続・交通事故のお話


外傷はないし、あんまり大げさになるのはイヤだったから周りには言わなかった。
でも、幼稚園の担任と保健の先生にはソ~ッと言っておいた。
もし、nozoの体調が変わったりしたら恐いから。
ソ~ッと言ったのに、2人は「えぇ~~~っ!!!」と驚いてくれた(笑)
そりゃあそうよね。4台だし。

私は私で人身届けを出しに警察に行かないといけない。
それもへこんだ事故車を自ら運転して。
ダーリンや母はとっても心配する。でも私も「行ったらええんやろぉ~行ったら!」みたいな
強気でいたので、一人で行くって言いきったの。
100%向こうが悪く、私は被害者って気持ちも強かった。だから恐いことなんか
あるはずないもん。
でもね、あの独特な警察の雰囲気はやっぱイヤでも緊張するもんだわ~。

交通課の部屋に入る。建物も古いけど備品も古い。それに雑然としてる。
一般のオフィスのように片付いてない。男の人ばっかなのでなんかこわい(笑)
応接セットに座る訳もなく、昨日現場に来たおじさんの机の向かいに折りたたみイスを置いて
座ることになった。
この人、昨日は「大変だったね~」なんて言ってたのに、今日は「あ~ご苦労さん」ですって。
私はその時すでにカチ~ンときた。
確かに「いらっしゃいませ」や「おはよう」はこの場合には合わないかもしれない
でもだからといって「ご苦労さん」でいいの?
診断書を出してるのはわかってるのに、私だったら「具合どうですか?子供さんも大丈夫?
昨日、せっかくご主人が来てくれたのに悪かったですね~。」な~んて言葉をかけるわよ。プンプン!

そっからは事情徴収。おじさんの手元の書類には「被害者用」とあるけどカッコして(取り調べ)とある。
「とっ取り調べ~!?」私は心の中でそう叫んだ。
「私が一体何したっていうのよ~!急に災難にあって時間も取られて病院までかかって
それにこうしてわざわざ来てるんじゃないよ~!!!」と
心の中で叫んだ(笑)
住所や名前はもちろん、事故の状況も昨日言ったことと合わせて聞かれた。
子供の作文のように、いつどこでどうしてこうなったか、と丁寧に書いていくおじさん。
かいつまむとこうだ。
「私はこの時信号で車を停止していた。シートベルトもしていた。そこに車が追突してきたので私の方に落ち度はない」という感じ。
ほ~こういう言葉を聞き出すのが「取り調べ」ってことなのね。

おじさんは私にまだ「あれから大丈夫?」の一言もない。
私から「他の2人の人はどうされてるんですか?」と聞いてやった。
「あ~あの2人ね、後ろから2台目の人はあれからすぐ病院に行ってくれて人身扱いにしたよ。
もう1人は出てない。大丈夫ちゃうか?」
「大丈夫なはずない!あのおっちゃん、胸が痛いってゆ~てたし。でも仕事が忙しいから病院行く時間ないってゆ~てたわ・・・」と又心の中でつぶやいた(笑)
このおじさんはまるで「あんた、病院行くほどちゃうやろ~」と私のことを軽く見てるような気さえした。
被害妄想かもしれないけど、それほど淡々として人間味がなかったという意味です。

なんかこの場所にいるのさえ、イヤになってきた私にこのおじさんから最後の一撃が飛んできた。
「こっちもこんな小さい事故にいつまでもかかってられへんからね~」と軽く言ったのだ。
私は言葉がなかった。そうですね、ともそうですか?とも。
頭が白くなるってのはこういうことだわ、と思った。
そういえば、後ろの刑事さん達は別の大きな事故の話しを真剣にしている。
ドラマのようなすんごい話しだった。犯人が逃げてるとか、証拠隠滅がどうとか・・・。
それに比べればさすがに私が関わったのは小さい事故なんだろう。
でもね、事故って加害者はもちろん、被害者だって周りの人間だって子供だって生活がコロっと変わるほど大きな出来事なんよ。
たぶんダーリンが一緒にいたら「な、なんやてぇ~!もう一回ゆ~てみぃ~!!!」と怒鳴るだろうな。
普段の元気な私なら「でも、そういう言い方はないんじゃないですか?」って一言言ってると思う。
たとえ、言い返されたり、鼻で笑われたりするとしても言いたかったと思う。
今思うと、一言も出なかったのはやっぱり精神的にもマイッテタということだ。

よく周りからはわからないけど、何か心配事を抱えてると頭に小さいハゲが出来ると聞いたことがある。
子供でもあるらしい。心の回復と共に自然に治るらしいけど。
だから美容院の人はそれを見つけてもこれ以上にその人を傷つけない為に黙ってるとも聞いた。
治った後で「実は・・・」と話してあげるんだって。何かあったのねって。
私もその時一瞬考えたよ。
イジイジしてたらおハゲができちゃうって(笑)

その一撃言葉の後のことはあんまり覚えてない。適当に答えて適当に挨拶して部屋を出た。
その時もやっぱり「ご苦労さん」だけだった。
早くココを出たかった。病院だと会計や薬局の人がどんな相手にでも「お大事に」って
声をかけてくれる。
でも、警察ではかけてもらうことはないし、「気をつけてかえってね」の言葉もない。
こういうもんかって思いながらも車のカギを開けてる時に悔し涙がポロッと出てきた。


[Ⅵ]これでもう警察に来なくてもいい、あのおじさんに会わなくてもいいって思った安堵感もあった。
でも大部分は人間としても軽く扱われたことかな?
確かに大事故の加害者の人はも~っと苦労もあるし、長引いて大変だと思う。
たくさんの事故を扱ってて麻痺してる部分もあると思うけど、一言でも優しい言葉をかけることは決して無駄なことじゃない。
不愉快な思いをさせるのはその人や警察の責任だと思う。
まして、傷つけてどうすんねん!
車に乗ってしばらくそんなことを考えてたら、悲しくなった自分がアホらしくなってきた(笑)
・・・この変が私のいいとこかしら?・・・

で、次に私がやった行動は
すぐ近くにある美味しいケーキ屋さんに行くことだった(笑)
そのお店は奥でお茶もいただけるようになってる。
一人で恥ずかしかったけど、こんな気持ちを家に持って帰るのはイヤだったので
ちょっとリフレッシュする為にゆっくりした。
後で考えてもこの時の行動は正解だったと思う。ここから家に帰るまでも自分で運転しないといけない。
イライラ、イジイジした気持ちで運転するほど恐いものはないもの。
気持ちを切り替えて明るい顔で帰りたかった。
・・・・・と周りに言い訳した(笑)



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