る。 キャスト ニコール・キッドマン(エリン・ベル) トビー・ケベル(サイラス) タチアナ・マズラニー(ペトラ) セバスチャン・スタン(クリス) スクート・マクネイリー(イーサン) ブラッドリー・ウィットフォード(弁護士ディフランコ) トビー・ハス(FBIローソン捜査官) ジェームズ・ジョーダン(トビー) ボー・ナップ(ジェイ) ジェイド・ペティジョン(シェルビー) 2021年2月1日 シネマ・クレール ★★★★ 「ヤクザと家族 The Family」 令和のヤクザ映画が完成した。暴対法のもとで、ヤクザ映画は、変わりゆく衰退産業として描くしかない。 舘ひろしの啖呵と14年後のか細い声のギャップに、流石だと思わせる。もはや綾野剛は「見得」を切らない。しかし、精神は未だ昔の義理と人情のヤクザ映画であり、組は家族という意識が僅かに残っている。 主役が退場した後に、この映画で最大の見せ場がやってくる。実は昔の邦画や日本の伝統的な物語は、このような仕組みが多かった。ラストからエンドロールの主題歌に至るまでの湿っぽい演出は、作品の欠点でもあり、最大の長所だろう。外国では通用しないけど、未だ日本では通用して欲しいと切に思う。何故なら、ここに「弱者に寄り添う」日本人の、最大の特徴が現れているからである。 磯村勇斗、小宮山莉渚は、このラストのためだけでも映画史の記憶に残りそうだ。藤井道人監督、一昨年から今年にかけての怒涛の作品ラッシュ。侮れない。 (STORY) 1999年、覚せい剤が原因で父親を亡くした山本賢治(綾野剛)は、柴咲組組長の柴咲博(舘ひろし)の危機を救ったことからヤクザの世界に足を踏み入れる。2005年、ヤクザとして名を挙げていく賢治は、自分と似た境遇で育った女性と出会い、家族を守るための決断をする。それから時は流れ、2019年、14年間の刑務所暮らしを終えた賢治だったが、柴咲組は暴力団対策法の影響で激変していた。 (キャスト) 綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ (スタッフ) 監督・脚本:藤井道人 音楽:岩代太郎 主題歌:millennium parade 2021年2月2日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年03月07日
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今月の映画評です。 「家族を想うとき」 前作「私はダニエル・ブレイク」(2017年カンヌ最優秀作品賞受賞)のときの引退宣言を撤回をしてまでも描いた一作です。ケン・ローチはこの映画評にとって特別な監督です。最多登場なんです(4回目)。そうなったのには、理由があります。彼は生涯一貫して、労働者に寄り添って作品を作ってきたからです。歴史モノを除くと、厳しい現実を描きながらも、監督はいつも最後は希望を描いてきました。ところが、今回はとても厳しいラストになっています。何故なんでしょうか? イギリスの地方都市。マイホームを持ちたいと考えているリッキーは、フランチャイズの宅配ドライバーとして働き始めます。そのために、妻のアビーの車を売って、自前の運送車を準備しました。アビーは、バスで移動しながらホームヘルパーの仕事を続けます。子どもといる時間は削られ、高校生のセブと小学生のライザはさみしさを募らせていくのです。 私も流通業で働いていたことがあるので、分刻みで正確さが求められる仕事のキツさはよく知っています。昼メシ抜きは当たり前。彼は緊急トイレ用のペットボトルを常備します。リッキーは個人委託業者ですが、実際には偽装請負のように仕事の裁量に自由はありません。一回事故を起こせば彼ら家族は破綻するので、ハラハラしながら観ていました。ただ、仕事はキツいだけではありません。顧客との間に交流はあり、やり甲斐もあります。ケン・ローチらしくマンチェスターサッカーチームの話も、炭鉱労働者の話も出てきます。役者は全員ほぼ無名ですが、労働者はみんな優しい。 体力も神経もすり減らす夫婦に、今度は高校生の息子の問題が被っていきます。前科がつけば、息子の将来に希望はありません。保護した警官は言います。「これから頑張れ。君には人生最高のものがある。君を想う家族だ。今日もお父さんは仕事を放って来てくれた。親として恥をしのんでだ。中にはそんな温かい家族のいない者も大勢いる。だが君にはいる」その言葉は息子にはなかなか伝わりません。最後はホントにこれで終わりなの?という異例の終わり方でした。監督のラスト作品のラストがこれなのか? でも、これこそがケン・ローチなのです。日本とまがうような新自由主義イギリス。全てが自己責任にされる。「これでいいのか(怒)」監督の最後の叫びのようでした。 (2019年英国ケン・ローチ監督作品 レンタル可能)
2021年02月20日
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1月に観た映画の後半3作品です。 「この世界に残されて」 「5歳の幼児にも、老練な70歳にもなれる」16歳の少女から、こんな風に頼られたら、おじさんとしてはどうしても守らなければならないと思うだろう。たとえ赤の他人であっても。 クララは一目で聡明な女の子だとわかる。けれども、想像を絶するくらいに傷ついている。42歳のアルドも傷ついていそうだ。少女の老獪さで推察したクララは、ストレートにアルドの懐に飛び込む。ハッキリ言って私は、こういう女の子に弱い。「レオン」の世界である。あの作品のようなノワールではなく、暴力は一切なく、しかし何かを失くし、何かを得て終わる。しばらくみなかったような老練な作品である。 (解説) ナチス・ドイツによって約56万人ものユダヤ人が殺害されたと言われるハンガリー。 終戦後の1948年、ホロコーストを生き延びたものの、家族を喪い孤独の身となった16歳の少女クララは、両親の代わりに保護者となった大叔母にも心を開かず、同級生にも馴染めずにいた。そんなある日、クララは寡黙な医師アルドに出会う。言葉をかわすうちに、彼の心に自分と同じ孤独を感じ取ったクララは父を慕うように懐き、アルドはクララを保護することで人生を再び取り戻そうとする。彼もまた、ホロコーストの犠牲者だったのだ。だが、スターリン率いるソ連がハンガリーで権力を掌握すると、再び世の中は不穏な空気に包まれ、二人の関係は、スキャンダラスな誤解を孕んでゆく 。 癒えることのない心の傷を抱えた者たちが年齢差を超え、痛みを分かち合いながら寄り添う。