Hysteric Moon

Hysteric Moon

Real



手を伸ばそうとしても、鎖に繋がれた手がそう動くはずもない。

そう思って、手を伸ばしたこともなかったんだ。

美しすぎる現実を、全て信じていたわけでもない。

でも、満足してたんだ。

都合の良いことだけを並べた絵画に。

・・・あの日気づきさえしなければ、僕は今でもじっとしてたのに。

ついに気付いてしまったんだ。

それが「絵」じゃなかったって。

「鏡」だってことに。

僕が、自分の殻にだけ閉じこもっていたってことに。

理想しか見ずに、現実から逃げたがった本心を僕は毎日見せられていたって。

でも、それに気付くより前に壊れちゃったんだ。

毎日見てた絵が。

ホントに偶然、偶然なんだ。

でも、きっとそれすら必然だったんだろうな。

とんだ笑い話だよ。

少し背伸びをして、少し遠くを見ようとしたんだ。

そしたら、鎖なんて簡単に砕け散った。

飛び散った欠片は、綺麗にガラスを破片にしてくれたよ。

一枚向こうにあったのは、どんな景色だったと思う?

今までと、少し違って少し似ている世界。

要するに、どちらでもないってこと。

見ようによっては似ていたし、見ようによって違ってる。

「希望も持てるし幻滅もできる。

現実なんて、そんなものだ。」

俺は今、それを信じて生きている。



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