2004年 揚雲雀俳句作品抄


平成16年度俳句作品抄






籾殻を焼きし匂ひの野良着かな
石臼に弾く雨だれ温め酒
飢饉碑へひつじ(田)を渡る夕の風
刈り上げの赤飯匂ふ産土神に
花うけら勿来古道に海の風
ランドセル贈りて春を待ちゐたり

円墳の松のみどりや冬田道
待春や寄り合ひて編む通草籠
極月の潮鳴る山に榊取
あらたまの炭火爆ぜたるめでたさよ
冬ぬくし鉈鎌で切る通草蔓
繕ひし屏風の戻る小春かな

藁屋根に刺さる木の葉や掃納
羽子板のかんざし揺るる手締めかな
縁に乾す素貼りの達磨風花す
露座仏の罅深かりし冬木の芽
年惜しむ庫裡に木彫りの大火鉢
御慶受く牛乳瓶を受け取って
畝際をねずみの走る彼岸寺

白鳥の踏み抜く岸の初氷
あけぼのへ雉子の翔ちたる冬菜畑
福扇を撒きて終りし里神楽
探梅や山路に残る選炭場
舟小屋に鑿打つ音や日脚伸ぶ
リラ冷えや熊彫る木っ端炉にとべり

春近し押切りで切る堆肥藁
空砲に追はるる鴉寒明くる
豆撒くや進水式を待つ船に
馬の餌に青草をたす雨水かな
あらあらと鵯喰みこぼす薮椿
新緑や牧場にのむ山羊の乳

卒業す厩舎の藁も入れ替えて
萱葺きの雨美しき文庫かな (草野心平文庫)
水に浸く楢の倒木春子出づ
山菜と桜苗売る三春人
丹の橋に柳絮吹かるる阿弥陀堂
簗小屋に酒の匂ひの布団積む

一握り丈不揃ひの初蕨
薔薇咲くや一病秘して古希祝ふ
鮭の稚魚卯波へ放つ神酒撒きて
早乙女の神鈴ならし田に入りし
灯台の磯馴れの松や揚雲雀

田巡りの合羽したたる緑雨かな
都忘れ小瓶に挿して癒え初むる
緑青を帯びし寝釈迦やつつじ燃ゆ
菖蒲見に三人乗せし乳母車
新茶汲む荷を広げたる朝市女
朝顔や晒を替へしポンプ井戸

氏子衆大釜で炊く豆の飯
喪の客のふふむ井戸辺の俵ぐみ
梅漬けて母の看取りに急ぎけり
木苺を摘む忌詣での道それて
萍を割って大鯉跳ねにけり
湯帰りの下駄鳴らしくる鉦叩

かなかなや樹下に寄り添ふ道祖神
朝刈りの秣の上に子蟷螂
名札挿し朝顔並ぶ投票所
字の名を染めしじゃんがら浴衣かな
蓮の穂にかはせみ乗りし阿弥陀堂
鋭き声の鳥寄せてゐる山の柿

田巡りの日照雨に濡れし髪洗ふ
髭動く辞書繰る卓にきりぎりす
初盆の提灯触るる青畳
魂棚を揺すりじゃんがら太鼓打つ
送り火の灰盆栽の松に撒く
伐採の止めの一打時雨雲

駅路に残る鉄輪や葉鶏頭
乳噴きし無花果包み見舞かな
唐辛子山の入日に艶めけり
かまつかや明日売る牛に手綱結ふ
夕雀一樹にさわぐ野分あと
陣取りし淵の碧さよ浮寝鳥




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