彼らが再び人生と向き合う姿を、節度をもって叙情的に描く名作が誕生した。 少女クララを演じたのは、これが映画初主演となるアビゲール・セーケ。16歳にして家族を喪ったクララの悲しみや怒り、諦念をリアルに表現し、「アルドの心の翳りに寄り添い続ける演技が感動的」(バラエティ誌)「心に傷を負った思春期の少女を演じるセーケが素晴らしい」(ハリウッド・レポーター誌)と評される名演を披露。見事、ハンガリー映画批評家賞最優秀女優賞を受賞した。ハンガリーを代表する名優カーロイ・ハイデュクが、クララを支え無償の愛を注ぐアルドに扮し、寡黙ながらふとした仕草やまなざしに深い思いやりを感じさせる繊細な演技で、ハンガリーアカデミー賞およびハンガリー映画批評家賞で最優秀男優賞を受賞。 これまで短編映画でその演出手腕が国内外で高い評価を受けてきたバルナバ―シュ・トートが監督を務め、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作『心と体と』のプロデューサー、モーニカ・メーチとエルヌー・メシュテルハーズィが製作を手がけ、孤独な男女の心の結びつきを丁寧に描く名作をふたたび世に送り出した。 2021年1月25日 シネマ・クレール ★★★★ https://synca.jp/konosekai/ 「KCIA 南山の部長たち」 韓国の現代史に詳しくないとわからない部分があり、それを無視すると、革命家気取り同士の部下が上司の思い上がりに幻滅したところから来る「単なるテロリズム」だった。イ・ビョンホンは、真面目な能吏を丁寧に演じ、静かに耐えて怒る演技を上手く演ったと思う。 最後まで、影のKCIAの正体は分からなかった。映像的には、隠し金庫を盗んだ奴なのだろうが、彼が表舞台に出たのかどうかはちょっとわからない。 1961年の革命は、基本的には軍部の反クーデター的な性格であり、その歴史が1979年の後、最悪な形で繰り返す。2年後、全斗煥は光州に迷いもなく、空挺部隊を送った。暴力による政権転覆では、決して政権は続かない。という見事な手本が韓国にあったということだ。市民の支持と市民の思いが叶って、政権を作らない限り、その国は続かない。1987年は、韓国の勝利だった。 見どころ 1979年10月26日に韓国で起きた朴正煕大統領暗殺を基にした金忠植の「実録KCIA-「南山と呼ばれた男たち」」を原作にしたサスペンス。韓国中央情報部の部長が、崇拝していたはずの大統領を暗殺する過程を描く。監督は『麻薬王』などのウ・ミンホ。『それだけが、僕の世界』などのイ・ビョンホン、『目撃者』などのイ・ソンミンのほか、クァク・ドウォン、イ・ヒジュンらが出演する。 あらすじ 1979年10月26日、韓国。大統領直属の諜報(ちょうほう)機関である中央情報部(KCIA)の部長を務めるキム・ギュピョン(イ・ビョンホン)が、敬服していたはずの大統領(イ・ソンミン)を射殺する。事件の40日前、アメリカに亡命したKCIAの元部長パク・ヨンガク(クァク・ドウォン)が下院議会聴聞会で韓国大統領の横暴を告発していた。キムは、かつての友人でもあるヨンガクに大統領の命で接触し、事態収拾を図るが、その再会が彼の人生を大きく狂わせていく 2021年1月28日 岡山メルパ ★★★★ 「ノッティングヒルの洋菓子店」 まるで女子マンガのようなストーリー。 ひょんなことから、出会ってしまったさまざまな事情を抱えた女3人とイケメン男1人。 仲良くなっていき、一つのことを成し遂げる。 唯一謎は、どうして男が参加したのか? でも、直ぐに氷塊する。 ひょんなことからラッキーが舞い降りて目出し目出度。 甘いお菓子と甘い愛。 面白かったのは、あんな出会いでよくデートまで繋がったなということ。 良かったのは、エンドロールが等閑(なおざり)でなくてちゃんと物語があったこと。 多分タイム誌の田中ナオさんは中国人だと思う。日本人から見たら明らかに中国系の顔で、なおかつ中国系の化粧をしてしまうのは、英国人から見たら日本人も中国人も一緒に見えていることであり、日本人にとっては不快だ。それでも、日本系お菓子は抹茶ケーキだとわかっているのがなお、嫌だ。 (ストーリー&解説) ロンドン、ノッティングヒル。 名店で修行を積んだパティシエのサラと 親友のイザベラの2人は、長年の夢だった 自分たちの店をオープンすることに。 ところが事故でサラが急死。 夢を諦めきれないイザベラと サラの娘クラリッサは、 絶縁していたサラの母ミミを巻き込んで、 パティシエ不在のまま 開店に向けて走り出す。 そんな3人の前に現れたのは、 ミシュラン二つ星のレストランで 活躍するスターシェフのマシュー。 20年前、ガールフレンドだった サラから逃げた過去を持つ彼は、 あることを償うために パティシエに応募してきたのだ。 それぞれの想いを抱えた4人は、 果たしてサラの夢を 叶えることができるのか――。 ロンドン大人気デリ「オットレンギ」全面協力!絶品スイーツ満載の美味しいひとときを召し上がれ。 スクリーンに所狭しと並ぶお菓子とパンは、 スイーツ好き垂涎のラインナップ! 手掛けたのはロンドンNO.1シェフ、 ヨタム・オットレンギ率いる 有名デリ<オットレンギ>。 洋菓子を通じて伝統と多文化が 入り混じるロンドンの今を見せてくれる。 出演は、「最も成功した英国女優のひとり」 と評される個性派女優セリア・イムリー。 シャノン・ターベット、シェリー・コン、 ルパート・ペンリー=ジョーンズら 人気英国俳優が脇を固める。 監督は舞台となった ノッティングヒルに11年暮らし、 趣味はお菓子作りという ドイツ人監督のエリザ・シュローダー。 突然、かけがえのない人を失った 3人の女性たちは、人生に残された時間は 意外と短いのかもしれないことに気づき、 本当の自分になるための 夢を追いかけ始める――。 1軒の小さな洋菓子店に起きた 感動のミラクルを、ぜひご賞味あれ! 2021年1月31日 シネマ・クレール ★★★ https://nottinghill-movie.com/
2021年02月08日
