Pay it Forward  ~子宮がんになって思ったこと~

謎の影 正体(告知)




一週間後。
手術になるんかな?
そうはじゃあかんのかな?
このまま、置いてたら治るんちゃうん?
薬で治るとか?
そんなこと考えて、病院に着いた。

先生がさわやかな笑顔と共に登場。
『お待たせ。ちょっとね~。悪い結果が出てるねん。まぁ、座って。』

なに?なに??
やっぱり手術か。
悪いって何?
また、痛いんかな?
勘弁して欲しいな。
『がん細胞が出たんです。』

なに?がんってなによ?

『こないだ取った細胞を切って調べるねんけど、組織診っていうねんけどね・・・
1~5まであってね・・・』

メモに書いて説明してくれた。

『5っていう結果がでてるねん。5っていうのは、がんのことなんです。子宮は、頸部と体部があって、あなたの場合は頸部です。頸部のがんでもいろいろ種類があって扁平上皮がん、腺がん・・・他にもあるねんけど。ほどんどが扁平上皮がんやねんけど、あなたの場合は、Adenocarcinomaっていって、腺がんです。腺がんでもいろいろ種類があるねんけど、類内膜腺がんって種類です。細胞の変形具合をみるのにグレードっていうのがあって、1~3まであって、1が軽くて数字が大きくなるほど変形具合が悪くなるねんけど、あなたの場合は、グレード1です。一番軽いやつですね・・・大丈夫?』

『はい』
・・・ここらへんまでは、人事みたいに聞いてた。
記憶も鮮明やし。

『今後、すごく近い未来に手術が必要になります。術式は、広汎性子宮全摘になると思います。追加治療もおそらく必要になってくると思います。追加治療って言うのは、抗がん剤のことです・・・・、この腺がんって言うのは、扁平上皮がんに比べると、少したちの悪いもんやねんけどな・・・』
『・・・・・・・・・・・・』

ちょ・・・ちょっと待って・・・
全摘って・・・子宮取るってこと?
子供・・・無理ってこと?
・・・・・・・どうしよう・・・・

『・・・・大丈夫ですか?』
『全摘って、子供は無理ってことですか・・・?』
『そうですね。この状況ではあきらめてもらうしなかいですね。お子さんのことも大事ですけど、命の方が大事ですから・・・』

なんで、子宮取られなあかんの?
子供、欲しくてここまで来たのに・・・
なんで?
なんで、それが今なん?
・・・・・・・あぁ。旦那になんて言おう・・・

『・・・・・・大丈夫?』

あぁ・・・先生、心配してくれてはるわ。
なんか、しゃべらんな心配しはるわ・・・
なに話そう・・・
でも、子宮なくなったらあかんやん・・・

『アタシ。生命保険入ってないんですよね・・・』
『生命保険も大事ですけど、今は命の心配してくださいね・・・』

あぁ・・・変なこと、言うてしまった・・
でも、子宮取られるってどういうこと?
マジで言うてんの?それ?
無理。そんなこと認められへん・・・

先生の携帯電話が鳴る。
『今、診察中やから!・・・はい・・・はい』

どうしたらいいんやろ?
そんな、子宮なんて取って欲しくない・・・
無理。無理。絶対無理やし。
子供あきらめられへん・・・

『・・・大丈夫?精密検査してみなわからんこともあるしな。今すぐ、命がどうのって訳じゃないから…でも、状況的には、ゆっくりはできへんと思う。・・・大丈夫?』
『はぁ・・・』
『何が一番心配?』
『・・・いや。・・・あの・・・命がどうのっていうのはいいんです。死んでしまうかもしらへんっては思ってませんから。・・・ただ、子宮取られるのがどうしてもダメなんです。子供、あきらめられへん・・・』
『そうやんね?子供ほしくて、ここに来たもんね。』

