さて、「ももたろう」、なんで、おばあさんは川で洗濯なのか、なぜこんなでかい桃が流れてくるのか、なぜ、だんごほしさに、鬼たいじに行くのか、いちいちおかしいわけです。いつも教室には笑いが広がりました。で、疑問を解決するために、日本について調べてきて発表する。着物の着方も習ったり、そのうち音楽を用意してくる子もでてきて、BGMと効果音もでき、衣装も作る子がでてきたり、皆で桃太郎の桃マークのはいった「のぼり」を作ったりしながら、ずっとテープをかけて聞いていました。そうすると、そのなかで、セリフが自然に口から出てくるようになったのです。そしてそのことばは、日本語ネイティブの私を唸らせるほど美しい発音なのです。少しできるようになると、セリフを言うのが楽しくなり、さらに、「川の水は冷たいと思うから、そのときなんと言えばいいか」とか、「帰ってきた桃太郎を誉める時には日本語ではどういうのか」といっぱい聞いてくるようになって、それをどんどん日常生活に入れていくのです。 一方、会話クラスの方は、お勉強スタイルで、まさにrepeat after me の世界!「教える・習う」授業です。また、日本語のダイレクトなので、簡単なことばも伝えるのに時間がかかりました。それでもたとえばレストラン編として、動きをつけて、メニューもつくり、お客とウエイトレスなどに設定してあげると、とたんに楽しくなるのです。でもそれも1回制のものなので、すぐ忘れてしまうのです。
「ももたろう」をしていた子が、なぜ、次々にことばを覚えて言ったかというと、それは自分たちが主体的に作り出していくときに必要だったからです。それに、たくさんの発見があったからです。ひとつのことを目標を持って仲間と取り組むことによって、やる気もおき、いろんなことを調べて、また、新しい発見をする。どきどき、わくわくしますよね。新しいことばをおぼえるということは、どきどきわくわくするほど刺激的なことなのです。repeat after me では、発見も喜びも限界があるのではないでしょうか。