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1月に観た映画の第二弾。 「新感染半島 ファイナル・ステージ」 原題は「半島」。前回の「釜山行」とは題名からしても別作品。上手くはないけど、まぁよく題名を繋げた。 家族の起承転結ドラマがきちんとあり、ゾンビ映画のお約束をあり、なおかつ「泣ける」作品にしていた前作には及びもつかないけど、アクション作品として成立している。 中学生にしか見えない、長女役のイ・レがかっこいい。 「これはゾンビ映画じゃない!」ということはない。あれだけの状況になっても決して主要人物は噛まれない、というのは最近のゾンビ映画の「お約束」である。むしろ、お約束に忠実すぎて途中からおもしろくなくなった。ラストも、これで終わったら最低点出すぞ、と思っていたらちゃんとそれなりのことをした。でも出来たら主人公がやられて欲しかった。そしたら、韓国映画らしくなるのに。 カーチェイスやセットにはお金かけているけど、平凡なゾンビ映画に終わりました。 (解説) 世界の度肝を抜いた 『新感染 ファイナル・エクスプレス』から4年── 誰も予測できなかった 驚異のアフター・パンデミックを描き 前作を遥かに凌ぐ 新たなステージへと加速する! 感染爆発が半島を崩壊させてから4年後、家族を守れなかった元軍人のジョンソクは、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていた。そんな彼のもとに、ロックダウンされた半島に戻り、大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するという仕事が舞い込む。だが、潜入に成功したジョンソクのチームを待っていたのは、さらに増殖した感染者たちと、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。両者に追い詰められたジョンソクを助けてくれたのは、母ミンジョンと二人の娘の家族だった。大金を奪えばこの国を出られるという最後の希望にかけて、手を結ぶことにした彼らの決死の作戦とは──? 世捨て人同然の生き方から、共に半島へと戻った義理の兄と、姉妹たちとその母を守るために、強く頼もしく変わっていくジョンソクには、『華麗なるリベンジ』、『MASTER/マスター』のカン・ドンウォン。モデルとしてデビューして人気を獲得、すぐにその演技力も認められ、数々の賞を受賞する。本作でも、壮絶なアクションと豊かな感情表現を見事に融合させた。 「戦う母」ミンジョンには、『バトル・オーシャン/海上決戦』など本国での大ヒット作で広く知られるイ・ジョンヒョン。高いサバイバルスキルを身につけ、感染者にも631部隊にも怯むことなく立ち向かう気高い心と、娘たちへの深い愛情をドラマティックに体現した。ソウルのダウンタウンを縦横無尽に駆け抜ける、20分間にも及ぶ怒涛の高速カーチェイスシーンで、ドライブテクニックを披露する娘のジュニには、韓国の若手女優イ・レ。その他、631部隊のメンバーに、アクの強い個性派俳優たちが集められた。 本国で2020年オープニングNo.1を叩き出し、アジア各国でも様々な記録を塗り替え、今、この前例のない危機の中、「エンターテイメントは死なない」と証明して映画界の救世主となったノンストップ・サバイバル・アクションが、日本にも無限大のパワーを送り込む! 2016年、カンヌ国際映画祭でのワールドプレミアで驚愕と絶賛の嵐を巻き起こした『新感染 ファイナル・エクスプレス』。人間を凶暴化させる謎のウイルスが韓国各地で発生、感染者が紛れ込んだ高速鉄道の車内で起きた大パニックを描き、日本をはじめ世界160か国以上で大ヒットを記録したインパクトは、いまだ忘れることはできない。 あれから4年、映画ファンの間では「その後の半島はどうなったのか?」という議論が続いていた。アフター・パンデミックの世界が観たいという熱い声に応えて、遂に続編を完成させたのは、前作で一躍注目の才能となったヨン・サンホ監督。本作もカンヌ国際映画祭公式作品に選出され、映画祭総代表から「『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノに続く、韓国を代表する監督による素晴らしい続編だ」と破格の評価を浴びた。 撮影準備に1年間を費やし、2000平方メートルもの巨大セットを制作。VFXにはアジア随一のクリエイターたちが参加。サンホ監督の手による練りに練られた脚本は、逆転に逆転を重ねながら、誰も予測できない結末へと爆走──舞台・映像・ストーリーと、すべてのスケールアップを成し遂げた。 STORY 「半島」を襲ったパンデミックから4年。香港に逃れた元軍人のジョンソク(カン・ドンウォン)は、任務のために半島に戻ってくる。その任務とは、3日以内に大金を積んだトラックを回収し、半島を脱出するというもの。ジョンソクと仲間はウイルスにより凶暴化した人間たちから逃れ、トラックを回収。しかし民兵集団に襲撃され、トラックも奪われてしまう。 キャスト カン・ドンウォン、イ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドゥユン、イ・レ、イ・イェオン スタッフ 監督:ヨン・サンホ 2021年1月7日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://gaga.ne.jp/shin-kansen-hantou/ 「おとなの事情 スマホをのぞいたら」 外国映画の翻訳というよりか、競作の雰囲気を持っているが、ホントに是非他の国の作品を観たくなる作品。 まぁ都合よく、隠し事がバレてゆくわけだが、脚本は非常によくできている。だからこそ、本来は「小さい」はずの粗が目立つ。 あそこで、あれを不問にするのはどうなのか?いい話にもってゆこうとするのを責める台詞もあったけど、やはり無理矢理良い話に持ってゆこうとしている。まぁ勿論現実的には、この後修羅場があるはずだ。だからこそ、ラストの場面は其々の「それ」を想像できるように終わらして欲しかった。また、途中何度もある「数秒の沈黙」、アレは必要だったのか?アレのおかげで、テンポが酷く渋滞した。途中まで笑っていたけど、途中から全く笑えなくなった。 もっと傑作になる素材だっただけに惜しいという気がする。だからこそ他国の作品を見てみたい。 STORY 1年ぶりに再会した3組の夫婦と独身の小山三平(東山紀之)がパーティーを楽しむ中、ある人物の提案をきっかけに、スマートフォンに届く電話やメールを公開し合うゲームが始まる。隠し事は何もないと言いつつも、実は全員が誰にも知られたくない秘密を抱えており、通知が届くたびに彼らの緊張感は増していく。やがて、あるメールによって楽しいはずのパーティーは大混乱に陥ってしまう。 