マスターB、デビュー!



半月ほど【休業】していた
席が5つしかない洋風の焼きトン屋にて

  * * *

【国松路】よりたしか5つ年上のマスター、顔色が悪い…
商売よりも遊びが好きな人間だから(←当然、女性も好きである…)
【誰か】と一緒にどっか温泉にでも行ってたんだと思ってた。
たしか【前】にもあったもんな…この男。

  * * *

からかいつつ訊ねると、渋い顔である。

「…いたよ、たしかに女は。ガリガリの看護婦さんが。」

「なんだぁ、入院してたんだ?…どこ悪いの?」

「…ン、…けんしょう炎。」

ニコリともせず右手を振る…焼いているカシラを見ながら。
相変わらず人を喰っている…

  * * *

焼きトン焼きすぎて手首けんしょう炎になるくらい、
店繁盛してんの見たことねぇぞ!
大体そんなの、半月入院するケガじゃねぇだろが…

肝臓だろ…。
毎晩客と一緒に、ベロベロかっ食らうからだよ…

なんだかあんまり【覇気】がない…
こういう【状態】の人間が焼いた【串】が旨いはずがない。
たま~にいい【作品】造るんだが、コイツは…
今日はもう帰ろうかな…
なんとなくボーっとする。

  * * *

【ガラッ!】っと戸を開け
おっさん二人連れが入ってくる…
■続く>→
「いや、初めて…入ったんだけど…」
「こういうトコはたぶん旨いと思って、な!」
→オラ、客だ客だ。愛想良くしろよ…オレはもうすぐ帰るぞ!
(あ、オレも客だけどさ…)
あ~だめだコイツ、おしぼりも出さんでブーッとしてやがる…

眼鏡をかけた方の男ががとまどいつつ…
かつ【かすか】にムッとしながら言った。
「あのさぁ…何本から焼いてもらえんの?」

マスターの頬がピクッと動いた。
何も答えがない…

気まずいね…こりゃ。
沈黙が、店内をやや制圧する…
みんな…このマスターがなにかいうのを
まっている…

  * * *

「ん?…あぁ、【一本】から。
 【半串】とかいうのは、ちょっと困っちゃうんだよね…」

  * * *

オオ!オオ! 【ナイスジョーク】だ!
さすがいちおう商売人だね!アンタ。

個人的には【評価】できた…

…しかし、おっさん二人は
顔を引きつらせただけ、であった…
(→ある意味…当然だ)

したたる焼きトンの脂、が炭を打つ。
店内は相変わらず会話がない…

  * * *

…酒場にはいろんな【客】と、
さらにいろんな【料理人】がいます…
みんなケッコウへそまがりです。

私など、まだまだ世間を知らない…ようです(笑)。■

(04.4.18)


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