道化師の小部屋

free verses 2


□すれ違い




















ソレを求める貴方に


ソレは本当に必要なのだろうか


そう思った私は


貴方に訪ねずにはいられなかった


だってソレは


私がいる貴方には


不要なもののはずなのに


「どうしてソレを求めるの?」


そう訪ねた私に


貴方はこう言った


「自分を保つためだよ」


貴方はそういいながら


少しシニカルな笑みを浮かべ


私に向き直る


それは涙を流しているように


私には見えた


「貴方は自分を持っているのに」


そう言った私は


貴方を強く抱きしめた


けれど貴方は


少しも安心してくれない


それどころか


ますます私から離れて


ソレを求めようとする


そんなにソレが


魅力的なのだろうか


そう思った私は


ソレを求めようとした


けれど


貴方はそのことに


ひどく狼狽した


「君にソレは必要ないだろう」


そう言った貴方は


とても辛そうに見えた


でも


貴方が求めるものに


どうして私が


無心でいられるというのだ


「貴方を理解したいから」


そう言って


私はソレを求めようとした


すると突然


貴方は私を抱きしめた


「泣かなくてもいいんだよ」


涙を流していない私には


何を言っているのか解らなかった


けれど


ソレはとても心地よくて


私は満たされてしまった


「ほらね」


彼はそう言って微笑む


「君には必要の無いものなんだ」


私はわけもわからず


けれど満たされていて


結局ソレを求める気が


無くなってしまった


「だったら何故貴方はソレを求めるの」


私が問うと


貴方はこう言った


「今の私にはもう必要ないんだよ」


そう言った貴方の声が


とても満たされていて


安らいだ響きを持っていた


その声を聞いた私は


突然


ソレの正体がわかった


あぁ


お互いに


同じものを求めていたんだ


でも


今となっては


確かに必要ない


だって二人は


ソレで満たされているんだから…




□色





















どうしようもなく世界が憎くて


僕はナイフを突き立てた


突き立てた机とナイフの間には


僕の手があったけれど


痛みは無かった


暫くして


手から闇が這い出てきた


僕の中に巣食う闇


それを全てを出し切れば


僕の中は光で満たされる


そんなことを考えながら


闇の流出を眺めていた


けれど闇は尽きない


流れても流れても溢れて来る


僕の中に


こんなにも闇があったなんて


そのとき初めて知り


僕は自身に幻滅した


やがて闇は机一杯に広がって


遂には闇が全てを支配した


けれど


闇の流出はとまらない


掌から止め処なく


闇が溢れてくる


重くなった頭で


闇に染まった小さな世界を見渡してみると


ふと


机の端にあった


真っ白な布が目に留まる


それは徐々に闇色に染まっていく


それを目にして僕は思った


もし世界が光に満たされたのなら


光は光でなくなるのではないだろうか


光が光たる所以は


闇があって初めて成り立つのではないか


そのことに気付いた僕は


あわてて闇の流出を塞ごうと


その真っ白な布切れを


手に巻きつける


けれどもそれは


瞬く間に闇に彩られ


程なく白い部分は消えた


ああ


全てが同じ色に染まってしまえば


それは無いのと同じなんだ


多彩な色があってこそ


闇も光も知ることが出来るんだ


そこに至って初めて


闇を認めようと


光だけを求めないようにと


僕は自分に言い聞かせた


そうすると


世界がどうしようもなく


いとおしいと思えるようになっていた


あれだけ憎かった世界が


今は違った色彩を放つ


もちろんその中には


闇色のモノも多かったが


それ以上に


多くの色彩に溢れていた


ああ


もっと世界の見てみたい


もっと世界の色を見てみたい


きっと僕の知らないモノが


きっと僕の知らない色が


まだまだ沢山あるんだろうな


そんなことを思いながら


僕の意識は


深い闇へと沈んでいった





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