キャスト 東山紀之、常盤貴子、益岡徹、田口浩正、木南晴夏、淵上泰史、鈴木保奈美、室龍太、桜田ひより スタッフ 監督:光野道夫 脚本:岡田惠和 音楽:眞鍋昭大 撮影:須藤康夫 映像:佐藤隆彦 照明:海保栄吉 録音:渡辺丈彦 美術:吉田敬 デザイン:荒川淳彦 記録:荒澤志津子 編集:涌井真史 VFXスーパーバイザー:石井教雄 選曲:谷口広紀 音響効果:西垣尚弥 助監督:佃謙介 制作担当:横澤淳 ラインプロデューサー:武石宏登 協力:XPERIA 製作総指揮:ウィリアム・アイアトン プロデューサー:上木則安、栗原美和子、山崎淳子 2021年1月11日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://www.otonanojijo.jp/sp/ 「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」 イ・ヨンエ『親切なクムジャさん』以来14年、子育てをした後に選んだのは、子供を探すお母さんの役だった。冒頭の髪を振り乱した姿から、日常的に狂ってゆく物語かと思いきや、彼女の美しさは14年後とは全く思えないほどにそのままで、尚且つかなりのアクションをこなす女優として還ってきた。彼女は説得力ある中堅女優として還ってきたと思う。 韓国映画ほど、冒頭場面を大事にする国はない。当然観ている間中、この場面は冒頭の何に繋がるのか、ずっと考えている。そうか、そう来たか。ちゃんと裏切る。そうして納得させる。当然ラスト場面は「違っていた」表情だと思う。みんな、そうだよね? 「みんな見て見ぬふりをしたじゃないか!」 ホン警長の叫びは、監督の叫びである。けれども、社会問題になりうるほどの幼児の行方不明が起きるのは異常だ。中国でも起きている。日本では起きていない、はずだ。 Story ソウルの病院で看護師として働くジョンヨン(イ・ヨンエ)。6年前、当時7歳の息子ユンスが公園で失踪し、夫のミョングク(パク・ヘジュン)と共に捜し続けている。 夫婦で支え合いながら日々を送る中、捜索中に悲劇的な事故が起こる。突然の出来事に、憔悴しきるジョンヨン。そんな彼女の元に、ユンスの目撃情報が寄せられる。桃のアレルギー、耳の後ろの斑点、やけどの痕、そして足の小指の副爪(ふくそう)――。目撃された少年とユンスの特徴は一致しているようだ。その情報に一縷の望みをかけ、ジョンヨンは、ユンスに似た少年・ミンスのいる《マンソン釣り場》へと向かう。 釣り場を営むのは、老夫婦と、夫を亡くした女性と息子の親子、そして何名かの従業員たち。しかし、彼らに尋ねても「ミンスなんて少年は知らない」の一点張り、さらに、地元警察のホン警長(ユ・ジェミョン)でさえ、ミンスの存在を隠そうとしているかのようだ。 引き下がれないジョンヨンは、その夜、一家が寝静まった頃を見計らい釣り場の一角にある家に侵入するが…。 2021年1月17日 シネマ・クレール ★★★★ https://www.maxam.jp/bringmehome/
2021年02月07日
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1月に観た作品は9作でした。3回に分けて紹介します。 「燃ゆる女の肖像」 確かに、殆どの映像が絵画のようだった。 確かに、疑問もないほど2人は愛し合っていたし、ラストの別れも疑問もないほどに愛し合っていたと思う。 確かに、「オルフェの冥界下り」の三者三様の解釈の違いが、最後までこの作品を一本通していた。 「ギリシャ神話のオルフェとエウリュディケの話」であり、ホントは主人公はエウリュディケであるはずなのに、男の目線でずっと語られてきている。エロイーズのいう「エウリュディケの方から見て、と言ったのかもしれない」という発想はなかった。結果、最後の場面でも、マリアンヌはずっと18世紀フランス最後の貴族世界では決して許されぬ恋を生涯焼き付けようと、それを知った上であらゆる表情を見せるエロイーズを、みつ続ける。 2.3度見る事で発見もある作品ではあろう。 しかし、それでも過剰なばかりのラストシーンにしても、三度も出てくるエロイーズの残滓にしても、最初の「燃ゆる女の肖像」のエピソードがすっぽり抜けていることについても、「少し過剰な演出」に思えた。アデル・エネルが元監督の恋人だった、という衝撃の事実で、少しわかった気がした。 (解説&ストーリー) シャーリーズ・セロン、グザヴィエ・ドランら、今を煌めく映画人が大絶賛 生涯忘れ得ぬ痛みと喜びを人生に刻んだ恋を辿る 追憶のラブストーリー かつてない熱狂と陶酔の幕開けは、2019年のカンヌ国際映画祭だった。 天才監督グザヴィエ・ドランを「こんなにも繊細な作品は観たことがない」と夢中にさせた作品、それがセリーヌ・シアマ監督の最新作『燃ゆる女の肖像』だ。カンヌ国際映画祭コンペティション部門でパルム・ドールを受賞した女性の監督は、『ピアノ・レッスン』(93)のジェーン・カンピオンただ一人だったが、シアマは本作で脚本賞と、女性監督としては初となったクィア・パルム賞の2冠に輝いた。近年、エンターテイメント業界で問題視され、カンヌでも変革が叫ばれているジェンダーギャップの課題にも、鮮やかな一石を投じる結果となった。その後も、シャーリーズ・セロンが「この映画を本当に愛しています。4回観ました」とまさに愛の告白をしたり、ブリー・ラーソンが「50年後に残る映画は?」という質問に本作をあげるなど、映画人たちの心を虜にしている。さらに、ゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞の外国語映画賞ノミネートをはじめ、44受賞&ノミネートを果たすなど、世界各国の賞レースも席巻。また、海外のWEB メディア「IndieWire」の世界の批評家304人による2019年ベストフィルムでは第5位に選出され、「Business Insider」の批評集計サイトに基づいた「史上最高の映画ベスト50」にも、『ゴッドファーザー』『市民ケーン』などの名作と、『パラサイト』『ムーンライト』などの現代の傑作と肩を並べてランキングされた。そしてアメリカでは過去公開された外国語映画の歴代トップ20入りを果たす大ヒットとなった。 本物を見極める目を持つ者たちが、魂を奪われた必見の一作が、ついに日本でもベールを脱ぐ。 18世紀、フランス、ブルターニュの孤島 望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描く女性画家 結ばれるはずのない運命の下、一時の恋が永遠に燃え上がる— 画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。キャンバスをはさんで見つめ合い、美しい島を共に散策し、音楽や文学について語り合ううちに、恋におちる二人。