再出発日記

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2007年06月10日
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著者: 近藤亨
出版社: 新潟日報事業社

「水滸伝」の北方謙三が、帯に献辞を寄せている。「近藤亨という一代の快男児の記念すべき一冊」。これは単なる付き合いの言葉ではない。この本を読んだらわかるが、まさにここには「水滸伝」にも繋がる「漢(おとこ)」の一代記がある。

たったひとりの70歳を過ぎた老農技術者が定年を迎えて、ネパールの北の広大な一地域の生活改善を成し遂げようと決意する。ネパール人でさえ赴任を嫌がる秘境ムスタンに赴き、70歳から85歳までの15年間で、裸麦やライ麦、そば、ジャガイモしか採れなかった痩せた土地で、平均寿命45歳、学校も病院もなかったこの土地で、世界最高高度の稲作に成功、アメリカの技師も見捨てた植林に成功、りんごやメロンの栽培に成功、牧場を作り、牛を増やすことに成功、養殖池や、病院や学校を次々と建設しようとしているのである。

たった一人の日本人の決意が、国王を動かし、住民を動かし、日本最大の NPO組織MDSA を作る。これが「一代の快男児」の夢でなくてなんであろうか。

私の考古学仲間の花嵐(遊放)氏が、ネパール旅行を決行して、 近藤亨氏に会ったレポート を書いている。そこでも本の表紙にあるように白い馬に乗ってやってきたそうだ。この土地にはガソリンスタンドなんてないから、馬が唯一の乗り物なのであるが、近年彼はこの馬から落馬して九死に一生という大怪我をしている。この本の最後でしかし彼は日本に療養しながら「ムスタンに必ず元気に帰る」と意気軒昂である。



実際ムスタンでは山から来るきれいな水には事欠かない。雨がほとんど降らなくて日照時間が長いという特性を活かして人力で道具を山まで運びながら各地域にハウスを完成させ寒さを克服する。地域の特性に合ったリンゴの木の選定を指導する。新潟農民の知恵である。

しかるに日本の農業はどうなっているか。
「(ムスタンの)過酷な自然条件と比べれば、日本は春夏秋冬折々の豊かな気候風土に恵まれ、農業に最適な天国といえる。それにもかかわらず日本各地の農業は衰退の一路をたどりつつある。」
近藤亨は続けて言う。「農村の荒廃を招いた最大の元凶はいったい誰か。もちろんアメリカ追隋一辺倒の国辱外交を続けてきた政治の責任は許し難い」それと同時に「先達の農村民は、政府が強行しようとする農業政策の逆の経営をすればまず間違いないという賢さを持っていたはずだが、昨今はその勇気も思考能力もなく、農業の何たるかも知らぬ無能な農政の指示に従って今日に至ったわけである」と現農村民にも苦言は忘れない。けれどもこれは、都市の市民にも当てはまることではないか。「政府が強行しようとする政策の逆の経営をすればまず間違いない」
そして「億万の発展途上国の民を農業で救ってこそ、世界恒久平和の旗手として不戦の誓いを立てた日本の真価があるのだ」といっています。その通りです。
こんな本を読むと、男が男に惚れます。
私もムスタンにいきたい、とさえ衝動的に思ってしまいます。あっ、いや日本で頑張りますけどね。

今年の春、実は近藤亨氏は岡山のMDSA支部に歓談に来られたらしい。私はその当日そのことを知り、用事があるために参加できなかった。しかし元気になったようでよかったと思う。私は近藤氏にぜひ聞きたいことがあった。「北方謙三があなたをモデルに小説を書くという話はないのですか」

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
近藤亨(コンドウトオル)
平成10年10月、標高二七五〇メートルのネパール・ムスタン・ティニ村で世界最高高度の稲作に成功、全世界を驚かす。現在、ムスタン・ガミ村標高三六〇〇メートルの高地に病院を建設。病院運営に邁進中。ネパール各方面より多大なる賞賛を集めている。平成十一年度吉川英治文化賞受賞。1921(大正10)年新潟県加茂町(現在加茂市)生まれ。新潟大学農学部助教授を経て新潟県園芸試験場の研究員となり、1976年に国際協力事業団(JICA)の果樹栽培専門家としてネパールへ。以後十数年間にわたり、ネパールのために尽力する。国際協力事業団を辞めた現在も、ネパール・ムスタン地域開発協力会理事長として現地ムスタンに留まり、果樹栽培の指導、病院や小学校の設立など、多方面にわたり、秘境ムスタンの発展のための活動を続けている。ネパール国、1997年国王勲二等勲章。1997年政府・シルバー勲章。1998年園芸学会特別功労賞。日本国、1996年外務省国際協力賞。1999年吉川英治文化賞。1999年毎日国際協力賞。2001年新潟日報文化賞。2001年読売国際協力賞。2003年米百俵特別賞。2006年地球倫理推進賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


「13日の水曜日」碧猫さん










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最終更新日  2007年06月10日 08時42分43秒
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