くんちゃんの・・・

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記念日…

記念日


 手術して、ちょうど5年の月日が流れた…。私は乳ガンとの闘いに勝ったのか?乳ガンを克服したのか?私の5年は何だったのか?

 通常、癌は「5年生存率」と言う言葉をよく使う。これは「5年間転移も再発もなければまず大丈夫!」‘治癒’と言うお墨付きをもらったも同然なのだ。
 ところが乳ガンのやっかいなところは早期であれリンパ転移無しであれ、転移の可能性が拭えないこと、それが乳ガンが全身病だと言われるゆえんなのだ。つまり早い時期から血行に乗っての転移がありうること。そのうえ進行が遅いだけに10年,20年経っての転移・再発もあり得ると言うこと…。
 体調を崩すたびに心の片隅でいつも再発・転移と言う言葉が頭をかすめる…そんな気弱な自分が嫌い…。

 あきらめの悪い私は、秋が嫌い。‘大切なものを失ったこと’を嫌がおうにも思い出させるこの季節が苦手…。前を向いて歩きたいと言いつつ、振り向いてしまうから。
 あんなに元気だったのに…、どこにも痛いところも痒いところもなかったのに…、どうして失わなくてはいけなかったのか。なんで?なんで?なんで???
 ボディイメージの変化を受け入れられないひ弱な自分がここにいる…。

 実は、私自身は何も変わっていない。完治もなければ克服もしていない。口では偉そうなことを言いながら乗り越えたふりして、…本当は成長の欠片もないのかもしれない…と時々思う。いつまでも乳ガンを引きずって、いつも同じことの繰り返し。堂々巡りで…その実何一つ進歩がないような気がする。

 ‘後悔’という二文字を‘前向き’と言うオブラートでくるんで、誤魔化しているだけ。この傷を自分のものとしたわけでも消化しているわけでも何でもない。弱い自分に触れたくないから、明るく振る舞って忘れたふりしているだけ…。

‘時間が薬’と言うならば…私にはその‘薬効’は充分呈されていないのかもしれない。
 5年という歳月を無我夢中で生きてきて、まわりには「もう立ち直った」と言う風に見えているのかもしれないけれど、喪失感・虚無感は癒えてはいない。本当は、健康なボディを持った人たちが羨ましくねたましい。そしてそんなこと考えている自分が浅ましいと思うしひどく惨めだ…。

 考えてみると、嫌なこと辛いことから逃げてばかりいた。あえて考えないようにしてきた。自分と真摯に向き合ってこなかったことがこの結果を招いている気がする…。思いっきり浸るのも良いのかもしれない。

 そして、あしたはもう少しだけ上を向いて歩いていきたい…。at 2001 10/04


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