約束の5日後、肖像画はあと一筆で完成となるが、それは別れを意味していた──。 監督のセリーヌ・シアマは、デビュー作の『水の中のつぼみ』でセザール賞新人監督作品賞にノミネートされるなど、本国フランスでは早くからその才能を評価され、独自の世界観を築いてきた。そして、長編映画4作目となる本作で、名立たるメディアや評論家から「映画史を塗り替える傑作」と最大級の称賛を浴びた。 マリアンヌには、『英雄は嘘がお好き』のノエミ・メルラン。父親の名前でないと展覧会にも出品できない男性優位社会にありながら、人生を謳歌し芸術に生きようとする女性画家をエモーショナルに演じ、セザール賞ノミネートを含む数多くの賞を獲得した。エロイーズには『スザンヌ』でセザール賞を受賞し、フランスで今最も熱い称賛をまとうアデル・エネル。シアマ監督の元パートナーで、監督は別離の後に、彼女に新境地をひらいてほしいと本作をあて書きしたというエピソードも話題だ。エロイーズの母親の伯爵夫人には、『あなたたちのために』でヴェネチア国際映画祭女優賞を受賞したヴァレリア・ゴリノ。 撮影はフランス・ブルターニュ地方の孤島に実際に残っていた城を舞台に行われた。風の吹く草原、波が砕けては散る崖、妖しく揺らめく夜の焚火、そして二人の赤と緑のドレスのコントラストなど、まさに絵画のような映像が、恋人たちの限られた時間を儚くも美しく彩る。 そのひとの眼差しを、唇を、微笑みを、そして別れの瞬間の姿を思い出すだけで、息が止まるほど愛おしく切なく、蘇る情熱が命を満たす。そんな鮮烈な恋の、決して消えることのない燃ゆる炎を描く、忘れ得ぬ愛の物語。 2021年1月2日 シネマ・クレール ★★★★ https://gaga.ne.jp/portrait/ 「博士と狂人」 辞書作りは全て本から取るんだ、今の街からも取る辞書と違うんだ、どうしてアメリカさえも入っていなかったのか?どうしてチャーチルはマレーのいうことを聞いたのか、等々疑問はたくさんあって、スッキリと入れなかった。1番の疑問は、どうしてマレーはまた返り咲くことができたのか? マイナーは、おそらく病気を発症する前からアインシュタイン型の発達障害だったんだろうな、と思う。 人間には、様々な可能性がある。だから、一様に殺人を犯したからといって罰するべきではない。そういう意味では、キリスト教の赦しの制度は人類の知恵だろうと思う。 (解説&ストーリー) 全米で大反響を呼んだベストセラーノンフィクション待望の映画化! 史上最大にして最高の辞典を作った男たちの、驚きと感動の実話。 かつてこれほどまで「小説よりも奇なり」な真実があっただろうか―――。 初版発行まで70年以上の歳月を費やし、世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」通称OED。世界に冠たる辞典の礎を築いたのは、「異端の学者」と「殺人犯」だった。本作は、この驚くべき事実をドラマチックに描いたノンフィクション本待望の映画化だ。 貧しい家に生まれ学士号を持たない学者マレーと、エリートながら精神を病んだアメリカ人の元軍医マイナー。辞典づくりという壮大なロマンを共有し、異端の天才ふたりは固い絆で結ばれていく。だが、大英帝国の威信をかけた一大事業に犯罪者が協力していることが明るみになり、プロジェクトは暗礁に乗り上げてしまう。ついには、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込んでいくことになるのだが――。 今まで語られてこなかったあまりにも感動的な事実、歴史をも動かした強い信念は、困難な時代を生きる私たちの心をとらえて離さない。 構想から20年――。 メル・ギブソンが全身全霊をかけた渾身作! 原作の映画化に真っ先に名乗りをあげたのが マレー博士を演じるメル・ギブソン。監督作『パッション』や私生活ですっかりお騒がせイメージが定着するも、2016年の監督作『ハクソー・リッジ』はアカデミー賞6部門にノミネートされ完全カムバック。『博士と狂人』の映画化には実に20年以上を費やし、情熱を傾けてきた。対する狂人マイナーには、アカデミー賞主演男優賞を二度受賞している名優ショーン・ペン。南北戦争で心に深い闇を抱えながらも辞典づくりで救われるマイナーに憑依型アプローチで挑んでいる。 19世紀、独学で言語学博士となったマレーは、オックスフォード大学で英語辞典編纂計画の中心にいた。シェイクスピアの時代まで遡りすべての言葉を収録するという無謀ともいえるプロジェクトが困難を極める中、博士に大量の資料を送ってくる謎の協力者が現れる。その協力者とは、殺人を犯し精神病院に収監されていたアメリカ人、マイナーだった――。 2021年1月3日 シネマ・クレール ★★★★ https://hakase-kyojin.jp/ 「詩人の恋」 詩人は悲しい人に寄り添うのが仕事なのだそうだ。 詩人が悲しい若者に寄り添ったのは、それは恋なのか、それとも愛なのか、仕事なのか、でも同情ではなかった。 詩人は韓国では、有名ならば金になる。三百万円をさらっと出した事でもわかる。 でも有名でなければ、月30,000円の臨時教師にしかなれない。 ヤンイクチェンの憑依型の演技に魅了される。最後の展開があまりにも急なために、傑作の冠は少し無理かな。それ以外は素晴らしかった。 (解説) 『息もできない』のヤン・イクチュン主演! 売れない詩人が初めて知った恋とは? 男と女と男 恋愛映画のジャンルを超える、繊細で美しい物語 『息もできない』『あゝ、荒野』で映画ファンを唸らせた韓国の名優ヤン・イクチュン。変幻自在のカメレオン俳優の彼が、本作では日がな一日のんびりと過ごす詩人ヒョン・テッキに変身した。『あゝ、荒野』の役を演じるために鍛え上げたボクサー体形から約8キロも増量。ぽっこりふくらんだお腹と、ドーナツをほおばる姿は食いしん坊のクマのように愛らしい。テッキの妻役には『名もなき野良犬の輪舞』のチョン・ヘジン、テッキの人生に大きな影響を与える青年セユンにNetflixオリジナル韓国ドラマ「恋するアプリ LOVE ALARM」の新星チョン・ガラムら、韓国を代表する俳優たちが集結した。 韓国のリゾート地、済州島を舞台にメガホンをとったのは、2007年の短編デビューから苦節10年、念願の初長編監督作となるキム・ヤンヒ。平凡な人生を歩いてきた男が突然同性に激しい感情を抱いたら? という発想から、済州島の日常風景を背景に無垢な詩人が社会の影を知る姿を映し出す。 愛とは? 夫婦の意味とは? 理想と現実に直面した3人が、もがきながら答えをたぐり寄せる―。 切なすぎる三角関係をヤン・イクチュンら実力派俳優が繊細に紡ぎ、観る者の終わらせた恋、諦めたあの人が思わずよぎる共感を呼ぶ感動作が誕生した! 2021年1月3日 シネマ・クレール ★★★★ https://shijin.espace-sarou.com/