あぁ・・・やっぱ、無理。無理。
こんなところ、こーへんかったらよかった・・・
ありへんし・・・

『でも、今は生きる方法の方が優先やからな。死んでしまったら意味ないでしょ?』

ないわ・・・こんなん。
どうしたらええん?
子宮取らんといてほしい・・・
やめてくれ・・・

再び、先生の携帯が鳴る
『今、診察中やから無理です!!!!・・・はい・・・はい』

時計を見る。
9時半過ぎてた・・・

そうや。先生、9時半から手術やって言うてた・・・
帰らんな・・・

『先生、手術あるんですよね?』
『ええねん。今は、こっちの方が心配やから・・・大丈夫。』
『すいません・・・』
『いいよ。どっちにしても、いろいろ検査しなあかんからね。うちで、検査も手術もしてあげれるど、おうちから近い方がいいでしょ?○○病院は近いよね?そこにする?』
『・・・はい。』
『じゃ、紹介状を書くからね。・・・大丈夫?ちゃんと、行ってや?』
『・・・はい。』
『先生とこれからのことよく相談してね。』
『○○先生(クリニックの先生)とよく相談します。』
『その先生じゃなくて、○○病院の先生とよく相談して!』
『あぁ、そっちの先生ですか・・・』
『でも、○○先生(クリニックの先生)と相談するのもいいかもしれないね』
『今から、相談しにクリニックに行きます・・・』
『それもいいね。じゃ、お手紙書くからちょっと待っててね。○○病院の予約は、受付でしてもらって。』
『・・・はい。手術あるのにすいません・・・』
『いいねんで。みんなこんな感じになりはるからな。帰れる?』
『・・・大丈夫です。ありがとうございました。』

頭の中が真っ白になったまま、受付に向かう。
歩いてる廊下の天井がぐるーっとまわる。

あぁ。倒れるかもしれん・・・
倒れるときって、こんなふうになるんか・・・
天井ってほんまに回るんやな・・・
ま。ええか・・・ここ病院やし。

と、思いつつ受付に着いた。
人間、結構倒れないもんだ。

○○病院の予約をしてもらう。
いつがいいですか?と聞かれて
母親の休みの月曜日にしてもらう。
誰かに、ついて行ってもらわんなあかんもんな。
予約を済ませて、会計を待つ。

どないしょ。
旦那になんて言おう・・・
お母さんになんて言おう・・・
あぁ。クリニックに今から行くって予約しな・・・

会計を待つ間、外に出て電話する。
まず、クリニック。
予約が取れる。

次に母親。
なんて言おうかな・・・?
よ~ゆわんなぁ・・・がんなんて・・・
でも、病院についてきてもらわんとあかんしな・・・
今日、結果が出るのもいうてあるし・・・
しばらく考えた後、えぇい!と思って電話する。

『もしもし?』
『結果どうやった?』
『うん。悪かった・・・大きい病院紹介するからって・・・』
『どこの病院?』
『○○病院・・・』
『いつ?』
『月曜日・・・』
『大きい病院に紹介するってそんなに悪いの?』
『うん。悪かった・・・』

今や・・・がんやって言われたってゆえ!
・・・無理。よ~ゆわん・・・
あかん・・・そんなんよ~ゆわんわ・・・
娘が子宮がんですって言われたなんて・・・

『子宮取らなあかんかもしれんらしい・・・』
『・・・・・・・・・』

アタシも・・・取らなあかんかもって・・・
かも・・・ちゃうし・・・
決定的やん・・・さっきの話。
そうや!今や・・・がんって言われたってゆえ!

・・・・無理。

『結果、悪すぎて・・・病名聞いて、お母さん倒れんといてや・・・』
『ほんまに悪いから・・・』
『大丈夫なんかいな?』
『うん。会計あるから、また電話するわ・・・』
『あんたが、大丈夫なんか?』
『うん。大丈夫・・・』

電話を切った。
あかん・・・やっぱ、よ~ゆわんわ・・・
無理やって・・・
がんやって聞いたら、お母さん倒れるわ・・・
でも、どないしよう・・・
いわなあかんよな・・・
お母さん、大丈夫?って・・・
大丈夫なわけないやんな・・・アタシ。

次に旦那。
どないしよ・・・もっと、よ~ゆわん・・・
なんて言うたらええん?
がんって言われたって?
子供、あきらめろって言われたって?
生きる方が大事やからって?

無理やって。
よ~ゆわんし・・・
今、電話しても仕事中やし・・・
仕事中にこんなショッキングな話聞かされたら
危ないやん。
そうや。危ないやんな。
帰ってからでええわ・・・
と、問題を先送りにする。

うちに子供が生まれたらな~
こんなんしてな~
あんなんしてな~
・・・そんな話をしてた旦那を思い出す。

あぁ・・・もう・・・
みんな無理やん・・・
やっぱ、よ~ゆわんし・・・
どうしよう・・・

会計を済ませて、クリニックに向かう。


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: