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本棚左3段目
「司馬遼太郎が語る日本」週刊朝日増刊 1~6
未公開講演集を書き起こしたもの。
編集者の手腕だろう、無味乾燥な講演口調で発行せずに出来るだけ司馬の口調を残してあるので、読んでいて心地よい。
講演、座談などを書き起こす時の心構えにしてもらいたい。
司馬が小説を書く上でどれほど調べ上げ、深いバックボーンを持って書いているのかが良くわかる。
資料からの取捨選択の基準をそこはかとなく理解できる。
「司馬遼太郎からの手紙」週刊朝日増刊
上の続編のような存在。
私信を提供された方々には感謝の念を持っている。
「尻啖え孫市」講談社文庫版
後年の司馬には書きにくかろう娯楽時代小説。
私には面白いが、俗にいう司馬ファンにはあんまり好かれないかもしれない。
この版はあとがき(奈良本辰也)に差別的表現が含まれている為、後に出た版では
このまんま書かれているかは不明。
でもこの表現を省くと何が何やら判らなくなってしまうとは思う。
「日本人と日本文化」中公新書 ドナルド・キーン共著
対談集。
ドナルド・キーンについては正直いって可でも不可でもない印象を持っているが、この対談集を読む限り、なまじな日本人よりは江戸~明治の書物については読んでいるのが判る。
私も読んでいない本が話題に出ていて、くやしいので図書館で読んだ覚えがある。
「豊臣家の人々」角川文庫版
ご存知のように豊臣家というのは家としては真に短い間しか存在し得なかった。
だが消えていったどの家よりも名を成した。
家というか家系には消え行くものと残るものがあるのを私は実感している。
母方は姓を名乗る者が多く、子供の数も多い。
父方は姓を名乗る者はもう極僅かで実は私が本家の直系だが、もう子供もできないし、男系の従兄弟はたった2人、その内年長の方には女の子だけ。
絶えてどうという家ではないが、正に絶えつつある有様をリアルタイムで見るというのは自分が本家である事を幼少の頃から祖父母に聞かされ続けていただけに、おかしな話だが責任を感じる。
「覇王の家」新潮文庫版
徳川家康の生涯を描いている。
あまり好かれない家康だが、実は私は信長、秀吉、家康の中なら一番好きかもしれない。
何故「成しえる」事ができたのかが、これには書かれている。
「人斬り以蔵」新潮文庫版
比較的初期の短編集。
この中では「割って、城を」が一番印象に残るが、決して気持ちのいい内容ではない。文章は秀逸であり、それが為に尚更嫌さ加減が増幅されるのだろう。
「新史太閤記」上下巻 新潮文庫版
ご存知太閤記。
明るいキャラクターで描かれる事が多かった秀吉をあえて暗黒面というか、内面を覗きつつ克明に書いている。
これを初めて読んだ時、司馬には漢学の素養があるのだと気が付いた。
「風神の門」新潮文庫版
初期の小説。
出世作である「梟の城」よりはより現実に近づいた忍者小説。
「最後の将軍」文春文庫版
今でもなお評価が定まらない近代人の筆頭は徳川15代将軍徳川慶喜だろう。
事実色んな立場から書かれた本を読んでも、いや読めば読むほど霞の中に巻かれてしまいそうになる。
徳川将軍としては初代の家康と同じく、自分と家の行く末を自ら決定しなければならない立場に置かれた。
古来、日本では偉い人ほど周りが決定済みの事を認可するだけでいいというのがしきたりになっている(今でもほぼそう)。
それを破らざるを得ない立場であり、決定できる資質を持っていたというのが彼の不幸であったのかもしれない。
「胡蝶の夢」1~4巻 新潮文庫版
一番最初に買った司馬本がこれ。
最初は勿論図書館で借りて読んでいた。
だが、「関 寛斎」についての記述を読んですぐに買ってしまった。
「世に棲む日日」1~4巻 文春文庫版
文中、司馬自身がちょくちょく顔を見せる。
後に有名になった彼の特徴がよく出始めた作品。
吉田松陰について書いたせいか、どの作品よりも漢学、漢詩などが多くそれも楽しみ。
「坂の上の雲」1~8巻 文春文庫版
一番読み返した作品。
文中に引用されている書物や関連本も出来るだけ買い求めた。
明治の人とはこうなのかと思わされ、明治本(明治人)好きのきっかけを与えてくれた。
恩人のような本。
「菜の花の沖」1~6巻 文春文庫版
高田屋嘉兵衛の生涯を描いてはいるが、途中すっかり旧ロシア論になり、多分それで書き足らずにもう一冊書いてしまったのだろう。
1巻始めの何ともいえないいじめを読んでいるのはつらいが、しかしこれが現在でもある日本人の一面なのだと思わされる。
「翔ぶが如く」1~10巻 文春文庫版
偉大なる失敗作。
決してけなしている訳ではない。
司馬作品に共通している表に出てこない資料の膨大さに圧倒される。
西郷を書こうとさえしなければ、こういう作品にはならなかっただろう。
司馬自身も西郷の時代に生きた人達も言っているが、巨大な空(くう)のようであったと言われる西郷を描こうとすれば司馬をもってしてもこうなるのかと思わされた。
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