2021年02月06日
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12月に観た作品の後半3作品です。 「魔女がいっぱい」 大魔女は、英語だけど明らかにナチス的な喋り方をして、全てを鼠に変えて駆除されても仕方ない、ということを子供に植え付ける宣伝のための英語という体裁である。 よって、この作品は、何が言いたいのか、全然わからない。もしかして、ナチス的な「魔女狩り」に邁進する「主人公たち」を、反面教師にせよ、という作品なのか、でもかなりそこは真面目に主張していて、どう見ても、魔女=口が裂けていて、指は3本、足指はなく、髪の毛はないからズラをかぶっていて、かぶれて腐っているという、人間離れしているものだから、駆除しても大丈夫だと宣伝する映画にしか思えない。 アンハサウェイは、アカデミー賞女優でバッシングを受けて、自分を変えたかったのか、ノリノリで演じている。そのノリノリ部分だけは見応えがあった。 STORY 1960年代。ある豪華なホテルに若くおしゃれな女性たちがやって来る。彼女たちは、美しく邪悪な大魔女“グランド・ウィッチ”(アン・ハサウェイ)と世界中に潜む魔女たちだった。魔女は普段は人間として生活し、魔女だと気づいた人間を魔法で動物にしていた。大魔女は魔女たちを集め、ある邪悪な計画を実行しようとする。しかし、一人の少年がその計画を知ってしまう。 キャスト アン・ハサウェイ、オクタヴィア・スペンサー、スタンリー・トゥッチ、ジャジル・ブルーノ、クリスティン・チェノウェス、(声の出演)、クリス・ロック、コーディ=レイ・イースティック スタッフ 監督・脚本・製作:ロバート・ゼメキス 脚本:ケニヤ・バリス 脚本・製作:ギレルモ・デル・トロ 製作:ジャック・ラプケ、アルフォンソ・キュアロン、ルーク・ケリー 撮影:ドン・バージェス 美術:ゲイリー・フリーマン 編集:ジェレマイア・オドリスコル、ライアン・チャン 衣装:ジョアンナ・ジョンストン 視覚効果監修:ケヴィン・ベイリー 音楽:アラン・シルヴェストリ 原作:ロアルド・ダール 上映時間 104分 2020年12月12日 MOVIX倉敷 ★★★ 「私をくいとめて」 のんちゃんが娘のように、孫のように、過去の自分のように思えてきて、何度「大丈夫だよ」と思ったことか。ところが、のんちゃんには既に理想的な声の自分A(中村倫也)がいる。彼女に的確なアドバイスをし、的確に肯定してくれる。 ところが、のんちゃんも気がついているけれども、Aは自分なのである。気立てのいい子なのだけど、脳内は毒づきばかり。このままでは、久しぶりに現れた誠実そうな多田くんとの未来も生まれない。彼女はそれもわかっている。結局聡明な女性なのだ。 最後にAが中村の姿で現れると誰もが思っていたのに、意外にも現れたのは「ちょうどいい男」だった。なるほど、のんちゃんは総てわかっていたのだ。 結局未来を勝ち取るのは、総てを肯定してくれる脳内Aでも友達でもない。自分なのである。 あまりにも当たり前な、お一人様の「日常」なのであるが、のんちゃんが可愛いから、ずっと幸せに観て入れた。 (解説とストーリー) 芥川賞作家・綿矢りさの小説を原作に、アラサー独身女性と年下男性が織り成す不器用な恋模様を描くラブストーリー。脳内にいるもう一人の自分を相談役にシングルライフを満喫するヒロインが、思いも寄らず恋心を抱く。監督・脚本を、綿矢原作の『勝手にふるえてろ』などの大九明子が務めた。ヒロインを『星屑の町』などののん、彼女のことが好きな年下男性を『おっさんずラブ』シリーズなどの林遣都が演じる。 アラサー女子の黒田みつ子(のん)は何年も恋人がいないが、脳内にいるもう一人の自分「A」にさまざまなことを相談しながら独り身でも楽しく生活していた。常に的確な答えを導き出す「A」と一緒に平和なシングルライフが続くと思っていたある日、年下の営業マン多田くん(林遣都)に恋してしまう。独身生活に慣れたみつ子は勇気を出せない自身に不安を抱えつつも、多田くんと両思いだと信じて一歩踏み出す。 2020年12月29日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★ 「ワンダーウーマン1984」 何故死んだはずのスティーブが生き返っているのか? 何故1984年なのか? それに答えることが、そのまま映画のテーマに繋がる。 「猿の手」。何かを得れば何かを失う。 「真実以外に欲しいものはない」 如何にも単純なヒーロー映画のテーマだけど、「真実」ではある。この真っ当さが、パティ・ジェンキンスの持ち味なのだと思う。 前回は、作品のあらゆるところに、ジェンダー問題の蘊蓄を散らばらめていたけど、今回はピースの蘊蓄を散らばらせていた。1984といえば、レーガン大統領だろう。核拡散が世界的な問題になった時だ。日本でも、トマホーク来るな!と問題になったことなど、日本人はもう覚えていないだろう。しかし、アメリカ人にとっては、あれは歴史的な危機だったのかもしれない。 パレスチナ問題やその他の問題で、あっという間に世界が危機に陥るのは、ジェンキンス監督には前回同様お手の物なのかもしれない。こうなったら、2008年の貧困問題にもワンダーウーマンを活躍させて欲しい。 ガル・ガドットが、素顔を晒してまるで別人になる場面も見所です。 STORY スミソニアン博物館に勤める、考古学者のダイアナ(ガル・ガドット)には、最強の戦士「ワンダーウーマン」というもう一つの顔があった。1984年、禁断の力を入手した実業家・マックス(ペドロ・パスカル)のたくらみにより、世界のバランスがたちまち崩れ、人類は滅亡の危機に陥る。人並み外れたスーパーパワーの持ち主であるワンダーウーマンは、マックスが作り上げた謎の敵チーターに一人で立ち向かう。 キャスト ガル・ガドット、クリステン・ウィグ、クリス・パイン、ロビン・ライト、ペドロ・パスカル、コニー・ニールセン、(日本語吹き替え版)、甲斐田裕子、小野大輔、花澤香菜、堀内賢雄 スタッフ 監督・脚本:パティ・ジェンキンス 製作:チャールズ・ローヴェン、デボラ・スナイダー、ザック・スナイダー、パティ・ジェンキンス、ガル・ガドット、スティーヴン・ジョーンズ 製作総指揮・脚本:ジェフ・ジョンズ 製作総指揮:レベッカ・スティール・ローヴェン、リチャード・サックル、マリアンヌ・ジェンキンス、ウォルター・ハマダ、シャンタル・ノン・ヴォ、ウェスリー・カラー 脚本:デイヴ・キャラハム 撮影:マシュー・ジェンセン 美術:アリーヌ・ボネット 衣装:リンディ・ヘミング 編集:リチャード・ピアソン 音楽:ハンス・ジマー 2020年12月27日 MOVIX倉敷 ★★★★
