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「高橋是清自伝」千倉書房版 高橋是清
およそ自伝というものは時代を問わず宣伝臭と自慢臭がぷんぷんと匂い立ち、読むに耐えないものが多いので、図書館で読むくらいで充分なのだが。
これは違う。
日露戦争の時代、戦争国債の獲得に奔走しそれを成功させて金の面での勝利に貢献し、2.26事件で暴徒によって殺害された人なのだが。
この自伝は無類に面白い。
少年時代、アメリカにわたったまではよかったのだが、知らないうちに奴隷として売買されていた・・などと聞かされると読みたくなりませんか?
この本の奥付発行日は昭和11年2月25日。
その意味でも貴重に思い、私の所蔵本の中では一番大切にしている。
「湘南方丈記」三土忠造 千倉書房版
昭和11年発行。
私は経済、殊に国家経済の考え方をこの本で半ば学んだ。
他の文章も秀逸で時代は変われども本当の考え方というものは時代には左右されないという事も理解できた。
中々手に入りにくいであろうが、これは読んでいただきたい本。
「佳人之奇遇」東海散士(柴四朗) 聚芳閣
大正14年刊
著者は維新の際、賊軍に属した藩の出身。
陸軍大将柴五郎の兄でもある。
現代人にはお世辞にも読みやすいとはいえない表記だが、これの初版は明治青年のベストセラーになった。
明治に生きた人の多くが読んだ本とはいったいどういうものか知りたくて購入。
以上3冊は、隣の建物が火事になったときも持ち出したもの。
「日本現代文学全集 3 政治小説集」講談社版
矢野龍渓「経国美談 前編」
東海散士「佳人之奇遇」
末廣鉄腸(鉄は旧字、腸はツクリが傷のツクリ)「雪中梅」
須藤南翠「新粧之佳人」
以上4篇が収められている。
「佳人之奇遇」は重複したが、惜しくはなかった。
「我が足許提灯の記」長谷川伸 時事通信社
時代小説作家の一部の師匠的な存在。
本人は師匠とか弟子という言い回しを嫌ったようだが。
この作家の数奇な人生はそのまんま小説の材料になりうる。
昭和天皇の侍従長を務めた人物の異父兄なのだが、兄弟の対面を果たせたのは中年過ぎてからだった。
「読書雑記」小泉信三 文藝春秋新社
昭和23年刊
「雑記」とあるがとてつもない教養人であり、読書人でもあった小泉の奥深さが読むほど心に響く。
巻頭のマルクス・エンゲルスに関する記述はこれの書かれた時代背景を鑑みると奇跡といっていいと思う。
これほどの書評というか書から考えをめぐらせる本は余りない。
「言海」大槻文彦 六号館発行 吉川弘文館
大正13年刊の第463版
初版は明治37年。
旧字体本を読む上で、決定的に教養が足りない事を痛感し購入。
読み物としても面白く、また食物の扱いなどは時代の流れを感じる。
「岩倉と三条 その一」伊藤仁太郎 平凡社
全集本の新装版の端本だが。
これを最初入手したことから、とうとう新装版ではない方の全集本をこつこつと買い集める事になる。
「伊藤痴遊」である。
全集は2つ買い求め、後1冊で全巻揃うはず。
伊藤痴遊全集は別の本棚に独立させてある。
「宰相御曹司貧窮す」吉田健一 文藝春秋新社
昭和24年から28年にかけて主に雑誌に掲載された文章を纏めたもの。
「宰相」は勿論吉田茂。
一生を好きな文学に捧げた著者の飄々とした生き方は、憧れでもある。
「小泉信三 私の履歴書」小泉信三 日本経済新聞社
102頁に戦死した信吉との家族写真が掲載されている。
非常に平易な文章だが、これも自伝的文章の中では秀逸。
「その頃を語る」東京朝日新聞政治部編
昭和3年刊 巻頭に緒方竹虎の序文がある。
現在と違いまともに新聞記者というものがその機能を果たしていた最後の時代。
インタビュー集だが、人選に非常に工夫を感じる。
「明治大正 実話全集 第一巻」伊藤痴遊 平凡社
昭和5年刊
この全集は欲しいのだが、まだ集めきれていない。
内容を読むと当時の疑獄、疑惑事件なのだが、現代とあまりにも同じなので読んでいて吹き出して困る。
「隠れたる事実 日本裏面史 明治時代大正時代編」北村冶三郎 内外出版協会
昭和3年刊
やむをえない事ながら1章の割り当ての少なさから、記述が簡素になってしまっているが、これはこれで伊藤痴遊とは違う見方の歴史を語るという点では参考になっている。
「ああ永沼挺進隊」上下 島貫重節 原書房
著者は騎兵出身で終戦時には大本営陸軍参謀
日露戦争時の騎兵の活躍を伝える本が少なくなった今、貴重な本ではあるが。
これを読み終えた時、何かが足りないと思った。
騎兵というのは戦力よりも戦略、戦術のものなのだ。
参謀出身なのに、全体の記述に戦略的なものが感じられないというのは一体全体どういう事なのかと2.3日考え込んだ記憶がある。
いろいろな意味で参考になった本。
「英米生活の思い出」秩父宮両殿下 文明社
昭和22年刊
不謹慎ながら内容は取り立てて発見があるわけではない。
しかし占領下にあった日本でこの本が出版できた背景を考えると、それ自体が興味の対象にはなる。
「明治大帝」長谷川卓郎 大日本雄弁会講談社
昭和2年刊 キング付録
明治天皇の追悼本だが。
典侍達の写真が巻頭にある。
内容は目新しいものではないが、この後の文章統制時代には見ることが出来ない表記もある。
「明治天皇」木村毅 文藝春秋
明治天皇本でなければ多分買えない文章。
無理に小説体にしたのが間違いか。
「明治天皇の御聖徳」水島荘介 皇徳奉賛会・報国社
昭和7年刊
ぎりぎり神格化から免れている時代の著書。
但し文章表記はすでにこれ以前のものとは違ってきている。
過渡期というべきか。
「明治天皇」渡邊茂雄 高山書院
昭和17年刊
これはあえてこの時代に出版されたものを購入した。
以前のに比べてどこがどう違うのか比較の為である。
流石にまともな古書店というのは本の価値を知っていて、古い本なのにこれはほぼ二束三文だった。
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