2006年揚雲雀俳句作品抄

平成18年俳句作品抄

村人の掃納めたる無人駅
青空を白鳥の飛ぶ恵方かな
米蔵の高き石垣枯菖蒲

松島の遊船につく冬かもめ
農の父和服で通す三ヶ日
羽ひろぐ鷺を映せる冬の水
歳暮鮭のし付けしまま吊られけり
湯の街の宿の法被や初戎

丸餅に松葉添へ来る初年始

大寒や菓子屋に滾る餡の鍋

大槻の根を掻く鶏や日脚伸ぶ

拭き艶の帯戸に光る団子花

枯蟷螂夕日傾く枝折戸に

果樹園に煙たちたる浅き春

火付け棒持ちて走れる野焼きかな

薔薇の芽へ引きずってゆく水ホース

楢芽吹く沼のほとりの心平碑

下校子の手の届く枇杷熟れにけり

心平の命名の渓岩煙草

駅前の安全地帯ユツカ咲く

飛魚の胸鰭光る地曳網

川波の寄せゐる堰や彼岸寒

六地蔵に駄菓子あふるるお中日
浅葱を抜きて山田の畦崩す

梨畑の黒土匂ふ春時雨

円墳を巡るせせらぎ芹青む

梅雨深し梁剥き出しの糀蔵

初音かな御朱印帳を開く時

遠足子磯の香りを持ち帰る

接木終へ厚き前垂れ叩きけり

春惜む山菜に爪汚しつつ

剪定の大枝を挽く鋸熱し

田植終ふ水定まりて山映す

菜殻火の煙の中より父の声

氏神へ細き山道著莪の花

田廻りの合羽したたる緑雨かな

海霧晴るる燈台岬車輪梅

蒲公英の絮吹き合うて下校の子

秋霖や寺に野積みの古瓦

霧雨に斑を濃くしたる杜鵑草

撫湿地茸会津の木の葉付け来る

潮風や日ごとに乾ぶ楝の実

石擦りて鮭産卵の白濁り

裸火の瀬波を照らす梁番屋

盆近しじゃんがらの鉦揃ひ来て

拝殿の際まで敷けり梅筵

雉の鳴く藪にこぼるる俵ぐみ

到来の海鞘三陸の潮噴けり

束ねたる秣に触るる夏の蝶

水面打つ釣瓶の音や墓洗ふ

盆の市升山盛りに煮干売る

みどり藻に小海老透けゐる秋の川

霧深し潮入川の四手網

露けしや畦道をゆく車椅子

小鳥来る博物館のトロッコに

木の実落つ納屋に書きゐる農日記

半鐘の刈田へ影を濃くしたる

ガスかかる蔵王のお釜吾亦紅



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