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2006年07月19日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
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今年3~5月にかけて、共謀罪が国会にかけられそうになり、実際にかけられ、審議され、一般的な観測ではそのまま強行採決されそうになっていたとき、東京新聞等一部を除くほとんどの新聞は「沈黙」を守っていた。特に、朝日新聞は教育基本法や国民投票法は国会に上程される何ヶ月も前から系統的に報道しており、共謀罪報道との差異にわたしは驚きと憤りと、諦めを感じていた。何故なのか、ということがいまだに疑問なのであるが、私はこの本を読んで、「そうか私はまだまだ朝日はそれでも反権力を守っている、と思っていたのだが、間違いだった」ということに思い至ったのではある。

斉藤貴男は 「NHK番組改変事件」 を巡る朝日新聞の対応は「21世紀の 「白虹事件」 ではないのか」といっている。

白虹事件によって、ほかの新聞も雪崩をうって翼賛新聞に変わっていくのではある。ちなみに、白虹事件により、当時の朝日社長、長谷川如是閑、大山郁夫等の論説委員の辞任とともに、「編集綱領」を発表し、戦争に協力することを誓うのであるが、このとき史上初めて「不偏不党」の文言が新聞の編集方針に登場する。ということもあって、私は「不偏不党」を言うジャーナリストを信じない。

2005年5月9日、朝日の秋山社長が謝罪をした。しかし、これはあくまでも内部資料が他社のジャーナリストにすっぱ抜かれたことに対してではあった。しかし、斉藤は「朝日は土下座したとのみ、世間は受け止めた。いや、朝日新聞社として、あえてそう受け止められるように仕向けたのではないか、という疑念がわたしにはどうしても払拭できない」という。

さて、秋山社長は謝罪の後、さらに2006年3月、35歳になる長男が大麻の所持で逮捕された事件で、よりいっそうの窮地に陥った。(これが朝日が共謀罪報道に不熱心だった真相ではないかと私は考えている。時期も一致する。もしそうだったとしたら、社長からデスクまでの一組織としての朝日新聞社にジャーナリズム精神はもはやない。)一方、安倍、中川両氏がNHK番組に介入した事実をスクープした社会部の記者は四月の人事で「アスパラクラブ」に異動している。彼に近しい記者たちも編集局を外れ、或いは全国に散っていったそうだ。NHKもまた、事件を契機に自らを立て直す好機にはせず、自民党との心中を選んでいるのは周知のこと。

この新書には、読売新聞の朝倉敏夫論説委員長と朝日新聞の若宮啓文論説主幹のインタビューが載っている。

自民党憲法草案について、読売との考え方とは)ほとんど変わらない。 」そうでしょうね。ただ、憲法は国家権力を制限するものだという考え方については「 憲法学者というのは、伝統的に現行憲法のファンであってね。逆に言えば、ある時期まで、そうでなければあの世界で生きていけなかった。ギルド社会の話ですよ。そこもわが社が変えたと自負するものです 。」……ここまでいうか!と思いました。

若宮主幹のインタビューについては、少しは期待していた分、よけいに落胆したかもしれない。「 憲法ですが、非軍事を主体にし、平和主義を貫こうとする我々の基本的な考え方については変わりはありません。(略)(この10年の間に)9条に自衛隊を明確に位置づける考え方も一つの選択肢に入れたほうが良いのでは、と。社説にはそこまでピシッと書いていませんが、そういう趣旨に読めるよう、少し膨らみを持たせて軌道修正している。」「健全な保守層とも一緒に戦列を組んでいかないと、狭い護憲論だけで闘っていくと、危険な右傾化路線を利するだけではないだろうか。何も朝日新聞が売れるとか、売れないとかいうことではなくてね 。」……なくてね、とは言うけれども、それ以外の何が軌道修正の原因だったのかは書いていない。というか、読者の支持のことしか書いていない。同じような理由で、「自衛隊が働くためのルールをつくっておく必要」を求めて、有事法制には賛成している。では自民党の憲法草案については、「 いや、少なくともダメだとは考えています。(略)「軍」と謳ってしまえば、戦前の軍との違いに無頓着になるでしょう。ましてÅ級戦犯の何が悪いのか、といった風潮がある中で、それは良くない。またアメリカとの同盟関係は一気に深まりますね。集団的自衛権に歯止めがなくなると、アメリカが自衛の名の下に行うかもしれない先制攻撃まで付き合わされる可能性さえもある。 」……前半部分と後半部分の論理の整合性が、このインタビューを読む限りではぜんぜんわからない。論説主幹でさえ、こうなのだから、朝日はその時々の勢いで社説はどうにでも変わるだろう。






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最終更新日  2006年07月19日 17時34分54秒
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