2021年01月14日
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12月に観た作品は6作品。2回に分けて紹介する。 「ドクター・デスの遺産 −BLACK FILE−」 予想とは違って、安楽死問題を正面から扱ったものではなくて、エンタメに振り切った悪と正義の話になっていた。 ドクター・デスの動機はキリコ医師のような哲学的なものではなくて、単なる快楽殺人だった。 もう少し高千穂明日香の頭脳が見れるかと思いきや、犬養刑事とどっこいどっこい。残念。それに、ドクター・デスの行動変容に説得力無し。 原作がそうだから、なのかもしれない。イヤミスの有望株らしいが、あまり期待できない。 STORY 警視庁捜査一課の敏腕刑事である犬養隼人(綾野剛)は、バディである高千穂明日香(北川景子)と共に終末期患者が次々と不審死を遂げる事件を追う。捜査を進める中、依頼を受けては終末期患者に安楽死をさせる「ドクター・デス」と呼ばれる謎の医師がいることが判明。苦しませることなく、被害者たちの命を奪っていくドクター・デスの目的と正体を探る犬養と高千穂だったが、腎臓病に苦しむ犬養の娘・沙耶香が、ドクター・デスに自分の安楽死を依頼してしまう。 キャスト 綾野剛、北川景子、岡田健史、前野朋哉、青山美郷、石黒賢、柄本明、木村佳乃 スタッフ 原作:中山七里 監督:深川栄洋 主題歌:[ALEXANDROS] 上映時間 121分 2020年12月1日 MOVIX倉敷 ★★★ https://wwws.warnerbros.co.jp/doctordeathmovie/ 「ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒」 前回は日本だったので、細かい所が気になって集中できなかったが、今回は米国、英国やらインドやヒマラヤ、世界が舞台。集中できた。おそらく、何処かおかしいところはあるんだろうけど、それを含めて類人猿のウソを楽しく見せてくれる。 ライオネルの部屋にある鳥の剥製は、飛べない鳥の「ドードー」に間違いない。幻の鳥であって、剥製などがあるはずはないのである。それを含めて楽しむ作品なのだ。 イギリスの貴族クラブに入ることに拘るライオネルに元恋人が言う台詞がなかなか良いです。 STORY 神話と怪獣研究の第一人者を自称するライオネル卿は、自身の手で伝説の生き物を見つけ、その存在を証明しようと思い立ってアメリカの太平洋岸北西部に行く。やがて彼は、人類の遠い祖先にあたる生きた化石ミッシング・リンクと遭遇する。ライオネル卿は孤独なミッシング・リンクのために、遠い親類を捜そうと伝説のシャングリラに向かう。 キャスト (声の出演)、ヒュー・ジャックマン、ザック・ガリフィナーキス、ゾーイ・サルダナ、エマ・トンプソン、ティモシー・オリファント、デヴィッド・ウォリアムズ、スティーヴン・フライ、マット・ルーカス、アムリタ・アチャリア、チン・バルデス=アラン スタッフ 監督・脚本・キャラクター・デザイン:クリス・バトラー 製作:アリアンヌ・サトナー、トラヴィス・ナイト プロダクションデザイン:ネルソン・ロウリー 音楽:カーター・バーウェル 視覚効果スーパーバイザー:スティーヴ・エマーソン 衣装デザイン:デボラ・クック 特殊効果監督:オリヴァー・ジョーンズ ラピッド・プロトタイピング監督:ブライアン・マクレーン アニメーションスーパーバイザー:ブラッド・シフ 撮影監督:クリス・ピーターソン 編集:スティーヴン・パーキンズ パペット制作監督:ジョン・クレイニー 上映時間 93分 (C) 2020 SHANGRILA FILMS LLC. 2020年12月8日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://gaga.ne.jp/missing-link/ 「ミセス・ノイズィ」 慎重に映画を観る者ならば、冒頭の場面からミセス・ノイズィに喧嘩を売る小説家はヤバいんじゃないかと思うはずだ。 だから、その後の展開も、予想できるといえば、できる。ただ、深刻な映画ならば、悲劇になる展開である。あっさりと描かれる一つの結果のTEL。これが全てを救っただろう。 最初から、笑って泣ける、を目指した、おそらく篠原ゆき子の同期と言われる天野千尋監督・脚本の自分の想いをいっぱい詰めた作品。天野千尋が、夫が妻を許す場面、隣人が小説家を許す場面等の、一般的には涙を振り絞る場面をカットしたのは、映画を少し向上させたと思う。けれども、作品賞をとるには、後もう一つ足りない。 でも、今は全国公開で、評判もいい、「笑って泣ける」ちょっとビターな作品に仕上がったことを、祝ってあげよう。 篠原ゆき子が、天野千尋の分身のように、もう一花咲かせようと焦るアラフォーを演じてリアルだった。 見どころ 嫌がらせをする隣人と反撃する小説家の対決を描いたドラマ。監督は『ハッピーランディング』などの天野千尋。『共喰い』などの篠原ゆき子、『どうしようもない恋の唄』などの大高洋子、『私は渦の底から』などの長尾卓磨、『駅までの道をおしえて』などの新津ちせらが出演するほか、田中要次、風祭ゆきらが脇を固める。 あらすじ 母親として日々家事をこなし、小説家としても活動する吉岡真紀は、スランプに陥っていた。あるとき彼女は、隣人の若田美和子から嫌がらせを受けるようになる。真紀は美和子がわざと立てる騒音などでストレスがたまり、執筆が進まず家族ともぶつかってしまう。真紀は状況を変えようと、美和子と彼女からの嫌がらせを題材にした小説を書き始める。 2020年12月10日 TOHOシネマズ岡南 ★★★★
2021年01月12日
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後半の3作品。 「罪の声」 平成最後の年に、未解決の大事件を明らかにしようとして、大日新聞社の阿久津は事件(グリコ森永事件がモデルなのは明らか)を追う。全ての事案は時効が成立して、何故これを明らかにするのか、新聞社の自己満足なのではないか?と阿久津は自問自答する。ちょうどその頃事件の際に5歳の声を使われた曽根は、阿久津とは違う角度から事件の、真相に近づいていていた。 35年間、京都市のテーラーで穏やかな生活を営んでいた曽根は、もう2人の声の持ち主が悲惨な運命と人生を送っていたことを知る。確かに迷宮入りになった。だからといって、事件は人々に何も罪がなかったとは言えない。「社会にあっと言わせよう」その気持ちがどれだけの罪をつくったか、それを私たちは知るのである。曽根の家族を苦しめ、2人の子供を不幸にした。それだけでなく、多くの失業者を産み、社会はひとつも良くならなかった。かえって劇場型犯罪は多くなった。 記者は考える。 「人の人生に関わらざるを得ないのが、記者の宿命ならば、私は弱いものに寄り添った記事を書いていこう」 その決意が、如何に難しいことなのかを、この記者はこのあと知るだろう。しかし、やっている記者もいる。頑張って欲しい。 STORY 新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、昭和最大の未解決事件の真相を追う中で、犯行グループがなぜ脅迫テープに男児の声を吹き込んだのか気になっていた。一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)が父の遺品の中から見つけたカセットテープには、小さいころの自分の声が録音されていた。その声は、かつて人々を恐怖のどん底に陥れた未解決事件で使用された脅迫テープと同じものだった。 キャスト 小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、宇野祥平、篠原ゆき子、原菜乃華、阿部亮平、尾上寛之、川口覚、阿部純子、水澤紳吾、山口祥行、堀内正美、木場勝己、橋本じゅん、桜木健一、浅茅陽子、高田聖子、佐藤蛾次郎、佐川満男、宮下順子、塩見三省、正司照枝、沼田爆、岡本麗、若葉竜也、須藤理彩、市川実日子、火野正平、宇崎竜童、梶芽衣子 スタッフ 原作:塩田武士 監督:土井裕泰 脚本:野木亜紀子 音楽:佐藤直紀 主題歌:Uru 2020年11月16日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://tsuminokoe.jp/sp/index.html 「ばるぼら」 1973年の手塚作品ではあるが、現代の新宿やさまざまな街の景色が丁寧に切り取られていて、都会の吹き溜まりを体現したかのようなばるぼらが全然不自然に感じられなかった。約50年前のマンガなのに、これは凄いことである。 人気作家ではあるが、「読んだら直ぐに忘れられる」と嘯いて寄ってくる女、代議士の娘で選挙演説をしたら学術会議みたいなところに入れてくれると約束する女、忠実で誠実な秘書ではあるが誠実な仕事を望む女、その(金、名誉、生活)全てをばらぼらは呪術で退けた後に、美倉はばるぼらの虜になる。今や芸術のミューズとしての正体を現して美倉と結婚しようとする。芸術とは、このようなところしか出てこないのかもしれない、と諦観した天才手塚治虫がみえるかのようだ。 それが破綻した後に、美倉はぼるぼらと(手塚治虫がよく描いた)洞窟のような廃墟にたどり着く。バルぼらの死と共に、最後にたどり着くのは、「ばるぼら」という作品だった。ばるぼらとは、barbaroと書くのか? 手塚眞だけの力ではない。クリストファー・ドイル、橋本一子、磯見俊裕、柘植伊佐夫全てが良い仕事をしている。 STORY 作家として活躍する美倉洋介は新宿駅の片隅で、ばるぼらという酩酊状態の少女と遭遇する。洋介は、見た目がホームレスのような彼女を自宅に連れて帰る。だらしなく常に酒を飲んでいるばるぼらにあきれながらも、洋介は彼女の不思議な魅力に惹(ひ)かれていく。何より、彼女と一緒にいると新しい小説を書く意欲が湧くのだった。 キャスト 稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河、美波、大谷亮介、ISSAY、片山萌美、渡辺えり スタッフ 監督・編集:手塚眞 撮影監督:クリストファー・ドイル、蔡高比 原作:手塚治虫 脚本:黒沢久子 音楽 橋本一子 プロデュース:古賀俊輔 プロデューサー:アダム・トレル、姫田伸也 美術統括:磯見俊裕 衣装:柘植伊佐夫 2020年11月28日 MOVIX倉敷 ★★★★ https://barbara-themovie.com/sp/ 「mid90s ミッドナインティーズ 」 90年代半ばが、もう歴史になっているんだ。「舐めるな!俺は湾岸戦争に行ったんだ」と威張るオッさんが既に存在している社会。坂の街ロサンゼルスで、スケボーが自らの存在を主張するひとつになっていたし、身近にスケボープロがいた社会。ニガーという響きが、差別ともクールともとられる社会。レーガン政権のもとで、既にこくみの格差貧困は決定的になっていて、白人でも靴下さえ買えない層が出来上がっている社会。酒とクスリは、既に不良若者に浸透していて、それを親や近所が止めようもない社会。 何ものかになろうとするレイ、何ものかになるのを諦めたファックシット、母親からDVを受けている()、貧困ながら映画監督を夢見て最後は「mid90s 」という作品を完成する()。そして、13歳ながらも、社会の洗礼を次々と受けるスティーブン。うん、青春物語でした。 見どころ 『マネーボール』などの俳優ジョナ・ヒルが初監督を務め、自身の経験を基につづる青春ドラマ。1990年代のロサンゼルスで、少年がスケートボードを通して仲間たちと出会い成長していく。主人公の少年を『ルイスと不思議の時計』などのサニー・スリッチが演じるほか、キャサリン・ウォーターストン、ルーカス・ヘッジズらが共演。音楽をナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーがアッティカス・ロスと共同で手掛け、ニルヴァーナ、ピクシーズなど1990年代のヒット曲が物語を彩る。 あらすじ 1990年代のロサンゼルスで、13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)は母親のダブニー(キャサリン・ウォーターストン)と兄のイアン(ルーカス・ヘッジズ)と暮らしていた。体格差のある兄にかなわないスティーヴィーは、大きくなったら見返そうと考えていた。そして街のスケートボードショップで知り合った少年たちの自由でかっこいい姿に憧れを抱く。 2020年11月29日 シネマ・クレール ★★★★
2020年12月17日
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